井口健二のOn the Production
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2014年05月25日(日) ジプシー・フラメンコ、ザ・ホスト美しき侵略者

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『ジプシー・フラメンコ』“Bajarí”
スペイン・バルセロナのジプシー・コミュニティと、彼らの
伝統舞踊「フラメンコ」を描いたセミ・ドキュメンタリー。
主題となるのは1961年の映画『バルセロナ物語』でも紹介さ
れるカルメン・アマジャ。1913年生まれで4歳から舞台に立
ち、アメリカに渡ってルーズベルト大統領の前でも踊りを披
露したという不世出のダンサーの姿が紹介される。
そしてそのカルメンの姿を再現するべく、彼女の血を引く現
代のダンサー、カリメ・アマジャに新たな舞台の誘いが掛か
る。そして依頼を受けたカリメは、メキシコに暮らす母親に
相談し、母と共にカルメンのフラメンコの再現を目指す。
この母子のフラメンコに掛ける情熱を描くと共に、バルセロ
ナのジプシー・コミュニティで育ち、フラメンコダンサーを
夢見る5歳の少年の様子などの織り込んでドキュメンタリー
は構成される。

フラメンコを描いた作品では、2011年11月に『フラメンコ、
フラメンコ』や、2013年2月に『裸足のフラメンコ』なども
紹介しているが、こうしてみると我ながらこの舞踊が好きな
のかなとも思ってしまう。
それは、思い返せば映画を観始めた頃に『マリソルの初恋』
なんて映画を観て、その中で描かれるフラメンコに魅了され
たせいもあるのかもしれない。ともかくそんなフラメンコの
神髄とも言えるものが描かれた作品だ。
それは、1961年の映画に登場するカルメンの「マシンガンの
よう」と評される強烈なステップに始まって、それを再現す
るために演奏家たちと入念に息を合わせるカリメの姿など、
フラメンコの奥深さを感じさせると共に、それらを見つめる
少年の眼差しに未来への展望も感じさせてくれる。
その一方で、中で歌われる歌詞に「ジプシーとして生まれた
だけで、悪い人間だと決めつけないでくれ」とあるような、
ジプシーたちの置かれる状況も描き出される。しかしそんな
ものもフラメンコが吹き飛ばしてくれる、そんな気概も感じ
られる作品だ。
それにしても、カルメン及びカリメ・アマジャが踊る強烈な
ステップには正しく身震いするほど興奮を覚えた。

公開は8月9日より、東京は渋谷のユーロスペースにてロー
ドショウが予定されている。
なお、カルメン・アマジャ(Carmen Amaya)の日本語での表
記は、カルメン・アマーヤなど様々行われていたようだが、
本作の公開では上記に統一されるようだ。バルセロナ五輪で
はホアン・ミロもジョアン・ミロの統一されたし、現地の発
音はこちらが近いようだ。

『ザ・ホスト美しき侵略者』“The Host”
『トワイライト』サーガのステファニー・メイヤーによる原
作を、2003年8月紹介『SIMONE』などのアンドリュー・ニコ
ルが映画化した作品。
謎の宇宙生物に侵略された近未来の地球の物語。その侵略の
手段は、身体を持たない胞子のような知的生命体が地球人の
身体に寄生し、その精神を乗っ取るというもの。その結果、
地上では争いや環境破壊も無くなり、地球には平穏な時代が
訪れていた。
しかし地上には、未だ異星人に精神を奪われていない人類も
存在していた。そんな残存人類たちは荒野に隠れ住み異星人
を排除して地球を取り戻す作戦を展開していた。それに対し
て異星人は残存人類を追い詰め、捕獲しては生命体の寄生を
進めていたが…。
そんな中で主人公は残存人類の一員だったが、ついに捕えら
れて生命体に寄生されてしまう。ところが主人公の精神力は
極めて高く、異星人の精神に反攻を開始する。それは肉体の
支配を奪い返すまでには至らなかったが、寄生した異星人に
精神の葛藤を生み出すようになって行く。
そして異星人を説得した主人公の精神は、1つの身体に2つ
の精神を宿したまま、残存人類の許に帰ることに成功する。
だがその後を、異星人に身体を奪われた女性の追跡者(シー
カー)が執拗に追い続けていた。

出演は、2013年7月紹介『ビザンチウム』などのシアーシャ
・ローナン、2011年4月紹介『赤ずきん』などのマックス・
アイアンズ、2013年9月紹介『パーシー・ジャクソン/魔の
海』などのジェイク・アベル。
さらに2008年12月紹介『ベンジャミン・バトン』で主人公の
若年期を演じたチャンドラー・カンタベリー、クリント・イ
ーストウッド夫人のフランシス・フィッシャー、ダイアン・
クルーガー、ウィリナム・ハートらが脇を固めている。
『トワイライト』サーガは吸血鬼ものと言っても、少女小説
の臭いがプンプンで、ジャンル映画のファンとしては些か退
くところがあった。それに対して今回の作品はSFとしての
体裁はそれなりに整っている。
もちろん侵略者の出自に対する疑問などは残るし、その辺が
誤魔化されているのは、所詮はライトノヴェルという感じ。
でも描かれた範囲での破綻はないし、これなら納得はできる
かな。少なくとも映画レヴェルのSFにはなっていた。

公開は6月14日から、東京は新宿ミラノ、ヒューマントラス
トシネマ渋谷ほかで、全国ロードショウとなる。


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井口健二