| 2014年10月26日(日) |
想いのこし、さらば愛の言葉よ |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『想いのこし』 岡田将生と広末涼子がポールダンサーを演じることが話題に なっている、死後の霊魂を題材にしたファンタシー色の濃い 作品。 岡田が扮する主人公は、ダフ屋のバイトでその日暮らしを続 けているような典型的なダメ男。そんな男が大枚を稼いだ浮 かれ気分で車道に飛び出し、交通事故を引き起こす。その事 故で彼自身は無事だったのだが。 その事故に巻き込まれたのは、広末扮する女手一つで息子を 育ててきた女性らポールダンサー3人とそのマネージャー。 1人は結婚間近だったり、現世にいろいろと未練のある4人 の霊魂が主人公の前に現れる。 そして最初の内は戸惑っていた4人も徐々に状況を把握し、 主人公を通してだけ現世につながりを持てると知った4人は 彼を利用して現世に残した想いを叶えようとし始める。その 行動に最初は理解できない主人公だが…。 共演は、2010年5月紹介『君が踊る、夏』などの木南晴夏、 「ゼクシイ」のキャンペーンガールで本作が映画デビューの 松井愛莉、2008年9月紹介『カフェ代官山2』で主人公の子 供時代を演じていた巨勢竜也、それに鹿賀丈史。 監督は、テレビで『JIN−仁−』シリーズなどを手掛けた 平川雄一郎。脚本は、舞台演出家でもあり、2010年に本作の 原作『彼女との上手な別れ方』を発表した岡本貴也。原作者 自らの脚色ということだ。 原作者でもある脚本家は、早稲田大学大学院で物理学修士号 も取得しているということで、それなりの想いもあってのこ のテーマと言うことになりそうだ。それで作品自体はファン タシーとして巧みに作られている。 同様のテーマでは、日本映画でも『黄泉がえり』『ツナグ』 などいろいろ作られていて、後者は平川監督の作品でもある ようだが、いずれも試写では観ていなかった。でもまあ元を 糺せば『ゴースト/ニューヨークの幻』があるものだ。 そんな中で、一番の問題は如何にして霊魂が現世に物理的な 影響を与えるかという点になるのだが、本作の処理は流石に 巧みに作られている。それはまあSFファンでもないと混乱 するかもしれないが、これはこれで辻褄は合っていた。 その他に話題の岡田と広末のポールダンスは、多分グリップ などを使っているのだろうが、それなりに観られるものには 成っていたかな。写し方などもう少し工夫も欲しかったが、 過去の同様の作品よりは良かったと言えそうだ。 公開は11月22日から、全国ロードショウとなる。
『さらば、愛の言葉よ』“Adieu au langage” フランス・ヌーヴェルヴァーグの旗手とも呼ばれたジャン= リュック・ゴダール監督が、齢80歳を超えて3Dに挑戦した 作品。 物語は男女の出会いと葛藤を描いたもので、この物語自体に さほどの意味合いは感じられなかった。しかしそれを描き出 す3Dの映像はかなり強烈で、そこにこそゴダールの狙いが あることは容易に判る作品だ。 因に本作の試写会は、特別にハリウッドメジャー日本支社の 試写室を借りて実施されていたが、これは3D以外での上映 が一切禁止されていためだそうだ。それくらいにゴダールが 3Dのこだわった作品と言えるだろう。 その3D映像でゴダールは、本来なら掟破りとも言える表現 にも挑戦している。それは何と左右のカメラで別々の被写体 を撮るというものだ。 そこで一瞬は二重露光のような奇妙な感覚になるが、気付い て左右片方ずつウィンクしながら見るようにすると、そこで は別々の被写体が見えてくる。しかもそれがドラマに併せて 表現されるのも新しい感覚だった。 この辺は、正にヌーヴェルヴァーグの実験映画の感覚が再現 されているという感じだった。またその一方で、本作では映 像のかなりの部分にソラリゼーションの処理が施されていた りもしている。 しかしこれは単純に処理すると左右の映像が不一致になって 3D効果は得られなくなってしまうはずのもので、それがち ゃんと見えるのは、相当の技術的なバックアップもあったと 思われるものだ。 という作品だが、これらの要素の全てを融和させて読み解く のは至難の業とも言える。それはAdieu=Ah dieuという言い 換えに関るものであったり、正に観る者によって様々な捉え 方が出来るものだろう。 しかもSFファン的には、劇中クリフォード・D・シマック の『都市』が引用されたり、A・E・ヴァン・ヴォークトの シリーズ第3作“La fin du Ā”の表紙絵が出てくるなど、 いろいろ考えさせられる。 奥が深いかどうかも判らないが、ヌーヴェルヴァーグの巨匠 は年を取っても途轍もない問題作を提供してくれたようだ。 なお本作は、今年のカンヌ国際映画祭で審査員特別賞を受賞 した他、映画に登場した印象的な犬に与えられるパルム・ド ッグ賞にも輝いた。 公開は2015年1月、東京はシネスイッチ銀座ほか、全国順次 上映となる。
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