井口健二のOn the Production
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2016年05月29日(日) ウィー・アー・ユア・フレンズ、シアター・プノンペン

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『ウィー・アー・ユア・フレンズ』
                “We Are Your Friends”
2013年6月紹介『ペーパーボーイ真夏の引力』などのザック
・エフロン主演で、ロサンゼルス郊外のサン・フェルナンド
を舞台にした青春ドラマ。
エフロンが演じるのはプロのDJを目指す若者。ある日彼が
出演する地元のクラブに人気者のヴェテランDJが来場し、
楽屋裏で意気投合した2人は街に繰り出す。それは酒と薬に
酔い痴れる一夜だった。
その途中でつぶれた主人公が目を覚ましたのは、人気者DJ
の自宅。そこで繰り広げたれるのは正に主人公が夢見る暮ら
しだった。しかもマネージャー兼恋人に紹介された主人公は
彼女の美しさにも心を惹かれる。
さらに人気者DJは彼に成功の秘訣を伝授し始める。それは
彼の才能も見込んだものだったが…。その一方で主人公は生
活のために不動産屋に勤めるが、そこはちょっと怪しげな雰
囲気の漂う場所だった。
そして事件が起きてしまう。

共演は、2014年11月紹介『インターステラー』に出ていたと
いうウェス・ベントリーと、2014年『ゴーン・ガール』に出
ていたというエミリー・タラコウスキー。
他に2013年4月紹介『マーヴェリックス』などのジョニー・
ウェストン、2011年4月紹介『赤ずきん』などのシャイロー
・フェルナンデス、2012年7月紹介『WIN WIN』でダメ少年
を演じたアレックス・シェイファーらが脇を固めている。
脚本と監督は、ナイキ、ペプシなどのコマーシャルを数多く
手がけ、最近までMTVで共同プロデューサー兼カメラマン
&ホスト役の番組も持っていたというマックス・ジョセフ。
本作は彼の長編デビュー作となる。
全体的には、極めてよくあるアメリカンドリームものという
感じだが、何となく現在より少し昔の話なのかな? 僕は以
前にも書いたように音楽に関しては全く明るくないのだが、
全体が少しレトロな雰囲気に撮られている感じがした。
そんな中で主人公がドラッグを摂取するシーンでは、思わぬ
VFXなども使われて、その映像が昔の『ヘビーメタル』や
LSD映画のような感じもして、そこではちょっと懐かしさ
も感じてしまう作品だった。

公開は6月24日より、東京は渋谷HUMAXシネマ、TOHOシネマ
ズ六本木ヒルズ、TOHOシネマズ新宿他で、全国ロードショウ
となる。

『シアター・プノンペン』“ដុំហ្វីលចុងក្រោយ”
2014年11月3日付「第27回東京国際映画祭《コンペティショ
ン以外》」で『遺されたフィルム』“The Last Reel”とし
て紹介した作品が一般公開されることになり、改めて試写が
行われた。
主人公はカンボジアの首都プノンペンに暮らす女子大学生。
病弱な母親と、軍人で厳格な父親、そして口うるさい弟との
生活は毎日がストレスの連続だったが、それでも大学の仲間
と夜の街に出かけるくらいは出来ていた。
そんなある日、彼女は廃屋と化した古い映画館で密かに上映
が行われていることを発見する。上映されていたのは1974年
製作の『長い家路』という作品。そしてそこに貼られたポス
ターには母親の若き日の姿が映っていた。
その映画に引き込まれるように見入った主人公は、映画製作
の翌年に樹立した政権によって映画の上映が禁止され、さら
にその後の内戦で映画の最終巻が失われていることを知る。
そして彼女は上映しているのが監督だと思う。
斯くして彼女は、生きる術を失ったかのような母親に生気を
取り戻させるべく、その最終巻を撮り直そうと思い立つのだ
が…。一方、上映を行っていた監督(?)も、若きにの女優に
生き写しの主人公に思いを巡らせる。
ポル・ポト政権時代の悲劇については1985年のオスカー助演
男優賞などを受賞した『キリング・フィールド』でも描かれ
ていたが、その後の内戦も含む人々への影響は描き尽されて
はいなかった。
そんな政権が行う恐怖を、別の角度から見事に描いた作品と
も言えるだろう。今年4月紹介『トランボ』も背景は違うが
同等の恐怖を描いたもので、文化の大きな担い手である映画
はこの様な恐怖に襲われる可能性は高いのだ。
とは言え本作では、その恐怖を少し別に視点から描いたもの
で、それは巧みな作劇と言えるものにもなっている。特に映
画の失われたリールを探すというテーマは、映画好きにとっ
てはロマンを掻き立てられるものだ。
さらに映画製作の裏側など、様々な要素が見事に重ね合わさ
れた作品にもなっている。そしてエンディングロールに登場
する映像は、強烈なメッセージとなって観客の胸に突き刺さ
るものだ。

主演は、1992年のオスカー外国語映画賞を受賞した『インド
シナ』に出ているそうだが本作が本格的なデビュー作となる
マー・リネット。共演には実際にポル・ポト時代を体験した
ソク・ソトゥンとディ・サヴェット。それに若手のトゥン・
ソーピー、ルオ・モニーらが脇を固めている。
脚本と監督は、2001年『トゥームレイダー』などのライン・
プロデューサーも務めたソト・クォーリーカー。脚本は元は
カンボジア在住のイギリス人イアン・マスターズが執筆した
ものだが、カンボジア人の視点に合わせて加筆したそうだ。
公開は7月2日〜7月29日に、東京は岩波ホールにてロード
ショウとなる。

この週は他に
『二重生活』
(直木賞作家小池真理子による「理由なき尾行」という異色
テーマの原作を、テレビ作品で数多くの受賞に輝く演出家の
岸善幸が初の劇映画作品として脚色・監督した作品。主演は
2016年1月紹介『太陽』などの門脇麦。)
『超高速!参勤交代リターンズ』
(一昨年公開された作品の続編。前作では解決策などに少し
物足りない感じがしたが、本作では人間模様などもしっかり
描き込まれて満足できた。何より物語が本当にリターンズな
のが良い。)
『夢二〜愛のとばしり〜』
(大正ロマンの代表とも言える画家・詩人竹久夢二の奔放な
生活ぶりを描いた作品。同種の作品では2011年11月紹介の作
品もあるが、敢えてそれに挑戦した心意気を買いたい。夢二
を駿河太郎、彦野を小宮有紗が演じる。)
『疑惑のチャンピオン』“The Program”
(ツール・ド・フランス7連覇を果たしたものの、ドーピン
グに関ったとされて、その名誉をはく奪されたアスリートを
描いた作品。作品では選手個人の問題ではないようにも描い
ているが、それを深く追及できないのが歯痒い。)
『いしぶみ』
(松山善三演出、杉村春子の朗読で1965年に放送され、その
年の芸術祭優秀賞やギャラクシー賞などを受賞した放送番組
『碑』を、是枝裕和監督、綾瀬はるかの朗読でリメイクした
作品。とにかく見事としか言いようのない作品だ。)
『暗殺』“암살”
(日本に併合された第2次世界大戦中における韓国臨時政府
の動きを描いた作品。作品的には一部歴史的事実も踏まえた
フィクションだが、当然あったと思える話が巧みに展開され
る。日本人としていろいろ考えさせられた。)
を観たが全部は紹介できなかった。申し訳ない。


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