井口健二のOn the Production
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2017年05月28日(日) 宇宙戦艦ヤマト2202愛の戦士たち 第二章「発進篇」、君はひとりじゃない

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『宇宙戦艦ヤマト2202愛の戦士たち 第二章「発進篇」』
2016年9月に製作発表記者会見の報告をした作品の試写が行
われた。
実は先の報告で紹介したように、本作の第一章は2月25日に
劇場公開された。しかし完成がぎりぎりだったせいか、マス
コミ向けの試写は行われなかった。そこで今回は第二章から
観ることになったが、一応、第一章も宣伝会社にお願いして
DVDを借りて観ることができた。
今回はそこから紹介させて貰う。
2012年3月及び2014年12月紹介の『宇宙戦艦ヤマト2199』で
ヤマトが持ち帰ったコスモリバースシステムにより地球は復
活。さらにガミラスとの和平も成立し、両軍は共同戦線を張
るまでになっていた。そこに、2014年12月紹介作に登場した
新たな敵ガトランティスが出現する。
斯くして太陽系外の宇宙域において、侵攻するガトランティ
ス前衛部隊と、地球=ガミラス連合軍との戦端が開かれる。
そこで敵の圧倒的な兵力に連合軍の敗色が濃厚となった時、
突如現れた地球軍の最新鋭艦が波動砲を発射。その一撃はガ
トランティス軍を蹴散らしてしまう。
しかしその波動砲はコスモリバースシステムを受け取る際、
イスカンダルのスターシャに2度と使用しないと誓ったもの
だった。その誓いも反故にされ、地球政府は最強の兵器を要
とする軍備拡大に突き進んでいたのだ。
一方、旧ヤマトの乗組員たちは様々な幻影に遭遇していた。
その幻影は彼らにヤマトに乗ることを要請。それと同時に彼
らは、惑星テレザードからの救援の要請も受け取る。しかし
地球政府はその要請に応えようとしなかった。それでも旧乗
組員らはドックに収容されたヤマトに向かうが…。

脚本は2013年7月紹介『人類資金』などの福井晴敏、監督は
『2199』の一部絵コンテを担当していた羽原信義が手掛けて
いる。声優は『2199』の声優の小野大輔、桑島法子らが引き
続き担当している。
1978年のオリジナルは上映時間151分の作品だったが、今回
は第一章が約50分、第二章が約100分で、この時点ですでに
オリジナルに近いものになっている。しかもこの後に第七章
まで約500分が続くのだ。
従って物語はかなり詳細に語られているものだが、何と言う
かそのほとんどが戦闘場面で、これは観続けるにはかなり体
力がいるとも感じられた。それは多分作っている方も同じだ
ろうが、これは大変な作品だ。
そして物語の全体の流れは、オリジナルと同じになっている
ように思われるが。ただし上記の記者会見で福井は「結末は
同じにはしない」と断言していたもので、その結末に向かう
残り500分が期待される。
因に第一章には、ガトランティス側の攻撃で特攻に近い表現
がされていたようで、この辺がオリジナルへのリスペクトと
言うか、それをアンチテーゼとする決意のようなものにも感
じられた。
また波動砲の是非については、最近の憲法九条を巡る論議に
重なるような部分もあり、元々波動砲が究極の兵器で原爆の
置き換えであったことからも、その言わんとする所にはいろ
いろ考えるところもあった。
これらが今後にどのように展開されるのかも興味深く観たい
ところだ。ただ、実は『2199』のときは、2012年3月紹介の
第一章の後は試写が行われず、今回もそうなってしまう恐れ
はあるが、今後も試写を観せて貰える限りはフォローするつ
もりでいる。

「第二章」の公開は6月24日より、東京は新宿ピカデリー他
の全国20館にて期間限定上映となる。

『君はひとりじゃない』“Cialo”
本作は、2015年の東京国際映画祭ワールドフォーカス部門で
上映され、その際にも鑑賞していたが、この年は諸般の事情
でコンペティション部門以外の作品紹介を割愛した。でもそ
の時にも気になった作品の1本で、その作品の日本公開が決
まったので改めて試写を観に行った。
内容は拒食症の少女とその父親を巡るもの。検察官でもある
父親と娘との関係はあまり芳しくない。その原因は妻であり
母親の不慮の死にあるようだ。そんな2人の関係が、1人の
女性の働きでスピリチュアルな世界に迷い込んでしまう。
その女性は娘のセラピストだったが、死者との交信ができる
と称して父親にも近づいてくるのだ。そして降霊の儀式のよ
うなものが始まるが…。

脚本と監督は、今、最も輝いているポーランド人監督とされ
るマウゴジャタ・シュモフスカ。2013年の“W imie...”と
いう作品でも多くの受賞歴のある女性監督だ。
出演は、父親役に1994年『トリコロール 白の愛』などのヤ
ヌシュ・ガヨス、娘役に新人のユスティナ・スワラ、そして
セラピスト役に2009年『カティンの森』などのマヤ・オスタ
シェフスカ。
実は結末が微妙で、映画祭で観た時には評価を出しかねた。
しかし今回観直すことで納得ができた。それは愛情に溢れた
父親と娘の物語であり、スピリチュアルなテーマとしても巧
みに描かれているものだ。
この種の作品では、降霊師を本物と取るか否かが作品の評価
として微妙になるものだが、その点でもこの作品は様々なエ
ピソードを織り込むことで巧みに描いている。そして物語で
は、特に女性監督の目が見事なドラマを生み出している。

この作品が、2015年のベルリン国際映画祭で監督賞となる銀
熊賞を受賞したのも納得のできるものだった。
公開は7月22日より、東京はYEBISU GARDEN CINEMA、シネマ
ート新宿他で、全国順次ロードショウとなる。

この週は他に
『兄に愛されすぎて困ってます』
(前回題名紹介『トリガール!』に続けて土屋太鳳主演によ
る若年向けドラマ。前回の土屋は大学の新入生だったが、本
作では高校の1年生かな。前作と同様学バスでの通学風景か
ら始まり、その横を自転車に乗った若者が追い抜いて行く。
ただし今回の若者は彼女の兄で、その兄との微妙な関係が描
かれて行く。ただこのテーマは多少難しいところがあるもの
だが、原作は人気漫画だそうで、何となく若者の願望充足の
ような感じでそれなりの解決策は示している。共演はEXILの
片寄涼太、千葉雄大。他に大野いと、YOUらが脇を固めて
いる。監督は『チア☆ダン』などの河合勇人。なお土屋は前
作に続いて自転車で疾走するシーンがあり、それもデジャヴ
だった。公開は6月30日より、全国ロードショウとなる。)
『甘き人生』“Fai bei sogni”
(2013年9月紹介『眠れる美女』などのマルコ・ベロッキオ
監督による2016年の作品。1969年のトリノ、それに1990年代
のローマとサラエヴォを背景として青年の心の迷いが描かれ
る。1990年代のサラエヴォは紛争の渦中であり、若者はそこ
で運命的な出会いをする。出演は2017年1月紹介『おとなの
事情』などのヴァレリオ・マスタンドレアと、2016年9月紹
介『シークレット・オブ・モンスター』などのベレニス・ベ
ジョ。それに2005年7月紹介『真夜中のピアニスト』などの
フランス人女優エマニュエル・ドゥヴォス。2つの時代と悲
惨な戦争。様々な要素が母親の死という究極の出来事を軸に
見事に語られて行く。公開は7月15日より、東京は渋谷ユー
ロスペース他で全国順次ロードショウ。)
『ハロー・グッバイ』
(高校のクラスで徒党を組む中の1人と、クラスメートとは
距離を置いている優等生。そんな2人が認知症の老婆が口ず
さむメロディを介して話をするようになる。しかし2人には
それぞれ他の友達には話せない秘密があった。そんな青春の
中であるかもしれない物語が展開される。出演は2017年2月
5日題名紹介『ブルーハーツが聴こえる』などの萩原みのり
と、2016年8月14日題名紹介『疾風ロンド』などの久保田沙
友。それにもたいまさこ。他に木野花、渡辺眞起子、演奏家
の渡辺シュンスケらが脇を固めている。脚本はアニメ版『ち
はやふる』などの加藤綾子、監督は2015年『ディアーディア
ー』などの菊地健雄が担当した。公開は7月15日より、東京
は渋谷ユーロスペース他で全国順次ロードショウ。)
『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』
              “A Street Cat Named Bob”
(ホームレスのストリートミュージシャンが、ヴォランティ
アに斡旋された住居に現れた野良猫の世話をし、その猫のお
蔭で更生したという実話に基づく作品。主人公はドラッグの
依存症にもなっている。その状況について日本の実態がどう
かは知らないが、ヨーロッパでは日常なのかな? ただ本作
の中では悪として明瞭な扱いだった。出演は2010年4月紹介
『タイタンの戦い』などのルーク・トレッダウェイ。猫のボ
ブ役には本人?も登場しているそうだ。監督は1998年『007
トゥモロー・ネバー・ダイ』などのヴェテラン、ロジャー・
スポティスウッズ。公開は8月26日より、東京は新宿ピカデ
リー、シネスイッチ銀座他で全国ロードショウ。猫好きには
間違いなく愛される作品だ。)
『世界は今日から君のもの』
(2016年1月紹介『太陽』などの門脇麦の単独主演で、人付
き合いに不器用で引き籠り気味の少女が社会に巣立って行く
までを描いた青春ドラマ。脚本と監督は、テレビ『梅ちゃん
先生』などの脚本家の尾崎将也で、映画監督は2作目。本作
は自作のドラマに出演した門脇に惚れ込んで当て書きしたと
いうことで、門脇を口説き落としての作品のようだ。ただこ
の作品で門脇の新しい魅力が出ているかというとちょっと物
足りないかな。内容的にはゲーム業界などを背景にしてそれ
なりに考えられた作品だが…。僕は門脇はもっとできる女優
だと思っているので、何かその辺の新しいものが欲しかった
ところだ。公開は7月15日より、東京は渋谷シネパレス他で
全国順次ロードショウ。)
『クロス』
(「集団リンチ殺人事件の加害者の現在」そんな週刊誌の記
事を切っ掛けに様々な人間模様が描かれる作品。脚本は登竜
門とされる城戸賞の受賞作だが、内容的に映画化は困難とさ
れていたもの。それを執筆者の宍戸英紀がプロデューサーの
奥山和由に手紙と脚本を手渡して、実現に漕ぎ付けたという
ことだ。そして奥山は、撮影監督で本作が初監督となる釘宮
慎治が共に監督も手掛けている。出演は紺野千春、山中聡、
Sharo。他に、斎藤工、ちすんらが脇を固めている。過去の
犯罪を蒸し返すという人間性としてはかなり微妙な部分を突
いてくる作品だが、その裏に潜むものなどを巧みに描いたド
ラマになっている。公開は7月1日より、東京は渋谷ユーロ
スペース他で全国順次ロードショウ。)
『キング・アーサー』
          “King Arthur: Legend of the Sword”
(2015年8月紹介『コードネームU.N.C.L.E.』などのガイ・
リッチー脚本、監督によるイギリス中世伝説の3D映画化。
アーサー王と言えば円卓の騎士とキャメロットで有名だが、
本作はまだそこに至るまでの物語。王の血を引く身でありな
がらスラム街の貧しい家庭に育った主人公は、やがて伝説の
剣エクスカリバーを手にし、民衆の力を背景に王の座へと昇
って行く。その物語が魔法や巨大生物などのVFXに彩られ
て描かれる。出演は2013年7月紹介『パシフィック・リム』
などのチャーリー・ハナム、2011年5月紹介『POTC生命
の泉』などのアストリッド・ベルジェ=フリスペ。他にジャ
イモン・フンスー、ジュード・ローらが脇を固めている。公
開は6月17日より、全国ロードショウ。)
『ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦』
                     “Anthropoid”
(ナチスドイツ支配下のチェコスロヴァキアで。ナチス要人
の暗殺計画を実施した若者たちの姿を描いた作品。主人公は
ロンドンに置かれたチェコ亡命政府の指令を受けて落下傘で
潜入した2人の兵士。彼らにはレジスタンス組織と連携して
チェコを支配するラインハルト・ハイドリヒを暗殺する指令
が与えられていた。しかしそれが実行されたらチェコ市民へ
の報復が計り知れなかった。出演はキリアン・マーフィ、ジ
ェイミー・ドーナン。他にトビー・ジョーンズ、2016年1月
紹介『ザ・ウォーク』などのシャルロット・ルポンらが脇を
固めている。脚本と監督は2008年7月紹介『ブロークン』な
どのショーン・エリス。監督渾身の作品だ。公開は8月12日
より、東京は新宿武蔵野館他で全国順次ロードショウ。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。
なお、この週はさらにHeart and Hearts Korean Film Week
と題された特集上映4作品の内の3本の試写も行われたが、
それらは残り1本を観た後で纏めて紹介する。


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井口健二