| 2014年08月17日(日) |
愛しのゴースト、 LUCY/ルーシー |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『愛しのゴースト』“พี่มาก..พระโขนง” 1999年第12回東京国際映画祭コンペティションに出品され、 2001年に日本でも公開されたタイ映画『ナンナーク』の物語 を再映画化した作品。 初めての子を身籠った妻ナークを村に残し徴兵で戦場に赴く 夫マーク。その夫が瀕死の重傷を負った頃、妻は産気づき、 その出産は難産となる。その後、夫は奇跡的に回復し戦友と 共に故郷に帰ってくる。そこでは赤ん坊を抱いた妻が迎えて くれたが、村人の態度は妙によそよそしかった。 「ナンナーク」、若しくは「プラカノーンのメー・ナーク」 と呼ばれる物語は、現在はタイの首都バンコクの一部となる ワット・マハーブットに伝わる民話で、戦場に赴いた最愛の 夫を思う妻が霊魂になってもその思いを遂げようとし、夫も またその思いに応えようとする物語。 本来、難産で亡くなった女性の霊は悪霊とされ、ワット・マ ハーブットに実在するメー・ナーク廟には霊を鎮めるための 供え物が絶えないようだが。一方で出征した兵士の留守を霊 になっても守ったという物語から、出征前の軍人が留守宅の 安全を願う場所ともなっているそうだ。 その物語は過去にも何度も映画化があるものだが、1999年の 映画祭で鑑賞した作品では、映画の中で夫と妻が「ナーク、 マーク」と呼び交わす台詞がタイ語独特のイントネーション の持つ切なさで、これはもう本当に心に沁みる作品だったと 記憶している。 因にこの時の作品は、本国タイでは『タイタニック』を超え る大ヒットになったと伝えられている。 という物語に対して本作は、リメイクというか再度の映画化 となるものだが、今回の原題は『ピー・マーク』、つまり前 作が妻の視点で描かれたのに対して本作は夫の側から描いて いる。しかもそこには戦友も介在するから、その右往左往す る様がかなりコミカルにも描かれたものだ。 そして本作は、本国タイでは『アナと雪の女王』を超える大 ヒットになっているそうだ。 出演は、2009年に日本公開された『ミウの歌』などのマリオ ・マウラーと、資生堂のモデルを務めたこともある本作がデ ビュー2作目というダビカ・ホーン。脚本と監督は、2006年 日本公開された『心霊写真』などのバンチョン・ピサンタナ クーンが手掛けている。 正直に言って『ナンナーク』のしっとりとした雰囲気が好き だった者には、コミカルなテイストが多少違和感かな。でも まあそんな繰り言を抜きにすれば、感涙というより微笑みが 浮かぶ本作の展開は受け入れられるかもしれない。特に結末 は拍手というところだろう。 公開は10月18日から、東京はシネマート六本木、ヒューマン トラストシネマ渋谷ほかで、全国上映となる。
『LUCY/ルーシー』“Lucy” リュック・ベッソン監督がスカーレット・ヨハンソンを主演 に迎えて描き出した新感覚のSF作品。 ヨハンソンが演じるのはルーシーという名の女。台北で遊ん でいた彼女が危ない事件に巻き込まれる。それはアタッシュ ケースをホテルにいる韓国人の男に届けるという簡単な仕事 から始まるが…。 次に彼女が命じられたのは、新型ドラッグの包を体内に隠し ヨーロッパに飛ぶというもの。ところがはずみで包が破れ、 彼女の体内を新型ドラッグが回り始める。それは飛んでもな い副作用を彼女にもたらした。 元々人類には持っている脳の10%しか使っていないという説 があり、母胎から胎児に注がれるホルモンより抽出されたと いうその新型ドラッグには、脳の未踏の部分を覚醒させる作 用があったのだ。 こうして脳が覚醒されたことによる新たな能力を身に着けた ルーシーは、新型ドラッグの蔓延を阻止し、同時に彼女が選 んだ脳学者の前で自らが脳の限界に挑む道に邁進する。その 先に観えた人類の究極の姿とは… 共演は、モーガン・フリーマン、1999年『シュリ』や2004年 8月紹介『酔画仙』などのチェ・ミンシク。他に2012年11月 紹介『砂漠でサーモン・フィッシング』などのアマール・ワ ケド、2013年6月紹介『ウォーム・ボディーズ』などのアナ リー・ティプトンらが脇を固めている。 映画の前半では、登場人物の行動の間に、ドキュメンタリー 映画から抜粋されたような自然界の動物の行動が挿入され、 それはなかなか巧みで面白い構成となっていた。それが映画 の後半になると、一気にSFにのめり込んで行く。 そのSFマインドは完璧とも言えるもので、それはファンの 目からすると爽快でもあった。でも試写会場では、今年5月 紹介の『トランセンデンス』にも意味が判らないという声が 聞こえたようで…。 これでまた「SFは判らない」という評判が立ちそうなのも 心配なところだ。ただ本作に関してはベッソン監督は確信犯 だと思えるから、これも了解としておきたい。5月の作品も 本作もSFファン的には判り易い作品なのだが…。 もっとも本作では『2001年宇宙の旅』へのオマージュと思え るものが大量に提示されるが、ここまで来るとリスペクトと いうより呪縛に近いものも感じてしまうところで、SF映画 ファンとしては多少面はゆい感じではあった。 まあその辺もベッソン監督の狙いなのかな。 公開は8月29日から、東京はTOHOシネマズ日本橋他で、全国 ロードショウとなる。
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