井口健二のOn the Production
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2016年03月13日(日) LISTEN リッスン、関西ジャニーズJr.の目指せ♪ドリームステージ!、若葉のころ

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『LISTEN リッスン』
2人の聾者の監督が共同で作り上げた58分間無音の作品。
試写会場の入り口で耳栓を渡されて「一緒に音のない世界を
体験してくれ」と言われた。しかし僕は以前から何度か耳の
炎症を患ったことがあり、耳栓の装着には抵抗があって使用
しなかった。従って以下の文章でこの作品を正しく評価でき
ているかどうかは判らないところだ。
とは言え、作品に音がないことは画面を観ていれば判るもの
だし、逆に無音であることの感覚は実際の聾者の感覚とは違
うようにも思える。もちろん音の無い世界を体感して貰うこ
とは重要なことではあるが…。そんな観点から感想を述べさ
せて貰うことにする。
監督の1人は舞踊家とのことで、作品中ではダンスを中心と
した聾者の方たちのパフォーマンスが描かれる。それはソロ
もあるが群舞もありで、それらが音楽無しで演じられている
のは不思議な感じだ。特に群舞で揃った踊りを見せられると
いうのは見事だった。
ただし、実は河原で踊っているシーンで、背景の鉄橋に電車
の通過する光景が映っている。ここで僕には電車の音が聞こ
えてきてしまう感覚があった。それは聾者の監督には無視さ
れてしまう光景だったのかもしれないが、僕にはその光景に
音が付いてしまったのだ。
そこで僕は、逆に作品に音が付けられていて、その音が断続
されていたら、かえって無音であることの現実味が増したの
ではないか、そんな感覚も持ってしまったものだ。もちろん
それをすることは監督たちの意図とは異なるものになるし、
僕の勝手な妄想であるのだが。
聾者を描いた作品では、2010年5月に『アイ・コンタクト』
を紹介しているが、聾者の女子サッカー日本代表チームを取
材したこの作品では、サッカーでは普段からよく使われてい
る題名の言葉が、より深い意味で使われていることに衝撃を
受けた。
つまり普段から言われていることが、聾者の人たちにはより
先鋭的に要求される。もちろんアイ・コンタクトは僕らでも
なかなか難しいことではあるが、障害を持つ人にはより強く
それが要求される。そんなところに障害者に対する理解を深
めることができた気がしたものだ。
本作では他にも、聾者に対する音楽教育の矛盾なども訴えら
れており、いろいろ考えさせられる作品だった。

公開は5月14日より、東京は渋谷アップリンクほかで、全国
順次上映となる。

『関西ジャニーズJr.の目指せ♪ドリームステージ!』
2013年『関西ジャニーズJr.の京都太秦行進曲!』、2014年
『忍ジャニ参上!未来への戦い』に続く、ジャニーズ事務所
所属の関西系メンバーが主演する青春ドラマ映画の第3弾。
実は第1弾では試写状が貰えなくて、第2弾は試写は観たが
紹介はしなかった。そして本作ということになるものだが、
内容はストレートな青春ドラマと言えるかな? アイドルを
目指す若者たちが、グループの存続を願って奮闘するという
お話だ。
物語の中心は、地元振興を目的に結成された小姓ズという名
のアイドルグループ。ところが自治体の予算が打ち切られ、
グループの存続も風前の灯火となる。しかしそこから彼らの
奮闘で盛り返すというもの。そしてその舞台は京都太秦とい
うことで観光名所でのロケも含めた構成となっている。

出演は、NHK朝ドラ『あさが来た』などの西畑大悟、前2
作にも出ていた向井康二、前作に続いての大西流星、映画は
初の赤名竜乃助と、第1作以来となるリーダー格の浜中文一
が小姓ズのメムバー。
他に室龍太、大橋和也、藤原丈一郎、草間リチャード敬太ら
の関西ジャニーズJr.のメムバーと、元関西ジャニーズJr.の
中山優馬。さらに芸人の兵頭大樹、元タカラジェンヌの野々
すみ花、本田博太郎らが脇を固めている。
監督は、NHK−BS時代劇『妻は、くノ一』などを手掛け
る服部大二が担当した。
まあ、若手タレントが大量出演する他愛もない定番の青春ド
ラマではあるけれど、それなりにサブストーリーなども敷い
て、観られないこともない作品には仕上げられている。それ
に終盤には関西ジャニーズJr.の総出演によるレヴューなど
もあって、ファンには絶好の作品というところだろう。
それに上にも書いたように、京都の観光スポットも楽しめる
作品にもなっているものだが、ここで僕的にはちょっと思い
入れのある場所が登場して嬉しくなった。それは主人公たち
が最後のコンサートを開く場所で、実はここは以前に訪れた
ことがあるのだ。
と言うのも、ここには昭和初期に設置された公衆ラジオ設備
のラジオ塔が現存していて、以前にそれを観に行ったのだ。
しかもそれが本作の中にも写されている。それは主人公たち
が登場の準備をしているときの背景になっているものだが、
これには懐かしさも一杯になった。

まあ映画の中で説明等は一切ないけれど、そんな歴史的なも
のが写されているということでも紹介しておきたいものだ。
公開は4月16日より、全国一斉ロードショウとなる。

『若葉のころ』“5月一号 First of May”
1971年の映画『小さな恋のメロディー』のサウンドトラック
でも著名なザ・ビージーズの楽曲をモティーフに、1982年と
2013年、それぞれの時代に暮らす17歳の多感な少女の姿を描
いた台湾映画。
現代の台北に住む女子高生のバイは、離婚した母親に許で楽
しい学園生活を満喫していた。ところが思いを寄せる男子が
親友の女子と親密に話している姿を目撃し落ち込む。しかも
その直後に母親が事故で意識不明の状態となる。
1982年の女子高生ワンは、校内英語コンテストで男子のリン
と競い互いを意識するようになる。そのコンテストではワン
が1位に輝くが、さらに英語の教師からはザ・ビージーズの
歌詞を翻訳するという課題が与えられる。
そしてリンは、その課題をワンへの思いを伝えるチャンスに
しようとするが…。その後に起きた出来事が2人の仲を遠く
引き裂いてしまう。
一方、現代のバイは、偶然に母親のパソコンに残されていた
未送信のメールを発見。そこには今の自分と同じ17歳だった
母親の初恋の男子に向けた思いが綴られていた。そしてバイ
は、母親に代わってそのメールを送信する。

出演は、台湾版『美男子<イケメン>ですね』の主演で本格
女優デビューしたというルゥルゥ・チェン、2012年12月紹介
『奪命金』などのリッチー・レン、それにモデル出身で英国
の男性雑誌FHNで「アジアで最もセクシーな女優」に選出
されたこともあるアリッサ・チア。
原案と監督は、ミュージック・ヴィデオの監督として2009年
に大賞に輝いたこともあるジョウ・グータイ。本作は1964年
生まれの監督が10数年温めてきた原案を、満を持して制作し
た劇場映画の第1作となっている。
映画は上述した2つの物語を巧みに錯綜させたもので、並行
して描かれる2つの物語が、最後にピタリと1つの物語に嵌
る快感は、正に映画の醍醐味という感じになっている。そし
てその2つの物語が重なり合う瞬間は、これは出色の出来栄
えだった。
実は映画を観る前にはできるだけ情報を入れないようにして
いるが、今回は恐らく宣伝では大々的に紹介されるであろう
情報を、試写の段階では持たずに映画を観ることができた。
その状況で観ていると、正にその瞬間は自分の目を疑ったも
ので、それは本当に素敵な作品だった。
それを実現した監督と女優には拍手を贈りたい気持ちだ。

公開は5月28日より、東京はシネマート新宿、大阪はシネマ
ート心斎橋ほかで、全国順次ロードショウとなる。

この週は他に
『台湾新電影時代』“光陰的故事−台灣新電影”
『ホース・マネー』“Cavalo Dinheiro”
『仮面ライダー1号』
『noma ノーマ、世界を変える料理』
               “Noma My Perfect Storm”
『アタック・ナンバーハーフ・デラックス』
                “สตรีเหล็ก ตบโลกแตก”
『ディストラクション・ベイビーズ』
『天使にアイム・ファイン』
を観たが全部は紹介できなかった。申し訳ない。


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