井口健二のOn the Production
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2017年04月23日(日) ローマ法王になる日まで、ハイヒール こだわりが生んだおとぎ話、怪物はささやく

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『ローマ法王になる日まで』
    “Chiamatemi Francesco - Il Papa della gente”
現ローマ法王フランシスコ(本名ホルヘ・マリオ・ベルゴリ
オ)が、2013年3月にその聖職に選ばれるまでを描いたドラ
マ作品。
映画はヴァチカンらしき街並みを背景にした建物の屋上で、
若くはない男性が洗濯物を干しているところから始まり、現
法王が質素で、庶民的な人物であることが強調される。
それにしても法王の足跡というと通常は地元での布教活動ぐ
らいしか思い浮ばないものだが、史上初のアメリカ大陸から
の法王で、しかもその出身国がアルゼンチン。その活動期間
が軍事政権下というのは、かなり様相が異なってくる。
実際に作品の中では、ベルゴリオがイエズス会アルゼンチン
管区長であった当時の、軍事政権による2人の司祭の拉致、
拷問事件も描かれ、その際のベルグリオの行動なども示され
ている。
そしてそれを切っ掛けのように、当時の軍事政権下で多くの
犠牲者を出した白色テロの実態が描かれて行く。

出演は、ブエノスアイレス生まれで、2004年『モーターサイ
クル・ダイアリーズ』などのロドリゴ・デ・ラ・セルナと、
チリ出身で2012年10月28日付「第25回東京国際映画祭」で紹
介『NO』などのセルヒオ・エルナンデス。さらにアルゼン
チン出身のメルセデス・モラーン、ムリエル・サンタ・アナ
らが脇を固めている。
脚本と監督は、2013年10月26日付「第26回東京国際映画祭」
で紹介『ハッピー・イヤーズ』などのイタリアのダニエレ・
ルケッティ。ローマ市内のヴァチカン市国が舞台ということ
での作品だが、監督自身は無信仰だそうで、そんな宗教的に
は中立の目が的確に人物を捉えているようだ。
アルゼンチンの軍事政権下に関しては、2016年6月12日題名
紹介『エル・クラン』などでも描かれていたが、隣国チリの
状況が2016年6月紹介『コロニア』や、7月紹介『チリの闘
い』、上記の『NO』などで紹介されているのに比べると少
なく感じる。
その理由は判らないが、本作で描かれているような残虐行為
の数々が、映像化に二の足を踏ませるのかもしれない。それ
ほどの惨状が描かれている作品だ。
因に本作の情報を海外のデータベースで調べると、上映時間
が98分と記載されている。これに対して日本公開版の上映時
間は113分。これがディレクターズカットということだが、
海外では15分もカットされて上映されているようだ。
そのシーンがどこなのかは明らかではないが、日本ではその
全貌を観ることができる。イタリア人の監督が何故ここまで
描かなければならなかったのか、その気持ちを受け止めたい
作品だ。

公開は6月3日より、東京はヒューマントラストシネマ有楽
町他で全国順次ロードショウとなる。

『ハイヒール こだわりが生んだおとぎ話』
母国で映画を学んだ後に19歳で来日したという27歳の韓国人
監督による初の商業作品。なお作品は時短映画と称する上映
時間30分足らずのものだが、1本立てで公開される。
人類が平和と地球環境保全のためには欲望を封じるしかない
と考え、自らアンドロイドと化す道を選んだ遠未来のお話。
しかし長い年月が経ち一部に欲望が甦ってしまう。そして主
人公は人々に完璧な靴を提供しようと願う靴職人。
そんな主人公の許にハイヒールを求める客がやって来る。そ
の客の足を正確に採寸し、様々な試行錯誤の末に主人公は完
璧な靴を作り上げる。ところがそのハイヒールは受け取りに
きた客の足に少し合わない。
その不具合の理由を求めて、主人公は再びハイヒールに向き
合うことになるが…。

主演は、2016年3月紹介『テラフォーマーズ』などの菊地凛
子。その脇を2016年『青空エール』などの小島藤子、NHK
ドラマ『精霊の守り人』などの玄理、モデルの谷口蘭らが固
めている。
脚本と監督は韓国出身のイ・インチョルが手掛けている。
また菊地の衣装を企画に賛同したシャネルのパリ本店が提供
している他、劇中に登場するハイヒールはファッションブラ
ンドMIHARA YASUHIROの提供によるものだそうだ。
さらにオープニングのアニメーションはMr.ChildrenのPV
などを手掛ける半崎信朗、音楽をキム・ギドク作品などのノ
・ヒョンウ、造形を『テルマエ・ロマエ』などの百武朋が担
当している。
ショートショートというのは星新一氏のお蔭でSFの一分野
のようになっているものだが、星氏の作品の多くがそうであ
るようにちょっと洒落た落ちのある作品のイメージもあるよ
うに思える。
その点で言うと本作は、お洒落なファッションが数多く登場
するものではあるが、落ちの部分にはSF的には意外性が少
ない。当然本作は遠未来が舞台のSFと認識して書くが、そ
の観点でこの落ちは、SF的には物足りないものだ。
そもそも本作にこのような落ちを付ける必要があったのか、
そんなセオリー?は無視して、もっとこの監督が思いついた
未来を概観するような作品を観たかったような感じもする。
アイデアは良いと思うし、次回作に期待したいものだ。

公開6月24日より、東京はヒューマントラストシネマ渋谷他
で全国ロードショウとなる。なお入場料は前売りの特別鑑賞
券が600円、当日は800円だそうだ。

『怪物はささやく』“A Monster Calls”
イギリス図書館協会から年次で贈られ、児童文学界の権威の
一つとされるカーネギー賞を2012年に受賞したパトリック・
ネス原作の映画化。
因に原作は、同じくカーネギー賞受賞者で2007年に死去した
シヴォーン・ダウドの残したメモに基づきネスが完成させた
ものとされ、映画化ではネス自ら脚色も担当している。
主人公はイギリスの寒村で母親と2人暮らしの少年。その母
親が病に伏し、少年は落ち着かない日々を送っている。父親
は出奔したまま家には滅多に現れず、時々口煩い祖母が顔を
出してくる。
そんな少年は毎夜悪夢を見るようになり、その夢には怪物が
登場して少年に1つずつ3つの物語を聞かせるという。そし
て3つが終ったら4つ目は少年が自分の物語を語る番だとい
う。
こうして語られた3つの物語は、それぞれ驚きの結末を迎え
るものだったが…。

主演は、2015年10月紹介『PAN〜ネバーランド、夢の始ま
り』に主人公の親友役で出ていたというルイス・マクドゥー
ガル。
他に、シガニー・ウィーヴァー、『SWローグ・ワン』など
のフェリシティ・ジョーンズ、2017年2月紹介『キングコン
グ髑髏島の巨神』などのトビー・ケベル。そして怪物の声を
リーアム・ニースンが担当している。
監督は、2008年9月紹介『永遠のこどもたち』や2013年3月
紹介『インポッシブル』のファン・アントニオ・バヨナ。ま
たプロデューサー以下、その他のスタッフのほとんどは長年
のチームのようだ。
とにかく恐ろしくもあり、優しくもありの怪物の造形が素晴
らしい。そしてそれからニースンの声が温かく主人公を包み
込むように物語を聞かせてくれる。それはダークなファンタ
シーではあるが見事な世界が構築された作品だ。
その物語が閉ざされていた少年の心を巧みに解き放ってくれ
る。そんな素敵な物語が展開される。オリジナルのメモは作
者が死を意識しながら綴ったものと思われるが、その中から
残される者への限りない愛情が感じられる作品だ。
ただ映画では、2度ほど登場する写真にちょっと考えられな
いものが写っていて、それがそうだとすると物語の印象が少
し変わってしまう。単に筆が滑ったのか、それともそういう
意図なのか、その辺は検証したくなる部分ではあった。

公開は6月9日より、全国ロードショウとなる。

この週は他に
『イイネ!イイネ!イイネ!』
(2017年に結成20周年を迎えた「クレージーケンバンド」の
横山剣が本人として主演し、バンドのメムバーも出演するド
ラマ作品。登場するのは横浜で育った幼馴染の3人。1人は
音楽で成功し、1人はそのマネージャー、そしてもう1人は
地元暴力団の構成員となっている。そのバンドに横浜球場で
のコンサートが決まるが…。横浜の街には、違法在留の中国
人や組の内部抗争など、様々な思惑が渦巻いていた。共演は
中野英雄と伊原剛志。監督は2016年「FUNKY MONKEY BABYS」
のファンキー加藤が主演した『サブイボマスク』などの門馬
直人、脚本も同作の一雫ライオン。ミュージシャンの主演で
これ大丈夫か?と思うような話が展開する。公開は6月24日
より、東京はTOHOシネマズ新宿他で全国ロードショウ。)
『静かなる情熱エミリ・ディキンスン』
                  “A Quiet Passion”
(1886年に死去し、生前には10篇しか発表されていなかった
が、死後に1800編もの詩作が発見され、それらが今でも影響
を与え続けているというアメリカの女性詩人の生涯を描いた
作品。時代は19世紀後半、文芸は男性がするものと決め付け
られ、女性にはその端緒も掴めなかった時代。そんな中で女
性詩人は自由奔放に自分の意思を貫き通して行く。勿論そこ
には多数の障害も待ち構え、恐らくはそれによって命も縮め
ることになってしまうのだが。出演は2010年5月紹介『セッ
クス・アンド・ザ・シティ2』などのシンシア・ニクスン、
2013年1月紹介『ゼロ・ダーク・サーティ』などのジェニフ
ァー・イーリー。公開は7月29日より、東京は岩波ホール他
で全国順次ロードショウ。)
『ザ・ダンサー』“La danseuse”
(モダンダンスの始祖の1人とされる女性ダンサー=ロイ・
フラーの生涯を描いたドラマ作品。ニューヨークで暮らす母
親を頼って田舎町を離れた少女がオーディションで3分間の
幕間のパフォーマンスを獲得。そこで喝さいを浴びた少女は
そのアイデアを膨らます。しかしそのアイデアが盗まれ、そ
の特許権を求めて彼女はヨーロッパに進出する。特許という
のは著作権だと思うが、自分が以前に特許業界に居た者とし
ては気を曳く作品だった。出演は、フラーの激しいダンスを
見事に再現して見せたミュージシャンのソーコと、ジョニー
・デップの娘リリー=ローズ・メロディ・デップ。デップが
本気の演技を見せるのも頼もしい。公開は6月3日より、東
京はBunkamura ル・シネマ他で、全国ロードショウ。)
『歓びのトスカーナ』“La pazza gioia”
(2011年5月紹介『人生、ここにあり!』でも描かれたイタ
リアの精神病院を巡る作品。以前の作品では1998年に廃絶さ
れたとしていたが、その後も司法精神病院というのが存続し
ていたそうで、そこでは医者ではなく裁判官が病気を認定し
ていたというもの。これでは正に権力者が邪魔者を閉じ込め
るための手段に思える。実際に本作ではそんな風に取れる話
もあり、中々奥深い作品だ。と言っても描き方は前作と同様
のハートフルコメディで、精神病とされた患者が繰り広げる
温かいドラマが風光明媚なトスカーナを背景に展開される。
因にその司法精神病院も遂に今年2月に廃絶されたそうで、
日本とは違うお国柄も見える作品だ。公開は7月上旬、東京
はシネスイッチ銀座他で全国順次ロードショウ。)
『獣道』
(2017年4月2日題名紹介『ダブルミンツ』などの内田英治
脚本、監督による作品。不良や暴走族が屯する地方都市を舞
台に、宗教依存症の母親によって教団施設で育ったが、それ
が違法教団として摘発されて保護された少女と、彼女に理解
を示して見守る不良少年を主人公にした物語が展開される。
出演は、共に子役出身の伊藤沙莉と須賀健太。その脇をハー
フ芸人のアントニー、韓英恵、広田レオナ、でんでん、矢部
太郎、近藤芳正らが固めている。かなり突飛な題材で特に宗
教問題は微妙なものだが、それなりに物語は作られている。
なお撮影には、ロケ地の警察の監視の下で地元の暴走族など
も参加しているそうだ。公開は7月15日より、東京はシネマ
ート新宿でレイトショウ。)
『結婚』
(2016年8月7日題名紹介『だれかの木琴』などの直木賞作
家井上荒野の原作を、NHK『あさが来た』のディーン・フ
ジオカ主演、同番組の演出を手掛けた西谷真一の監督で映像
化した作品。フジオカが演じるのは結婚詐欺師。甘い言葉で
女を誘い結婚を口実に金を巻き上げる手口だが、この男には
少し謎の部分があった。共演はNHK『まれ』の柊子。他に
貫地谷しほり、萬田久子、古舘寛治、松本若菜、安藤玉恵、
中村映里子らが脇を固めている。フジオカが如何にもという
感じで、男性としては何とも言えない作品だが、上述の謎の
部分で物語はちょっとファンタシーでもあり、その捻りは納
得できた。公開は6月24日より、東京は角川シネマ新宿他で
全国ロードショウ。)
『光』
(カンヌ国際映画祭に8度目の招待が決まった河�鹹照�監督
の最新作。視覚障碍者のための映画の音声ガイドを題材に、
ヴォランティアの女性と視力を失いつつあるカメラマンとの
交流が描かれる。音声ガイドについては多少の知識はあった
が、その大変な作業の実情が描かれる。そこに河�鶸篤弔蕕�
い人間模様が織り込まれ、見事な作品になっている。出演は
カンヌの常連の永瀬正敏と、2012年11月紹介『ユダ』などの
水崎綾女。他に舞台女優の神野三鈴、小市慢太郎、藤竜也ら
が脇を固めている。音声ガイドは画面そのものをイメージで
きるように語るもので、ラジオドラマのト書きとも異なる特
殊な情報を伝える。その難しさも理解できる作品だ。公開は
5月27日より、東京は丸の内TOEI他で全国ロードショウ。)
『身体を売ったらサヨウナラ』
(大手新聞社に採用されたものの学生時代のAV出演が暴露
された鈴木涼美の著書の映画化。現在は東大大学院に通って
いる主人公が自らの過去を論文に纏めるという設定で、現役
のAV監督や俳優、スカウトマンたちへのインタヴューを交
えて物語は描かれる。主演は新人の柴田千紘。その脇を筒井
真理子、久保田悠来、品川祐らが固めている。監督は上記の
『獣道』の内田英治。ただし本作脚本は製作者でもある伊藤
秀裕によるもので、ドキュドラマ的な作品に合わせて監督が
選ばれたそうだ。AVや風俗系のドキュメンタリーは過去に
もあるが、本作では都会の狭間に生きる女性という観点で描
かれているのが多少目新しい感じかな。公開は、2017年春と
だけ紹介されている。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。


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井口健二