井口健二のOn the Production
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2016年11月06日(日) ブレア・ウィッチ、ドント・ブリーズ

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『ブレア・ウィッチ』“Blair Witch”
1999年公開『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』の正統と称
される続編。因に同作からは2001年に『ブレアウィッチ2』
が製作されているが、今後は無視されることになりそうだ。
物語は、1999年作で行方不明になったヘザー・ドナヒューの
弟がネット上に公開された姉の姿と思われる映像を見付ける
ところから始まる。そしてその映像の出所がメリーランド州
のブラックヒルと知った弟は3人の仲間を募り、最新の装備
で姉の後を追うことにするが…。

出演は、2012年6月紹介『ウォーキング・デッド:シーズン
2』などのジェームズ・アレン・マキューン、2014年1月紹
介『マチェーテ・キルズ』に出ていたというカリー・ヘルナ
ンデス、ブロードウェイの舞台出身のコービン・レイド、そ
して2013年2月紹介『シュガー・ラッシュ』で声優をしてい
たブランドン・スコット。
監督は2013年8月紹介『サプライズ』などのアダム・ウィン
ガード、脚本も同作のサイモン・バレットが担当した。
1999年のオリジナルは、その後に多数の模倣作が製作されて
found footageブームの切っ掛けとされるものだが、当時は
まだ撮影機材も充分ではなく、その映像が発見されるという
のはそれなりに説得力があった。
しかし現代では、携帯電話にまで撮影機能が搭載され、社会
全体が映像化されていると言えるくらいの状況で、ましてや
それが容易に配信できるという情勢では、found footageと
いう設定そのものが説得力を持ちにくい。
その中で本作は、前作の存在を核に置くことで、それなりの
成立性は持たせられたと感じるものだ。ただそれがそれだけ
で終ってしまっているのはちょっともったいない。やるなら
ただ姉の後を追うだけではない何かが欲しかった。
そしていよいよ森への侵入となるのだが、そこで今回は各自
が装着するイア・マウントカメラなど複数の撮影機材が投入
される。しかしこれは事後に回収されて本作が生み出される
というポイントを曖昧にしてしまう。
ただしこの点に関しては他の作品でも同様で、この問題を解
決した作品になかなかお目に掛れないのは残念だ。ネットの
専門家でも企画に入れて工夫をすれば、何か方法は見つかる
と思うのだが。
この他に本作ではドローンの登場もあるが、これももう少し
活躍させて欲しかったかな。ただ上って降りるだけでなく、
最後の家の中まで行ければ、もっと大活躍できたのではない
だろうか。

公開は12月1日より、東京はTOHOシネマズ六本木ヒルズ他に
て、全国ロードショウとなる。

『ドント・ブリーズ』“Don't Breathe”
2013年4月紹介『死霊のはらわた』のリメイク版を手掛けた
フェデ・アルバレス監督が、再度サム・ライミ(製作)と組
んだサスペンス・スリラー作品。
主人公らは、セキュリティ会社を経営する父親の立場を悪用
して狙った家の合いカギを入手し、さらに侵入後は警報装置
を解除して窃盗を繰り返していた。そんな彼らが次に目を付
けたのは空き家の並ぶ住宅地に住む独居の老人。
その老人には数年前に娘を事故で失い、その事故の示談金を
現金で隠し持っているという情報があった。しかもその老人
は戦争で失明しており、忍び込んで現金を奪うのは容易いこ
とだと思われたが…。

出演は、『死霊のはらわた』に続いてのジェーン・レヴィ、
2014年公開『とらわれて夏』などのディラン・ミネット、昨
年12月紹介『IT FOLLOWS』などのダニエル・ゾバット。それ
に2012年5月紹介『コナン・ザ・バーバリアン』などのステ
ィーヴン・ラング。
題名の意味は、盲人の老人が聴覚が鋭くて息遣いだけで場所
を定めてピストルを撃ちまくる。だから老人と同じ部屋に居
るときは息もしてはダメ…。しかもその老人が元軍人で滅法
強く、さらに部屋を真っ暗にして迫ってくる。
このシチュエーションには見事にやられた。その上、この後
の展開も強烈で、流石にサム・ライミが認めただけのことは
あるという感じがした。上映時間も88分と手ごろなもので、
とにかく面白かった。
因に試写の後で、「これは『ホーム・アローン』(1990年)
の裏返し」と語っている声が聞こえたが、ここで挙げるべき
はやはり1967年の『暗くなるまで待って』の方だろう。暗闇
がテーマだし、立場は逆でも主人公は女性だ。
さらに本作では、被害者であるはずの老人の設定も巧みで、
最終的には犯罪者である主人公に喝采したくなる。この多少
屈折した想いが観客に共犯者的な気分を植え付ける。これも
上手いと言える作品だった。
なお本作はホラーではなく、典型的なサスペンス作品だが、
この言葉は死語になってしまったのかな。

公開は12月16日より、東京はTOHOシネマズみゆき座ほかで、
全国ロードショウとなる。

この週は他に
『ミューズ・アカデミー』“La academia de las musas”
(2010年5月紹介『シルビアのいる街で』などのホセ・ルイ
ス・ゲリン監督による2015年製作の作品。バルセロナの大学
に勤めるイタリア人の教授が、ミューズの定義を求めてアカ
デミーを開講する。そこでは古典作品に登場するミューズな
どが検証されるが…。教授は饒舌だが何となく底が浅く、女
性の聴講生の反撃を受けてしまう。その模様がドキュメンタ
リー風に描かれる。上記の前作の紹介を読み返して、この監
督のやりたいことは変わっていないなと感心した。ただ上記
作ほどアートでなくなっているのが少し気になったが。公開
は2017年1月7日−29日に、東京都写真美術館ホールで開催
される監督特集の1本として上映される。)
を観たが、東京国際映画祭の報告もあり、全部は紹介できな
かった。申し訳ない。


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井口健二