井口健二のOn the Production
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2016年01月31日(日) ヘイトフル・エイト、珍遊記、断食芸人、頭文字D−夢現−4DX

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『ヘイトフル・エイト』“The Hateful Eight”
2013年1月紹介『ジャンゴ繋がれざる者』などのクエンティ
ン・タランティーノ監督が再び西部劇に挑んだ作品。
発端の舞台は大雪の荒野。1台の駅馬車が黒人の男に止めら
れる。男はバウンティハンターで、仕留めた遺体と共に次の
町まで乗車したいと言う。しかし駅馬車は貸し切りで、中に
は賞金首の女を護送中の同業者が乗っていた。
そこで呉越同舟の2人は途中にある雑貨屋まで同乗すること
になるのだが…。さらに1人が加わり、辿り着いた雑貨屋で
は異様な雰囲気が漂っていた。そして大雪で足止めとなった
2人に女を救おうとする連中が襲い掛かる。

出演は、2015年8月紹介『キングスマン』などのサミュエル
・L・ジャクソン、2007年7月紹介『デス・プルーフ』など
のカート・ラッセル、2009年8月紹介『脳内ニューヨーク』
などのジェニファー・ジェースン・リー。
他にティム・ロス、マイクル・マドセン、ブルース・ダーン
らファンにはニヤリの面々が脇を固めている。さらに音楽を
エンニオ・モリコーネが担当しているのも嬉しくなる所だ。
物語には南北戦争の確執なども絡んで、日本人には少し判り
難いかな? でも、西部劇が好きな人にはこの程度は常識と
言えるのかな? いずれにしても『ジャンゴ』から続くタラ
ンティーノ節が炸裂する作品だ。
ただし、物語の後半にちょっとした仕掛けがあるのだが、こ
れが良いかどうか。これがアクション映画なら許されるが、
前半がサスペンス・ミステリーの展開で来ると少し違和感に
はなった。
とは言え、観客の思いなんか関係なしに引きずり回すのが、
タランティーノのやり方だから、これは仕方がないとも言え
るのかもしれない。取り敢えず観客は彼のやり口に乗っかる
しかないのだろう。
それともう一点、この映画では始めにUltra Panavision 70
と言うクレジットが登場する。これは元々は『ベン・ハー』
などの撮影に使用されたMGM Camera 65というシステムに、
アナモフィックレンズ装着で2.76:1の画面を生み出すもの。
ただしこの画面は70mmプリントのみだそうで、今回はさらに
上映時間187分とされたヴァージョンが、アメリカではロサ
ンゼルスのCinerama Domeなど100館で2週間限定上映された
とのこと。今だにそれが上映できるのもすごいことだ。

日本での公開は2月27日より、全国ロードショウとなる。

『珍遊記』
2011年6月紹介『men's egg/Drummers』などの山口雄大監
督が、2004年『ババアゾーン(他)』以来となる漫☆画太郎の
原作に再挑戦した作品。
映画の巻頭には「この作品は中国の有名な物語とは無関係」
という主旨のテロップが出る。まあそれをいまさら言われる
までもないが、わざわざそういうことを言うのがコンセプト
とも言える作品だ。
物語は、旅の僧が村人が手を焼く暴れん坊を諌めることから
始まる。しかし諌めただけでは終れないと感じた僧は、修行
と徳を積ませるため天竺へ向かう旅の供として、その若者を
連れて行くことにする。
そして2人がやってきたのは人で賑わう街。その町の入り口
で一くさりあった後、2人が目にしたのは何やら怪しげな教
祖のいる宗教だった。そんな宗教には関らず旅を進めようと
する2人だったが…。

出演は松山ケンイチ、倉科カナ、溝端淳平。他に田山涼成、
笹野高史、温水洋一、ピエール瀧、板尾創路、矢部太郎らが
脇を固めている。
実は2004年『ババアゾーン(他)』は、試写では観たがここで
の紹介はしなかった。つまり何と言うか作品全体に漂う品の
なさが、当時の僕には気に入らない作品だったものだ。正直
に言って、その印象は今回もあまり変わらない。
ただしかしこの作品に関してはそれが目的なのだし、原作の
読者にはそれが好まれているのだろうから、それは仕方ない
ことと言えるだろう。それが何とか許容できるくらいには、
少しは作品のレヴェルも上がったかな。
山口監督作品では、2005年4月紹介『魁!!クロマティ高校』
などはそれなりに評価しているつもりだが、中々洗練されな
いというか…。でもその洗練されなさが評価のポイントなの
だろうとは思ってしまうところだ。

日本での公開は2月27日より、全国ロードショウとなる。

『断食芸人』
『変身』『城』などの作品で知られるチェコの文豪フランツ
・カフカが1922年に発表した短編小説を、2012年6月『美が
私たちの決断をいっそう強めたのだろう/足立正生』という
ドキュメンタリーを紹介している足立正生監督が映画化した
作品。
物語は1人の男が街角に座り込むところから始まり、その男
の行動に対する周囲の者の反応や、周囲に与える影響などが
描かれて行く。そこには政治的なものや人間の欲望など様々
なエピソードが描かれる。

主演は、2014年1月紹介『魔女の宅急便』などの山本浩司。
他にテント劇団「風の旅団」リーダーの桜井大造、演劇演出
家の流山児祥、伊藤弘子。さらに2009年9月紹介『ゼロ年代
全景』などの本多章一らが脇を固める。またナレーションを
田口トモロヲが務めている。
カフカの原作は「断食芸」というものが認知されている状況
に基づいており、本作の展開とはかなり違っている。しかし
「断食芸」のルールみたいなものは踏襲されているようだか
ら、これを映画化としていいのかな。
ただし物語はかなり現代化されていて、カフカの時代では考
えられなかったお話が展開される。それがまた足立監督らし
さというか、正直に言ってちょっとレトロな感じも漂うとこ
ろは…。それを狙いとしているのだろう。
なお巻頭に置かれた災害の記録映像はかなり衝撃だった。

公開は2月27日より、東京は渋谷ユーロスペース他で、全国
順次公開となる。

『頭文字D−夢現−』4DX
2015年12月に紹介した作品で、その折にも告知した4DXに
よる上映を体験したので報告する。
その体験では、加速やブレーキ、コーナリングなどの荷重の
感じががかなり再現されていたもので、実際に主人公らと共
に車の乗車している気分は味わえたという、ある種の満足感
みたいなものが体験できた。
と言っても僕は自動車レースに同乗した経験などはないし、
実際はさらに激しいものだろうという感じもしたが、少なく
ともシミュレーションとして体験するには充分にその気分は
味わえたというところだ。
因に当日は監督らによる記者会見も行われたが、その発言に
よると、4DXのシミュレーションは乗車している車種毎に
よっても微妙に違えられていたのだそうで、これはかなり本
格的なものだったようだ。
公開は2月6日より、4DXも同時公開となっている。

この週は他に
『黒崎くんの言いなりになんてならない』
『スティーブ・ジョブズ』“Steve Jobs”
『インサイダーズ 内部者たち』“내부자들”
『アーロと少年』“The Good Dinosaur”
『緑はよみがえる』“torneranno i prati”
『風の波紋』
『バンクシー・ダズ・ニューヨーク』
               “Banksy Does New York”
『LOVE3D』“Love”
を観たが全部は紹介できなかった。申し訳ない。


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