井口健二のOn the Production
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2016年08月07日(日) BFG、ジャングル・ブック、お元気ですか?

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』“The BFG”
2005年7月紹介『チャーリーとチョコレート工場』の原作者
ロアルド・ダールが1982年に発表した同名の小説を、同年の
世界No.1ヒットを記録した『E.T.』のスティーヴン・スピ
ルバーグ監督&メリッサ・マシスン脚本で映画化した作品。
映画の中で明確な年号は出ていなかったと思うが、アメリカ
大統領がレーガンだった時代。ロンドンのとある児童施設で
暮らすソフィーは、眠れない夜の午前3時、ふと覗いた窓で
巨人と目が合ってしまう。そしてブランケットと共に摘み出
されたソフィーは巨人の国に連れて行かれる。
そこには、彼女を連れてきたBFGの他にもっと大きな巨人
が10人いて、奴らは時々人間の国にhumanbeanを食べに出か
けていた。その中で小柄なBFGは不味い野菜を食べながら
人間に夢を届ける優しい巨人だったが…。その秘密を守るた
めソフィーを連れてきたBFGも窮地に陥ってしまう。
それでも仕事を続けるBFGに、ソフィーは全ての問題を解
決するためのある計画を提案する。

出演は、スピルバーグ監督の前作では冷酷なソ連のスパイを
演じていたというマーク・ライランスと、半年以上を掛けた
オーディションで数千人の中から選ばれたというルビー・バ
ーンヒル。
他に、2012年10月紹介『マリーゴールド・ホテルで会いまし
ょう』などのペネロープ・ウィルトン、2014年5月紹介『ト
ランセンデンス』などのレベッカ・ホール、2012年12月紹介
『ライフ・オブ・パイ』などのレイフ・スポールらが脇を固
めている。
また、スピルバーグ、マシスン以外のスタッフでは、製作総
指揮キャスリーン・ケネディ、製作フランク・マーシャル、
音楽ジョン・ウィリアムスの『E.T.』の面々が再結集して
いる他。
さらに撮影監督には『シンドラーのリスト』でオスカー受賞
のヤヌス・カミンスキー、プロダクション・デザインは『リ
ンカーン』でオスカー受賞のリック・カーターなど、スピル
バーグ組とも言える顔ぶれが参集している。
というエンドクレジットも注目される作品だが、実はその中
に‘in memory of Melissa’という項目があって、本作は昨
年11月に他界した脚本家への追悼作にもなっている。マシス
ンは多作な人ではなかったが、ファンタシー映画の分野では
大きな足跡を残しており、65歳の死は惜しまれるところだ。

映画の公開9月17日より、全国ロードショウとなる。
なお今回は2Dでの試写だったが、3Dでの試写があったら
改めて紹介したいものだ。


『ジャングル・ブック』“The Jungle Book”3D吹替版
ラドヤード・キップリングが1894、95年に発表した児童文学
の映画化。ディズニーでは1967年にもアニメーションによる
映画化があるが、本作はその実写版というか、主役の少年は
実写だけどそれ以外の動物も背景も全てCGIという作品。
2016年6月5日付で題名紹介した作品を改めて3D吹替版で
鑑賞した。
物語の舞台は19世紀末のインド。その奥地のジャングルでは
人間の少年モーグリが狼の家族と共に暮らしていた。少年は
幼い頃にジャングルに置き去りにされ、黒豹のバギーラに発
見されて狼の長に預けられたのだ。
それから何年もの歳月が流れたが、人間の子供のモーグリの
成長は遅く成年狼の話し合い場には参加を許されなかった。
そんなある日、話し合いの場に虎のシア・カーンが現れ、人
間に恨みを持つ虎はモーグリの身柄を要求した。
しかし狼たちはその要求を撥ね退けるのだが、モーグリには
「人間の世界に帰る時が来た」と別離が要求される。そして
バギーラにも説得されたモーグリは人間の村に向かう道を辿
り始めるが…。

出演は、モーグリ役に約2000人のオーディションで選ばれた
ニール・セディの他は全てCGIという作品だが、その声優
には、ベン・キングズレー、ビル・マーレイ、イドリス・エ
ルバ、ルピタ・ニョンゴ、クリストファー・ウォーケン、ス
カーレット・ヨハンソンら錚々たる顔ぶれが並んでいる。
また吹替版でも、松本幸四郎、西田敏行、宮沢りえ、伊勢谷
友介らが声優を担当し、特に宮沢は前回紹介の『湯を沸かす
ほどの熱い愛』と併せると中々の感慨も覚えるものだ。
脚本は2009年2月紹介『ストリートファイター/レジェンド
・オブ・チュンリー』などのジャスティン・マーカス、監督
は2005年11月紹介『ザスーラ』などのジョン・ファヴローが
担当した。
というところで3D版を観直しての感想だが、実は本作の撮
影(と言ってもモーグリのシーンの撮影だが)にはARRIRAW
(3.4K) (dual-strip 3-D) という3Dの撮影システムが使用
されており、後付けではない3Dの迫力が伝わってくる。
それは他のキャラクターや背景などのCGIのシーンにも良
い影響を与えて、全体で近年ではベストと言える3D映像が
作り出されている。3D映画の最高峰が『アバター』である
ことは間違いないが、本作はそれに匹敵する。
この作品は3Dで観てこそ価値のある作品と言えるだろう。
また音楽では1967年版に最大の敬意が評されており、1967年
版でオスカー候補になった「ザ・ベアー・ネセシティ」や、
「君のようになりたい」「信じて欲しい」などの楽曲が新た
なイメージで作品を彩っている。
特に「信じて欲しい」は、ヨハンソンの歌声が吹替版のエン
ディングでも聞けるのが嬉しいところだ。

公開は8月11日より、3D/2D、IMAX-3D、4DXで全国
ロードショウとなる。

『お元気ですか?』
2016年1月紹介『復讐したい』などの室賀厚監督が、1990年
版『櫻の園』で女優デビューの宮澤美保を主演に迎えたドラ
マ作品。
登場するのは1人の女性。彼女は携帯電話で次々に電話を掛
け続けている。それは辞めたばかりの元の職場の店長や、小
学校の恩師、学生時代の悪友など。そんな彼女が山道でドラ
イヴに来ていた医大生のカップルに声を掛けられる。
そのカップルの姿に少し顔を曇らせる彼女だったが、2人の
誘いで次の目的地まで車で送って貰うことになる。そしてそ
の後も電話を掛け続ける彼女だったが、そんな彼女が10人目
に掛けた相手は…。

共演は、室賀監督の2013年作品『6月6日』にも出演の丸山
隼人と加藤藍子。他に『6月6日』に出演の田中俊、子役の
筧礼らが脇を固め、さらに菅田俊、長谷直美らがカメオ出演
している。
室賀監督は、元々はアクション映画が専門のようだが、僕は
上記の『復讐したい』の紹介でもドラマ部分を評価していた
ものだ。本作はそんな監督が脚本も手掛け、真っ向から人間
ドラマに挑んだ作品と言える。
その内容は、まあ映画を観馴れた者には作品の前半の内から
結末まで見通せるものだが、その展開は悪くないし、予想の
通りに進むことが心地良くも感じる作品だった。特に結末は
少しSF的なイメージも湧かせてくれた。
テーマ的には、僕は普段なら否定的な評価を下すものだが、
本作の場合は結末が見えている分、否定的な要素には繋がら
なかったし、それもベテラン監督の計算ずくなのかなとも思
えてきた。
いずれにしても、殺伐とした映画が多い中で、将来に希望を
持たせてくれる作品は積極的に評価したくなるものだ。

公開は10月15日より、東京は渋谷ユーロスペース他で、全国
順次ロードショウとなる。
因に本作の製作配給は、KOMピクチャーズとされているも
のだが、これはアクション映画監督の柏原寛司、大川俊道、
室賀厚の3人が設立した会社とのこと。同社では2008年製作
『STRAIGHT TO HEAVEN』と上記の『6月6日』に続く第3作
となるそうだ。

この週は他に
『過激派オペラ』
(2009年2月紹介『非女子図鑑』の中で「魁!!みっちゃん」
という作品の脚本も担当していた劇団毛皮族主宰江本純子に
よる監督デビュー作。女性劇団の旗揚げ公演から第2作に至
る顛末が描かれる。R15指定の作品で過激な描写もあるが、
全体は纏まりの良い作品になっている。映画の出演歴もある
監督はその辺よく判っているようで、今後も楽しみだ。)
『地獄に堕ちた野郎ども』
   “The Damned: Don't You Wish That We Were Dead”
(1976年に結成され、イギリス3大パンク・ロック・バンド
の一つと言われるダムドの軌跡を追ったドキュメンタリー。
離散集合の激しいバンドのようで、その状況などが描かれる
が、僕のようにその方面に疎い人間には「ああそうなんだ」
という感想しか浮かばない。ファンには贈り物だろう。)
『校庭に東風吹いて』
(1998年の調査で小学校低学年の児童の2%がこの症状を持
つとされる場面緘黙症を描いた沢口靖子主演のドラマ作品。
柴垣文子の小説を原作とするが、長津晴子の巧みな脚色が映
画に深みと広がりを持たせている。子役で2014年『まほろ駅
前狂騒曲』などの岩崎未来の演技も見事な作品だった。)
『アングリーバード』“Angry Birds”
(フィンランド発モバイルゲームを基にしたアニメーション
の劇場版。飛べない鳥たちの楽園を豚の軍団が襲い、奪われ
た卵を取り戻すため主人公のレッドらが立ち上がる。元々の
ゲームがプレーヤーの操作する鳥で豚を駆逐するというもの
で、それを踏まえた強烈な展開が映像化されている。)
『古都』
(1980年に山口百恵の2役で映画化された川端康成原作の再
映画化。松雪泰子が2役を演じる今回の作品では、京都と北
山に住む2人が結婚して娘がいるという設定でスタートし、
各々の娘の物語も展開される。そして物語の舞台はフランス
のパリにまで広がる豪華な作品になっている。)
『劇場版アイカツスターズ!』
(2012年に稼働が開始のトレーディングカード/アーケード
ゲームに基づくアニメーションシリーズで、今年スタートし
た新シリーズの劇場版。トップアイドルを目指す少女たちの
奮闘ぶりに宝探しの要素を加えた物語だが、それなりの展開
があったりして、お子様向けと侮るなかれだった。)
『だれかの木琴』
(普通の主婦がふと落ち込んでしまった真昼の陥穽。井上荒
野の小説を東陽一監督が映画化。常盤貴子、池松壮亮、勝村
政信、佐津川愛美という配役も面白い作品だった。)
『トレジャー オトナタチの贈り物。』“Comoara”
(ルーマニアの比較的下層階級の男性を主人公に、旧時代の
宝探しにのめり込んで行く姿を描く。探知機が鉄以外の金属
としたのに見つかった金属は鉄だけなど、途中の展開に少し
疑問はあるが、全体のコメディタッチは心地良い。カンヌ映
画祭の受賞も頷ける作品だ。)
『アスファルト』“Asphalte”
(パリ郊外の団地を舞台に、それぞれ孤独を抱える老若男女
を描いた群集劇。年上の元女優に憧れる少年や、我を通した
ために窮地に陥るさえない中年男、服役中の息子を持つ移民
の女性らの中に、何故か不時着したNASAの宇宙飛行士ま
でいて、それぞれが心温まるドラマを展開する。)
『JASON BOURNE』“Jason Bourne”
(2002年11月紹介『アイデンティティー』で始まったシリー
ズ第5作。2012年8月紹介『レガシー』は番外的だったが、
本作でマット・デイモン扮する本来の主人公が復帰し、新た
な展開が始まる序章のようだ。終盤に登場の車両の迫力には
圧倒された。)
を観たが全部は紹介できなかった。申し訳ない。


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