井口健二のOn the Production
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2016年05月15日(日) 10クローバーフィールド・レーン、マネーモンスター

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『10クローバーフィールド・レーン』
                “10 Cloverfield Lane”
2008年日本公開された『クローバーフィールドHAKAISHA』の
続編。
物語の冒頭で本作のヒロインは車を運転しながら携帯電話の
着信に応答を躊躇っている。そしてようやく電話に出た彼女
は相手と口論になるが、その時、車に何かが衝突し、彼女は
気を失ってしまう。
その彼女の意識が戻ったのは牢獄のような場所、しかも彼女
は鎖で壁に繋がれ、腕には点滴をされていた。そしてロック
されたドアが開き、入ってきた男は彼女に「ここに居れば安
全だ」と告げる。
地下の牢獄のような場所にはもう1人の男性がいて、彼の言
葉を信じるなら、地球は何者かに襲われ、地表は毒ガスで覆
われたという。しかし話を信じられない彼女は脱出を図るの
だが…。
彼女が外部とのエアロックに辿り着いた時、顔の爛れた女が
現れて「入れてくれ」と叫び、その場所の意味と男性の話は
現実味を帯びてくる。

出演は、2012年8月紹介『リンカーン/秘密の書』などのメ
アリー・エリザベス・ウィンステッド、2016年4月紹介『ト
ランボ』などのジョン・グッドマン、それに2004年9月紹介
『エイプリルの七面鳥』などのジョン・ギャラガー・Jr.
監督は前作のマット・リーブスに代って新人のダン・トラク
テンバーグ。脚本はジョシュ・キャンベル、マット・ストゥ
ーケンの原案・脚本に、2014年『セッション』でオスカー候
補になったデイミアン・チャゼルが加わっている。
2008年作品の続編と聞いていたが、映画の進め方の違いには
かなり戸惑った。とは言え、それは2004年9月紹介『ソウ』
に似たところもあり、また今年のオスカー受賞作『ルーム』
にも通じて成程とも思わせた。
その一方で僕は、「ミステリーゾーン」のエピソード『水爆
落ちる』“One More Pallbearer”を思い出していた。その
話は、財を成したビジネスマンが自宅の核シェルターに知人
を招き、そこに核攻撃の情報が…というものだったが。
前作を観ている観客は侵略の事実を知っているが、ヒロイン
はそれを知らない。従って『ルーム』のヒロインには単純に
脱出して欲しいと願えるが、本作ではそうはいかないのだ。
そんなちょっと捻った感覚が巧みに展開さる作品だ。
因にエンドクレジットによると、本作のVFXには専門会社
の参加がなかったようだ。前作の時も特定の会社ではなく、
各社からの混成チームが手掛けていたが、そういうやり方で
もこれだけの作品が成立するというのも驚きだった。

公開は6月17日より、全国ロードショウとなる。

『マネーモンスター』“Money Monster”
ジョディ・フォスターの監督、ジョージ・クルーニーとジュ
リア・ロバーツの主演で、株式市場の闇を暴く作品。
物語の舞台は、経済情報専門のテレビ局FNN(Financial
News Network)の人気番組Money Monster。そこでは人気も
信頼も高いキャスターが軽妙な進行で株式投資のお勧めなど
を紹介している。
しかしその日は少し様子が違っていた。それは少し前に番組
で購入を勧めた株が暴落し、全米で8億ドルもの損失が生じ
たのだ。そこで番組ではその創業者へのインタヴューを取り
付けたが、直前になってキャンセルされてしまう。
しかし代わりに広報担当の女性重役が出演することになり、
創業者の乗ったプライヴェートジェットとの連絡が取れない
という彼女の言い訳を聞きながら番組の準備は進んで行った
が…。その裏では番組ジャックの準備も進んでいた。

共演は、アンジェリーナ・ジョリー監督の『不屈の男 アン
ブロークン』に主演したジャック・オコンネル。他に2012年
3月紹介『ジョン・カーター』などのドミニク・ウェスト、
2013年10月紹介『グランド・イリュージョン』などのカイト
リオーナ・バルフェらが脇を固めている。
脚本は、2004年12月紹介『ナショナル・トレジャー』などの
ジム・カウフとテレビ脚本家のアラン・ディフィオーレの原
案に、2011年6月紹介『親愛なるきみへ』などのジェイミー
・リンデンが参加して作られている。
FNN(Financial News Network)は1981年から1991年まで
実在した放送局で、デイトレーダーなどの株式市場の大衆化
にも貢献したメディアと言えるが、それは同時に株式の投機
化にも繋がったもので、そんな背景が本作にはある。
その一方で株式の電子取引による危険性なども描かれている
ようで、ある種の警鐘とも言える。ただ現実にこれが可能か
というと多分専門家は否定するのだろうが、それがひょっと
すると可能…? というのが本作のポイントなのだ。
作品的には監督と主演の2人の名前だけで充分という作品だ
が、内容をしっかり見ると現代を見据えたかなり深い作品と
も言える。ただ物語の黒幕は少し物足りないかな、ここには
もっとアッと驚くような仕掛けが欲しかった。
それにしても、女性監督でこのテーマというのもさすがとい
う感じがした。

公開は6月10日より、TOHOシネマズ日本橋他で、全国ロード
ショウとなる。

この週は他に
『カンパイ!世界が恋する日本酒』
           “Kampai! For the Love of Sake”
『ブレイク・ビーターズ』“Dessau Dancers”
『走れ、絶望に追いつかれない速さで』
『ラサへの歩き方 祈りの2400km』“岡仁波斉”
『全員、片想い』
『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』“Les héritiers”
『めぐりあう日』
      “Je vous souhaite d'être follement aimée”
『太陽のめざめ』“La tête haute”
を観たが全部は紹介できなかった。申し訳ない。


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井口健二