| 2014年08月10日(日) |
監視者たち、ある優しき殺人者の記録 |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『監視者たち』“감시자들” 監視カメラの映像及び現場での目視により容疑者の追跡を行 う警察内特殊組織・監視班と、姿なき完全犯罪組織との闘い を描いたサスペンス作品。 ソウル地下鉄の中で若い女性が中年の男性を尾行している。 それは男性の一挙手一投足まで監視し記憶するという徹底的 なものだ。一方、同じ頃のソウルの街では凶悪な強盗事件が 発生していた。その事件は犯罪集団によって実行されたが、 陰の黒幕は計画を危うくした男を容赦なく粛清する。 こうして新たに監視班に加わった若い婦警は、最初の任務と して強盗犯を追うことになる。しかし実行犯の男たちは巧み に監視カメラの死角を通り、なかなかその正体を突き止める ことができない。そんな中で、実行犯の逃亡を支援した男が 浮かび上がり、監視班は男を追い始めるが…。 と、ここまで映画を観ていて僕は猛烈な既視感に襲われてい た。それもその筈で、実はこの作品は2008年12月に紹介した ジョニー・トー製作による香港映画『天使の目、野獣の街』 の韓国版リメイクだったのだ。そして上記の展開までは、実 に詳細にオリジナルを再現していた。 元々このオリジナルは上記の紹介を読んで貰えば判る通り、 当時の僕はその作品を絶賛していた。そのためその印象の強 さから直ちに既視感を生んでいたものだが。今回のリメイク では、さらにその作品の完成度は高められていた。これはオ リジナルに魅せられた者には望外の喜びだ。 しかも本作では、オリジナルの上映時間が90分だったのに対 して約2時間に拡大され、新たな事件やその後の展開などが 補充されている。これはオリジナルに対して続編を希望した 僕にはさらなる贈り物と言えるもので、実際にオリジナルで モヤモヤしていた部分がこれで解消されもした。 出演は、2012年12月紹介『王になった男』などのハン・ヒョ ンジュ、2013年5月紹介『ザ・タワー 超高層ビル大火災』 などのソル・ギョング。それに2005年7月紹介『私の頭の中 の消しゴム』などのチョン・ウソン、人気アイドルグループ 2PMのイ・ジュノらが共演している。 さらにオリジナルの主演者のサイモン・ヤムがカメオ出演し ているのも、粋な計らいと言う感じがした。 監督は、チョ・ウィソク、キム・ビョンソという2人の共同 になっており、2002年に韓国では異例の26歳で監督デビュー したというチョが脚本と俳優の演技を担当、2012年2月紹介 『青い塩』などの撮影監督を務めたキムが、追跡劇や強盗シ ーンなどのヴィジュアルに溢れた演出を手掛けている。 公開は9月6日から、東京ではシネマート新宿、シネマート 六本木、さらに大阪、愛知、北海道、福岡、沖縄などで全国 ロードショウとなる。 韓国版リメイクと言うと2012年7月紹介『凍える牙』や、そ の他にも映画祭上映で『リング』や『黒い家』なども観てい るが、いずれもオリジナルより優れた作品に観えた。それが 日本映画だけでなく、香港映画にも発揮されたという感じの 作品だ。
『ある優しき殺人者の記録』 今年3月紹介『コワすぎ!』などの白石晃士監督が韓国で撮 影した最新作。因に白石監督は、POVの第一人者と呼ばれ ているそうで、さらに本作では86分間ワンカットという触れ 込みにもなっている。 物語は女性記者に架かってきた1本の電話から始まる。その 電話は18人を殺害したとされる逃亡中の連続殺人鬼からのも ので、実は記者はその犯人と幼馴染だった。しかし幼い頃に 起きたある事件が、彼の精神を狂わせたのだという。 その電話で殺人鬼は、廃屋のマンションで会いたいというこ と。その場所に日本人のカメラマンを1人だけ同行させて、 一部始終をノーカットで記録することを要求する。こうして 指定の場所に彼女らが着くところから映画は始まる。 やがて携帯電話の指示でマンションの部屋に向かった2人は 殺人鬼と遭遇。さらに殺人鬼が報道以上の殺人を犯している ことを知る。しかしその犯行は神の啓示によるもので、それ はある崇高な目的に向かうものだと説明されるが… その目的を達成するためには、あと2人分の殺人が必要で、 その生け贄には日本人のカップルが狙われていた。こうして 殺人鬼と主人公たち、それに日本人カップルの三つ巴の闘い が開始される。果たしてその結末は? 因に白石監督は、超暴力性とエロス表現でも知られているそ うで、映画はスペシャルメイクや手品のようなトリックにも 彩られた作品になっている。そして結末は、僕にとっては期 待の通りと言うか、これは納得できるものになっていた。 出演は、2013年5月紹介『クソすばらしいこの世界』などの キム・コッピ、韓国テレビに芸歴を刻むヨン・ジェウク、そ してカメラも兼任の白石監督。さらに劇団ポツドールの米村 亮太朗、元グラビアアイドルの葵つかさらが共演している。 宣伝チラシには「この結末は、誰にも予測できない。」とあ るが、映画の中で某コミックスに由来する事実に気付くと、 これは予測可能なものになる。しかもそれが明確に踏襲され ていることにも僕は嬉しくなった。 これには白石監督の意外な側面も観られた訳だが、これを観 せたことで今後は監督の作風が変わるかな? とも考えてし まうところだ。 公開は9月6日より、東京は新宿バルト9ほか、大阪、名古 屋、博多などでロードショウとなる。 また、8月27日〜31日に大分県で開催の湯布院映画祭におい て特別試写が行われ、28日の上映には主演のキム・コッピ、 白石監督の来場もあるそうだ。
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