井口健二のOn the Production
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2016年07月17日(日) 西遊記 孫悟空 vs 白骨夫人、ミリキタニの猫/ミリキタニの記憶、GANTZ:O、東京タワーお化け屋敷第2弾「怪奇感視カメラ」

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『西遊記 孫悟空 vs 白骨夫人』
              “西遊記之孫悟空三打白骨精”
2015年公開、ドニー・イェン主演の『モンキー・マジック
孫悟空誕生』“西遊記之大鬧天宮”の続編。
前作も試写は観せて貰ったが、描かれていたのは孫悟空が天
界で大暴れをして五行山に封じ込められるまでの話で、その
話は知ってはいたけれど、そこはやはり三蔵法師に猪八戒、
沙悟浄との旅の話でないとちょっと親しみが湧いてこない感
じで、ここでの紹介は割愛した。
そこで今回は、いよいよその五行山に三蔵法師が立ち寄り、
孫悟空を開放しての旅の始まりが描かれる。そこに猪八戒、
沙悟浄も加わって、彼らが訪れたのは西域の町。その町では
白骨夫人と呼ばれる妖怪によって子供が誘拐され、親たちの
悲しみに溢れていた。
その妖怪退治を三蔵法師らは頼まれるのだが、白骨夫人の真
の狙いは食べれば永遠の命が得られるという高僧=三蔵法師
そのものにあった。しかも妖怪の手下を倒した悟空は、人間
を殺したとして三蔵法師から疎まれ、その隙を狙った白骨夫
人に三蔵法師が拉致されてしまう。

出演は、前作の後で続編には出演しないと宣言したドニーに
代って、前作では妖怪役に扮していたアーロン・クォック。
また相手役には新登場で2011年6月紹介『シャンハイ』など
のコン・リー。
他に、2013年公開『妖魔伝 レザレクション』などのウィリ
アム・フォン。さらに2009年2月紹介『エンプレス』などの
ケリー・チャンは前作と同じ役で出ていたようだ。
監督は前作に引き続き2011年8月紹介『アクシデント』など
のソイ・チェン。アクション監督は、前作のドニーに代って
2012年4月紹介『王朝の陰謀』などの大ベテラン、サモ・ハ
ン・キンポーが担当している。
出演者などの前作を上回る顔触れは、本作が前作の大ヒット
を受けての作品であることの証だろう。とは言えそれは中国
でのお話、実は本作の原版は3Dで、前作もそうだったが本
作でも随所に3Dの効果を狙ったシーンが登場する。
ところがそれが日本では2Dでしか観られないようで、この
損失感はかなり大きなものだ。それはハリウッドの3D映画
でも、シミュレーションによる後付けの3D作品の中には追
加料金が無駄と感じる場合もありはする。
しかし、前回紹介した『京劇〜覇王別姫〜』などのような、
それだけの価値のある作品もあるもので、それが日本で2D
公開となるのは真に残念に思うものだ。

公開は8月6日より、東京ではシネマート新宿、大阪はシネ
マート心斎橋他で、全国順次ロードショウとなる。
なお本作の公開は、6月19日に題名紹介の『ドラゴン・クロ
ニクル 妖魔塔の伝説』“九層妖塔”と、さらにもう1本の
『モンスター・ハント』“捉妖記”(VFXにILMが参加
したアクション作品)と共に、中国ファンタシー映画の上映
が3本同時に行われるものだ。

『ミリキタニの猫』“The Cats of Mirikitani”
『ミリキタニの記憶』
2007年7月10日付で紹介した作品が、短編を追加した特別篇
と称して再公開されることになり、改めて試写が行われた。
実は今回、以前に書いた自分の文章を読み返してみて、自分
の感想の本質的な部分は変わっていなかった。ただ思い返し
て当時の感覚としては、もっと9・11に引っ張られていたか
なという思いがあったのだが、今回作品を見直すとさほど大
きくは描かれていなかったものだ。
それほどに当時はまだ僕の方が冷静ではなかったのかも知れ
ない。その点では現地に住む女性監督の方がよほど冷静だっ
たようだ。そんな冷静な目で、ジミー・ツトム・ミリキタニ
の人生を的確に綴っていたのが、『ミリキタニの猫』という
作品だった。
ただしそれはアメリカ側での話、当時に観ていた時も対する
日本側のことが気になったが、それをアメリカ人の監督に要
求するのは筋違いだろう。そこを補完しているのが、今回の
上映に追加された『ミリキタニの記憶』、それは正に本編の
アペンディクスのような作品だ。
この短編では、判明した三力谷家の家系や、2007年の公開に
併せて行われた画家の再来日の様子などが綴られ、親族との
再会などが心地良く描かれている。それは決して新たな感動
などを求めるものではなく、極めて丁寧に基の作品の隙間を
埋めているものだ。

監督は、『ミリキタニの猫』の製作と撮影も務めたマサ・ヨ
シカワ(クレジットはmasa)。これでようやく安心できる。
そんな感じのする作品だった。
なお、本編『ミリキタニの猫』に関しては2007年7月10日付
の紹介文も併読していただきたいが、当時の紹介文には伏字
の処理がされていないのでご注意ください。

『GANTZ:O』
2011年に2部作で実写製作された奥浩哉原作のベストセラー
コミックスを、新たな視点で描いたフルCGアニメーション
作品。
不慮の死を遂げた主人公が目覚めると、そこはマンションの
一室で部屋の隅には大きな黒い球体が置かれている。さらに
部屋には先行のメムバーがいて、球体が発する命令に従って
特殊スーツに身を固め、異星人と闘う羽目に陥る。
そして闘いが終了すると各人ごとの採点が球体に表示され、
その得点に従って現世への帰還や、強力な武器の支給などが
行われる。また戦闘中の死は現実的なものだが、得点達成者
にはその復帰を希望することもできる。
そんなルールの許で、様々な異星人との果てしのない戦いが
繰り広げられて行く。正しくゲーム感覚という感じのストー
リー展開だが、今回はその中でも原作での人気が高いという
大阪篇が映画化されている。
そこに登場する敵は、ぬらりひょんを総大将とする正に百鬼
夜行の魑魅魍魎たちで、先の異星人という設定はどうなった
のかということは考えるが、まあそんなことは別にして妖怪
変化との闘いは面白く描かれていた。

脚本は2013年12月紹介『黒執事』などの黒岩勉。総監督とし
て『黒執事』などのさとうけいいちが名を連ねている。また
声優では、主人公のみ2015年12月紹介『新劇場版 頭文字D
Legend 3−夢現−』などの小野大輔と発表されているが、他
は情報解禁前となっているものだ。
実は実写版は劇場公開を観ているが、現世との関わりなどが
今一つ理解できなくてちょっと困惑したものだ。その点では
本作はそれなりに説明はされていたもので、原作の読者では
なくても納得は出来た。
ただまあウィキペディアなどを見ると、物語にはいろいろな
背景があるようで、その辺の大元の設定が映画だけではまだ
判らない。とは言え、その辺をちゃんとSFとして描くのは
かなり面倒そうで、このままいくのが正解なのかな。

公開は10月14日より、全国ロードショウが予定されている。

『東京タワーお化け屋敷第2弾「怪奇感視カメラ」』
映画会社の松竹が日本電波墱=東京タワーの地下一階で開催
するお化け屋敷。7月15日から9月4にまで開催されている
その会場を一般公開の前日に体験させて貰った。
松竹と東京タワーでは、実は昨年も「東京タワーに住み憑く
あの子」と題されたお化け屋敷を手掛けたそうで、その時は
体験会の案内を貰わなかったが、今回は案内のメールが届い
て一足先に体験することができた。
その今回の設定は、東京タワーの地下一階に設置された監視
カメラに様々な怪奇現象が映り、さらにカメラに映った人た
ちには不可解な詩が訪れた。そのため地下一階は封印され、
立ち入り禁止とされたが…。
2016年夏、真相を探るべく、地下一階の封印が解かれた…、
というもの。
会場の入り口にはその説明の映像が上映され、その上映時間
の間隔で会場内に入場者が導かれるという仕組みになってい
る。そのため前後には少し距離が開いて、暗がりの中を少人
数ごとに歩くことになる。
というところを僕は1人で歩いたが、まず会場を進む迷路が
上手く作られていて、何カ所かでは進む方向が見つからず、
それだけでも楽しめた。しかもそこに脅かしが加わる訳で、
これは連れと来たら楽しめそうだ。
実はその迷路で手こずっている内に後ろのグループが接近し
てきて、それは男性2人組だったようだが、かなり野太い声
が挙がっていた。僕自身何カ所かは息を飲んだりもしたもの
で、楽しめたことは間違いない。

この手のお化け屋敷では、富士急ハイランドの「戦慄迷宮」
が映画にもなって有名だが、都心では東京タワーの下という
ロケーションも良いし、大人入場料800円というのも手ごろ
で、手軽に楽しめるお化け屋敷というところだ。

この週は他に
『函館珈琲』
(2002年4月紹介『パコダテ人』を生んだ函館港イルミナシ
オン映画祭のシナリオ部門で、2013年の大賞・函館市長賞を
受賞した作品。未来を夢見る人々の集う貸店舗に入居した新
人作家のお話。5月22日付で題名紹介の『海すずめ』に似て
いるが…。図書館に代る古本屋は審査員の好みかな?)
『クワイ河に虹をかけた男』
(泰緬鉄道建設に関った元日本軍通訳が、タイ国の民間支援
を戦後一貫して独力で続けた姿を描いたドキュメンタリー。
政府がすべき謝罪を個人で続ける姿に頭が下がる。なお中で
紹介の“The Railway Man”は、2014年公開『レイルウェイ
運命の旅路』の原作だ。)
『オーバー・フェンス』
(2010年9月紹介『海炭市叙景』、2014年2月紹介『そこの
みにて光輝く』に続く佐藤泰志原作による映画化の第3弾。
いずれも人生をやりそこなった人々を描いているが、最終章
となる本作が、中では一番未来に希望を持てるようで、少し
心がほっとした。)
『ゴーストバスターズ』“Ghostbusters”
(1984年公開の大ヒット作のリメイク。物語はほぼ同じで、
ゴースト捕獲という異端の研究を続けてきた科学者たちが、
ニューヨークに蔓延るゴーストを駆逐し、街を救うまでが描
かれる。因に本作はシミュレーションによる3Dだが、巻頭
の幽霊屋敷の外観などは予想以上の3D感だった。)
『ジャニス リトル・ガール・ブルー』
              “Janis: Little Girl Blue”
(1970年に27歳で死去した女性シンガー、ジャニス・ジョプ
リンの生涯を描いたドキュメンタリー。彼女が一躍注目を浴
びたモントレー・ポップ・フェスティバルの映像からテレビ
出演の映像、さらに妹の証言などでジョプリンの実像が浮き
彫りにされる。)
『TSUKIJI WONDERLAND(築地ワンダーランド)』
(11月に豊洲への移転が決まっている築地市場の内部を1年
を掛けて撮影した最初にして最後の公式ドキュメンタリー。
築地独自の形態とされる仲卸の姿を中心に、その存在の意味
などが語られ、日本の食文化を支えてきた築地の根本が描き
出される。)
『ジェーン』“Jane Got a Gun”
(前々回紹介『セルフ/レス覚醒した記憶』と同じ2011年の
The Black Listで9票を得た脚本の映画化。南北戦争に出征
して別れ別れになった男女。その女性がお尋ね者でギャング
団からも命を狙われる夫を守るために、元の恋人に助けを求
める。ナタリー・ポートマンが脚本にほれ込み、自ら製作・
主演している。)
『アイ・ソー・ザ・ライト』“I Saw the Light”
(米カントリー音楽の歴史において最も重要な人物とされる
ハンク・ウィリアムスの生涯を、2011年5月紹介『マイティ
・ソー』などのトム・ヒデルストン主演で映画化した作品。
ヒデルストンは劇中の全楽曲を自分で歌っている他、エンド
ロールの「ジャンバラヤ」も彼の歌唱になっている。)
を観たが全部は紹介できなかった。申し訳ない。


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