井口健二のOn the Production
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2017年08月27日(日) トモダチゲーム−劇場版FINAL−、じんじん〜其の二〜、シンクロナイズド・モンスター、セブン・シスターズ

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『トモダチゲーム−劇場版FINAL−』
山口ミコト原作、佐藤友生作画によるコミックスの映画化で
2017年4月紹介『トモダチゲーム・劇場版』の続き。
前回も書いたが、『劇場版』に先立つ『テレビ版』でテーマ
とされたゲームはコックリサン、前作『劇場版』はスゴロク
だったが、今回はカクレンボ。いずれも子供の遊戯が恐怖の
推理ゲームに結び付けられる。
しかも最初のコックリサンはそれなりにホラーのテーマとも
言えるが、続くスゴロクとカクレンボはいずれも正しく子供
の遊戯で、この展開は中々考えられている。その上で、前回
のスゴロクではCGIが使われたが、今回は実写が中心とい
うのも洒落た展開だ。
そしてそのカクレンボを、チーム対抗のゲームとするための
本作特有のルールがかなり巧みに考えられていて、さらに謎
解きやどんでん返しなど、それなりに納得の行く心理劇とし
て描かれているのも見事だった。
なお前の紹介では『劇場版2』と書いたが、本作でシリーズ
は完結のようだ。

出演は、前作と同じ吉沢亮、内田理央、山田裕貴と、さらに
大倉士門、根本凪らで、脚本と監督も永江二朗が担当した。
正直なところ、コミックスの映画化では設定が穴だらけだっ
たり、展開に矛盾があったり、ここで紹介するときにかなり
悩んでしまう作品も多くて、これが最近の若者の好みか…?
と逃げることもあったが、本作に関してそれは無かった。
それに上記のように若者向けの題材からスタートして、そこ
からCGIアクションに展開し、最後をこの様な心理劇で締
めくくるというのは、ある種の確信犯的な構成ではないかと
も思ってしまうところだ。
これで今後にこういう作品が増えてきたら、それこそが本作
の狙いなのではないか、とも思ってしまう。とまあここまで
書くのは考え過ぎかな…。でもそれくらいには楽しめる作品
だった。
ただ、前回も展開されたCGIを使った演出や、本作でも登
場するワープのような展開は、本作の背景となる世界の意味
が明白ではないもので、その点に関してはまだ疑問の残る作
品になっている。
本作では一応の完結編となっているが、原作のコミックスは
まだ連載中のようだし、本作の最後に示唆されるところも期
待したいものだ。

公開は9月2日より、東京はシネリーブル池袋他で全国順次
ロードショウとなる。

『じんじん〜其の二〜』
俳優大地康雄の企画主演で、2013年に第1作が公開された大
道芸人を主人公にした人情喜劇シリーズの第2弾。
前作の試写も観ているが、その時は紙面の容量が足りなくて
紹介を割愛したようだ。ただ当時の感覚としては、作品自体
が『男はつらいよ』の亜流のようにも感じられたし、テーマ
的に次は無いように感じたことも事実だ。しかし今回は独自
性を持って第2弾が登場した。
その舞台は、前作の北海道上川郡剣淵町から一気に南下した
神奈川県秦野市。その祭りに招かれ大道芸を披露した主人公
は、そのまま近くの家に間借りして居残っている。そしてそ
の町で、都会を逃れてやってきた若者や、心を閉ざした少女
との交流が描かれる。
因に前作の剣淵町は「絵本の里」として知られており、作品
のテーマも絵本に纏わるものだったが、それに対して今回の
秦野市は林業と「名水の里」だそうで、その特性を活かした
物語が展開されている。

共演は福士誠治、鶴田真由、菅野莉央、岡安泰樹。他に永島
敏行、苅谷俊介、津田寛治らが脇を固めている。また、佐藤
B作と中井貴惠が前作に引き続き登場している。監督も前作
に続いての山田大樹が担当した。
僕自身が近隣平塚の出身なもので、本作はいろいろ興味深く
鑑賞した。ただ自分の印象として平塚の北側で厚木と伊勢原
にはイメージが湧くが、秦野というとあまり記憶するものが
ない。しかし本作を見ていて想像以上に緑が豊かで、水も豊
かなのに認識を新たにした。
前作も北海道の大草原が背景だったが、そんな緑溢れる大自
然を背景にするところが本作の特徴と言えるかもしれない。
そして前作に続いて絵本が登場するが、本作ではちょっとそ
の顛末が弱いかな? ここをもっと描き込めば、シリーズの
テーマとしても生きてくるように感じられた。
それと最初に描かれる祭りのシーンで主人公の後ろに置かれ
たテントにはニヤリとした。実はそこに自分が応援している
湘南ベルマーレのロゴが見えたもので、確かにこの祭りには
出店のインフォメーションもされていたものだ。
しかも映画のエンドロールでは制作協力としてクレジットも
されていた。これは映画の宣伝にも一役買わねばと思ったも
のだ。

公開は9月2日より、東京での上映は発表されていないが、
秦野市の近隣ではイオンシネマ新百合ヶ丘、イオンシネマ海
老名、イオンシネマ茅ヶ崎などで上映され、以後、全国順次
ロードショウとなる。

『シンクロナイズド・モンスター』“Colossal”
2012年12月紹介『レ・ミゼラブル』でオスカーを受賞した、
2014年11月紹介『インターステラー』などの女優アン・ハサ
ウェイが製作総指揮と主演を務め、2016年のオースティン・
ファンタスティック映画祭で最優秀賞に輝いた怪獣映画。
主人公はニューヨークで失職中の女性。夜な夜な泥酔して、
遂に同棲相手から部屋を追い出される。そして失意で故郷に
舞い戻った日、遠く離れた韓国のソウルで怪獣が暴れ出す。
その実況を見ていた主人公はある事実に気付く、それは怪獣
の動きが彼女の動作にシンクロしていることだった。
それに気付いた彼女は、最初こそ舞い上がって韓国を混乱に
陥れるが、徐々に世界を救う使命に目覚めて行く。ところが
そこにとんでもない事態が巻き起こる。果たして彼女は世界
を救えるのか?

共演は、2011年9月紹介『モンスター上司』などのジェイス
ン・サダイキス、2014年公開『ザ・ゲスト』などのダン・ス
ティーブンス。脚本と監督は、スペイン出身で、2014年10月
紹介『ブラック・ハッカー』などのナチョ・ヴィガロンドが
手掛けている。
試写会には、上映ぎりぎりに来て、上映が始まっても世間話
を続けて注意を受けるようなご婦人方も来場していて、どう
いう関係者なのか気になったが、多分その人たちには理解を
超える作品だったのだろう。
そこで試写後には「これは酔っ払いの幻想だ」とか、「アル
コール依存症への警鐘」などという発言も聞かれたが、この
監督にそのような考えがあるとは到底思えない。この映画は
単なる馬鹿話、法螺噺なのだ。
とは言えアメリカの片田舎にある公園の砂場とソウルのビジ
ネス街が次元を超えて繋がっているのかな。そんな解釈は出
来るが、映画の中での説明は一切なし。監督はそんなことは
関係なく、とにかく楽しんでもらおうとしているのだ。
ただこういう作品は、監督に力量がないとなかなかうまくい
かないものだが、それを強引に映画にしてしまう手腕は称賛
されるべきものだろう。その辺が理解されての上記の受賞だ
と思えるものだ。
ただし映画では後半に別の巨大物も出てくるのだが、怪獣と
その巨大物は本来なら日本映画のお家芸のはずのもの。とこ
ろが本作の舞台が韓国というのは解せないところで、これは
本当は日本で撮りたかったが、叶わなかったのかな?
そんな勘繰りもしてしまう作品だった。それにしても天下の
オスカー女優が良くやったものだ。

公開は11月3日より、東京は新宿バルト9、ヒューマントラ
ストシネマ渋谷他で、全国順次ロードショウとなる。

『セブン・シスターズ』“What Happened to Monday?”
2017年4月紹介『ラプチャー 破裂』などのノオミ・ラパス
主演による近未来SF作品。
物語の背景は、殆んどの子供が双子や三つ子以上で誕生して
人口が過剰になってしまった世界。そこで政府は一人以上の
子供を制限し、残る子供は冷凍睡眠にしていつか子供が減り
始めた時の備えにするとの法律を発令する。
そんな中で主人公は、何と七つ子で生まれた女性。しかし父
親は法律に従わず、七人姉妹をそのまま育てようとする。そ
の方法は、娘たちに曜日を振り分け、その曜日の一人だけが
外に出て、他は家の中に隠れているというものだった。
そして年月が過ぎ、娘たちが年ごろに育った時、事件が起き
る。果たして彼女たちの運命は? そして政府が掲げる政策
の裏に潜む真実とは…。

共演は、2017年4月紹介『ディストピア パンドラの少女』
などのグレン・クローズ、同年2月紹介『グレート・ウォー
ル』などのウィレム・デフォー、それに同年7月紹介『ザ・
マミー 呪われた砂漠の王女』などのマーワン・ケンザリら
が脇を固めている。
脚本は、2013年公開『バーニング・クロス』などのケリー・
ウィリアムソンと、テレビアニメ版の“Wolverine and the
X-Men”などを手掛けたマックス・ボトキン。監督は、ノル
ウェー出身で2009年12月紹介『処刑山』などのトミー・ウィ
ルコラがハリウッドデビューを飾っている。
人口過多の時代が背景のSFでは、ハリー・ハリスンの原作
“Make Room! Make Room!”を映画化した1973年公開『ソイ
レント・グリーン』が知られるし、それが曜日に振り分けら
れている物語にはフィリップ・ホセ・ファーマーが1985年に
発表した小説“Dayworld”もある。
そんな点を踏まえて本作を見ると、全体的に詰めが甘いと言
えるかな。人口過多なのに空き部屋があるとか、街中も左程
人間が多いようには見えない。この辺は政府の政策が功を奏
しているのかもしれないが、それにしても長年に亙って父親
が7人分の食料をどう工面したのかも疑問に感じる。
とは言うものの、女優にとって7人の人格を同時に演じられ
るのが魅力なのは間違いない。ラパスはそれを楽しんでいる
ように見えるし、それで本作の製作の意味はあったと言える
だろう。
ただし、映画中の人死にの多さは多少辟易もしたところで、
監督の以前の作品から仕方がないとは言え、もう少し何とか
ならなかったか、とは思えたところだ。

公開は10月21日より、東京は新宿シネマカリテ他で全国順次
ロードショウとなる。

この週は他に
『ポルト』“Porto”
(2016年に他界したアントン・イェルチンの主演で、ポルト
ガル第2の都市を舞台にしたラヴストーリー。主人公は家族
に勘当されてこの地に流れ着いたアメリカ人。町をふらつい
ていた彼が、過去に関係を結んだことのあるフランス人女性
と再会して物語が始まる。彼女は考古学者の教授と共にこの
地にやってきたのだが…。映画は3つのパートに分れて描か
れるが、その関係性は不明瞭で結局物語はプレス資料を見て
判読した。でもポルトの街が見事に美しく描写され、それを
観ているだけでも満足の行く作品と言える。共演は初主演の
ルーシー・ルーカス。監督はドキュメンタリー出身ゲイブ・
クリンガーの初劇映画となっている。公開は9月30日より、
東京は新宿武蔵野館他で全国順次ロードショウ。)
『MASTER マスター』“마스터”
(イ・ビョンホンとカン・ドンウォンの共演で、詐欺師と捜
査官の攻防を描いた作品。イが扮するのは金融投資会社のカ
リスマ的トップ。派手なパフォーマンスで金を集め、その投
資先は外れがない。しかしその実態は賄賂で切り抜けている
ものだった。その尻尾をカン扮する捜査官が苦闘の末、遂に
掴むが…。舞台は国外にも広がり、大規模な金融詐欺が繰り
広げられる。脚本と監督は、2014年8月紹介『監視者たち』
などのチョ・ウィソク。詐欺事件を描くが内容は頭脳戦だけ
でなく、カーチェイスから肉体派アクションまで、正にエン
ターテインメントの塊という作品だ。公開は11月10日より、
東京はTOHOシネマズシャンテ他で全国ロードショウ。)
『ミスター・ガガ 心と身体を解き放つダンス』
                     “Mr. Gaga”
(イスラエルに本拠を置く「バットシェバ舞踊団」を率いる
振付家オハッド・ナハリンを描いたドキュメンタリー。彼が
開発したGAGAと呼ばれるメソッドと、彼の振付けの舞台が紹
介される。今回は舞踊評論家の解説付き上映を観せて貰った
が、作品に出てくる舞台やリハーサルの映像は今まで門外不
出だったそうで、かなり貴重な映像が登場しているようだ。
ただしその解説は上映後に行われたものだが、僕は観ている
だけで何か心を動かされる、物凄い物を観ている感じはして
いた。監督は、イスラエルで多数のドキュメンタリーを制作
しているトメル・ハイマン。本作を含め多くの受賞にも輝く
名手の作品だ。公開は10月14日より、東京は渋谷シアター・
イメージフォーラム他で全国順次ロードショウ。)
『鉱ARAGANE』
(2009年9月紹介『倫敦から来た男』などで知られるタル・
ベーラ監督が創設した映画学校で学んだ日本人女性監督の小
田香が、ボスニア・ヘルツェゴビナの炭鉱の姿を描いたドキ
ュメンタリー。タル・ベーラが監修を務め、2015年山形国際
ドキュメンタリー映画祭でアジア千波万波部門特別賞を受賞
した。ドキュメンタリーと言っても社会派的な問題意識を持
ったものや歴史に残す記録を撮ったようなものではなく、地
中深くでの作業の様子が、ある意味の映像美的に撮られた作
品。それが採炭現場の騒音に彩られている。その映像や騒音
に圧倒され、それだけが心に残った作品と言えそうだ。公開
は10月21日〜11月3日に、東京は新宿K's cinemaにて連日
21時からのレイトロードショー。)
『月と雷』
(直木賞作家・角田光代の小説を、2016年6月5日題名紹介
『花芯』などの安藤尋監督で映画化した作品。幼い頃に母親
が家出して家族というものを知らずに大人になった女性が、
婚約者もできてようやく家族を持とうとしたその時、父親の
愛人の息子と称する若者が現れ、心が乱されて行く。主演は
2013年『ガッチャマン』などの初音映莉子。その脇を高良健
吾、村上淳、草刈民代らが固めている。安藤監督の前作もそ
うだったが、典型的な女性映画と言えるのだろう。男性とし
てはそれ以上は何も言えない。ただしR15+指定、上映時間
2時間の作品だ。公開は10月7日より、東京はテアトル新宿
他で全国ロードショー。)
『人生はシネマティック!』“Their Finest”
(2017年8月6日題名紹介『ダンケルク』と同じ第2次大戦
下のイギリスを描いた作品。しかも本作では、その撤退作戦
を映画化しようとする映画人の悪戦苦闘が描かれる。そこに
は戦意高揚のための方針や、アメリカを考慮した要請など、
様々な要因が加わる。それがイギリス映画特有のユーモアを
込めて描かれている。特にノーラン作品を見た後で鑑賞する
と背景の事情も判り易く、当時の状況の理解も深まる作品に
なっていた。出演は、2017年4月紹介『ディストピア』など
のジェマ・アータートン。他にサム・フランクリン、ビル・
ナイらが脇を固めている。監督は2010年1月紹介『17歳の肖
像』などのロネ・シェルフィグ。公開は11月11日より、東京
は新宿武蔵野館他で全国ロードショウ。)
『アトミック・ブロンド』“Atomic Blonde”
(オスカー女優のシャーリーズ・セロンが、自らの製作主演
でMI6の女スパイに扮するアクション作品。舞台は1989年
冷戦末期のヨーロッパ。スパイ網の極秘情報を掴んだ捜査官
が殺され、その真相究明のため主人公は壁の崩壊直前のベル
リンに向う。しかしそこには各国のスパイが横行し、さらに
二重スパイの疑いも持たれていた。共演はジェームズ・マカ
ボイ、2017年7月紹介『ザ・マミー』などのソフィア・ブテ
ラ。さらにジョン・グッドマンらが脇を固めている。監督は
2010年12月紹介『トロン』などのスタントマンで、本作で長
編デビューを飾ったデヴィッド・リーチ。原作はグラフィッ
クノヴェルだそうで、それらしい強烈なアクションが展開さ
れる。公開は10月20日より全国ロードショウ。)
『氷菓』
(米澤穂信原作の学園ミステリー「古典部シリーズ」第1話
の映画化。信頼する姉の指示で廃部寸前の「古典部」に入部
した高校新入生の主人公が、先に部室に居た女子生徒と出逢
い、彼女が提示する謎を持ち前の推理力で解いて行く内に、
過去の「古典部」に起きた伝説の出来事を紐解いて行く。基
本的に殺人などの大げさな話ではないが、1970年前後の学園
紛争時代を体験している自分には懐かしさも感じられる作品
だった。出演は、山崎賢人、広瀬アリス、本郷奏多、小島藤
子、岡山天音。今旬な若手の共演になっている。脚本と監督
は、2013年11月紹介『バイロケーション』などの安里麻里。
本作もトリッキーな話だが、それを巧みに映像化している。
公開は11月3日より全国ロードショウ。)
『ALL EYEZ ON ME』“All Eyez on Me”
(1996年に路上で銃撃され、25歳で亡くなったラッパー2PAC
ことトゥパック・シャクールを描いた伝記映画。ジャクール
は元々母親が黒人過激派ブラックパンサーの一員だったそう
で、そんな家庭環境の中でラッパーを志して1991年にソロデ
ビュー。その過激な社会派の歌詞内容で一躍スターダムにの
し上がる。その後は映画にも出演するなど華々しい活躍とな
るが、レコーディング中にスタジオに押し入った強盗に5発
の銃弾を受けるなど、壮絶な人生を歩むことになる。出演は
父親が2PACのアルバムに参加したという俳優のディミートリ
アス・シップ Jr.。監督はヒップホップ系の短編などを数多
く手掛けるベニー・ブームが担当した。公開は12月より、東
京は新宿バルト9他で全国ロードショウ。)
『シネマ歌舞伎 四谷怪談』
(歌舞伎の舞台を映画館で手軽に楽しめる「シネマ歌舞伎」
の第28弾。「シネマ歌舞伎」は2012年2月に『高野聖』など
も紹介しているが、本作は歌舞伎座ではなく1994年から渋谷
のシアター・コクーンで上演されている「コクーン歌舞伎」
の模様が収録されている。従ってこの舞台では、かなり斬新
な演出も登場するもので、それは作品を見てのお楽しみだ。
内容は鶴屋南北原作の古典的なものだが、本来のお岩=伊右
衛門の物語ではなく、お袖=権兵衛が中心とされており、そ
の点でも目新しい感じがした。出演は、中村獅童、中村勘九
郎、中村七之助。他に笹野高史、大森博史、バレエダンサー
の首藤康之など、「コクーン歌舞伎」特有の異色キャストも
登場する。公開は9月30日より、全国ロードショウ。)
『永遠のジャンゴ』“Django”
(第2次大戦前後のヨーロッパで活躍したギタリスト、ジャ
ンゴ・ラインハルトを描いた伝記映画。ロマ(ジプシー)の
ジャンゴはナチスからの迫害を受け、その中での様々な出来
事が描かれる。ナチスの迫害というとユダヤ人に対するもの
が主だが、ロマに対する迫害も相当だったもので、本作では
その実態が明らかにされる。また劇中では、ラインハルトが
作曲した「黒い瞳」を始めとする数々の名曲も演奏され、そ
の超絶なテクニックのギター演奏を再現したシーンも含めて
素晴らしい音楽映画にもなっている。監督は2013年『大統領
の料理人』などの脚本を手掛けたエチエンヌ・コマールのデ
ビュー作。公開は11月25日より、東京はヒューマントラスト
シネマ有楽町他で全国順次ロードショウ。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。


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井口健二