井口健二のOn the Production
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2016年03月20日(日) フィフス・ウェイブ、テラフォーマーズ、デッドプール、シチズンフォー スノーデンの暴露

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『フィフス・ウェイブ』“The 5th Wave”
SF/ファンタシー系の映画ファンには今一番愛されている
女優と言えるクロエ・グレース・モレッツの主演で、2013年
に発表されてNYタイムスベストセラーリストに21週間掲載
されたというリック・ヤンシー原作のヤングアダルト小説を
映画化した作品。
物語の主人公は、学内アメフト部の男子に密かな恋心を抱き
ながらもあまり積極的ではない女子高生。そんな普通の若者
の生活がある日一変する。それは巨大な飛行物体の襲来で、
やがてその物体が発する第1波の攻撃は、地上の電子機器を
停止させるものだった。
その攻撃に為す術もない人類を、津波など天変地異の第2波
の攻撃が襲う。そしてさらに第3波は未知ウィルスの感染。
第4波は異星人による侵攻で人類の99%は死亡してしまう。
こうして避難キャンプに逃れたごく少数に人々にようやく軍
の救援が辿り着くが、そこでも大人たちの多くが死亡。
斯くして侵略者への反攻は、残された子供たちに託すしか無
くなり、選ばれた子供たちはその期待に応えようと軍事教練
に励むことになるが…。果たして侵略者が繰り出す第5波の
攻撃とは? その攻撃を前に、主人公らの技量が試されるこ
とになる。

共演は、2015年『ジュラシックワールド』などのニック・ロ
ビンスン、今年公開のハリウッド版『ザ・リング』の続編に
も出演のアレックス・ロウ、2015年12月紹介『IT FOLLOWS』
などのマイカ・モンローと、本作映画デビューのザッカリー
・アーサー。
他に、2010年10月紹介『ウッドストックがやってくる!』な
どのリーヴ・シュライバー、2012年4月紹介『ミッシングI
D』などのマリア・ベッロらが脇を固めている。監督はイギ
リス出身で、本作がハリウッドデビューのJ・ブレイクスン
が担当した。
正直に言って、いたいけない子供が機関銃を構えている姿な
どは、それがドラマの映画であってもあまり観たくないもの
だ。実際に2009年3月紹介『ジョニー・マッド・ドッグ』の
ような作品を観てきていると、軽々にそれを描いてはいけな
いようにも考えてしまう。
とは言うものの本作では、青少年が武器を持つ経緯などはそ
れなりに考えられているようで、特にその背景にある部分が
納得できるようには作られていた。それが作品製作の意図で
あるかどうかは判らないが、それなりに穿った考え方は出来
るものだ。
その他の天変地異などのVFXも最近のハリウッド映画では
当然のように見事に描かれている。因に原作はすでに3部作
が発表されているもので、この後には“The Infinite Sea”
“The Last Star”という物語が続くことになるようだ。

公開は4月23日より、全国一斉ロードショウとなる。

『テラフォーマーズ』
貴家悠原作、橘賢一作画で2011年にスタートし、2013年版の
人気投票で1位を獲得したというコミックスを、2013年8月
紹介『ゲキ×シネ:シレンとラギ』などの中島かずき脚本、
2011年7月紹介『一命』などの三池崇史監督で映画化。
発端は21世紀の中葉、人口増加に歯止めのかからない人類は
火星の地球化(テラフォーミング)を行うべく地衣類とゴキ
ブリを送り込む。それから500年、火星のテラフォーミング
を見極めるべく15人の日本人が送り込まれることになる。と
ころがその隊員は何故か一癖ある者ばかりだった。
それでも何とか火星に辿り着いた彼らだったが、そこで彼ら
が遭遇したのは人間並みに巨大化し知能を持ったゴキブリ。
斯くしてテラフォーマーズと呼ばれる巨大ゴキブリとの壮絶
な戦いは始まる。しかも送り込まれた隊員たちには、戦いに
向かうある特殊な能力が持たされていた。
巨大化して知能を持つといってもゴキブリはゴキブリ、当然
駆除の対象と考えられている訳で、その戦いには容赦の欠片
もない。兎に角、蹴散らして蹴散らしてという、その手の描
写が好きな人には格好の展開となるものだが、あに図らんや
ゴキブリ側も人間以上の戦闘力を持っていた。

出演は、伊藤英明、武井咲、山下智久、山田孝之、小栗旬。
さらにケイン・コスギ、菊地凛子、加藤雅也、小池栄子、篠
田麻里子、滝藤賢一、太田莉菜、福島リラ、渋川清彦。現状
の日本映画界ではかなりマニアックと言える顔触れが揃えら
れている。
実は本作は先々週にも試写を観たが、その際は物語に矛盾を
感じ紹介を手控えた。ところが同様の感じは公開中の『僕だ
けがいない街』でもあったもので、ふと自分に誤解があった
かもという疑念が生じた。それで先の作品に関しては手遅れ
だったが、本作では再度試写を観せて貰ったものだ。
でまあ矛盾の何点かには台詞などで一応の説明があったが、
ある1点に関してはSFファンとしてやはり疑問が残るもの
だった。それはテラフォーマーがコミュニケーションシステ
ムを持っていることで、ここでタイムラグの問題は仕方ない
として、何故ここにあるのかの説明がない。
それは本作は大長編の端緒ということで、追々その説明はあ
るのかもしれないが、これを渡せる状況があった上での本作
の任務の意味とは何なのか、その疑問は解消できなかった。
この疑問が解消される続編が作られることを期待するもので
はあるのだが。

公開は4月29日より、全国一斉ロードショウとなる。

『デッドプール』“Deadpool”
2010年『ピープル』誌が選ぶ「最もセクシーな男」にも選ば
れた俳優ライアン・レイノルズが、アメコミ史上で最もいい
加減と言われるキャラクターに扮したマーヴェルコミックス
映画化作品。
主人公は元特殊部隊の隊員だが、酒や娼婦との放蕩暮らしの
果てにガンの余命宣告を受けてしまう。ところが、とある男
の誘いで死んで元々の人体実験に参加。そして過酷な試練の
末に驚異的な治癒能力と不死の肉体を手に入れてしまう。
斯くして元特殊部隊員の戦闘能力も活かしたヒーローの誕生
となるが、根っからのいい加減な性格は変わらず、アヴェン
ジャーズからの誘いも断って、独立独行のアンチヒーローの
道を歩み出す。
とは言え悪い奴には対抗する正義感は持ち合わせているよう
で、まずは彼の肉体を生み出し、自らも驚異的な肉体を得た
武器商人との闘いが開幕する。その闘いにはアヴェンジャー
ズからの支援も加わるが…。

共演は、2015年3月紹介TVシリーズ『GOTHAM』にも出演中
のモリーナ・バッカリン、2015年の『トランスポーター/イ
グニション』でジェイスン・ステイサムの跡を継いで2代目
運び屋を襲名のエド・スクレイン。
さらに2013年5月紹介『ワイルド・スピード/ユーロ・ミッ
ション』などのジーナ・カラーノ、2014年7月紹介『トラン
スフォーマー/ロストエイジ』などのT・J・ミラーらが脇
を固めている。
脚本は、2010年5月紹介『ゾンビランド』や2013年4月紹介
『G.I.ジョー バック2リベンジ』などのレット・リーズ
とポール・ワーニック。監督は2011年4月紹介『スコット・
ピルグリムvs.邪悪な元カレ軍団』などのVFXを手掛け、
本作で長編映画デビューのティム・ミラーが担当した。
主演のレイノルズは2011年7月紹介『グリーン・ランタン』
でもアメコミヒーローに扮したが、実は2009年公開の『ウル
ヴァリン:X-MEN ZERO』では先にデッドプールに扮している
など、かなり思入れはありそうだ。
それでまあこの2人のヒーローの役作りと言うか作品の乗り
はよく似たものになっている。ただし、比較的真面目な性格
だった前作に対して本作は、アメコミ史上最もいい加減とい
うことで、その乗りは本作の方が合っているのかな?
しかも映画中では一部のシーンにぼかしが入るなど、アメリ
カではR指定になったという作品でかなり強烈なもの。その
調子は日本では眉を顰める人も出そうな感じだ。でもそれな
りに楽しめる作品にはなっている。
因に『グリーン・ランタン』はDCコミックスの映画化で、
本作はマーヴェルコミックスが原作のもの。最終的にはアベ
ンジャーズに組み込まれるのかな?

公開は6月1日より、全国一斉ロードショウとなる。

『シチズンフォー スノーデンの暴露』“Citizenfour”
アメリカ中央情報局 (CIA)及び国家安全保障局 (NSA)による
個人情報収集の手口を、元局員のエドワード・ジョセフ・ス
ノーデンが2013年6月に香港で告発した。その事件の全貌を
発端から全て記録したドキュメンタリー。
始まりは本作のインタヴュアーであり監督のローラ・ポイト
ラスに届いた1通のメール。そこにはシチズンフォーと名の
る人物からのCIAとNSAが密かに個人の通信データを収集・監
視していると言う驚愕の告発がなされていた。
ポイトラスは本作以前にもイラン戦争やグアンタナモ基地に
関するドキュメンタリーを発表しており、その姿勢からシチ
ズンフォーの指名を受けたことは明らかだった。そして監督
は旧知のジャーナリストと共に香港に向かう。
そこで待っていたのは、当時29歳の元CIA職員のエドワード
・スノーデン。彼はアメリカ政府機関の違法な行為を告発す
ることを表明し、その一部始終を記録することを求める。し
かも彼は実名を明かすというのだ。
こうしてアメリカ政府の妨害や、自身や家族への危険も予想
される中、イギリスのガーディアン、ワシントンポスト及び
サウスチャイナ・モーニング・ポストへの告発記事の掲載準
備が進められる。
という事件の顛末が綴られて行くが、観ての感想は一言「震
撼」の言葉以外に浮かばなかった。正直に言って世間の動き
には滅法疎くて、この事件についてもスノーデンという名前
に聞き覚えがあった程度。
しかし今回はその事件の全貌を観ることになって、その事態
の大きさに改めて驚かされたのだ。それにしても日本でこの
事件はこんなに大きく扱われたのかな。確かにこれは日本の
出来事ではないのだけれど…。
そう言えば重信房子の捕縛のときには通信の傍受が手柄のよ
うに報道されたが、同時にそれは国民の通信の秘密が侵害さ
れていたのだよね。それが司法の管理下で行われたのかどう
か、明白にはされなかったように感じる。
いずれにしても通信データは信書と同じでその秘密は守られ
るべきもので、それが侵害されていることの問題はもっと真
剣に論議されるべきものだが、この作品の公開でその辺の論
議は活発になるのだろうか?

公開は6月より、東京はシアター・イメージフォーラムほか
で全国順次ロードショーとなる。
なお同じ題材では、2009年4月紹介『ブッシュ』などのオリ
ヴァ・ストーン監督が“Snowden”というドラマ作品をすで
に完成させているが、諸般の事情でアメリカ公開が9月16日
に設定されたという情報もあるようだ。


この週は他に
『映画プリキュア・オールスターズ
             みんなで歌う♪奇跡の魔法!』
『鏡は嘘をつかない』“Laut bercermin”
『エンド・オブ・キングダム』“London Has Fallen”
『好きにならずにいられない』“Fúsi”
『ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出』
                 “A Royal Night Out”
『神様メール』“Le tout nouveau testament”
『或る終焉』“Chronic”
『白鳥麗子でございます THE MOVIE』
を観たが全部は紹介できなかった。申し訳ない。


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