井口健二のOn the Production
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2017年06月11日(日) 仮面ライダー/スーパー戦隊・記者会見、第25回フランス映画祭

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『仮面ライダー/スーパー戦隊』記者会見
去年の今頃にも報告したが、今年も夏休みの公開に向けての
会見が行われた。しかも今回はその会見の会場が西東京市の
多摩六都科学館にあるプラネタリウムということで、その演
出にも興味津々で見に行った。
その会場は1億4000万個の星を投影するプラネタリウムと、
4Kプロジェクター4台が連動する半球ドーム状の映像設備
で、ギネスブックに「最も先進的なプラネタリウム」という
認定も受けているものだそうだ。
そして会見では、まずプラネタリウムで満天の星空が投影さ
れ、そこに敵の宇宙船が出現するという演出で、『宇宙戦隊
キューレンジャー THE MOVIE グース・インダベーの逆襲』
と題された劇場版が紹介された。
その後に監督及び出演者のトークも行われたが、それは時期
的に内容には触れられないということで、その報告は本編の
試写が行われてからにするが、かなりのエキストラを動員し
たシーンもあるようだ。
そして続いては、『劇場版仮面ライダー・エグゼイド/トゥ
ルー・エンディング』と題された作品の紹介となったが、こ
の作品はヴァーチャル・リアリティがテーマということで、
脳内映像という設定の演出が行われた。
そこでは仮面ライダーと敵の戦闘シーンが半球ドームのスク
リーンに写し出されたもので、正面に立つライダーと左隅の
敵との戦いは首を振らなければ見切れないもの。特に両者が
打ち出す気のようなイメージは見事な迫力だった。
さらにライダーが右に回り込んだ時は、正にのけぞるような
感じで動きを追ったもの。これは見事な演出と言えるものだ
った。ただしこれが上映できるのは今回この会場だけという
ことで、それは勿体なくも感じた。
因に今回の会場は4Kプロジェクター4台の連動ということ
で、画質は8K。それに対して上映された映像はテレビ放送
用の2Kのカメラで撮影されたものと思われ、画質的には満
足できるものではなかったが、迫力は満点だった。
これを観られたのは僕たちだけというのは本当に残念なこと
だが、これは今後に新たな映像体験を指向できるものにも思
えた。数年前にSF作家クラブの記念事業としてプラネタリ
ウム上映作品の製作に参加したが、今後に期待したい。

続いては、6月22日〜25日に有楽町朝日ホール/TOHOシネマ
ズ日劇で開催される第25回フランス映画祭で上映される作品
の中から、最後の3本を紹介する。
『Raw〜少女のめざめ』“Grave”
一応、ホラーという触れ込みだったので、その気分で試写に
臨んだが、僕の感覚で言うとこれはホラーではない。ホラー
には不可欠な超常的な要素もないし、むしろ現実に有り得る
状況を描いた作品と言えるものだ。とは言えかなり強烈な作
品で、最近の映画はこんなものも描いてしまうんだ…、とい
う気分にもなった。ただし巻頭に置かれたシーンの意味が結
局不明だし、途中に出てくる女医はもっと活躍するのかと思
いきやそのままで、さらに姉がいつ発症したのかも説明不足
ように感じられた。僕としてはもう少し描き込めば、ホラー
として面白い作品になったと思えるのが残念なところだ。し
かしまあ、この手の作品が好きな人にはこれで良いのかもし
れない。その点はしっかりと描き込んでいるとは言える作品
だった。映画祭では6月25日に上映、一般公開は来年になる
ようだ。

『ルージュの手紙The Midwife(英題)』“Sage femme”
主人公はかなり生真面目な感じの中年の助産婦。こんな彼女
の許に何10年も音信不通だった女性から電話が架かる。その
女性は主人公の実父の愛人だったが、実母の亡き後は主人公
とも仲が良かったようだ。しかし突然姿を消していた。そん
な彼女との再会を快く思えない主人公だったが…。主演は、
2003年9月紹介『女はみんな生きている』などのカトリーヌ
・フロと、今回の来日団長を務めるカトリーヌ・ドヌーヴ。
監督は2010年6月紹介『セラフィーヌの庭』などのマルタン
・プロヴォスト。血の繋がりはないから友達同士のような感
じでもあるのだろうが、それ以上のいろいろな確執などが物
語を彩る。でも全体はコメディとして温かく包まれた作品に
なっている。こんな感じのフランスコメディは良いものだ。
映画祭では6月22日にオープニングで上映、一般公開は12月
に予定されている。

『ロダン カミーユとの永遠のアトリエ』“Rodin”
「地獄の門」や「考える人」などで知られる彫刻家ロダンの
没後100周年に因んで製作された作品。物語は彫刻家が40代
にして初めて大きな仕事を依頼されるところから始まる。そ
れは「地獄…」の制作で、彼が公から認められた証だった。
そして彼の許に愛弟子で愛人でもあるカミーユが現れる。斯
くして映画はドロドロとした愛憎劇なども絡めながら、ロダ
ンの業績を描いて行く。内容的には過去にも映画化されてい
るが、今回はパリ・ロダン美術館の後援も得て正確に描かれ
たようだ。出演は、2010年11月紹介『君を想って海をゆく』
などのヴァンサン・ランドンと、ジャニス・ジョプリンの再
来と称される歌手のイジア・イジュラン。監督は2013年6月
20日付「フランス映画祭」で紹介した『アナタの子供』など
のジャック・ドワイヨン。後半はバルザック像制作の話にな
るが、その結末は面白かった。映画祭では6月23日に上映、
一般公開は11月11日より、東京は新宿ピカデリー他で全国ロ
ードショウされる。

この週は他に
『海辺の生と死』
(島尾ミホ・敏雄夫妻のそれぞれの著作を基に、2人の出会
いを描いた作品。背景は第2次大戦末期の奄美の小島。その
島の小学校教師の前に、秘密作戦で赴任した海軍将校が現れ
る。最初は通学路を遮られることへの抗議だったが、やがて
激しい恋が燃え上がる。しかし彼に与えられた任務は、爆弾
を抱えた小型艇で米軍艦の体当たりする特攻だった。そして
出撃命令が伝えられる。主演は自ら奄美出身の満島ひかり。
共演に永山絢斗、川瀬陽太、井之脇海、嘉津山正種。奄美の
島唄もふんだんに登場し、155分の上映時間に2人の逢瀬が
しっかりと演出されている。ただ将校が机に向かうシーンで
卓上にインキ壺がないのは…。公開は7月29日より、東京は
テアトル新宿他、全国順次ロードショウ。)
『狂覗』
(宮沢章夫が1998年に発表した戯曲からの映画化。同じ戯曲
は2002年にテレビドラマ化もされているようだ。舞台はとあ
る中学校の教室。生徒が体育でいない間に教師たちによる荷
物検査が行われる。それはもちろん違法なことだが、校内の
平安のためにはやむを得ないと言い聞かせながらの行為だ。
しかしその中でとんでもないものが発見される。しかも生徒
の1人が苛めにあっているようなのだ。その状況が徐々にエ
スカレートし、教師たち自身が追い詰められて行く。多少え
げつない描写も登場するが、それなりに巧みな構成で、心理
サスペンスとしても面白かった。脚本と監督は、米監督のロ
イド・カウフマンに絶賛されたという藤井秀剛。公開は7月
22日より、東京は渋谷UPLINK他で全国順次ロードショウ。)
『草原に黄色い花を見つける』
          “Tôi thấy hoa vàng trên cỏ xanh”
(ベトナムの人気作家グエン・ニャット・アインの原作を、
アメリカ育ちのヴィクター・ヴーが脚色、監督。2016年のト
ロント国際児童映画祭で審査員賞を受賞し、ベトナム映画界
の最高賞とされる金の蓮賞で監督、作品のW受賞に輝いたと
いう作品。1980年代のベトナムの農村地帯を背景に子供たち
の成長が描かれる。主演のティン・ヴィン、チョン・カン、
タイン・ミーが幼いながらも芸歴もあるベトナムで人気の子
役たちということで、そのしっかりとした表現力が映画に深
みを与えている。自然の描写も美しく、懐かしさも込上げて
くる作品だ。公開は8月19日より、東京は新宿武蔵野館他で
全国順次ロードショウ。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。


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井口健二