| 2014年10月12日(日) |
TATSUMI、うまれる2、ブラック・ハッカー、マエストロ! |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『TATSUMI マンガに革命を起こした男』“Tatusmi” 2011年10月31日付「第24回東京国際映画祭」で紹介した作品 がようやく日本でも一般公開されることになり、マスコミ試 写が行われた。因に監督のエリック・クーは今年の東京国際 映画祭で部門審査員を務めることになっており、映画祭での 特別上映も行われるものだ。 作品は1957年に劇画という名称を考案し、「劇画の父」と呼 ばれる日本の漫画家辰巳ヨシヒロを題材にしたもの。2008年 に出版された辰巳の自伝的作品『劇画漂流』を主軸に置き、 敗戦後の日本の風俗を描いた5本の短編劇画と共にアニメー ションで映像化されている。 その冒頭では「手塚治虫・七回忌」の模様が描かれ、辰巳が 師と仰ぐ手塚氏への憧憬が表明される。その会場を辰巳は途 中で退席するが、それは手塚氏亡き後の日本漫画界の行く末 を案じたからのようだ。実は僕もこの会に出席していたが、 僕はそのようなことを到底考えていなかった。 そして映画は、広島の原爆に関る短編作品『地獄/HELL』の アニメーションに繋げられる。この作品で辰巳と監督は人間 の業について描き切るが、それは原爆が残した影を巡る凄ま じくも切ない物語だ。そしてこの作品だけでも辰巳を再評価 しなくてはいけない気持ちにさせられた。 他に映画では、『いとしのモンキー/BELOVED MONKEY』『男 一発/JUST A MAN』『はいってます/OCCUPIED』『グッド・ バイ/GOOD-BYE』が映像化されているが、いずれもいろいろ な局面での男の生き様のようなものが描かれており、それぞ れが男の自分にはガツンとくる作品だった。 監督と脚本も手掛けたエリック・クーは、1997年のカンヌ映 画祭ある視点部門と、2008年のコンペティション部門にも招 待されたシンガポールの俊英で、本作では2011年のある視点 部門に再び招待された。因に同年の東京国際映画祭ではアジ アの風部門で上映され、スペャルメンションに輝いている。 作品の国籍はシンガポールになっているが、作品中の言語は 日本語で、そのナレーションと主要な登場人物6役の声優を 別所哲也が担当している。他に原作者の辰巳ヨシヒロも登場 する。 実は3年前の映画祭で鑑賞した時には、『地獄/HELL』の印 象が強烈に残って、他の作品や本編の部分はほとんど吹き飛 んでしまっていた。それで今回は再度鑑賞したが、作品に対 する印象はあまり変わらなかった。 冒頭の作品は依然として強烈な印象で、他の作品も見事だが それを超えることは監督も意図していないようにも思える。 ただし監督の発言によると、ヨーロッパの上映では『はいっ てます/OCCUPIED』がかなり受けたそうだ。 公開は11月15日から、東京は角川シネマ新宿ほかで全国順次 ロードショウとなる。
『うまれる ずっと、いっしょ』 2010年9月紹介『うまれる』の豪田トモ監督が、子供の誕生 だけではない人間の営みを記録したドキュメンタリー。 前作からは障害を持つ子供を育てる一組の家族だけが続けて 登場し、重度の障害を持ちながらも両親の愛情に支えられて 医師の常識を超える成長を続けている姿が記録されている。 それは人の営みをも超えた崇高な姿にも見えた。 その他にはつい最近に長年連れ添った妻を亡くした夫と、血 の繋がらない息子との生活の中で新たに実子の誕生を迎える 男性の姿も描かれる。この内の前者に関しては、一般的な生 活をしていれば半数の人間にあり得る事だが…。 後者では、かなりドラマティックな展開が丁寧な取材で記録 されている。しかもその対象の一部が幼い子供というのは、 児童心理学の面からも相当に慎重な取材が求められたと思う が、その背景取材も含めて適切と感じられた。 実のところ前作に関しては、上記の紹介記事を読み返しても 僕自身がネガティヴな態度で作品に接していたことが思い出 されるが。本作に関してはそのような気分は払拭され、心底 から良い作品と言える。 それは多少あざとい演出もあって、その場面では試写会場で も涙している人もいたようだったが。僕自身はそんな直截的 な部分よりも、登場する男性たちの全てが見せる前向きな態 度に感動を覚えていた。 特に、前作に引き続いてその成長を見守ることになったお子 さんの父親が見せる決意の表情には、僕自身が子供に対して 良い父親だったか否かということの想いも含めて、自分自身 を振り返る想いにも捉われていた。 この一家に関しては、これは不謹慎な言い方に聞こえるとは 思うが、最期まで記録を続けて欲しいものだ。それを僕らに 観せることはできなくとも… そして登場するもう1人の男性に関しては、子供の誕生・成 長とは対極の出来事が描かれるが、僕自身が登場する人物と 同じ年齢に達していると、何とも身に詰まされるものが描か れていた。 そこには懺悔や悔恨など様々な思いが去来するが、僕自身に は妻が健在の内にその思いの一部でも払拭するような努力が 求められているようで、これからの人生に目標が与えられた ような気分にもなっていた。 監督に関しては、前作の試写は性別も知らずに観ていたが、 今回は女性プロデューサーと結婚したとの情報も得て成程と 納得もした次第。前作では今一歩踏み込めなかった部分に、 本作では踏み込めている感じがした。 ナレーションを樹木希林が担当。それぞれの家族に寄り添う ような口調も素敵だった。 公開は11月22日から、東京はシネスイッチ銀座ほかで、全国 順次ロードショウとなる。
『ブラック・ハッカー』“Open Windows” 2013年11月紹介『グランドピアノ』などのイライジャ・ウッ ドがコンピュータネットワークに振り回される男性を演じる スペイン=アメリカ合作のサスペンス作品。 主人公は女優の追っ駆けサイトを主宰している男性。彼のサ イトは、レア写真の掲載などで�癸韻凌裕い鮓悗辰討い襪茲� だ。そんな実績が認められたのか、彼には女優と直接逢える というチャンスが訪れる。 ところが、女優の新作の記者会見が行われた街で指定された ホテルに到着した主人公は、思い掛けない事態に巻き込まれ る。突然彼が持参したPCがハッキングされ、やむなくその 指示に従った主人公は女優の不倫現場を目撃。 しかも不倫相手に事態を察知された主人公はハッカーの指示 でその場を逃れることになるが…。次々襲い掛かる危機を辛 くもかわし続ける主人公は、やがてその裏に隠された恐ろし い陰謀の存在を知ることになる。 そんな展開の中に、隠しカメラや公共ネットワークへのハッ キングなどPCを介在する様々なテクノロジーが加味され、 正にスクリーンから一瞬も目を離せないサスペンスドラマが 構築されて行く。 脚本と監督は、2007年“Los cronocrímenes”という作品が ハリウッドでリメイク進行中というスペインの俊英ナチョ・ ヴィガロンド。因にこの作品は『バタフライ・エフェクト』 のような限定的なタイムトラヴェルを描いているそうだ。 共演は、アメリカでかつて�癸吋櫂襯離好拭爾量召鰺澆靴い� まにしたというサーシャ・グレイ。その後はスティーヴン・ ソダーバーグにも認められた女優で、本作にポルノシーンは ないがそれなりの艶技は観せている。 他にヴィガロンド監督や、2006年10月紹介『氷の微笑2』に 出ていたというニール・マスケルらが脇を固めている。 映像的にはそれなりに面白いと感じるし、コンピュータテク ノロジーの面でもいろいろ考えられている印象は持つ。ただ それに対する人間関係の方がごちゃごちゃし過ぎの感じで、 これはもっとシンプルで良かったのではないかな。 しかもそれが二転三転のどんでん返しというのは、脚本を書 いている本人は了解できていても、それを観客に理解できる ように描かないと無意味なもの。本作にはそんな独りよがり な部分が感じられた。 特に事件の主謀者が誰で、その意図や目的が何だったのか、 その辺ぐらいはもっと明確にして欲しかったところだ。でも 次の作品には期待したくなる監督ではあった。 公開は11月22日から、東京はヒューマントラストシネマ渋谷 の他、ユナイテッド・シネマ豊洲など全国のユナイテッド・ シネマを中心にロードショウされるようだ。
『マエストロ!』 2006年12月紹介『神童』などのさそうあきら原作コミックス の映画化でクラシック音楽の演奏をテーマにした作品。 物語の背景は経営が破綻して解散に追い込まれた交響楽団。 団員の中で優秀な者は他の楽団に移籍したが、希望の叶わな かった「負け組」も数多く残されている。そして主人公は、 楽団史上最年少でコンサートマスターの重責を担った逸材だ が、希望した海外の楽団からは不採用の返事が届く。 そんな主人公の許に、突然楽団の再結成とコンサート実施の 案内が届く。ところが指定された練習場に行ってみると、そ こは廃業した町工場の跡で、しかも半信半疑の楽団員の前に 現れたのは名も知らず風体もおかしな謎の指揮者。その上そ の指揮者は奇矯な演奏指導を開始する。 この指導には多くの楽団員が反発するが…。さらには指揮者 が連れてきたプロ経験のないフルーティストの少女もいて、 練習場は喧噪の渦と化す。しかし謎の指揮者は「ここは闘い の場」と宣言し、その熱血の指導は徐々に楽団員の闘争心に 火を着ける。 出演は松坂桃李、西田敏行、それにシンガーソングライター で映画初出演にしてヒロインを務めたmiwa。ヒロイン役の演 技は途中少し覚束ない部分もあったが、全体的には合格点だ ろう。 他に古館寛治、大石吾郎、濱田マリ、河井青葉、池田鉄洋、 モロ師岡、島田久作、松重豊。さらに宮下順子、中村ゆり、 石井正則、でんでんらが脇を固めている。 脚本は、今年1月紹介『魔女の宅急便』などの奥寺佐渡子、 監督は2010年12月紹介『毎日かあさん』などの小林聖太郎が 担当した。 『神童』の映画化が公開された頃は、テレビドラマの発信で クラシック音楽がテーマの作品がブームになっていた。その ブームは沈静した感じもするが、2012年12月紹介『さよなら ドビュッシー』や、昨年には題名が『リトル・マエストラ』 という作品も全国公開されている。 実は昨年の作品については、試写は観せて貰ったがここには アップしなかったものだ。それは何と言うか作品の全体にお いてクラシック音楽の演奏に対する心構えができていないよ うな、単なるブームの後追いをしているだけの感じがして、 正直なところは多少鼻についてきたりもしていた。 しかし本作を観ていて、これは本物、若しくは本物の感じが 味わえる作品だと思えた。演奏される曲目はベートーベンの 「運命」とシューベルトの「未完成交響曲」の2曲だけ、そ の2曲の演奏を完成させて行く過程が、織り込まれる様々な 人間ドラマと共に見事に描かれて行く。 その進歩して行く過程。また様々なテクニックなどが巧みに 物語に織り込まれて、学べる点も数多くあったし、さらには エンターテインメントとしても優れた作品になっていた。ま た後半の「運命」の演奏が始まった途端、「あれ、おかしい ?」と思えた自分も嬉しかった。 公開は来年1月31日から、全国ロードショウが予定されてい る。
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