井口健二のOn the Production
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2017年01月01日(日) 2016年Best 10、動物戦隊ジュウオウジャーvsニンニンジャー

 明けましておめでとうございます。
 本年もよろしくお願いいたします。
 今回は新年第1回ということで、2016年の僕的ベスト10を
発表したいと思います。選考対象は2016年度の公開作品で、
試写を観せて貰った中から選びます。
 まずはSF/ファンタシー映画:
1位:太陽(1月24日紹介)
2位:バットマンvsスーパーマン(紹介なし)
3位:10クローバーフィールド・レーン(5月15日紹介)
4位:あやつり糸の世界(2月7日紹介)
5位:オートマタ(2015年12月13日紹介)
6位:スキャナー(2月28日紹介)
7位:ポッピンQ(12月11日紹介)
8位:デッドプール(3月20日紹介)
9位:バイオハザード:ザ・ファイナル(12月18日紹介)
10位:エルストリー1976(11月13日紹介)
 1位の作品に関しては、正直に言って日本のSF映画でこ
のレヴェルの作品が出てくることは予想しなかった。昨年は
園子温監督の『ひそひそ星』(3月6日紹介)や、阪本順治
監督の『団地』(4月3日紹介)もあったが、SFマインド
そのもので本作は頭抜けている感じがした。
 2位の作品は完成披露試写が火曜日で公開が金曜日という
日程では紹介の機会を失ったものだ。ワンダーウーマンの登
場も嬉しかったし、最後に小石が動くシーンには、当然では
あるのだがその見せ方に興奮した。
 3位は、前作のファンにはテイストの違いで否定的な人も
多かったようだが、本作を単独で観ると往年の『ミステリー
ゾーン』へのオマージュと取れるところもあり、前作の二番
煎じにしなかった点でも得心したものだ。
 4位は、1973年という製作年度でこの内容を描いたことに
驚嘆した。先に原作小説があったとは言え、この時代にこう
いう作品が発想されたことが素晴らしい。
 5位は『2001年宇宙の旅』の見事な焼き直しと言える作品
で、背景や設定は大幅に異なるのに、その物語を巧みに再話
しているのが面白かった。特に結末の逆転は、時代の変化を
感じさせた。
 6位は東映の作品。少し後には松竹の『秘密』(4月24日
紹介)もあって日本の大手もそれなりに頑張っている。SF
的には松竹作品の方が上かも知れないが、僕は本作の方が気
に入った。
 7位は東映のアニメーション。同じ時期にはワーナーから
『モンスターストライク』(12月4日紹介)も公開されてい
るが、本作は今後の展開も期待して選ぶことにした。
 8位は、マーヴェル映画では『X−MEN』と『アヴェン
ジャーズ』の間に位置する作品だが、年明けには『ドクター
・ストレンジ』(12月4日紹介)もあり、今後も複雑な展開
が楽しみだ。
 9位は、2001年にスタートしたシリーズがようやくファイ
ナルを迎えた感慨にも浸れる作品。前作、前々作に比べると
多少物足りなく感じる人もいると思うが、これがこのシリー
ズの本来の姿なのだ。シリーズを全うした監督と主演女優に
敬意を表したい。
 10位は『スターウォーズ』第1作の制作に纏わるドキュメ
ンタリー。再開作もスピンオフも試写を観ていないので選ば
なかったが、本作では1976年当時のSF映画事情も垣間見え
て、さらにその後のブームの記憶も甦った。
 続いて一般映画はベスト5で、
1位:トランボ(4月24日紹介)
2位:シチズンフォー スノーデンの暴露(3月20日紹介)
3位:シアター・プノンペン(5月29日紹介)
4位:コロニア(6月19日紹介)
5位:シークレット・オブ・モンスター(9月4日紹介)
 内容はそれぞれの紹介記事を参照してください。

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『動物戦隊ジュウオウジャーvsニンニンジャー
       未来からのメッセージ from スーパー戦隊』
テレビの人気番組の劇場版で、僕は今までこの種類の作品は
あまり観てこなかったが、昨年からは何本か鑑賞してこれが
意外と考えて作られているのに感心した。
物語は40代目スーパー戦隊ジュウオウジャーの面々が河原に
遊びに来ているところから始まる。そこは人里から少し離れ
た場所で、そこで彼らは本来のジューマンの姿で自然を満喫
していたのだが…。
そこに忍者装束の一団が襲い掛かる。彼らは39代目スーパー
戦隊ニンニンジャーの面々で、1年前まで妖怪と闘ってきた
彼らはジューマン姿のジュウオウジャーを妖怪と誤解してし
まったのだ。
そんな中、闘っていたジュウオウイーグルとアカニンジャー
の前に1人の少年が現れ、アカニンジャーの息子と言う少年
は、この誤解が解けぬまま翌日の決戦で両者が全滅し、スー
パー戦隊の歴史が終ってしまうと告げる。
その言葉を信じた2人はそれぞれのメムバーたちの闘いを止
めようとするのだが、勢いの付いた彼らを止めることはでき
なかった。果たしてスーパー戦隊の歴史はこれで終ってしま
うのか?
とまあ、お話自体はお子様向けの至って他愛もないものなの
だが…。大体、明日の決戦で死んでしまうアカニンジャーの
息子って完璧なタイムパラドックスじゃんと思って観ている
と、これが実に巧みにパラドックスを解消してくれる。
しかもそれが大人の目からすると、え、それって良いの?
と思うような展開だし、さらにそれが番組編成の形態を巧み
に突いているもので、これには思わずニヤリとしてしまった
ところだ。
正直、こんなことは子供向けなら適当に誤魔化せばいいだろ
うと思える内容だが、その辺をしっかりと辻褄合わせをして
いることに感心した。その他にも途中のシーンもしっかりと
押さえられているし、これは見事な作品だ。
恐らくお子様の目も肥えてきて、生半可だと突っ込まれてし
まうのかもしれないが、こういう目を持った子供が増えてく
れば、SFの将来も少しは明るくなるのかなと期待もしてし
まったところだ。

出演は、ジュウオウジャーの中尾暢樹、柳美稀、南羽翔平、
渡邉剣、立石晴香、國島直希と寺島進。またニンニンジャー
の西川俊介、松本岳、中村嘉惟人、矢野優花、山谷花純、多
和田秀弥と矢柴俊博。それに石川樹。
脚本は、2016年7月31日題名紹介『動物戦隊ジュウオウジャ
ードキドキサーカスパニック!』などの香村純子、監督は、
2014年『烈車戦隊トッキュウジャーTHE MOVIE ギャラクシー
ラインSOS』などの竹本昇が担当した。
なお本作では、次期41代目スーパー戦隊キュウレンジャーの
お披露目もあり、またスーパー戦隊40周年記念ということで
過去のメムバーも勢ぞろいして、そこでは嶋大輔が声の出演
をしている。

公開は1月14日より、全国ロードショウとなる。

この週は他に
『ラビング 愛という名前のふたり』“Loving”
(2016年11月紹介『ニュートン・ナイト』でも触れられてい
た異人種間の結婚を禁止する法律を巡る実話の映画化。舞台
はアメリカ東部のヴァージニア州。そこで暮らす白人の男性
が黒人の女性と結婚したという理由だけで逮捕される。結婚
という犯罪。その判決は当然有罪。ただし執行猶予が付くが
その期間は25年間。その間は法律の及ぶ州内からの退去が命
じられ、その後も一緒に戻ることは禁じられる。つまり彼ら
は永久に故郷を追われることになる。正に差別国家アメリカ
の暗黒史というべき作品だが、最後は連邦最高裁で争われた
この裁判の結審が1967年だというのだから…。日本人もその
対象者だということも心に留めて観て欲しい作品だ。公開は
3月、全国ロードショウが予定されている。)
『マリアンヌ』“Allied”
(ロバート・ゼメキス監督、ブラッド・ピットとマリオン・
コティヤールの共演で、第2次世界大戦ヨーロッパ戦線での
スパイの活動を描いた作品。始まりはカサブランカ。そこで
カナダ(ケベック)人の男とフランス人の女は初対面であり
ながら長年連れ添った夫婦を装い、連携して危険な任務を遂
行する。ところがその装いは本気の恋心に発展して戦時下の
イギリスで結婚。しかしそんな2人には過酷な運命が待ち受
けていた。脚本は2002年『堕天使のパスポート』でオスカー
候補になったスティーヴン・ナイト。脚本には第2次大戦中
のフランスの微妙な立場などが反映され、これはあり得ると
思わせる物語が展開されている。公開は2月10日より、全国
ロードショウ。)
『サクロモンテの丘 ロマの洞窟フラメンコ』
        “Sacromonte: los sabios de la tribu”
(スペイン・アンダルシア地方・グラナダ県サクロモンテ地
区。そこは各地で迫害を受けたロマの人たちが集まり、やが
てそれがイスラム文化と融合してロマの文化が花開いた場所
だった。しかし1963年に水害が襲い、住民は全てを失い、住
む場所も無くなってしまう。そんなサクロモンテの丘に入り
込み、現代のロマの人々の生活ぶりを記録したドキュメンタ
リー。とは言っても被写体はロマ=ジプシー。集まった人々
はフラメンコを歌い、踊り、そこにインタヴューが挿入され
るが…。歌と踊りが観客を魅了して正直に言って途中からは
暮らしぶりより、その饗宴に目を奪われてしまった。公開は
2月18日より、有楽町スバル座、アップリンク渋谷他にて、
全国順次ロードショウ。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。


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