井口健二のOn the Production
筆者についてはこちらをご覧下さい。

2015年04月19日(日) サムライ・ロック、チャッピー/デッド・シティ2055

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『サムライ・ロック』
名古屋を中心に活動しているアイドルグループBoys & Menが
主演するSF風の設定を含むドラマ作品。
西暦1551年。戦国時代の尾張の国。父・織田信秀の葬儀の場
を飛び出した信長には自らの行く末を決められないでいた。
そんな時、突如生じた日食が信長と従者の羽柴秀吉を新たな
世界へと導く。
彼らが辿り着いたのは現代の名古屋。そこでは1人の若者が
音楽で天下を取ることを目指していた。そんな演奏の場に突
然現れた信長と秀吉は、何も判らないままに警備員を倒し、
演奏を観ていた男の機転でその場を逃走する。
その男は演奏していたバンドのマネージャーで、信長と秀吉
が行ったアクションに注目した男は、2人をバンドに加えて
アイドルとして売り出すことを提案する。その提案に純粋に
音楽で頂点を目指したい若者は反発するが…。
ということで2人を迎えたバンドは、さらにもう1人の戦国
武将も加えて、新たにサムライロックとして音楽界の頂点を
目指すことになる。しかしそこには幾多の障害が…。そして
彼らには元の時代に帰る日も近づいていた。

出演は、Boys & Menのメムバーからすでに『仮面ライダー鎧
武』への出演も果たしている小林豊。2014年12月紹介『クレ
ヴァニ、愛のトンネル』で主人公の若き日を演じた水野勝。
2013年9月紹介『僕たちの高原ホテル』などの本田剛文。
他に、石黒賢、藤吉久美子らが脇を固めている。
脚本は、テレビで『浅見光彦』シリーズや『天てれ』などを
手掛ける早野円と、『マッサン』のノヴェライズを手掛けた
という中川千英子。監督は、2011年『スイッチを押すとき』
などの中島良が担当した。
作品は、名古屋では「ボイ・メン」と呼ばれて知名度も増し
ているとされる彼らの活動そのままのようで、特にSFとし
てどうこう言えるものではない。とは言え例えば後から来た
武将だけが過去に帰りたがるなどは、ニヤリかな。
ただしその武将の年齢が史実に合わないのは、出発の年代が
異なるとすれば言い訳は立つが、名乗り名が幼名なのは…。
それとあと数日で日食という時の月の満ち欠けも、これが明
け方の東の空なら良いのだが…。
いろいろな考証がちょっと足りないかな。でもまあ、やりた
いことは理解できるので、こらはこれで良しとしておこう。

公開は、名古屋地区で5月9日から先行上映の後、東京では
ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国で、6月6日からの
上映となる。

『チャッピー』“Chappie”
『デッド・シティ2055』“Vice”
広義でのロボット物と言える2作品で、片や2010年3月紹介
『第9地区』の監督によるソニー・ピクチャーズ製作の超大
作、片や近年顕著なアクション映画のブランド=エメット/
ファーラ製作によるB級作品だが、どちらも過去の同旨の作
品との関係が面白く、いろいろ書いてみたくなった。
前者は警察配備という設定から、単純には昨年リメイクもさ
れた『ロボコップ』(2014年3月紹介)からの発想と捉えら
れそうだが、僕的には軍事用という前提から1986年と89年に
続編も公開された『ショート・サーキット』が思い浮ぶ。
実際にAIが自我を持つという設定や本を読んで世間を知る
という展開も、そちらの方がより近いと思える。そんな自我
を持ったAIが悪い連中に騙されるというのが『ピノキオ』
なのは明らかだが。
一方、AIが自分の消滅の期限までに解決法を探すというの
は、テレビドラマが放送中の『アルジャーノンに花束を』な
のかな? いずれにしても、こんないろいろなSF的要素が
組み合わされて物語が展開される。
そこにさらにインド人研究者との絡みや、ガンファイトなど
様々な要素が付け加えられ、それらが以前にはできなかった
VFXを駆使して描かれているものだ。
ついでに言うと、『ショート・サーキット』でも登場人物の
1人はインド人だったが、これが今世紀のIT大国インドを
予想していたのだとすれば大したものだ。今回の作品ではそ
れが当然のような感じなのだから。
と言うことで、実はサイボーグのロボコップ以上にいろいろ
悩める存在となるチャッピーだが、正直に言うと最後にAI
が到達する解決法には多少問題がある。特にコンピュータと
人間の脳構造が同じというのはちょっと無理がある。
前作『エリジウム』(2013年8月紹介)もそうだったが、こ
の監督にはもう少し科学考証をしっかりして欲しいとも感じ
てしまうものだ。

出演は、2009年1月紹介『スラムドッグ$ミリオネア』など
のデブ・パテルと『第9地区』などのシャルト・コプリー。
他に、ヒュー・ジャックマン、シガニー・ウィーバー。さら
に南アフリカで活動するラップ・アーティストのニンジャと
ヨーランダらが脇を固めている。
そして後者は、「レプリカント」という言葉がどのくらい市
民権を得ているのか判らないが、そのレプリカント=生物学
的な人造人間が来場者を楽しませるというアミューズメント
パークを背景としたもの。
こちらに対しては、1973年と77年に続編も公開された『ウエ
ストワールド』が想起される。この作品はベストセラー作家
マイクル・クライトンの映画監督デビュー作ともされるもの
だが、やはり過激な欲望が目当ての遊園地だった。
ただしこの作品では、人間とロボットの判別を体温で行うと
されており、観たときには「ガンファイトはいいけれど、低
体温の娼婦はなあ」と、幼心に思ったものだ。その点に関し
本作では改良が観られ、それは納得したところだ。
とは言うものの、メンテナンスで毎朝消去されるレプリカン
トの記憶が消えなかったら…という設定は良いが、その設定
が充分に活かされているか否か。所詮アクション作品だから
とやかくは言わないが、その辺が勿体なくも感じた。
この設定を生かし切れば、もっと本格的なSFドラマも作り
出せそうで、これは脚本家たちには是非とも再挑戦して欲し
いとも思えたものだ。これだけで終わらせるのは本当に勿体
ないと思える。

出演は、2009年12月紹介『ミュータント・クロニクルズ』な
どのトーマス・ジェーン、2012年12月紹介『ザ・マスター』
などのアンピル・チルダース、それにブルース・ウィリス。
そこそこの顔触れが揃った作品だ。
公開は、両者共に5月23日より全国一斉ロードショウが予定
されている。


 < 過去  INDEX  未来 >


井口健二