井口健二のOn the Production
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2018年08月05日(日) ルパ・パト/ライダー(嘘はフィク、ガンジス、3D彼女、モルゲン、アント、若おかみ、スカイL、ギャングース、彼らの原発、パパはわる)

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※
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『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー
                       en film』
『劇場版 仮面ライダービルド Be The One』
毎夏恒例、お子様番組の2本立て。
1本目の「スーパー戦隊」は42作目だそうで、異世界からの
犯罪集団「ギャングラー」と、対抗するルパンレンジャー、
さらにその好敵手パトレンジャーによる3巴の戦いに、新た
に来日した私立探偵が参戦する。
そして早速、探偵が到着した空港で戦いが始まり、その戦い
の最中にリーダー格のルパンレッドとパトレン1号が異世界
に連れ去られ…。果たして2人は異世界を脱出し、ギャング
ラーの犯罪を止めることができるのか?
設定はテレビシリーズのままのようだが、物語は視聴者では
ない僕にも判り易く展開されていた。因にタイトルの末尾は
フランス語で、「アン・フィルム」とルビが振られているも
のだ。

出演は、伊藤あさひ、結木滉星、濱正悟、横山涼、工藤遥、
奥山かずさ、元木聖也と温水洋一。他に三ツ矢雄二、茶風林
らが声優を務める。そしてゲストにココリコの田中直樹が出
演している。
2本目の「仮面ライダー」は通算29作目。日本が3分割され
た世界を背景に、3国間の戦いの中で暗躍する謎の組織と仮
面ライダーとの闘いが描かれる。そして映画では3分割され
た国家が新たな形態で統合されるが…。
そこでは民衆の心を操ることで、仮面ライダーを敵と見做す
扇動が行われ、さらにその裏では地球を最終滅亡に導く謀略
が進められていた。

出演は、犬飼貴丈、赤楚衛二、高田夏帆。そしてゲストには
勝村政信、藤井隆、松井玲奈らが登場する。
お話のメインは戦隊ものと同様に敵を倒すだけだが、本作で
は少し背景が複雑で僕としてはその辺を理解するのに、多少
調べる必要があった。でもまあ映画館まで観に行こうという
観客層にはこれで良いのだろう。
ただ、戦いの中に登場する究極のアイテムの始末が判然とせ
ず。それは回収しているのだろうと想像は出来るものの、も
う少しその辺の描写を明確にして欲しかったかな? 回収と
思えるシーンはあるが、はっきりしなかった。
しかし2本立てで上映時間が合計95分では、それも致し方な
いのだのだろう。とは言うものの「仮面ライダー」に関して
は、出来たら1本立てで、しっかりとした展開の作品も観た
い気はしたものだ。

公開は8月4日より、全国ロードショウは始まっている。

この週は他に
『嘘はフィクサーのはじまり』“Norman”
(リチャード・ギアの主演で、政治の舞台裏に暗躍するフィ
クサーの実態を描いた作品。主人公は資産家に接近する道具
としてイスラエル政府の若手閣僚に目を付ける。その目論見
は失敗するが、やがてその閣僚がイスラエルの首相となり、
主人公はその人脈を駆使してフィクサーとしての活動を始め
る。しかしそれがスキャンダルを引き起こす。首相が和平の
推進派で、その失脚は戦争の引き金となる。そんな国際情勢
の中で物語が進行する。共演は2014年公開『オオカミは嘘を
つく』などのリオル・アシュケナージ。他にスティーヴ・ブ
シェミ、マイクル・シーン、シャルロット・ゲンズブールら
が脇を固めている。脚本と監督は『ボーフォート』『フット
ノート』で2度のアメリカアカデミー賞外国語映画部門への
ノミネートを果たしたヨセフ・シダー。結末に承服は出来な
いが、これがイスラエルのやり方だろう。公開は10月より、
東京はシネスイッチ銀座他で全国順次ロードショウ。)

『ガンジスに還る』“Hotel Salvation/Mukti Bhawan”
(ガンジス河畔で仏教とヒンドゥー教の聖地とされるバラナ
シ(ヴァーラーナシー)を舞台に、死期を悟って当地に向う父
親と、それに付き添うビジネスマンの息子の姿をユーモアを
込めて描いた作品。そこには「解脱の家」と呼ばれる宿があ
り、そこでは2週間を基本に宿泊が許される。そして解脱後
には葬儀も行ってくれるようだ。死期を悟るということが僕
にはまだ判らないが、登場する「解脱の家」では日常的に起
きていること。そんな物語と川岸で催行の壮大な荼毘の様子
が、セミドキュメンタリーのような感覚も含めて描かれる。
出演は、2016年12月紹介『汚れたミルク』などのアディル・
フセイン。脚本と監督は弱冠27歳のシュバシシュ・ブティア
ニが実在する「解脱の家」での取材を基に作り上げた。なお
劇中に『空飛ぶ円盤』というテレビ番組が出てくるがこれも
実在かな? 公開は10月27日より、東京は岩波ホール他で全
国順次ロードショウ。)

『3D彼女 リアルガール』
(2017年9月3日題名紹介『覆面系ノイズ』などの中条あや
みと、2018年7月15日題名紹介『青夏』などの佐野勇斗の共
演で、那波マオ原作同名コミックスの実写映画化。佐野が演
じるのは、恋愛経験ゼロのアニメオタク男子。ところがひょ
んなことから中条扮するリア充美少女に気に入られ、彼女の
猛烈なアプローチに最初は新手の苛めかと戸惑うが…。共演
は清水尋也、恒松祐里、上白石萌歌。他に三浦貴大、濱田マ
リ、竹内力、神田沙也加らが脇を固めている。脚本と監督は
2017年7月23日題名紹介『あさひなぐ』などの英勉。なお脚
本は、『仮面ライダーエグゼイド』のスピンオフ作品などを
手掛ける高野水登との共同になっている。コミックスが原作
ということでストレートなラヴコメかと思いきや、要所に登
場するアニメとの合成に、後半はかなり捻った展開で、原作
も良いのだろうが、さすが英監督作品とも思わされた。公開
は9月14日より、全国ロードショウ。)

『モルゲン、明日』
(2011年8月紹介『沈黙の春を生きて』などの坂田雅子監督
による新作。監督の作品では、2015年公開『わたしの、終わ
らない旅』もあり、その作品では福島原発の事故を契機に核
兵器と原発の関係を取り上げていた。しかし同作では、その
趣旨は理解するものの、それを現代にどう反映するのかが不
明だった。それに対して本作はその回答編のようなかたちに
なっている。そして本作では福島事故に呼応したドイツの原
発廃絶の方針が取り上げられ、ドイツ国内でのクリーンエネ
ルギーに向けた取り組みが紹介される。それはもう長年に亙
る取り組みであり、日本がそれを直ちに真似できるかという
ようなものではないのかもしれないが。すでにそれを実践し
て実績も上っているという事実は日本人もしっかりと知るべ
きものだ。このような事実の紹介こそが、今の日本社会に必
要な物とも感じられた。公開は10月6日より、東京はシネマ
ハウス大塚他で全国順次ロードショウ。)

『アントマン&ワスプ』“Ant-Man and the Wasp”
(2015年公開『アントマン』の続編。身体のサイズを自由に
できるスーツを開発した科学者と、それを着たヒーローが、
今回は同様の相棒も得て、研究を盗み出そうとする悪人と対
決する。主人公は前作の後でアベンジャーズに参戦。そこで
の失策でFBIの監視下にあり、その監視を掻い潜っての奮
闘となる。そしてその目的は科学者の妻の救出だが、そこに
物体をすり抜ける新たな敵も現れる。出演は、前作からのポ
ール・ラッド、エバンジェリン・リリー、マイクル・ダグラ
ス、マイクル・ペーニャらに加えて、ローレンス・フィッシ
ュバーン、ミシェル・ファイファーらが新登場。巨大な研究
所ビルを縮小したり、一方で主人公の巨大化など、とにかく
シッチャカメッチャカな作品だ。ただ単純なスーパーヒーロ
ーものより、SF的にはしっかりと作ろうとしている意図は
感じられ、原子サイズ以下の世界観など見所はある。公開は
8月31日より、全国ロードショウ。)

『若おかみは小学生!』
(令丈ヒロ子原作、累計発行部数が300万部を超えるという
講談社青い鳥文庫の人気児童文学シリーズからのアニメ化。
両親を交通事故で亡くし、祖母の営む老舗旅館で暮らすこと
になった小学生の主人公が、その旅館に出没する幽霊や魔物
と交流し、また祖母を助けたいという気持ちから、若おかみ
として仕事を手伝うことになる。そして来る人は拒まないと
いう方針で訪れるいろいろな客たちとの交流や、ライヴァル
旅館などとの様々な問題を通じて女将として成長して行く姿
を描く。声の出演は人気子役の小林星蘭と、歌手声優の水樹
奈々、声優の松田颯水。さらに薬丸裕英、鈴木杏樹、ホラン
千秋、設楽統、山寺宏一らが脇を固めている。脚本は2017年
3月紹介『夜明けを告げるルーのうた』などの吉田玲子、監
督は2003年公開『茄子 アンダルシアの夏』などの高坂希太
郎。公開は9月21日より、東京はTOHOシネマズ日比谷他で全
国ロードショウ。)

『スカイライン−奪還−』“Beyond Skyline”
(2011年公開『スカイライン-征服-』の続編というかスピン
オフ。オリジナルはSPEから盗作で訴えられたものの、そ
の嫌疑も晴れて低予算ながら全米興行で2000万ドルを超える
ヒット作となった。そして本作では、前作と同じエイリアン
に襲われた人々の果敢に立ち向かってして行く姿が、アメリ
カだけでなく東南アジアの仏教遺跡や密林を背景に展開され
る。出演は、2017年4月紹介『パージ』シリーズなどのフラ
ンク・グリロ、2011年6月紹介『復讐捜査線』などのボヤナ
・ノヴァコヴィッチ。他に2013年4月紹介『マーヴェリック
ス』などのジョニー・ウェストン、2012年8月紹介『ザ・レ
イド』などのイコ・ウワイスとヤヤン・ルヒアンらが脇を固
めている。脚本と監督は、前作では製作と脚本を務めたリア
ム・オドネル。前作は侵略物なのにマンションの一室が舞台
というものだったが、本作はストレートだ。公開は10月13日
より、東京は新宿バルト9他で全国ロードショウ。)

『ギャングース』
(2016年1月紹介『太陽』や2017年9月24日題名紹介『ビジ
ランテ』などの入江悠監督で、講談社「モーニング」連載、
肥谷圭介×鈴木大介による漫画の映画化、少年院育ちで世間
を生きる術が犯罪しかないと思い込む少年3人組が、振り込
め詐欺などを行う卑劣な犯罪集団を相手にした現金強奪計画
を敢行する。出演は高杉真宙、加藤諒、渡辺大知、林遣都、
伊東蒼。他に金子ノブアキ、MIYAVI、篠田麻里子、般若、勝
矢らが脇を固めている。入江監督の作品としては、『ビジラ
ンテ』に繋がる社会の裏側を描いた作品だが、主人公が若者
な分、少し軽量というか監督曰く「キラキラした映画」にな
っている。しかしそれが小気味よく描き切れているのも本作
の良いところだろう。映画の最初の強盗シーンで少し演出ミ
スはあったが、満足できる作品だ。でも、そろそろ『太陽』
みたいな作品も観せて欲しいかな。公開は11月より、東京は
TOHOシネマズ日比谷他で全国ロードショウ。)

『彼らの原発』
(上映前の挨拶で「自分は反原発です」と言い切った川口勉
監督が、2011年以降の再稼働に揺れる福井県おおい町を取材
した作品。監督自身は反原発だが、作品はそちらに偏ること
なく、平坦な目で原発問題を描いている。それは原発でしか
生き延びられない過疎の町の現実であり、日本の各地が抱え
ている問題だろう。そこに原発が立地されたというある種の
幸運が描かれているとも言える。勿論それは傍目からは歪ん
だ幸運である訳だが。そうも言っていられないのが彼らの現
実なのだ。そんな地元の賛成派、反対派の声がまんべんなく
取材されており、それは福島のような特別な事情がない分、
より鮮明に問題点が描かれているとも言える。ただし本作は
2014年の取材で、大飯原発は3、4号機が既に再稼働され、
1、2号機は廃炉が決まっているもので、その辺を踏まえて
の最新情報でないのが少し残念かな。公開は10月20日より、
東京は新宿K's cinema他で全国順次ロードショウ。)

『パパはわるものチャンピオン』
(新日本プロレスのエースとも言えるプロレスラー棚橋弘至
の主演で、岩崎書店刊、板橋雅弘(作)、吉田尚令(絵)による
原作を映画化した作品。主人公は元はエースだったが故障も
あってマスクを付けたヒールに徹しているプロレスラー。プ
ロレスが好きで他の仕事は考えられない。そんな彼の家には
妻と小学生の一人息子がいるが、息子には自分の仕事を告げ
られないでいる。そんなある日、父親の後を付けた息子はレ
スリング会場に紛れ込み、そこに居合わせたクラスの人気者
の女子と初めての観戦をする。そしてエースを応援し、マス
クを付けたヒールの敗戦を目撃するが…。共演は木村佳乃と
人気子役の寺田心。他に仲里依紗、大泉洋、寺脇康文。さら
に真壁刀義ら現役のプロレスラーが脇を固めている。脚本と
監督は2012年5月紹介『バルーンリレー』などの藤村亨平。
物語は見事な父子物だが、プロレスラーの芸達者振りにも驚
かされた。公開は9月21日より、全国ロードショウ。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。


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井口健二