井口健二のOn the Production
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2016年12月25日(日) ハードコア、君と100回目の恋

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『ハードコア』“Hardcore Henry”
2012年8月紹介『リンカーン/秘密の書』などのティムール
・ベクマンベトフ監督がプロデューサーとして参加している
FPS(First-person shooter)のゲームを模した一人称の
カメラ撮影によるアクション作品。
物語は、カメラの視点でもある主人公が目覚めるところから
始まる。そこは研究施設のような場所で、ベッドに寝かされ
た主人公は過去の記憶が蘇らないまま、切断された手足に女
性の手でメカニカルな義肢が装着される。
ところがそこに謎の一団が侵入し施設の破壊を始める。この
事態に主人公は辛くもその場を脱出するが、侵入者は主人公
の看護に当っていた女性を連れ去る。そこで主人公は女性の
救出に向かうことになるが…。
メカニカルの手足を装着された主人公は、まだ声帯が装着さ
れていないために喋ることはできないものの、身体能力では
驚異的な行動力を発揮し始める。という展開が、全編一人称
のカメラで描かれる。
そこでは銃撃戦から格闘技、また至近距離での爆発やバイク
アクション、さらにはフリークライミングによる外壁登りに
スカイアクションと、ありとあらゆるアクションシーンが、
一人称の視点で観られるのだ。
これはもう、これらのアクションを実体験している気分にも
させてくれる作品になっている。

出演は、2010年3月紹介『第9地区』などのシャールト・コ
プリー、2016年11月13日題名紹介『マグニフィセント・セブ
ン』などのヘイリー・ベネット。さらにロシア・モスクワ出
身のダニーラ・コズロフスキー、2016年1月紹介『ヘイトフ
ル・エイト』などのティム・ロスらが脇を固めている。
脚本と監督は、モスクワのパンクバンド「バイティング・エ
ルボーズ」のフロントマンを務めるイリヤ・ナイシュラー。
作品は、ナイシュラーが自分のバンドのPVとして製作した
短編をYouTubeにアップしたところ、それがベクマンベトフ
の目に留まり、ベクマンベトフからコンタクトが来て長編化
を勧められたというものだ。
そして撮影はゴープロというアクション用のカメラで行われ
たが、そのシステムが大画面での上映にマッチするかなど、
様々な実験や試行錯誤も行われたようだ。そこにはゴープロ
の開発チームも参加して綿密な準備が行われている。
しかし実際の撮影はオールモスクワロケで行われたものの、
悪天候や例年より早かった冬の訪れなどに中断を余儀なくさ
れ、遂には製作資金が底を突いてクラウドファンディングの
助けも得たとのことだ。
内容的には、2012年9月紹介『ユニバーサル・ソルジャー』
なども想起するものだが、FPSという視点のユニークさは
抜群で、特にフリークライミングのシーンなどは、本当に手
に汗を握る映像になっている。
一方、実は敵の侵入者のリーダーがテレキネシスを発揮して
いるらしいのだが、それがFPSでは垣間見られるだけで、
その辺のちょっともどかしさを感じさせる演出も巧みで良い
感じだった。
POV(Point of View)とは異なる新たな映像世界の誕生
とも言えそうだ。

公開は4月1日より、東京は新宿バルト9他で、全国ロード
ショウとなる。

『君と100回目の恋』
2014年10月紹介『マエストロ!』に続くシンガーソングライ
ターのmiwaがヒロインを務めるかなりファンタスティックな
要素を含む作品。
主人公は同じ大学に通う幼馴染の男子とバンドを組んでいる
女子。そのバンドは地元の花火大会のライヴステージに出演
することになっており、彼女はそのステージの後にイギリス
への留学が決まっている。
そんな彼女は幼馴染の男子に恋心を持っていたが、何事にも
卒がなくクールな彼にはまだ告白もしていない。その他にも
トラブルが発生し、モヤモヤした気分で臨んだステージは彼
女にとって最悪の出来だった。
そのため泣きながら会場を飛び出した彼女は、何と致命的な
事故に遭ってしまう。ところが彼女がふと目覚めると、彼女
の時間は事故の数日前に戻っていた。そして彼女が経験した
出来事が次々に繰り返されて行く。
何が起ったのか戸惑う彼女に、その謎の鍵を幼馴染の男子が
握っていた。

共演は、2015年11月1日付「第28回東京国際映画祭」で紹介
『残穢−住んではいけない部屋』などの坂口健太郎。他に、
2012年9月紹介『大奥〜永遠〜』などの竜星涼、2015年7月
紹介『TNGパトレイバー』などの真野恵里菜、2016年4月
紹介『秘密 THE TOP SECRET』などの泉澤祐希。
さらに田辺誠一、大石吾郎、2016年3月紹介『テラフォーマ
ーズ』などの太田莉菜、2012年7月紹介『ひみつのアッコち
ゃん』などの堀内敬子らが脇を固めている。
2015年NHK大河ドラマ『花燃ゆ』などの大島里美の脚本か
ら、監督は、東京藝術大学大学院映像研究科修了の月川翔が
担当した。
物語の展開は、2005年3月紹介『バタフライ・エフェクト』
を想起するものだが、時間を繰り返すほどドツボに嵌って行
くハリウッド作品に対して、本作ではそこに巻き込まれた主
人公たちの人としての在り方が追及されている。
その視点は間違いないものだし、SFファンとして作者がこ
の作品で描きたかったものは理解するところだ。しかし本作
では、肝心要の繰り返される出来事が曖昧で、運命を避けら
れない理由がはっきりしない。
それは勿論、そこに作者らの視点がないのは明らかだが、そ
れが描かれないとまるで主人公がバカにしか見えなくなって
しまう。つまり避けられないことが偶然であれ必然であれ、
観客にそれを提示することが作者の義務だと思うのだ。
それはかなり周到に考える必要があるものだし、作者の力量
がそこに至っていないのかもしれないが、観客を納得させる
何らかのアイデアは出すべきだし、それができない内は本作
は完成していないと思う。
口煩いSFファンの言い草だが、そこにちゃんと拘りがあれ
ば、本作は名作になり得たと思うのだ。

公開は2月4日より、全国ロードショウとなる。

この週は他に
『逆行』“River”
(ラオス農村部の診療所で働く白人の医師が、休養のため訪
れたリゾート地の島で殺人事件に巻き込まれる。しかも状況
から犯人とされた医師は辛くも島を脱出するが、共産国家の
威信に掛けた追跡が始まる。果たして彼は生き延びて自らの
嫌疑を晴らすことができるのか…? 2016年11月13日題名紹
介『バンコクナイツ』でも一部にラオスロケが行われていた
が、本作はほぼ全編ラオスで撮影されたもので、東南アジア
でもまた少し違った雰囲気が味わえる。主演はドナルド・サ
ザーランドの息子のロッシフ・サザーランド。脚本と監督は
本作が長編第1作のジェイミー・M・ダグ。異郷での逃亡劇
はかなりワクワクする作品だ。公開は3月11日より、東京は
渋谷ユーロスペース他で、全国順次ロードショウ。)
『恋愛奇譚集』
(日本でも雑誌やCMのモデルとして活動している台湾女優
ヤオ・アイニンが日本映画に初主演した作品。福島県の田園
地帯を背景に、コミュニケーションのもどかしさをちょっと
ファンタスティックな要素も織り込みながら描いて行く。共
演は2008年11月紹介『ヘブンズ・ドア』に出演の和田聰宏と
福田麻由子、2011年6月紹介『極道めし』などの内田慈。脚
本は2007年9月紹介『未来予想図』などの狗飼恭子、監督は
2016年1月紹介『華魂 幻影』に助監督として参加していた
倉本雷大。ファンタスティックな部分と本筋との関りは多少
微妙だが、全体はテーマ性も明確な作品になっている。公開
は2月4日より、新宿シネマカリテ、フォーラム福島他で、
全国順次ロードショウ。)
『ザ・コンサルタント』“The Accountant”
(2012年9月紹介『アルゴ』などのベン・アフレックが裏社
会に君臨する会計コンサルタントに扮する捻りの利いたヒー
ロー(?)アクション。そんな主人公が、ある企業の数10年
に亙る不正経理を見破ったことから危機に見舞われる。それ
は財務省やマフィアも巻き込んだ事件となる。共演は2013年
6月紹介『エンド・オブ・ウォッチ』などのアナ・ケンドリ
ックと、2015年8月紹介『Re:LIFE〜リライフ〜』などのJ
・K・シモンズ。アフレックはブルース・ウェインに扮する
『ジャスティス』も控えているが、本作では数字に天才的な
頭脳を発揮する一方で、重火器の扱いにも優れた新たなヒー
ロー像に挑戦している。公開は1月21日より、東京は丸の内
ピカデリー、新宿ピカデリー他で、全国ロードショウ。)
『アシュラ』“아수라”
(不正の蔓延る韓国で、開発の進む地方都市を舞台に、不正
にまみれた市長に関る警察官の姿が描かれる。中央政界から
地方自治体まで、韓国の不正体質は繰り返し映画化されてき
たが、さらに本作では主人公の正義感も曖昧で、それは強烈
な作品になっている。脚本監督は2003年9月紹介『MUSA
-武士-』などのキム・ソンス。出演は『MUSA』にも出て
いたチョン・ウソンと、2009年1月紹介『アンティーク』な
どのチュ・ジフン。さらに2008年8月紹介『ハピネス』など
のファン・ジョンミン、2011年7月紹介『アジョシ』などの
クァク・ドウォンらが脇を固めている。体制べったりの日本
映画では、まずはお目に掛れない作品だ。公開は3月4日よ
り、東京は新宿武蔵野館他で、全国順次ロードショウ。)
『相棒 劇場版�検�
(テレビでも高視聴率を続ける水谷豊主演シリーズの劇場版
第4作。物語の背景は数年前に海外で起きた邦人拉致事件。
その因縁が国内での大規模テロ事件となって甦る。自国民の
安全か国際テロとの対決か。弱腰な政府の思惑が揺れ動く中
で、その謎を解くため、仲間由紀恵、及川光博、石坂浩二ら
劇場版ならではのメムバーも参戦する。ゲストは北村一輝、
山口まゆ、鹿賀丈史。脚本と監督は、テレビシリーズも手掛
ける太田愛と橋本一。僕は劇場版を観るのは初めてだが、後
半には大掛かりなモブシーンなども登場して、映画館の大画
面でこそ楽しめる、テレビ画面には収まり切れないスケール
の作品に仕上げられていた。公開は2月11日より、全国ロー
ドショウ。)
『彼らが本気で編むときは』
(ジャニーズ生田斗真が性転換者に扮して、セクシャル・マ
イノリティの問題に迫るドラマ作品。物語の中心は小学生の
少女。母子家庭の母親に生活力がなく、その母親が家を出て
しまい彼女は叔父の家に向かう。ところがその家で妻と紹介
されたのは性転換者だった。脚本と監督は、2006年1月紹介
『かもめ食堂』などの荻上直子。今までの作品では癒し系な
どとも呼ばれる監督が、アメリカ留学時の自らの体験などを
踏まえて新たなジャンルに踏み出した作品だ。共演は桐谷健
太、柿原りんか。その脇をミムラ、小池栄子、りりィ、門脇
麦、田中美佐子らが固めている。題名は主人公らが或る物を
手編みで作ることに由来するが、その件では居住まいを正す
思いがした。公開は2月25日より、全国ロードショウ。)
『スプリング、ハズ、カム』
(広島から上京して東京の大学に通う一人娘。その暮らす場
所を探すために、冬の一日を東京世田谷で過ごす父子の姿を
追ったロードムーヴィ風の作品。それは最初は不動産屋の案
内で、続いては住むことになるアパートの大家と一緒、そし
て最後は何故か異国人と共に。祖師ヶ谷大蔵のウルトラマン
のバナーなども登場して、東京で暮らしている人間が観ても
ちょっと新鮮な想いのする物語が展開される。そしてそこに
親から子への深い思いが描かれる。出演は、落語家の柳家喬
太郎と2015年『ソロモンの偽証』などの石井杏奈。他に声優
の朴璐美、お笑いトリオ「東京03」の角田晃広らが脇を固め
ている。脚本と監督は2012年『あかぼし』の吉野竜平。公開
は2月18日より、新宿武蔵野館にてモーニングショウ。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。


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井口健二