井口健二のOn the Production
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2017年09月24日(日) リンキング・ラブ

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『リンキング・ラブ』
平成『ガメラ』3部作や、2006年6月及び10月紹介『DEATH
NOTE』前後編などのSF大作を手掛けた金子修介監督による
タイムトラヴェルをテーマにした作品。
主人公は女子大生。母親はアパレルメーカーの2代目社長で
家は裕福だが、婿養子の父親は2Dアイドルに夢中で夫婦仲
は破綻している。そんな鬱憤を主人公はラップバトルで晴ら
していたが…。
ある日、帰宅した彼女が見たのは離婚して家を出て行く母親
の姿だった。そして離れの自分の部屋に閉じこもった彼女の
前に、母親に貰った古いランプからジンが現れ、彼女の3つ
の願いを叶えると言って、25年前の過去に送ってしまう。
そして大学の時間旅行の講義で目覚めた彼女は、両親の仲を
強固なものにするべく行動を開始するが…。

出演はAKB48の田野優花と、2017年4月2日題名紹介『22年
目の告白』などの石橋杏奈。他に2013年『テニスの王子様』
の白洲迅、2016年12月18日題名紹介『ゾウを撫でる』などの
中尾明慶。さらに落合モトキ、加藤諒、木下隆行、渡辺徹、
浅田美代子、西村まさ彦らが脇を固めている。
原作は萩島宏という人のネット小説だそうだが、この人物は
AiiAというアパレル会社の創業者で、この会社は近年パズル
雑誌なども出しているようだ。そして本作では製作総指揮も
務めている。
ということで、原作者が『ガメラ』や『DEATH NOTE』を好き
だったのかな? いずれにしても金子監督は、好みの若手女
優も沢山起用して、自由にやらせて貰えたというところかも
しれない。
とは言うものの、お話は男子高校生→女子大生、ロカビリー
→ラップという感じで、過去に戻った主人公が両親の出会い
を演出しようとする…、これはまんま某有名SF映画に見え
る。さらに忘れたスポーツ・アルマナック→スマホが歴史を
改悪してしまう話まで付いてくる。
この他、両親の関係がぎくしゃくすると主人公の身体が消え
始めたり、さらに改悪された未来に戻った主人公が見る風景
など…。これを換骨奪胎と言えるかどうか、かなり判断には
苦慮するところだ。
でもまあAKBの楽曲が多数使われて、主演の田野優花は別
にしても他の若手女優たちがそれをしっかりと踊っている映
像は、それが本作の価値と言えるものにはなっている。この
部分は某有名SF映画にはなかったシーンだ。

公開は10月28日より、東京は丸の内TOEI2 他で全国順次ロー
ドショウとなる。

この週は他に
『密偵』“밀정”
(1920年代、日本統治下の朝鮮半島を舞台にしたサスペンス
アクション。武装独立運動団体「義烈団」を巡って朝鮮人だ
が日本警察の警官になっている男に組織の主謀者を探れとい
う命が下る。その男は組織に近づき二重スパイとしてその中
核に迫るが…。爆弾テロ計画を背景に緊迫したドラマが展開
する。出演はソン・ガンホと2017年7月紹介『新感染』など
のコン・ユ。日本から鶴見辰吾。さらにイ・ビョンホンも登
場する。監督は2011年『悪魔を見た』などのキム・ジウン。
日本統治下で暴力描写などはあるが、特に日本を悪く描いて
はおらず。歴史的背景として理解できるものになっている。
主には朝鮮人同士のドラマを描いた作品だ。公開は11月11日
より、東京はシネマート新宿他で全国ロードショウ。)
『勝手にふるえてろ』
(2003年『蹴りたい背中』で芥川賞を受賞した綿矢りさ原作
の映画化。恋愛経験なしで大人になった女性が、勤務先の同
僚に告白され、今も脳内恋愛を続けていた高校時代の憧れの
男子への思いを断ち切るべく、飛んでもない手段で同窓会を
計画するが…。現実と妄想の間で揺れ動く、主人公の尋常で
ない行動が描かれる。監督は2013年3月紹介『モンスター』
などの大九明子。主演はNHK『あまちゃん』などの松岡茉
優。他に2009年4月紹介『色即ぜねれいしょん』などの渡辺
大知と、2016年2月紹介『あやしい彼女』などの北村匠海。
さらに『リンキング・ラブ』にも出ていた石橋杏奈、『モン
スター』などの趣里らが脇を固めている。公開は12月23日よ
り、東京は新宿シネマカリテ他で全国ロードショウ。)
『シネマ歌舞伎 め組の喧嘩』
(歌舞伎を映画館で上映する「シネマ歌舞伎」の第29弾は、
2012月5月に東京浅草「平成中村座」で上演された『神明恵
和合取組』の舞台。物語は町奉行管轄の町火消しと、寺社奉
行管轄の相撲取りがふとしたことから諍いとなり、血気盛ん
な両者が大乱闘を繰り広げるというもの。それを感情の動き
を見せる表情のアップなど、シネマ歌舞伎ならではの演出も
含めて、存分に堪能させてくれる。主演は「平成中村座」の
主宰で、この舞台が最後となった十八世中村勘三郎。それを
思うと辛くもなるが、舞台のフィナーレの演出というか、そ
こに設けられた大仕掛けは、これこそ大団円に相応しいもの
になっている。公開は11月25日より、東京は築地の東劇他、
全国56館でロードショウ。)
『エルネスト』
(チェ・ゲバラと共に闘ったフレディ前村ウルタードの生涯
を描いた日本キューバ合作映画。ボリビア出身日系2世の前
村は医学を志してキューバの国立ハバナ大学に留学。しかし
キューバ危機の状況下でチェと出会い、その革命に賭ける姿
に心酔した前村は、ボリビアの軍事政権打倒に向かうチェの
部隊に参加。そこでチェのファーストネームであるエルネス
トを戦士名として与えられ、エルネスト・メディコと名告る
ことになる。この前村にオダギリジョーが扮し、全編スペイ
ン語の台詞に挑んでいる。他にキューバ革命直後に来日した
チェを取材する広島の記者役で永山絢斗が出演。脚本と監督
は2016年4月紹介『団地』などの阪本順治。公開は10月6日
より、東京はTOHOシネマズ新宿他で全国ロードショウ。)
『レミングスの夏』
(江戸川乱歩賞受賞作家・竹吉優輔の原作を、2012年『ゆめ
のかよいじ』などの五藤利弘監督が映画化したヤングミステ
リー。小学時代に仲良しだった男女が再結集し、ある作戦を
実行する。それは過去の哀しみを振り切るための覚悟の行動
だった。出演は、前田旺志郎、菅原麗央、平塚麗奈、瑚々、
桃果。他にモロ師岡、田中要次、渡辺裕之、大桃美代子らが
脇を固めている。都市伝説や様々な要素を絡めて、物語には
いくつかの心を揺さぶられるようなエピソードもあり、展開
は巧み、ただここだと言えるハイライトがなく、全体として
は凡庸な印象かな。公開は9月30日より撮影地茨城県で先行
上映の後、全国順次ロードショウ。東京では10月1日に渋谷
ユーロスペースにて舞台挨拶付き上映が行われる。)
『ビジランテ』
(2016年1月紹介『太陽』や今年4月2日題名紹介『22年目
の告白』などの入江悠監督が原点に戻ったと自称する作品。
原点に戻ったというからてっきり『サイタマノラッパー』か
と思いきや、これは飛んでもなく骨太の作品だった。物語の
背景は大型ショッピングモールの誘致を巡る田舎町の政争。
そこに暴力的な父親に育てられた3兄弟の確執が絡む。因に
原点というのは、監督の出身地の埼玉県深谷市が舞台のよう
だ。出演は大森南朋、今年1月29日題名紹介『コスメティッ
クウォーズ』監督の鈴木浩介、桐谷健太。他に篠田麻里子、
菅田俊、嶋田久作らが脇を固めている。篠田の女っぷりも良
い。公開は12月9日より、東京はテアトル新宿他で全国順次
ロードショウ。)
『バリー・シール アメリカをはめた男』“American Made”
(アメリカCIAと南米の麻薬組織を手玉に取ったという男
の実話に基づくとされる作品。民間航空会社のパイロットが
その操縦技術を買われてCIAにリクルートされる。その任
務は、紛争地域を低空で飛行して反政府軍の基地などを撮影
するというもの。ところが技術抜群の彼の腕はそれだけでは
済まなかった。任務の傍ら麻薬の密輸に手を貸した男は巨万
の富を築いて行くが…。背景にはさらに大きな政治スキャン
ダルなどもあり、いろいろ複雑な物語が展開される。出演は
トム・クルーズ。飛行機好きが高じた作品にも見える。監督
は、2014年6月紹介『ALL YOU NEED IS KILL』などのダグ・
リーマンが担当。公開は10月21日より、東京はTOHOシネマズ
新宿他で全国ロードショウ。)
『ロキシー』“Vincent N Roxxy”
(道端で暴漢に襲われていた女を男が助ける。そして組織に
追われているらしい女を男は故郷の家に連れて行き、一時は
彼の兄とその妻らとの平穏な時が訪れるが…。物語にはちょ
っとした捻りもあるが、全体は追われる女と男の束の間の物
語が描かれる。ただしその展開はかなり強烈なお話だ。出演
は、2013年8月紹介『ある愛へと続く旅』などのエミール・
ハーシュと、2015年6月紹介『マッドマックス 怒りのデス
・ロード』などのゾーイ・クラビッツ。原案と脚本、監督は
2013年に“Devil in My Ride”というホラー作品を監督以来
2作目のゲイリー・マイクル・シュルツが担当。中々ハード
な作品だ。公開は10月21日より、東京は新宿シネマカリテ他
で全国順次ロードショウ。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。


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井口健二