井口健二のOn the Production
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2015年08月30日(日) コードネームU.N.C.L.E.、Re:LIFE〜リライフ〜

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『コードネームU.N.C.L.E.』“The Man from U.N.C.L.E.”
僕らの世代には懐かしい、日本では『ナポレオン・ソロ』の
名称で親しまれた往年の人気テレビシリーズからの映画版。
往年のスパイシリーズの映画版としては、すでに『ミッショ
ン・インポッシブル』の成功があるが、オリジナルの設定を
現代を背景にリメイクしたトム・クルーズ主演作と異なり、
本作は米ソ冷戦のオリジナルの時代背景をそのままに、物語
の発端を描くエピソード0と言えるものだ。
そして本作では、ナチスドイツで原爆の開発に従事していた
科学者が行方不明になり、科学者が完成したとされる原爆の
新たな製造法を巡ってソ連KGBとアメリカCIAが共同作
戦を実施するというもの。その作戦でCIAのナポレオン・
ソロとKGBのイリヤ・クリアキンが出会うのだ。
しかし双方の組織は、製造法の確保に関しては互いに相手を
出し抜こうともしており、虚々実々の作戦にソロとイリヤは
翻弄される。さらにそこには別の組織も介在しようとしてい
た。そんな状況の中で、最初は敵対していたソロとイリヤも
ある種の絆を見出すことになるのだが…。

出演は、2013年7月紹介『マン・オブ・スティール』のヘン
リー・カヴィルと、翌週紹介『ローン・レンジャー』のアー
ミー・ハマー。それに2010年1月紹介『噂のモーガン夫妻』
などのヒュー・グラント。
他にスウェーデン出身で2013年1月紹介『アンナ・カレーニ
ナ』などのアリシア・ヴィキャンデル、同年5月紹介『華麗
なるギャツビー』などのエリザベス・デビッキ、2012年1月
紹介『シャーロック・ホームズ:シャドウ・ゲーム』でモリ
アーティ教授役のジャレッド・ハリスらが脇を固めている。
脚本と監督は、『シャーロック・ホームズ』の2部作などの
ガイ・リッチー。彼は製作とストーリーの原案にも名を連ね
ている。なお脚本と製作は『シャーロック…』2部作と同様
ライオネル・ウィングラムとの共同名義だ。
作品は若き日のナポレオン・ソロとイリヤ・クリアキンとい
う感じだが、実は観始めでは多少の違和感が否めなかった。
それは特に2人の言葉遣いが吹替えではない訳で、矢島正明
と野沢那智の軽妙なやり取りが馴染んでいた耳には違和感に
なったようだ。
しかし途中で「Mr. ウィーバリー」という台詞が聞こえた辺
りから往年のファンとしてはニヤリとさせられ、ここでは顔
は出なかったが、次のシーンでヒュー・グラントが登場した
途端、オオという感じになった。
グラントは表情やしぐさなどを実によく研究していて、正に
レオ・G・キャロルが演じたウィーバリー2課長を少し若く
した雰囲気を醸し出していたのだ。これにはさすがグラント
クラスの俳優は違うという印象を持った。
従ってここから後は思い切り作品を楽しめたという感じがし
たものだ。ただ最後に登場する女性エージェントの名前は…
続編ができたら「エイプリル・ダンサー」に改名してくれる
のかな?

公開は11月14日から、東京は新宿ピカデリー他で全国ロード
ショウとなる。

『Re:LIFE〜リライフ〜』“The Rewrite”
上の作品の演技でさすがと思わせてくれたヒュー・グラント
が主演する、僕ら世代の映像系SFファンにはちょっと胸が
キュンとなるドラマ作品。
グラントが扮するのは、米国東海岸にある田舎町の大学に脚
本コースの講師として着任した男性。15年前にオスカーに輝
いたものの以後は鳴かず飛ばずで、生活に窮して気の進まな
い職に辿り着いたのだ。
しかしやる気のない彼は聴講生の選び方もいい加減で、その
上、講義の初回から1か月の休講を宣言する始末。それは学
部長の説得などで撤回するが、講義のやり方も判らず教壇で
は立ち往生状態だ。
ところが無理やり聴講生に潜り込んでいた1人の女性が切っ
掛けをくれたことから、彼の持論の映画論がスタートする。
それは聴講生を引き付ける内容で、しかも聴講生の中に1つ
の才能を見出した彼は…。

共演は、『いとこのビニー』で1993年のオスカーを受賞した
マリサ・トメイと、『セッション』で2015年オスカー受賞の
J・K・シモンズ。他に、2007年9月紹介『ヘアスプレー』
などのアリソン・ジャネイ、2012年5月紹介『ダーク・シャ
ドウ』などのベラ・ヒースコートらが脇を固めている。
脚本と監督は、2005年3月紹介『デンジャラス・ビューティ
ー』などのマーク・ローレンス。監督はグラントとのコラボ
レーションでも知られ、本作は上記の『噂のモーガン夫妻』
など4回目になる。
舞台になっているのは、米国東海岸ニューヨーク州のビンガ
ムトン。
この町は“The Twilight Zone”のクリエーター・ロッド・
サーリングが育った町で、また世界一メリーゴーランドが多
い町としても知られ、その一つはTVシリーズのシーズン1
で放送された“Walking Distance”(邦題:過去を求めて)
の背景にもなっている。
そして本作では、そのエピソードの一部がモノクロの画面で
登場すると共に、メリーゴーランドを主人公が訪れるシーン
でカラーの映像も登場するのだ。しかも物語自体がそのエピ
ソードの内容に擬えたものになっている。
勿論本作はファンタシーではないし、それを想起させるよう
なシーンがあるものでもないが、聴講生の中には『スター・
ウォーズ』オタクがいたり、別の1人はヒロイン・ファンタ
シーの脚本を完成させたり、そんな雰囲気は溢れている。
そう言えばローレンス監督は『デンジャラス・ビューティー
2』でもウィリアム・シャトナーに意味深な台詞を言わせて
いたことも思い出した。それくらいにはSF映画好きが楽し
める作品になっている。
その他にも、ジェイン・オースティンから『ダーティ・ダン
シング』に、J・K・ローリングから『ハート・ロッカー』
まで、映画ファンにはニヤリとする台詞も満載の作品だ。

公開は11月から、東京はTOHOシネマズシャンテほかで、全国
ロードショウが予定されている。


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井口健二