井口健二のOn the Production
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2018年02月04日(日) ゴーストスクワッド(Sea Opening、香港製造、ANIMA、ペンタゴン・P、ボス・B、きみへの距離、ハッピーE、トレイン・M、グレート・A)

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『ゴーストスクワッド』
2003年12月紹介『恋する幼虫』以降、昨年2月5日題名紹介
の『スレイブメン』及び『ブルーハーツが聴こえる』の一編
まで、いろいろ紹介してきた井口昇監督の最新作。
主人公は、恨みを残したままでは成仏できない幽霊が見える
少女。そんな主人公がふとしたことから3人の少女の幽霊に
取り憑かれる。そして自分らを殺した犯人を制裁することで
恨みを晴らし成仏する手伝いを頼まれる。
その頼みを心優しい主人公は聞くことにするのだが…。犯人
が改心しない時に、最後の手段として幽霊が人間に物理的な
影響を与えるためには、彼女が瀕死の状態になって、幽霊に
パワーを送る必要があった。
という設定に、地上の幽霊を管理する女性地縛霊の存在など
も加わって、3人の幽霊少女たちによる壮絶な復讐劇が展開
される。

出演は、監督がプロデュースするアイドルグループ「ノーメ
イクス」の神門実里、神門実里、上埜すみれ、柳杏奈。彼女
たちは監督の以前の作品などにも出ているようだ。他に中村
朝佳、中村瑠美衣。
さらに、2017年7月9日題名紹介『蠱毒(こどく)』などの
島津健太郎、2013年11月紹介『地球防衛未亡人』などのなべ
やかん、2017年10月29日題名紹介『HiGH&LOW THE MOVIE』な
どの阿部亮平らが脇を固めている。
同様の作品は1990年『ゴースト ニューヨークの幻』から、
1999年『シックス・センス』など数多あるが、特に1990年の
作品では、感動的な作品である反面、ゴーストが存在を示す
手段が少し微妙に感じられたものだ。
それに対して本作では、主人公が瀕死の状態になると物理的
な影響を与えられるという理論を明確にしたもので、これは
一つの方法論として認めることができる。ただまあそこから
後の展開はかなり支離滅裂にはなるが、こういう抑えのある
なしでは、観ている側の気分はかなり違ってくる。
監督の以前の作品では、サーヴィス精神を発揮しての勢いに
任せた展開の中で、設定が破綻してしまうことが多く。それ
が受けている面はあるのかもしれないが、僕には折角の設定
を自己破壊しているようで、勿体なく感じていた。
それが最近の作品では、支離滅裂な展開をそれなりに上手く
纏めてくれるようになってきており、本作でもその点は満足
した作品だ。まあ依然としてサーヴィス精神を発揮している
シーンもあるが。
なお個人的には地縛霊の存在は気に入っているもので、彼女
を中心にスピンオフなど、考えて欲しいと思ってもいるとこ
ろだ。

公開は3月3日より、東京はUPLINK渋谷他で全国順次
ロードショウとなる。

この週は他に
『Sea Opening シー・オープニング』
(2015年に佐々木希主演で『縁 The Bride of Izumo』とい
う作品を発表している堀内博志監督が、製作/脚本/撮影/編
集も兼ね、『テニスの王子様』の舞台ミュージカルなどを手
掛ける劇団「2.5次元舞台」の役者たちを出演者に迎えた作
品。主人公は新しい舞台の稽古に励む新人役者。ところが初
日が近づいた日に主演の役者が失踪して公演がキャンセルさ
れてしまう。そして街でその役者に出逢った主人公は、彼に
誘われるまま沖縄のリゾート地に向かうが…。不思議なムー
ドは漂うが、物語的にはちゃんと説明される。でも全体的に
は現実と虚構が入り混じったファンタスティックな作品だ。
出演は「2.5次元舞台」『刀剣乱舞』などの黒羽麻璃央と、
同じく『ダイヤのA』などの和田琢磨。男同士の友情と別れ
が切なく描かき込まれている。公開は2月10日より、東京は
シネマート新宿他で全国ロードショウ。)

『香港製造メイド・イン・ホンコン』“香港製造”
(2009年10月23日「東京国際映画祭」で紹介『愛してる、成
都』などのフルーツ・チャン監督が1997年に発表して、香港
金像奨グランプリなどを獲得した作品。その作品が4Kリマ
スターにより再公開される。舞台は中国返還直前の香港。変
革に戸惑う社会の中で、行き場のない若者たちの青春が描か
れる。そこに自殺した少女の遺書が拍車を掛ける。主演は本
作で市中から見いだされ、後に2002年6月紹介『ピンポン』
などに出演するサム・リー。本作には本名でクレジットされ
ている。他に後は実業家になるネイキー・イム。さらに後は
映画編集者として活躍するウェンダー・リーなど、特別な顔
ぶれが並ぶ。製作総指揮はアンディ・ラウ。撮影用フィルム
の特殊な事情などもあり、ディジタル化にはかなりの時間を
要したようだ。公開は3月10日より、東京はヒューマントラ
ストシネマ有楽町他で全国順次ロードショウ。)

『ANIMAを撃て!』
(2016年10月16日題名紹介『いたくても いたくても』で長
編デビューした東京藝術大学大学院映像研究科出身堀江貴大
監督の長編第2作。海外留学支援の試験に臨むバレリーナを
主人公に、自らの進むべき道に迷う若者の姿を描く。出演は
新人の服部彩加と、2012年8月紹介『FASHION STORY』など
の小柳友。他に大鶴義丹、さらに2015年『RED COW』などの
黒澤はるか、同年『私たちのハァハァ』などの中村映里子、
2009年8月紹介『行旅死亡人』などの藤堂海らが脇を固めて
いる。劇中のダンスシーンはそれなりに観られたが、ドラマ
の展開がちょっとベタかな。同様の展開では2017年4月30日
題名紹介『ダンサー、セルゲイ・ポルーニン』がドキュメン
タリーなのに見事にドラマティックだったもので、フィクシ
ョンならそれなりのドラマが欲しい。公開は3月31日より、
東京は新宿武蔵野館他で全国順次ロードショウ。)

『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』“The Post”
(ウォータゲート事件に先立つ1971年に起きた、合衆国の報
道の自由を巡る事件の実話に基づく物語を、スティーヴン・
スピルバーグ監督、メリル・ストリープ、トム・ハンクスの
共演で描いた作品。1961年から1968年までの民主党政権下で
マクナマラ国防長官が密かに纏めたベトナム戦争を検証する
文書。それは勝ち目のない戦いにアメリカの若者を送り続け
る愚かさを示したものだった。その文書をスクープしたNY
タイムズとそれを追うワシントン・ポスト。しかしそれはホ
ワイトハウスの怒りを買うことになる。しかもポストの社主
はマクナマラと昵懇だった。その中で大統領府は両社の刑事
告発に踏み切るが…。何処で事態は逆転するか、結果は判っ
ていても興奮する作品だ。トランプ政権の横暴さに危機感を
覚えるハリウッドが、正にトップランナーで政権に挑んでい
る。公開は3月30日より、全国ロードショウ。)

『ボス・ベイビー』“The Boss Baby”
(2005年6月紹介『マダガスカル』などのトム・マクグラス
監督によるドリームワークス・アニメーションの最新作。主
人公はやさしい両親に育まれた7歳の少年。そんな主人公の
家にコウノトリならぬリムジンでやって来たスーツ姿の赤ん
坊。彼は人類の未来に関る重大な使命を帯びていた。それは
赤ん坊vsペットの究極の戦い。その中でペット陣営は最終兵
器を準備していた。かなり捻った世界観で、それを把握する
のに少し戸惑うが、判ってしまえば実に見事に現代を描いた
作品になっている。ペットブームと少子化問題、その背景に
こんな事情があったとは…。これは到底有り得ないとは言え
ない話かな…? 声優は、オリジナルはアレック・ボールド
ウィン、スティーヴ・ブシェミ他、吹替え版はムロツヨシ、
芳根京子らとなっている。公開は3月21日より、全国ロード
ショウ。)

『きみへの距離、1万キロ』“Eye on Juliet”
(砂漠の油送パイプラインを監視するロボットが、海外脱出
を企てるアラブ人の男女を目撃したことから始まる少し未来
的なお話。六脚を操り移動するそのロボットには通常のカメ
ラと暗視カメラが搭載され、さらに傍受と警告を行う音響シ
ステムや、威嚇射撃の銃も装備されている。そして操縦は合
衆国内から遠隔操作で行われる。因に音響システムには通訳
機能も設けられている。そんなロボットの操縦者がパイプラ
インの脇で密会する男女を発見。さらに事件が発生して操縦
者は救援の手を伸べようとするが…。2016年9月18日題名紹
介『アイ・イン・ザ・スカイ』では遠隔操作による戦争が描
かれたが、それよりは少し平和的かな? でも監視の目的は
石油の盗難防止だから、それなりに殺伐としたシーンも描か
れる。ただし全体はラヴストーリー。公開は4月7日より、
東京は新宿シネマカリテ他で全国順次ロードショウ。)

『ハッピーエンド』“Happy End”
(2013年1月紹介『愛、アムール』などのミヒャエル・ハネ
ケ監督による最新作。85歳の老父を頂点に3世代が暮す豪華
な邸宅。そこに長男の13歳の娘が一緒に住むためにやって来
る。その少女の目を通して一家の実態が描かれる。それは不
倫や嫉妬に塗れた壮絶なものだ。冒頭にはハネケらしい不快
な映像が提示されるが、それはネットなどでは頻繁に観られ
るもの。そんな人間の心の闇を描く作品だ。でもまあ初めて
『ファニーゲーム』を観た時の衝撃からは、大分柔らかくな
ったかな。出演は『愛、アムール』でも親子を演じたジャン
=ルイ・トランティニャンとイザベル・ユペール。さらにマ
チュー・カソビッツ。そこに2017年7月紹介『少女ファニー
と運命の旅』で姉妹の妹を演じていたファンティーヌ・アル
ドゥアンがキーとなる役で登場する。公開は3月3日より、
東京は角川シネマ有楽町他で全国順次ロードショウ。)

『トレイン・ミッション』“The Commuter”
(2011年4月紹介『アンノウン』、2014年7月紹介『フライ
ト・ゲーム』、2015年『ラン・オールナイト』で監督×主演
のジャウマ・コレット=セラとリーアム・ニースンが四度組
んだサスペンス・アクション。主人公は保険の営業マン。彼
が突然の馘を言い渡され、家族にどう話すか思案しながらの
帰路の通勤電車で、突然乗客の中からある人物を見つけ出し
たら10万ドル渡すと持ち掛けられる。最初は半信半疑ながら
も手付金を入手した主人公は人探しを始めるが、その裏には
非情な陰謀が隠されていた。共演は、ヴェラ・ファーミガと
パトリック・ウィルスン。2人は2016年6月紹介など『死霊
館』シリーズのコンビだ。舞台がほぼ列車内に限定というの
は、2014年作に似ているかな。ただしそれは時間制限などで
飛行機よりも臨場感がある。しかも最後に展開される大アク
ションには…お見事と言いたくなる作品だった。公開は3月
30日より、TOHOシネマズ日比谷他で全国ロードショウ。)

『グレート・アドベンチャー』“侠盗聯盟”
(中国のアンディ・ラウとフランスのジャン・レノ。両国の
人気スターが共演する怪盗vs敏腕刑事のアクション作品。怪
盗はルーブル所蔵の中国の秘宝“ガイア”の一部を狙うも、
獲物を何者かに奪われ逮捕された。その怪盗が刑期を終えて
出獄。彼は奪われた“ガイア”を構成する3つの要素を集め
て稼業の最後にするつもりだったが…。その後を刑事が執拗
に追っていた。そして舞台はチェコへと展開する。共演はト
ニー・ヤン、スー・チー。さらにエリック・ツァン、チャン
・ジンチューらが脇を固めている。監督は、2013年『TAICHI
太極』などのスティーヴン・フォン。古株の評論家の人とは
1960年代の『ファントマ』を思い出すという話になった。ジ
ャン・レノはルイ・ド・フィネスよりはスマートだが、ユー
モアに満ちた雰囲気は共通する。公開は3月31日より、東京
は新宿武蔵野館他で全国順次ロードショウ。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。


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