井口健二のOn the Production
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2017年07月16日(日) 隠された時間、東京タワーお化け屋敷第3弾「東京タワーに届いた柩」

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『隠された時間』“가려진 시간”
満月の夜だけに現れる洞窟に入った子供たちが時間の流れに
翻弄される…。そんなファンタスティックな要素の強い韓国
映画。
少女は最愛の母を亡くし、母親の再婚相手の義父と共にその
島にやって来る。その島ではトンネル工事が行われており、
義父は発破の技師だった。しかし少女は生活の変化に馴染め
ず、学校でもいつも1人だった。
そんな少女が少年と親しくなる。施設育ちの少年も両親がお
らず、その共通する思いが2人を近づけたようだ。そして少
年が2人の仲間と共に立ち入り禁止の山に向った時、少女も
その後について行ってしまう。
それは満月の夜。山肌に見つけた小さな洞窟に入った少年ら
は、泉の底に沈んでいた卵のようなものを手に入れる。とこ
ろが少女がいない間に少年たちはその卵を割ってしまい。少
年たちが行方不明にる。
こうして捜索が始まり、程無く1人の少年が遺体で発見され
るが、残る2人の行方は杳として知れなかった。そんな中、
少女に近づいてきた青年が少年の名前を告げ、少女は青年が
少年の年を重ねた姿だと信じるが…。
突然現れた青年に警察は誘拐及び殺人の犯人と決め付ける。

出演は、少女役にネット配信された岩井俊二監督の短編映画
『チャンオクの手紙』にも出演のシン・ウンス。年を重ねた
少年役に2012年1月紹介『超能力者』などのカン・ドンウォ
ン。他にキム・ヒウォン、クォン・ヘヒョ、ムン・ソリらが
脇を固めている。
脚本と監督はオム・テファ。以前には短編作品とインディペ
ンデンス映画で「モンスター新人」と高く評価された監督の
商業映画デビュー作だ。
卵が割れた瞬間にその周囲にいた少年たちと、少女を含む現
実の世界との間で時間流の速さにずれが生じる。それは満月
と満月の間の約30日間に、少年たちの世界では18年の時が流
れたようで、その差は200〜250倍のようだ。
従って少年たちには世界は止まっているように見え、その中
で少年たちは物やお金も取り放題で勝手気ままに暮らすこと
ができたのだが…。孤独な暮らしが心に重圧を与え、そして
少年の1人は死によって現実の世界に戻った。
というのが前半の物語の流れとなるが、ここまでは主人公た
ちが起きている現象を理解していなかった訳で、それは物語
としても理解できる展開になっている。しかしその現象を理
解していたら話はちょっと変ってくる。
実はこの状況ではコミュニケーションは出来る訳で、ここで
例えば梶尾真治の「美亜へ贈る真珠」のようなことになった
ら、それは映画としても素晴らしかったと思うのだが、残念
ながらそこまでのSFマインドは無かったようだ。

公開は8月19日より、東京はシネマート新宿他で、全国順次
ロードショウとなる。

『東京タワーお化け屋敷第3弾「東京タワーに届いた柩」』
昨年7月にも紹介した松竹映画社が日本電波塔=東京タワー
の地下一階で開催するお化け屋敷。今年は7月15日から9月
3日まで開催されているその会場を、一般公開の前日に体験
させて貰った。
今回のテーマは蝋人形。物語の始りは3日前、東京タワーに
一つの木箱が届く。その木箱には蝋人形が入っているらしい
のだが、それを発注した記録がない。しかしその木箱はある
蝋人形師の作品であることの証だった。
そしてそれは、30年前に蝋人形師が起こした事件に繋がって
いるらしいのだが…。というコンセプトで展開される物語の
各恐怖場面が展示され、入場者はその中を歩いて見て回る形
式のものだ。
ただし上述のコンセプトは、後からチラシを見て知ったこと
で、実は自分が体験した時には何も知らずに観てしまった。
とは言えその怖さは事情を知らなくても充分に伝わってくる
もので、蝋人形という存在自体がオドロオドロしく、その雰
囲気だけで存分に楽しめた。
しかも今回は内部がかなり暗くて、一部は手探りで進んで行
かなくてはならないほど。これは全部作り物だと頭で理解し
ていても精神的な恐怖感は相当に感じられるものだ。そして
今は背景を知った上でもう一度観たくなる、そんな気分にも
襲われている。
残念ながら今回は次の予定があって2度観することは叶わな
かったが、繰り返し見ればいろいろ細かいところにも凝って
いそうな作り込みも感じられた。一般公開ではリピーターも
出てくるのかな? それくらいの出来栄えにはなっていると
思えるものだ。
因に登場する蝋人形などはロボットではなく、実際に劇団の
俳優がメイクをして演じているもので、細かい仕草や入場者
への対応などがリアル。特に1人で入場した僕は、途中で女
性に見つめられた時には正直ドキドキした。この感覚は複数
人では味わえないかもしれないが。
それにしても東京タワーは、2013年まで蝋人形館が常設され
ていた場所で、そこにこの題材はかなり思い切った感じでも
ある。蝋人形館にはそれなりの雰囲気もあるし、この企画が
閉館を惜しんだ当時のファンにもアピールできると面白い…
とも思えたところだ。

会場が都心の東京タワーの下というロケーションも良いし、
入場料大人900円、子供600円というのも手ごろで、手軽に楽
しめるお化け屋敷。
会場の入り口には本編に登場する木箱を模した顔出しが設置
され、これが公開前なのにかなりの撮影者で賑わうなど評判
になっていた。それも面白いところだ。

この週は他に
『REBECCA〜1985.11.1早稲田大学〜』
(6月25日に紹介したDVDに同梱されるDisk 2をサンプル
で提供して貰えたので鑑賞した。実はこの映像も6月25日に
上映の予定だったが、Disk 1の本編時間が長くなった影響な
どで割愛されたようだ。それで本作は、この年の雨の早稲田
祭に飛び入り出演した時のもので、野外のテント前の舞台で
の演奏となっている。それで前回の紹介では画質の点で少し
不満を書いたが、劇場のスクリーンではなく家庭用のディス
プレイで鑑賞するとそれは気にならなかった。寧ろNTSC
の映像をHi-Visionにコンバートしてもこれだけの映像にな
ることに感心するほどだった。過去には2曲だけがリリース
された映像の今回は完全版とのことで、ファンには貴重な作
品だろう。DVDは7月26日に発売される。)
『禅と骨』
(アメリカ人の父と日本人の母の間で戦前の日本に生まれ、
戦況が厳しくなって渡米するも日本国籍のために強制収容所
に送られ、そこでも父親譲りの風貌のために迫害を受ける。
しかし戦後は日本に戻り、禅宗の僧侶として修行。さらに晩
年には「赤い靴」の童謡に隠された物語の映画化を試みた…
というヘンリ・ミトワの生涯を描くヒューマンドキュメンタ
リー。僕は強制収容所や「赤い靴」にも関心があったので、
興味深く観させて貰った。ただし本人が人間的にはかなり問
題があって、取材中の不機嫌な様子などには多少退いてしま
うところもある。なお作中にウエンツ瑛士、余貴美子らが出
演の再現ドラマも挿入される。公開は9月2日より、東京は
ポレポレ東中野他にて全国順次ロードショウ。)
『ゴーストロード』
(ラジオ・パーソナリティなどを務めるマイク・ロジャース
という人の企画製作脚本で、インディロック・シーンで活躍
するミュージシャンが出演するファンタシーの要素のある作
品。主人公は人気の低迷するバンドのフロントマン。彼が手
に入れたヴィンテージのアンプを始動すると白煙が発し謎の
黒人が現れる。その黒人は魂と引き換えに究極の曲を与える
と誘うが…。悪魔物の典型と言えそうな展開の物語だが、映
画の中では主人公たちのバンドを含めた楽曲が何曲も演奏さ
れ、ファンはそれは目当てだろうし、それで充分に機能して
いる作品だろう。それ以下の作品ではないが、これに手を加
えてもこれ以上にはなりそうもない。公開は9月30日より、
東京は渋谷HUMAXシネマ他で全国順次ロードショウ。)
『パーフェクト・レボリューション』
(2013年1月紹介『暗闇から手をのばせ』に繋がる障碍者の
性の問題を描いた作品。主人公は自らが障害者で自身の著作
を題材に講演活動も行っている男性。その講演は性について
かなり赤裸々なものだ。そんな講演会に1人の女性が現れ、
彼女は主人公の相手になると言って彼の介助を始めるが…。
出演はリリー・フランキーと、2017年2月5日題名紹介『暗
黒女子』などの清野菜名。他に、小池栄子、岡山天音、余貴
美子らが脇を固めている。作品は脳性マヒを抱える活動家・
熊篠慶彦の原案企画によるもので、内容は実話に基づくとさ
れている。脚本と監督は、2014年柳楽優弥主演『最後の命』
などの松本准平。公開は9月29日より、TOHOシネマズ新宿他
で全国ロードショウ。)
『チャルカ〜未来を紡ぐ糸車〜』
(2014年1月紹介『福島 六ケ所村 未来への伝言』の島田恵
監督が核廃棄物の問題を捉えた作品。上映前の挨拶で監督は
「この問題を捉えた作品は初」と言っていたが、確かに従来
は原発問題の添え物のように扱われていたことが多い。しか
し以前に常磐道経由で仙台に行った際、道路脇に野積みされ
た黒い塊を見た者としては、これこそが福島問題の最重要事
項のように思えた。そして本作では、北海道幌延町や岐阜県
東濃地方、フィンランドで建設中の地下処分施設、フランス
の処分計画地などが精力的に取材されている。それぞれの地
元では誘致派や反対派の意見なども紹介され、原状を知る上
でも有効な作品になっている。公開は8月12日より、東京は
新宿K'sシネマ他、全国で上映会が行われている。)
『トランスフォーマー 最後の騎士王』
          “Transformers: The Last Knight”
(2014年7月紹介『トランスフォーマー/ロストエイジ』の
続き。金属生命体の母星が地球侵略を計画し、それを阻止す
べくオプティマスは旅立つ。その一方、地球では復活したメ
ガトロンとバンブルビー率いるトランスフォーマーの戦いが
続いていた。そこにオプティマスが帰還するが…。主演は、
前作に引き続いてのマーク・ウォルバーグ。またジョシュ・
デュアメル、タイリース・ギブスン、ジョン・タトゥーロら
が前のシリーズから復帰。さらにアンソニー・ホプキンスが
新登場している。監督はマイクル・ベイ。今回も上映時間は
2時間30分と長尺だが、IMAX3Dの迫力はその時間を飽きさ
せない。それに最後のシーンはファンには落涙かな? 公開
は8月4日より、3D/2D、IMAX3Dで全国ロードショウ。)
『ジュリーと恋と靴工場』“Sur quel pied danser”
(高級婦人靴のメーカーが製作に協力している靴工場が舞台
のフランス製ミュージカル。主人公は職なし、金なし、彼氏
なしの25歳の女性。そんな彼女がダメ元で応募したのは女性
に夢を与える手造り婦人靴の老舗だった。ところがその工場
に閉鎖の危機が訪れる。そして訳も分からずデモに駆り出さ
れた彼女は…。大昔に『シェルブールの雨傘』や『ロシュフ
ォールの恋人たち』を観ていた僕には、流れる音楽の雰囲気
から王道のフレンチミュージカルという感じだった。物語も
フランスっぽいし、2017年6月25日題名紹介『ロスト・イン
・パリ』にはちょっと退いてしまった僕だが、この作品は文
句なしだ。公開は9月23日より、東京は新宿ピカデリー、シ
ネスイッチ銀座他で全国順次ロードショウ。)
『ザ・ウォール』“The Wall”
(2014年6月紹介『ALL YOU NEED IS KILL』などのダグ・リ
ーマン監督が2007年のイラク戦争を舞台に描くサスペンス作
品。主人公は砂漠の廃墟に潜む敵兵掃討のため派遣されたア
メリカ兵。ところが5時間が経過するも進展がなく、止む無
く廃墟に向った時、思わぬ方向から銃撃される。このため崩
れかけた壁の影に身を潜めた兵士だったが、そこから狙撃手
との駆け引きが始まる。しかもそれは炎天下の砂漠という極
限の場所だった。出演は『アベbジャーズ』シリーズなどの
アーロン・テイラー=ジョンスンと、WWEのレスラーでも
あるジョン・シナ。シナは動けない状況となるので、ほぼ全
編がジョンスンの一人芝居という作品だ。公開は9月1日よ
り、全国ロードショウ。)
『戦争のはらわた』“Cross of Iron”
(1977年製作サム・ペキンパー監督の戦争映画がディジタル
リマスターにより再公開される。物語の舞台は第2時大戦中
のドイツ北部戦線。ソ連軍とナチス軍が対峙する中で様々な
悲喜劇が巻き起こって行く。『ワイルドバンチ』や『わらの
犬』がショッキングな演出で印象に残るペキンパーだが、本
作の頃は流石に丸みが出てきているのかな。当時見た時には
衝撃だった記憶はあるが、今見直すとレイプシーンなどには
現実はもっとひどいと思わせるようなところもあり、それは
当時の表現の制約だったのかとも思わされた。でも当時にこ
れを描けたのはペキンパーならではのことだったのだろう。
そんな歴史も感じさせる作品だ。公開は8月26日より、東京
は新宿シネマカリテ他で全国順次ロードショウ。)
『ターミネーター2・3D』
           “Terminator 2: Judgmant Day 3D”
(1991年にジェームズ・キャメロン監督が満を持して放った
シリーズの第2作が最新技術で3D化されて再公開となる。
上映時間は2時間17分、これは最初に劇場公開されたヴァー
ジョンのようだ。物語は前作でサラ・コナーの抹殺に失敗し
た未来の敵スカイネットが、若者に成長したジョン・コナー
本人殺害のため新型ターミネーターを投入、対する未来のジ
ョンは、プログラムを変更した旧型ターミネーターを送り込
む。その旧型に遭遇したジョンは使命を感じ、スカイネット
の基を断つべく闘いが始まるというものだ。物語は今観ても
納得できるし、CGIによるVFXも見事、その一方で破壊
シーンにはミニチュアも活用され、技術の融合も感心した。
公開は8月11日より、全国で3Dのみの限定上映となる。)
『僕のワンダフル・ライフ』“A Dog's Purpose”
(1985年『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』などのラッセ・
ハルストレム監督による「犬映画第3弾」と自称する作品。
因に第2弾は2009年4月紹介『HACHI』だそうだ。その
第3弾は、人間より寿命の短い犬が、命の恩人である飼い主
のために転生して行くというお話。猫は九生というが、犬も
転生するとは知らなかった。元はW・ブルース・キャメロン
という作家のベストセラーの映画化だが、とにかく犬好きに
はたまらない作品になっている。出演は、新人のK・J・ア
パ、デニス・クエイド、ブリット・ロバートソン、ペギー・
リプトン。また犬の声優を『アナと雪の女王』のオラフ役ジ
ョシュ・ギャッドが担当している。公開は9月29日より、全
国拡大ロードショウ。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。


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井口健二