井口健二のOn the Production
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2017年07月30日(日) 仮面ライダー/スーパー戦隊、DARK STAR H.R.ギーガーの世界(仮)

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『劇場版仮面ライダーエグゼイド
               トゥルー・エンディング』
『宇宙戦隊キュウレンジャーTHE MOVIE
              ゲース・インダベーの逆襲』
毎年夏の恒例『仮面ライダー/スーパー戦隊』の2本立て。
どちらもテレビシリーズで放映中の物語からスピンオフで、
基本的に放送で進行中の物語には影響しないように作られて
いる。
そして本作の「仮面ライダー」では、主人公の勤める病院に
入院中の少女を巡って、彼女の脳内世界にVRでライダーた
ちが潜入して敵と戦う展開になっている。またその潜入の手
段としてソニーが新発売するVR用のヘッドマウントディス
プレイが、特別仕様で登場する。
因にこのヘッドマウントディスプレイは、6月に報告した記
者会見の際に現物を見せて貰ったが、ライダーの仮面という
よりは、スーパー戦隊のヘルメットに近い感じなのは少し混
乱してしまうところではある。でもこれで「仮面ライダー」
のゲームができたら面白いとは思えた。

出演は、テレビシリーズのレギュラーに加えて、元モーニン
グ娘。の藤本美貴、子役の森山のえる。さらに宇野祥平、ブ
ラザートム、堂珍嘉邦、博多華丸らが脇を固めている。
一方、「宇宙戦隊キュウレンジャー」は、突如現れた巨大彗
星の地球衝突が刻一刻と迫り、そんな事態の中で彗星を要塞
化し、神の力を手に入れようとする敵との戦いが繰り広げら
れるものだ。
登場する彗星要塞や敵キャラクターの名前がいろいろ想起さ
せるのはご愛嬌で、それはかなり大人向けの感じもするが、
この辺に子供は反応してくれるのかな? いずれにしてもお
笑い芸人たちの担当だから、それでもいいのだろう。

出演は、テレビシリーズのレギュラーに加えて、「ロンドン
ブーツ1号2号」の田村亮。またレイザーラモンHGとRG
が敵キャラクターの声を担当している。
どちらもお子様向けだし、テレビシリーズを観ていないと判
り難いところも多々ある作品だが、シリーズとの整合性を取
りつつ独立した物語を作るのも大変なことだし、映画版らし
くそれなりのシーンも設ける。子供向けとは言えサーヴィス
精神も旺盛な作品だ。

公開は8月5日より、2本立ての全国ロードショウとなる。
出来ることならこの映像をプラネタリウムで観てみたい。


『DARK STAR H.R.ギーガーの世界(仮)』
             “Dark Star: HR Gigers Welt”
1979年『エイリアン』で一躍有名になったスイス人の画家・
デザイナーを取材したドキュメンタリー。
取材は画家の自宅の外観から始まるが、都会のど真ん中にあ
りながら廃屋と見紛うようなその風情は、ギーガーそのもの
というような感じの導入となっている。
そしてその屋内では棚に頭蓋骨などが並び、その中でも彼が
6歳の時に最初に手にした頭蓋骨の話などが彼の作品の原点
となったようだ。そして晩年の妻や、離婚後も交流が続いた
『エイリアン』当時の妻、さらにその前に恐らく最愛だった
恋人との話など女性を巡る話が意外と重点的に描かれる。
そこに様々な彼の作品が挿入されてい行く形式で、彼の作品
を堪能することが出来ると共に、彼の人となりも巧みに描か
れている作品だ。正直にはもっと奇矯な人かと想像していた
が、案外常識のある人物だった。
そして後半では、彼の両親の話や、自宅の庭に作った長年の
夢だった「幽霊列車」の記録映像など、また「ギーガーズ・
バー」やサンジェルマン城を買い取って完成させた個人美術
館など、成功の証のような場面も描かれる。
さらにはギーガーの友人でもある医師による精神分析的な証
言や、企画展を開いた美術館の学芸員による解説なども織り
込まれて、ギーガー自身を網羅的に知ることができるように
もなっている。
そして本作は、2014年5月12日に亡くなった画家の死の直前
まで取材されていたとされ、ウィキペディアに書かれた死因
と映画の最後のシーンの描写が衝撃的だった。
因にギーガーは『エイリアン』でオスカーも受賞したが、そ
の前に映画との関わりがあったことは2014年3月紹介『ホド
ロフスキーのDUNE』に描かれたもの。本作ではその点には触
れられていないが、『エイリアン』に関わるインタヴューの
中にダン・オバノンの名前が出てきたことは、その示唆には
なっていたものだ。
その『エイリアン』に関しては、当時の妻が撮影したメイキ
ングの映像などもあって、それは映画ファンとして興味深い
ものだった。
ウィキペディアによると彼の死は事故によるもののようで、
従って本人にその意図があったかどうかは判らないが、本作
は画家の遺言のようでもあって、生と死とそれらを繫ぐ生殖
が作品のテーマだった画家のドキュメンタリーは、見事にそ
の姿を描いたと言えそうだ。

公開は9月2日より、東京はヒューマントラストシネマ渋谷
他で、全国順次ロードショウとなる。

この週は他に
『オン・ザ・ミルキー・ロード』“On the Milky Road”
(1995年『アンダーグラウンド』などのエミール・クストリ
ッツァ監督による2009年『マラドーナ』『ウェディング・ベ
ルを鳴らせ!』以来の新作。戦場で最前線の兵士に牛乳を配
達する男=監督主演が、ふと出会ったイタリア女=モニカ・
ベルッチによって人生を狂わせる。女のためだけの理由で村
が総攻撃されるなど、かなり戯画化された戦争喜劇。公開は
9月15日より、東京はTOHOシネマズシャンテ他で、全国順次
ロードショウ。)
『おクジラさま ふたつの正義の物語』
(2013年2月紹介『ハーブ&ドロシー』などの佐々木芽生監
督が、2009年10月20日付「東京国際映画祭」で紹介『ザ・コ
ーヴ』で題材にされた和歌山県太地町を取材した作品。その
後に現地に来て反対運動を続けるGreenpeaceの親子や、現地
に入り込んで取材を続けたアメリカ人記者などが中心に紹介
される。ただ具体的な内容は上記の作品ですでに描かれたも
のと然程変わらず、一方、Greenpeace親子や記者のその後が
曖昧など、新たものはあまりなかった。問題を蒸し返すには
これが適当なのかも知れないが。公開は9月9日より、東京
は渋谷ユーロスペース他で全国順次ロードショウ。)
『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1』
(2005年〜06年に放送されたテレビシリーズからの劇場版。
異星生物によって地表が覆われ、宇宙への移住を余儀なくさ
れた人類が帰還し、異星生物の殲滅を図るが…。という設定
で始まるバトルアニメーション。現時点が何時かも判らない
ままフラッシュバックが目まぐるしく展開され、オリジナル
を知らないと物語を把握するだけで精一杯だった。でもまあ
戦闘シーンは迫力があるし、オリジナルのファンも多い作品
だし、最近の観客はこれでも満足だろう。公開は9月16日よ
り、東京は新宿バルト9他で全国ロードショウ。)
『NELLY ネリー・アルカン愛と孤独の淵で』“Nelly”
(2009年に36歳で自死したカナダ人作家の生涯を本人の著作
などに基づいてドラマ化した作品。主人公は元娼婦であり、
その素性を隠していた訳ではないが、周囲の目や軋轢などで
死の道を選んでしまう。若い女性には有り勝ちの物語のよう
にも見えるが、自作の映画化でスターとしてデビューするな
どの華やかさが、本作を支えているとも言える。因に同じ題
材の舞台劇もあり、そちらはかなり複雑な構成のようだが、
本作は判り易いストレートな作品になっている。監督は本作
が第3作のアンヌ・エモン。出演は2015年“Endorphine”と
いう作品でカナダスクリーンアワードの助演賞候補になった
マイリーン・マッケイ。公開は10月に東京はYEBISU GARDEN
CINEMA他で全国順次ロードショウ。)
『追想』“Le vieux fusil”
(ロベール・アンリコ監督、フィリップ・ノアレ、ロミー・
シュナイダーの共演による1975年製作の作品が、ディジタル
リマスターされて再上映される。物語の舞台は1944年。終戦
間近のナチス兵によって妻子を奪われた男性医師が、壮絶な
復讐劇を展開する。医師の持ち物でもある古城の隠し通路な
どいろいろな仕掛けがスリリングなドラマを構成し、そこに
平和な日々の記憶がフラッシュバックで挿入される。その巧
みさがさすが名匠の作品という感じでもあった。公開は9月
9日より、東京は新宿シネマカリテ他で全国順次ロードショ
ウ。)
『三つの光』
(深夜の倉庫街の一角にある録音スタジオを舞台に、日々の
生活に疲れた3人の女性が心をぶつけ合い、再生して行く姿
を描いた作品。映画監督山本政志が主宰する映画塾「シネマ
☆インパクト」の製作で、今年のベルリン国際映画祭フォー
ラム部門にも出品された。監督は2008年『症例X』でPFF
アワード審査員特別賞を受賞した吉田光希。出演は池田良、
鈴木士、小宮一葉、真木恵未、石橋菜津美。劇中では女優た
ちによる音楽のセッションなども披露される。物語は監督と
出演俳優たちとの対話によって形づくられたとのことで、そ
のリアリティが特に若い女性には共感を呼びそうだ。公開は
9月16日より、東京は新宿K’cinema他で全国順次ロードシ
ョウ。)
『我は神なり』“사이비”
(2017年7月紹介『新感染 ファイナル・エクスプレス』の
ヨン・サンホ監督によるアニメーション作品。ディズニーや
ジブリとは趣の異なる写実的な絵柄のアニメーションで、内
容も社会派と言える作品だ。物語は新興宗教の教祖に祀り上
げられた男とその宗教で儲けを企む詐欺師を中心に、様々な
人間模様が描かれる。信者の前で演じられる奇跡や万病に効
く水など、日本でもよく聞く宗教の話だが、前大統領がその
関連で失職した韓国ではさらに深刻なのかな? もっとも日
本の現政権政党も宗教団体だし、現総理大臣の周辺も相当に
きな臭い。そんなことを写しながら観ていると、いろいろ考
えさせられる作品だ。公開は10月、東京は渋谷ユーロスペー
ス他にて全国順次ロードショウ。)
『ハイジ アルプスの物語』“Heidi”
(2011年4月紹介『アンノウン』などのスイス出身・ドイツ
俳優のブルーノ・ガンツが「アルムおんじ」を演じる本国ス
イスで製作された実写作品。日本ではテレビアニメーション
でも有名だが、その物語の中でもハイジがおんじに預けられ
る経緯からペーター、クララとの交流、そして…までが描か
れる。まあお話は先刻承知のものだが、それがスイスアルプ
スの本物の風景の中で撮影されているのだから、これはこの
上もない作品だ。監督はスイス人のアラン・グスポーナー。
主演は新人のアヌーク・シュテフェン。他に2012年7月紹介
『カルロス』などのカタリーナ・シュトラーらが脇を固めて
いる。公開は8月26日より、東京はYEBISU GARDEN CINEMA他
にて全国順次ロードショウ。)
『プラネタリウム』“Planetarium”
(1930年代を背景に実在した霊能姉妹にインスパイアされた
神秘主義的な要素もある作品。登場するのは妹に降霊の能力
があるとされるアメリカ人姉妹。2人はヨーロッパを巡業中
で、舞台や個人宅に招かれて降霊術を行っていた。そんな姉
妹に大手映画会社のプロデューサーが目を付け、カメラの前
でリアルな幽霊の撮影に挑むが…。出演はナタリー・ポート
マンとリリー=ローズ・デップ。監督は2011年「フランス映
画祭」で上映された『美しき棘』などのレベッカ・ズロトブ
スキ。ポートマンはこの女流監督の作品に出たくて快諾した
そうだ。興味のある人には、当時の心霊研究の風景が見られ
るのも面白かった。公開は9月23日より、東京は新宿バルト
9他で全国ロードショウ。)
『ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ』
               “The Price of Desire”
(東京上野の西洋美術館などでその作品が世界遺産に登録さ
れた建築家ル・コルビュジエに纏わる実話に基づくとされる
ドラマ作品。物語の中心は建築家と親交のあった女性工芸デ
ザイナーのアイリーン・グレイ。彼女の作品もオークション
で史上最高値が付けられるほどの人物だが、彼女が初めて手
掛けた建築デザインを巡って確執が生まれる。1965年に建築
家が亡くなったのは自宅前の海岸とされているが、実はその
家を建てたのはアイリーンであり、しかも彼女の家の壁に勝
手に落書きのような絵を残したとか、正直に言って建築家の
人柄を疑うような描写も見られ、結構辛辣な作品でもある。
主演はオーラ・ブラディ。建築家役をバンサン・ペレーズが
演じている。公開は10月14日より、東京は渋谷Bunkamura ル
・シネマ他で全国順次ロードショウ。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。


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井口健二