井口健二のOn the Production
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2016年07月03日(日) セルフ/レス覚醒した記憶、グランド・イリュージョン 見破られたトリック

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『セルフ/レス覚醒した記憶』“Self/Less”
2012年6月紹介『白雪姫と鏡の女王』などのターセム・シン
監督が、2011年のThe Black Listで6票を得たデイヴィッド
&アレックス・パスターの脚本を映画化した作品。
最初に登場するのは、事業で成功を収めた男。しかし厳格な
性格ゆえに愛する娘とは理解し合えぬままに晩年を迎え、し
かも病で余命を宣告されてしまう。そんな男に1枚のメモが
届く。それは彼の精神をそのままに、健康な新たな肉体を得
られるというものだった。
その提案を受け入れた主人公は偽装された死を迎え、密かに
運ばれた研究所で新しい肉体への精神の転移が行われる。そ
の肉体は試験官で作られたものと説明されていたのだが…。
主人公が与えられた薬を飲み忘れたとき、自分のものではな
い記憶がよみがえり始める。

出演は、2016年1月紹介『ザ・ウォーク』などのベン・キン
グスレーと、2016年3月紹介『デッドプール』などのライア
ン・レイノルズ。
他に2010年7月紹介『シングルマン』などのマシュー・グー
ド、2013年6月紹介『エンド・オブ・ウォッチ』などのナタ
リー・マルティネス、2014年7月紹介『フライト・ゲーム』
などのミシェル・ドッカリーらが脇を固めている。
邦題の副題を観た時には、2014年3月紹介『ロボコップ』や
2012年9月紹介『ユニバーサル・ソルジャー』といった辺り
を予想していた。しかし本作はどちらかというとリインカー
ネイションもので、そこにこの副題はどちらかというとネタ
バレになる恐れもあるものだ。
それでまあ結末もあらかた予想できてしまうのだが、本作で
はそこに至る物語にいろいろ工夫があって、それは特に主人
公の心境の変化などが、巧みに描かれた作品になっている。
それもThe Black Listに選ばれた所以であろう。
また論評の中には1966年製作、1970年日本公開のジョン・フ
ランケンハイマー監督作品『セコンド』のパクリと称してい
るものもあったが、確かに主人公が導かれる手法などは似て
いるものの、物語の本質は全く異なるものだ。そのオリジナ
リティを認めないのはおかしな話だ。
レイノルズは『デッドプール』から一転の真面目な役柄で、
彼の演技も楽しめた。因にレイノルズの人格が入れ替わる作
品では、2011年に“The Change-Up”という作品があって、
さらに2016年に“Criminal”という作品が予定されていて、
3部作になるそうだ。

公開は9月1日より、TOHOシネマズシャンテ他で、全国ロー
ドショウとなる。

『グランド・イリュージョン 見破られたトリック』
                  “Now You See Me 2”
イリュージョニストにして盗賊(義賊)フォー・ホースメン
の活躍を描く2013年10月に紹介した作品の続編。
前作の最後で捜査陣を煙に巻いて逃走した面々は、その後は
各地に潜伏していたようだ。しかしそんな彼らに再び召集の
指令が掛かる。その標的は巨大IT企業。その新製品プレゼン
テーションを乗っ取り、新製品に隠された陰謀を暴露すると
いうものだ。
ところが彼らのイリュージョンが佳境になった時、さらなる
乗っ取り起き、そこにFBIも突入してホースメンは逃亡を
余儀なくされる。しかも彼らが準備した逃亡経路で辿り着い
たのは、思いもよらない場所だった。それらは新たなる挑戦
者が用意したものだったのだ。
斯くして窮地に追い込まれたホースメンは、一発逆転のため
のイリュージョンを仕掛けることになるが…。

出演は、前作に続いてのジェシー・アイゼンバーグ、マーク
・ラファロ、ウディ・ハレルスン、デイヴ・フランコに加え
て、新たに2008年『クローバーフィールド/HAKAISHA』などの
リジー・キャプランが新登場。
さらにモーガン・フリーマン、マイクル・ケインに加えて、
ダニエル・ラドクリフ、2012年11月紹介『ブラッド・ウェポ
ン』などのジェイ・チョウらが脇を固めている。
製作と脚本は前作にも参加したエド・ソロモン、共同脚本で
2009年8月紹介『あなたは私の婿になる』などのピーター・
チアレッリ。また共同プロデューサーとしてイリュージョニ
ストのデヴィッド・カッパーフィールドが名を連ねている。
監督は、2011年4月紹介『ジャスティン・ビーバー/ネヴァ
ー・セイ・ネヴァー』などのジョン・チュウが担当した。
前回の紹介ではmagicというセリフの意味を考えたが、本作
を観ると僕の予想とは違う方向性だったようだ。でもまあ、
正直に言って前作ではちょっと退いた部分も本作で見事に解
消され、正真正銘のエンターテインメントに仕上げられてい
る。さらに続編の期待ができるのも嬉しいところだ。
それにしても前作は、この続編を考慮して作られていたのか
な? それくらいに見事に嵌る作品だった。しかもVFX多
用のイリュージョンは今回も華麗に決まっているが、それら
が劇中で種明かしされるのも本作の見どころで、その虚構と
現実の狭間も本作の魅力と言えそうだ。
因に監修のカッパーフィールドに言わせると、本作に登場す
るイリュージョンは全て現実にも実行可能とのことだが…。
いずれにしても見事なエンターテインメント作品だ。

公開は9月1日より、東京はTOHOシネマズ日本橋他で、全国
ロードショウとなる。

この週は他に
『栄光のランナー 1936ベルリン』“Race”
(ナチスが主催するベルリン・オリンピックでアメリカ代表
の黒人アスリート=ジェシー・オーエンスが4冠を達成する
までを描いた歴史ドラマ。ゲッペルスとブランデージの関係
なども描かれるが、映画ファン的にはレニ・リーフェンシュ
タールの登場や撮影風景の再現が興味深かった。)
『大怪獣モノ』
(2013年11月紹介『地球防衛未亡人』などの河崎実監督が、
夏の怪獣映画大作に対抗して発表する新作映画。東京に突如
出現した巨大怪獣に対して巨大化された人間の若者が挑む。
僕は監督のパロディ精神が好きだが、本作はちょっと違うよ
うだ。逆さまのワッペンの意味は何なのかな?)
『ゆずの葉ゆれて』
(椋鳩十児童文学賞受賞作の映画化。老いて頑なになった老
人と隣家の少年との交流が、老人の死後の出来事を織り交ぜ
て描かれる。劇中「大阪万博に行こう」のポスターが時代色
を出すが、その隣にフリーダイヤルの記載はいただけない。
その辺にももう少し気を使って欲しかった。)
『グッバイ、サマー』“Microbe et Gasoil”
(2007年2月紹介『恋愛睡眠のすすめ』などのミシェル・ゴ
ンリー監督による自伝的青春ドラマ。落ちこぼれの少年2人
が奇抜な方法で憧れのキャンプ地を目指す。登場する移動式
の家がちょっと良いセンスで、描かれた内容のどこまで実話
かは判らないが、観ていて冒険心をくすぐられた。)
『人生は狂詩曲』“Branbanconne”
(音楽大国とされるベルギーで、欧州決勝大会進出を目指す
2つのバンドの奮闘ぶりを描く。単一民族国家の日本では、
国内での民族対立などはよく判らないが。ヨーロッパの諸国
では歴史的な背景も深そうだ。でもそれを音楽に擬えて平和
的な解決を得るという展開は素晴らしい。)
『絶壁の上のトランペット』
(韓国のハン・サンヒ監督で、2010年6月紹介『最後の忠臣
蔵』などの桜庭ななみと韓国のアイドル?が共演するラブス
トーリー。物語的には『ゆずの葉ゆれて』に似たところもあ
るが、話しの繋がりが上手く整理されていない。ご当地もの
で見せたい物が沢山あり過ぎたようだ。)
『ヤング・アダルト・ニューヨーク』“While We're Young”
(2011年12月紹介『ペントハウス』などのベン・スティラー
の主演で、映画製作を目指す世代の異なる2組のカップルを
描いた作品。スティラーは旧世代の代表だが、彼が例として
『グーニーズ』を挙げた際に若い世代が一斉にスマホで検索
するシーンが登場してショックを受けた。)
『アンナとアントワーヌ 愛の前奏曲』“Un + une”
(1966年『男と女』のクロード・ルルーシュ監督が、50周年
を迎えて発表した2015年の作品。オリジナルとは設定が異な
るものの、思い掛けない出会いから始まる大人の恋が描かれ
る。オリジナルは当時に観ているが、その時は判らなかった
部分が今回は理解できた気がした。)
を観たが全部は紹介できなかった。申し訳ない。


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井口健二