| 2015年01月25日(日) |
唐山大地震、パリよ永遠に |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『唐山大地震』“唐山大地震” 1976年に中国河北省を襲ったマグニチュード7.8の大地震。 それにより生活の全てを変えられた一家の姿を、2008年10月 紹介『戦場のレクイエム』などのフォン・シャオガン監督が 追った2010年中国製作のドラマ作品。 元々は2011年3月に日本公開予定だったが、東日本大震災の 発生で公開は見送られた。しかしそれから4年が経ち、作品 に描かれた精神を伝えるため、改めての公開が行われること になったものだ。 ということで本作は4年前にも一度紹介しているものだが、 今回はその時の文章も参照しながら改めて紹介をしたい。と 言うのも、4年前に観たときと今回の鑑賞とでこれほど印象 が変わった作品も珍しいと思えるからだ。 それは東日本大震災の前と後とで観る側の心情が変ったこと もあり得るが、地震に関して僕らは本作以前にも1995年の阪 神・淡路大震災や2004年の中越地震も記憶していたもので、 自分の中で何が違うのかは釈然としない。 でも明らかに印象は変わっていた。 映画は、大地震で離散した一家のその後の32年間を追ったも の。ほぼ巻頭に描かれる大地震で夫を失い、さらに実子で双 子の姉弟のどちらか1人しか救えないと言われその弟を選択 した主婦=母親と、その時に救って貰えなかった姉。 だがその姉は偶然に命を存え、救援隊=人民解放軍の兵士の 夫妻に養女として迎えられる。そして心に傷を負いながらも 必死に生涯を送って行く。しかしその生涯は、彼女がそのよ うな境遇故の運命にも翻弄されて行くことになる。 一方、息子と2人暮らしとなった母親もまた、自分の身代わ りとなった夫と、見殺しにしたと思い込む娘の供養のために 生涯を捧げてしまう。それは息子が事業に成功して裕福な暮 らしが許されるようになっても変ることはなかった。 そんな一家の32年間に渡る姿が描かれて行く。 シャオガン監督作品は、2003年3月紹介『ハッピー・フュー ネラル』以降、日本公開された作品はほぼ全てを鑑賞してき たが、その作品はいずれもちょっと特殊なシチュエーション での人間の姿が巧みに描かれていると感じていた。 その監督が、2007年3月紹介『女帝』ではワイヤーアクショ ンを採用し、さらに本作ではVFXや2000人とも言われるエ キストラを動員するなど、映像的に大掛かりな作品を制作し ている。 しかし本作でも描かれているのは、大地震の被災者という特 別なシチュエーションの下での家族の姿であり、そのような シチュエーションだからこその、人間の心理や営みが巧みに 描かれているものだ。 出演は、2013年11月紹介『楊家将』などのシュイ・ファン、 2012年3月紹介『ビースト・ストーカー』などのチャン・チ ンチュー。さらに『楊家将』などのリー・チェン、今年3月 公開『妻への家路』などのチェン・タオミン。 という作品だが、実は4年前の文章を読み返すと僕はかなり 批判的な紹介を書いていた。しかし今回観なおしていて、特 に毛主席の葬儀に関しては思っていたより短く、これなら時 代の紹介として問題ないと感じたものだ。 それに以前には一番気になった娘の死亡の確認に関しても、 混乱した中ではこんなものかな。まあこちらに関しては多少 引っ掛るところはあるけれど、それも容認できないことはな いという気にはなった。 いずれにしても、本作の描きたいのはそういうところではな くて、災害に遭ってから32年に及ぶ一家の営み。それは中国 の国情も背景にはあるけれど、本来の人間の生き方が見事に 描かれている作品であった。 公開は3月14日から、全国ロードショウとなる。
『パリよ、永遠に』“Diplomatie” 僕らの世代だと1966年に公開されたルネ・クレマン監督によ る上映時間2時間53分の大作『パリは燃えているか』が思い 出される第2次大戦秘話の映画化。 第2次大戦末期。戦前のパリに魅了され、ベルリンをパリの ようにしたいと思い描いていたアドルフ・ヒトラーは、連合 軍の爆撃で廃墟と化したベルリンの惨状にパリも同じ様にし てやると復讐心をたぎらせる。 そしてパリ駐在司令官のコルティッツ将軍にパリ壊滅作戦を 指令。この状況にコルティッツは、すでにドイツ軍の敗北を 認識していたものの総統の命令には逆らえず、パリの各所に 爆薬の敷設を命令する。 一方、中立国スウェーデンの総領事を務めるノルドリンクは 実はパリに生まれ育ち、そんなパリを愛する男がナチスの将 軍に交渉を試みる。そして物語はドイツ軍パリ総司令部の置 かれたホテルの一室で開幕する。 本作は舞台劇に基づくもので、主演のアンドレ・デュソリエ (2011年9月紹介『風にそよぐ草』などアラン・レネ作品の 常連)と、ニエス・アレストリュブ(同月紹介『サラの鍵』 などに出演)も舞台に引き続いての共演となっている。 そのフランスで大ヒットしたというシリル・ジュリーの戯曲 から、ドイツ出身で昨年10月日本公開された『シャトーブリ アンからの手紙』などのフォルカー・シュレンドルフ監督が 脚色・映画化したものだ。 僕は1966年の作品を公開時に観ているのだが、実はオースン ・ウェルズとゲルト・フレーベによって演じられたこの2人 のドラマをほとんど覚えていなかった。ただ、映画の最後の シーンがこの部屋だったことは鮮明に覚えているのだが… それは1966年作品の全体がアラン・ドロン、ジャン=ポール ・ベルモンド、シャルル・ボアイエらのオールスターで演じ られたレジスタンスの活躍を描いていて、僕の目がそちらに 行っていたせいもあるのだろう。 他にもジョージ・チャキリスやグレン・フォード、ロバート ・スタックらが演じる連合軍など、当時の人気者がきら星の ごとく登場し、次から次の展開も目まぐるしい兎にも角にも オールスターの映画だったのだ。 そんな大作に対して本作は、歴史の大きな流れの中に埋もれ てしまいそうな1ページに光を当てた作品とも言える。正直 には1966年の作品では釈然としなかった部分が本作で明瞭に なったという感じもした。 この他、本作の中でヒムラーがルーブルの美術品をベルリン に運ばせるという台詞には、そこでは1964年の映画『大列車 作戦』が行われているのだと思い出されたり、各映画で描か れたエピソードが繋がって行く。 そんなことも楽しめる作品になっていた。 公開は3月7日より、東京はBunkamuraル・シネマほかで、 全国ロードショウとなる。
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