| 2014年11月03日(月) |
第27回東京国際映画祭《コンペティション以外》 |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※今回は、10月23日から31日まで行われていた第27回東京※ ※国際映画祭で鑑賞した作品の中から紹介します。なお、※ ※紙面の都合で紹介はコンパクトにし、物語の紹介は最少※ ※限に留めているつもりですが、多少は書いている場合も※ ※ありますので、読まれる方はご注意下さい。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 《アジアの未来部門》 昨年新設されたこの部門では、対象作が第1作または第2作 の新鋭監督の作品が紹介される。
『遺されたフィルム』“The Last Reel” 今回の国際交流基金アジアセンター特別賞を受賞した作品。 カンボジアのポルポト政権時代に数多くの映画人が虐殺され たという事実を踏まえて、当時製作された映画の最後の巻を 求めて現代の若者たちが行動するドラマ作品。出演する女優 は実際に当時の人でフランスに亡命して難を逃れたそうだ。 重い歴史が巧みな物語で甦る。
『メイド・イン・チャイナ』“메이드 인 차이나” 日本でも指摘されている中国からの輸入食品の汚染問題を扱 った韓国映画。中国でウナギの養殖をしていた男が水銀検出 の疑いを晴らすために、ウナギを持参して密入国するが…。 韓国内の事情なども絡めて娯楽作品としては楽しめる作品に 仕上げられていた。水銀検査のやり方などかなり常識外れな シーンもあり、その辺は首を傾げたが。
『北北東』“东北偏北” 文化大革命が終了して2年後の中国農村部を舞台に、大学に 戻ることが決まった漢方医学の女性教授と、軍隊では料理係 だったという地元の警察署長が連続レイプ犯を追うコメディ 作品。当時の中国事情などがいろいろと再現されてそれなり に面白くはあったが、事件の顛末が今一つ理解できず、肝心 の推理もよく判らなかった。
『R-18文学賞vol.3 マンガ肉と僕』 年1作ずつ紹介しているシリーズの第3弾。プロデューサー としても活躍する女優杉野希妃による初監督作品。三浦貴大 の主演で、杉野は特殊メイクによるヒロインも演じる。その 特殊メイクは過去の作品にもあって、お話の全体も有り勝ち かなあとも思うが、新人監督はそれらを上手く纏めていた。 なお監督の第2作は釜山で掛かるそうだ。
『あの頃のように』“As You Were” それぞれにタイトルの付された3つの物語のようだが、相互 に登場人物が絡まるなど、かなりトリッキーな作品。ただし その構成が生きているかと言うとそうでもなく、特に最初の 物語の意味は何なのかなど、言葉足らずの部分が多い。志が 高すぎたというよりは、途中でムードに流されていい加減に なってしまった感じがした。
『ゼロ地帯の子どもたち』“Bedone Marz” アジアの未来部門の作品賞を受賞した作品。国境の河に浮か ぶ廃船を舞台に、自給自足で暮らしてきたアラビア語を話す 少年の生活にペルシャ語を話す子供が闖入してくる。さらに 英語の兵士が登場して寓意に満ちた物語が展開される。それ は寓意と言うよりもかなり明白なメッセージを持ち、そこで 語られる物語も素晴らしかった。
《ワールドフォーカス部門》 『黄金時代』“黃金時代” 1911年に中国東北部の黒竜江省に生れ、31歳で夭逝した中国 の女流作家蕭紅の生涯を描いた作品。一時は戦前の日本にも 滞在したという女性の生涯はかなり波乱に満ちたものだが、 本人を含む登場人物がカメラに向いて語り始めるという構成 は本作に適切だったかどうか。それで時間軸が狂うなど観て いて煩雑な感じもした。
『アトリエの春』“봄” 1960年代の後半を背景に、難病で創作意欲を失った彫刻家の 妻が夫の意欲を掻き立てるモデルを見つけ出すが…。監督は 韓国映画で美術を担当してきた人物で本作が第2作。ミラノ 国際映画祭で大賞、撮影賞、主演女優賞を獲得した。作品の アイデアなどは面白いが、結末はちょっと唐突で、もう少し その前後をしっかり描いて欲しかった。
『リアリティ』“Réalité” 互いに繋がりのないいくつかの物語が並行して進む作品で、 しかもその一つでは夢の中の話が他方では現実であったりも するトリッキーな作品。タイトルは登場する少女の名前でも あり、彼女を中心に現実と非現実が入り混じる。かなり複雑 な作品だが、実はそれなりに整理されていて理解はし易く、 この監督カンタン・デュピューは気になりそうだ。
『ミッドナイト・アフター』 “那夜凌晨,我坐上了旺角開往大埔的紅VAN” 今回の上映作品の中で日本映画以外では唯一SFにジャンル 分けされていた作品。深夜の酔客などを乗せた郊外行きバス がトンネルを抜けるとそこは無人の世界だった。ということ でサヴァイヴァル劇が展開されるかと思いきや、監督の興味 はそこには無いらしく、グダグダした人間模様が綴られる。 SFとしてみるのはかなり酷だが、他でもないか?
『遺灰の顔』“The face of the Ash” イラン・イラク戦争の時代の話。クルド族の村で婚礼が行わ れている最中に棺が到着し、一家の息子が戦死してその遺体 だと告げられる。ところがその遺体には息子の特徴がなく、 該当するのは別の一家の息子だった。混乱した当時の状況で はこんなことも間々あったそうだが、そんな悲喜劇が巧みに 描かれており、作品の出来も上々だった。
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