井口健二のOn the Production
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2015年12月06日(日) の・ようなもの、IT FOLLOWS、DENKI GROOVE、ボクソール★ライドショー、TOO YOUNG TO DIE、Tokyo Comic Con初開催発表記者会見

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『の・ようなもの の ようなもの』
2011年に急逝した森田芳光監督が1981年に発表したデビュー
作「の・ようなもの」のその後を、森田作品の多くで助監督
を務めた杉山泰一が初監督で描いた作品。因に杉山監督は、
2015年7月紹介『TNGパトレイバー首都決戦』の助監督も
務めている。
物語は、落語家の家に内弟子修行している若者が行方不明の
兄弟子を探して右往左往する前半と、後半ではその兄弟子の
新作落語をものにしていこうとする姿が描かれる。それに師
匠の娘などが絡む青春ドラマ。

主演は、森田監督の遺作となった2012年2月紹介『僕達急行
・A列車で行こう』にも主演した松山ケンイチ。それに北川
景子。さらに伊藤克信、尾藤イサオ、でんでん、内海桂子ら
のオリジナルの登場人物と、森田作品に所縁の俳優たちが脇
を固めている。
昔はよく落語も聞いたし、最近は列車旅も好きな僕にとって
この作品は、物語の前半ではいろいろな列車が登場して森田
監督の遺作を髣髴とさせ、オマージュも感じ取れた。
そして後半では、伊藤の「黄金餅」は過去に名演を聞いてい
る僕には懐かしさの反面物足りなさが募った。しかし松山の
墓前のシーンはそれを補って余りあるもの。これは全編も聞
きたくなった。さすが松山ケンイチと思わせたものだ。

公開は1月16日より、東京は新宿ピカデリー他で全国ロード
ショウとなる。

『IT FOLLOWS』“It Follows”
本作が2作目という新鋭監督によるかなり斬新なアイデアの
ホラー作品。
主人公は田舎町の女子大生。ある日行きずりの男と一夜を共
にした彼女は、その男から「それ」を移したと告げられる。
「それ」は凶悪な殺人者で、いろいろに姿を変えて移された
者を殺すまで付き纏うという。また「それ」は他人に移すこ
ともできるが、その移された者が死ぬと元に戻ってくるとい
うのだ。
こうして恐怖の状況に陥れられた主人公は、幼馴染の仲間と
共に対策を練り始めるが…。
「うつす」という言葉には「伝染す」という漢字も充てられ
るが、状況などから何となくエイズのイメージが付いてしま
いそうなので、敢えて「移す」としてみた。
でも、脚本も手掛けた監督にも近いイメージはあるのかな。
そんな誰にでも忍び寄り、伝染ったら逃れられない現代の恐
怖を象徴するような作品だ。

主演は、2014年公開『ザ・ゲスト』でも準主役を張っていた
マイカ・モンロー。因にこの作品は試写を観たが、自分のテ
リトリーではないと判断したので紹介はしなかったもの。し
かしそれなりの秀作だったとは記憶しているものだ。
そして脚本と監督は、2010年に“The Myth of the American
Sleepover”という作品を発表したデヴィッド・ロバート・
ミッチェルが担当した。この監督には今後も注目してよさそ
うだ。

公開は1月8日より、東京はTOHOシネマズ六本木ヒルズほか
で全国ロードショウとなる。

『DENKI GROOVE THE MOVIE? 石野卓球とピエール瀧』
近年は俳優としても活躍するピエール瀧の原点であるテクノ
ユニット「電気グルーヴ」を追ったドキュメンタリー作品。
2013年公開『恋の渦』(2014年1月紹介『愛の渦』の中で言
及)などの大根仁監督による作品だが、実はユニットの片割
れである石野卓球のウィキペディアを観るとほぼ本作と同じ
であって、その辺を実に手際よく纏めた作品と言える。
実際に音楽に疎い僕とってピエール瀧は、電気グルーヴの存
在は知っていたが俳優としての認識の方が強かった。しかし
本作を観てその存在の大きさは認識できた。しかもその存在
の大きさが尋常でないことも良く理解できた。
そしてその中でのピエール瀧の位置づけも成程と理解できた
もので、これで瀧のイメージが変わるかとも思っていたが、
そうではなかったものだ。でもまあ電気グルーヴという音楽
ユニットの凄さは理解できた。
テクノという言葉には何となくSFに通じるところもあって
シンパシーも感じるところだが、今後の彼らの活動がどのよ
うな方向に向いていくのか、その辺も含めていろいろ期待も
湧いてしまう作品だった。

公開は12月26日より、東京は新宿バルト9ほか全国の映画館
にて、2週間限定の年越しロードショウとなる。

『ボクソール★ライドショー 恐怖の廃校脱出!』
2015年5月紹介『戦慄怪奇ファイル 超コワすぎ!』などの
白石晃士監督が、同じく5月紹介『お化け屋敷列伝/戦慄迷
宮MAX』の公開にも採用された4DXシアター専用に制作し
た作品。
内容は、深夜にすすり泣く女性の声が聞こえるという廃校に
若い女性3人が白石監督自らが演じるカメラマンと共に潜入
するというもの。そのカメラマンの名前が田代なのだから、
これはまんま『戦慄怪奇ファイル』の一環の作品だ。
そしてその映像はそのまま劇場に配信されているという設定
で、実時間で物語は進んで行く。ただまあ展開はお化け屋敷
のようなもので、次から次にいろいろな驚かしのシーンが続
いて行くものだ。
しかもそれが4DXということで、椅子が動いたり背中をど
んと突かれたりの衝撃も次々に襲ってくる。さらに5月紹介
の作品は後付けだったが、今回は最初からそれが目指されて
いる訳で、雨は降るわ風は吹くわのオンパレードだ。
因に本作は25分の短編だが、それでもかなり濡れるほどの水
量で、これが長編だったら…と思ってしまったもの。ただし
各座席には水の噴射に関してはON/OFFスイッチが設けられて
いるものだ。降ってくるのは水だけではないが。
そして今回は、ユナイテッドシネマ系列での4DXシアター
のお披露目ということもあって、本編の上映前にはカーチェ
イスを描いたプロモーション映像と、『スター・ウォーズ/
フォースの覚醒』の予告編も4DXで上映された。
その中でも『スター・ウォーズ』の空中戦のシーンは、これ
は一度体験したいと思わせるもの。さらに公開時には映像も
3Dになるとのことで、これは本格的にアトラクションにな
りそうだ。

『ボクソール★ライドショー』の公開は1月16日より、東京
はユナイテッドシネマとしまえん他、全国の4DXシアター
で上映される。

『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』
連続テレビ小説『あまちゃん』などの宮藤官九郎が脚本監督
を手掛けた地獄の亡者を題材にした作品。
主人公は、憧れの女子に思いを伝えられないまま修学旅行の
バスで事故に遭い、何故か彼だけが地獄に落ちてしまった高
校生。その地獄からは現世に戻ることも可能だが、その姿は
閻魔の裁定により人間とは限らない。
しかも7回の黄泉がえりの間に天国に行けないと、地獄の鬼
にされてしまうという。そんな状況下で主人公は、何とか自
分の思いを彼女に伝えようとするのだが…。現世と地獄の時
間差で時がどんどん過ぎてしまう。
という物語と、先に地獄に来て既に鬼になってしまっている
先輩の音楽を、天国に行った家族に伝えようとするお話。そ
んな2つのミッションを達成しようとする主人公の奮闘ぶり
が描かれる。

出演は2007年6月紹介『遠くの空に消えた』などの神木隆之
介と、2008年11月紹介『ヘブンズ・ドア』などの長瀬智也。
他に桐谷健太、古田新太、宮沢りえ、坂井真紀、中村獅童ら
が脇を固めている。
地獄を描いた作品は過去にもいろいろあるが、その中で宮藤
官九郎らしさはそれなりに表現されていたと思える。ただ、
主人公は最終的に2つのミッションに関る訳だが、僕的には
後半の物語をもう少し丁寧に描いて欲しかったかな。
とは言え本作はすでに2時間超えの作品で、これ以上に盛る
ことは難しい。それに対して前半を短くすることは、多分若
い観客に歓迎されないのだろう。その辺が悩ましい作品だっ
た。

公開は2月6日より、全国ロードショウとなる。

「Tokyo Comic Con初開催発表記者会見」
ポップカルチャー・ファンにはお馴染みのコミコンが2016年
12月3日、4日に幕張メッセで開催されることになり、その
告知記者会見が行われた。
その呼びかけを行ったのはアップル創業者の1人スティーヴ
・ウォズニアックで、登壇したウォズニアックは「テクノロ
ジーとエンターテインメントの融合を目指すイヴェントで、
来年4月にシリコンバレーで開催した後、12月に日本開催す
る」との計画を発表した。
これはサンディエゴで開催されているいわゆるコミコンとは
異なるもののようだが、協力者にはマーヴェル社のスタン・
リーも映像で紹介されたもので、正にプロが主宰するコミコ
ンになるようだ。
日本側の受け入れ態勢がどのようなものになっているのかな
どは全く不明だが、シリコンバレーでは元々あったローカル
コンがウォズニアックの参加表明で一気に膨れ上がったとの
ことで、そのネームヴァリューなどが活かされることになり
そうだ。
取り敢えず楽しみにして待つことにしたい。

今回は1週間に試写で観た全作品を紹介する予定だったが、
それは時間的にかなり難しいようだ。
因にこの週は他に
『LIVE!LOVE! SING!生きて愛して歌うこと』
『クリード/チャンプを継ぐ男』“Creed”
『虹蛇と眠る女』“Strangerland”
を観たが紹介できなかった。申し訳ない。


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