井口健二のOn the Production
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2017年08月13日(日) ホリデイ・イン、恋と嘘

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『ホリデイ・イン』
 “Holiday Inn, the New Irving Berlin Musical: Live”
アーヴィング・バーリンの作詞作曲、フレッド・アステア、
ビング・クロスビー主演により1942年製作されたハリウッド
ミュージカルがブロードウェイで舞台化され、その舞台面を
撮影した作品が映画館に登場する。
物語の背景は1940年代のアメリカ東部。主人公は作詞作曲の
才能に恵まれた男性、彼はダンスの上手い親友と組み、さら
に女性を加えた3人組でニューヨークのナイトクラブに出演
していた。しかしその生活に見切りをつけコネチカット州に
農場を買って引退を決意する。
斯くして希望の農園経営を始めた主人公だったが、成果はな
かなか上らず、失意にも似た日々が続いていた。そんな主人
公の許に活発な女性教師が現れ、彼女の協力で農園をホテル
に改築、さらにそこで祝日ごとのショウの上演を始めると、
それが成功して盛況となる。
一方、ダンサーの親友はハリウッド進出を目論んでいたが、
ニューヨーク時代の女性には去られていた。そこで主人公の
噂を聞きつけたダンサーはホテルを訪れ、女性教師とダンス
の相性が良いことに気付く。そして女性教師にハリウッド進
出の話を持ち掛けるが…。
こんな物語に、1942年のオリジナルで発表され、後に題名に
冠された映画作品で一世風靡し、今ではクリスマスソングの
定番とまで言われる「ホワイト・クリスマス」。さらには、
こちらも後に映画の題名になる「イースター・パレード」な
どの楽曲が挿入されて、華やかな物語が展開される。
さらに本作の舞台化では、1942年のオリジナルには無いが、
同じくバーリンの作詞作曲により1935年製作の映画『トップ
・ハット』で歌われた「チーク・トゥ・チーク」なども歌と
ダンスで披露され、正に作曲家の全てが見られる作品になっ
ている。
1942年作はバーリンのオリジナルアイデアに基づくとされて
おり、物語は正直に言ってベタなものだけれど、古き良き時
代というのか、ハリウッドが夢工場と呼ばれるのにピッタリ
という感じの素敵な作品になっている。ド派手なアクション
ではないが、見事な歌とダンスが堪能できる作品だ。

出演は、ブライス・ピンカム、コービン・ブルー、ローラ・
リー・ゲイヤー、ミーガン・ローレンス。他にミーガン・シ
コラ、モーガン・ガオらが脇を固めている。
キャストのほとんどは映画では馴染みがないが、親友のダン
サー役を演じたコービンは2008年11月紹介『ハイスクール・
ミュージカル/ザ・ムービー』にも出ていた。
公開は11月10日より、東京は築地東劇にて5日間限定で上映
される。
なお本作の公開では「松竹ブロードウェイシネマ」と称され
ており、今後もこの様な作品の公開が期待できそうだ。

『恋と嘘』
スマホのマンガアプリで連載され、2017年夏にはテレビアニ
メ化もされたというムサオ原作マンガの実写映画化。
超少子化時代を迎えて政府が結婚相手の斡旋を始めたという
社会が背景の、これも近未来SFと言えるのかな…?
主人公は16歳の誕生日を間近にした女子高生。その誕生日に
は、政府から結婚相手が通知される。それは罰則規定などが
あるものではないが、相性なども加味された理想の相手のは
ず。だから多くの国民はその斡旋を尊重していた。
そんな彼女には何でも話せる幼馴染みの男子がいて、誕生日
の前日、その幼馴染みと斡旋相手との出会いのリハーサルを
していた時、午前0時を過ぎて彼女の前に現れたのは大病院
の跡取り息子だった。
その息子は彼女を豪華なデートに誘い、高価なプレゼントも
贈ってくる。しかしその態度はどこか淡泊だった。それでも
大金持ちの相手に舞い上がったりもする主人公だったが…。
やがて幼馴染みにも通知の日が来る。

出演は、2016年11月27日題名紹介『A.I. love you』などの
森川葵、同年2月紹介『あやしい彼女』などの北村匠海、同
年8月21日題名紹介『イタズラなKiss』などの佐藤寛太。他
に温水洋一、中島ひろ子、三浦理恵子、木下ほうからが脇を
固めている。
監督は、2013年9月紹介『ルームメイト』などの古澤健。脚
本は2015年『ヒロイン失格』などの吉田恵里香が担当してい
る。
後半にはかなりの捻りもあって、映画としてはそれなりの作
品になっていると思う。原作とは登場人物の配置なども変え
ているということなので、脚本にはかなり手が入れられたも
ののようだ。
とは言うものの本作の設定にはかなり無理があって、実は辻
褄の合わない点が生じている。しかもそれが根幹の設定だか
ら、これは脚本家も手を出せなかったのかな。そのための言
い訳的な台詞も有ったりはするが…。
いや普通に考えてこれは変だと思えるのだが、最近の読者は
この程度の矛盾にも気付かないのだろうか。そこに脚本家の
努力が見えるのも痛々しいところだ。映画ファンならこの辺
は見抜けるよね…?
問題は病院の御曹司が何時通知を受け取ったかのなのだが。
幼馴染が受け取るのは16歳の誕生日のようだし…。

公開は10月14日より、東京はTOHOシネマズ新宿他で全国ロー
ドショウとなる。

この週は他に
『ナインイレヴン』“9/11”
(情報解禁前のため割愛)
『望郷』
(2012年10月紹介『北のカナリアたち』などの湊かなえ原作
短編集からの映画化。元は6編からなる作品の中から子供の
頃の遊園地への憧れを綴る「夢の国」と、家庭を顧みなかっ
た父親の真意を描く「光の航路」の2編が、貫地谷しほりと
大東駿介の主演で映像化されている。原作者の湊はイヤミス
の旗手のように言われているが、今回の映画化された一方に
はミステリーの趣もあり、他方はある秘密の謎解きを描いた
もの。それが現在に反映されているのが湊の真骨頂だろう。
両作共にイヤミスではない。監督は2017年5月28日題名紹介
『ハロー・グッバイ』などの菊地健雄。脚本は2011年4月紹
介『アベック・パンチ』などの杉原憲明。公開は9月16日よ
り、東京は新宿武蔵野館他で全国順次ロードショウ。)
『アメイジング・ジャーニー 神の小屋より』
                    “The Shack”
(キャンプ場の湖でボートが転覆。乗っていた長男長女は無
事だったが、それで目を離した隙に末娘が行方不明になる。
やがて付近の山小屋で末娘のドレスが発見され、警察は連続
誘拐殺人犯の犯行と断定するが、遺体は発見されなかった。
そして年月を経ても癒えない傷を負った一家の父親に「あの
山小屋へ来い」という謎の招待状が届く。そしてその山小屋
に向った父親は…。主演はサム・ワーシントン、オクタビア
・スペンサー、ラダ・ミッチェル。ファミリードラマの体裁
だが、内容的には最近時々見るキリスト教の教義に従った作
品と言える。ただし以前の作品ではここで奇跡が起きたが、
そこまでは描かない節度はあったようだ。公開は9月9日よ
り、東京は新宿バルト9他で全国順次ロードショウ。)
『アナベル 死霊人形の誕生』“Annabelle: Creation”
(2013年9月及び2016年6月紹介の『死霊館』では、除霊師
夫妻が管理する死霊館の中央に置かれ、2015年『アナベル
死霊館の人形』でもその恐怖が描かれた史上最恐と言われる
悪魔人形アナベルの、その誕生の経緯を描いた作品。描かれ
る因縁話は誤解や行き違いが重なって行くものだが、それな
りの道理はあってジャパニーズホラーのように理不尽でない
のは救いかな。でも恐ろしさは抜群のものだ。因に人形は実
在するとされている。監督は2016年7月10日題名紹介『ライ
ト/オフ』などのデビッド・F・サンドバーグ。前作と同様
『ソウ』シリーズや『死霊館』などのジェームズ・ワンが製
作を担当している。公開は10月13日より、東京は新宿ピカデ
リー他で全国ロードショウ。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。


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