井口健二のOn the Production
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2014年05月18日(日) 女の穴、キカイダー REBOOT

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『女の穴』
今年3月『恋につきもの』を紹介した漫画家ふみふみこが、
2010年に発表した連作コミックスの映画化。因に連作は3作
のようだが、今回はその内の2編が映像化されている。
その2編はいずれも女子高生と教師の恋愛を描いたもので、
1編目は「女の穴」と題された、女癖の悪い教師にアタック
する大人しめの女子生徒のお話。卒業アルバム制作委員会の
委員長になった生徒は顧問の教師に言い寄るが…
2編目は「女の豚」と題されたもので、女子生徒の思いを寄
せた相手の教師がゲイだったことから、教師が思いを寄せて
いる男子生徒も巻き込んでの、女子生徒によるかなり際どい
復讐劇が展開される。
この2編がそれなりの性描写も含めて描かれている。しかも
映画の構成は、2つの物語を独立にするのではなく微妙に交
差させたもので、それは敢えて巧みと言うほどではないが、
それなりに考えて作られている感じはした。

主演は、共に岐阜県出身のグラビアアイドルという市橋直歩
と石川優実。2人の出身県が同じなのは偶然のようだが、グ
ラドルといってもそれぞれは舞台経験なども積んでいるよう
で、それなりにしっかりとした演技をしていた。
共演は、今年4月紹介『最近、妹のようすがちょっとおかし
いんだが。』などの小林ユウキチと、2011年1月紹介『市民
ポリス69』などの酒井敏也。因みに酒井も岐阜県出身のよ
うだ。
その脇をテレビのバラエティ番組出身の青木佳音、2007年の
映画『キャプテン〜実写版〜』で主演デビューの布施紀行ら
が固めている。監督は、やはりコミックスの映画化『うそつ
きパラドクス』を昨年発表した吉田浩太が担当している。
実は監督の前作は試写を観させて貰っていたが、何と言うか
普通にうまくできているという感じで、僕でなくても評価す
る人はいるだろうと思え、ここでの紹介は割愛した。でも悪
くない作品という印象は残っていた。
そんな監督の新作は、試写会場を出てくると僕がSF関係者
だと知っている宣伝担当が、笑顔で僕に感想を求めてくるよ
うな作品だった。
それは確かに主人公が「私は異星人です」と言うのだから…
これが純粋にSFかどうかは別にして、取り敢えずSF映画
ファンがニヤニヤするような作品にはなっているし、これは
悪い意味ではなく納得できる作品でもあった。
鑑賞制限R15+の作品だが、演技も演出もしっかりとして
おり、映画としての完成度はそれなりの作品になっている。
SF映画ファンには心を大きく持って観て貰いたい作品だ。

公開は6月28日から、東京は渋谷ユーロスペースにてレイト
ショウの他、全国順次ロードショウとなる。

『キカイダー REBOOT』
1972年に放送開始され、同時に週刊少年誌で漫画の連載も行
われた石ノ森章太郎原作『人造人間キカイダー』を、新たに
劇場用映画として再制作した作品。
時代は近未来。高齢化社会の介護の問題や原子力事故の発生
などを踏まえて日本政府はロボット立国を提唱。1人の博士
の発案によるアンドロイドの開発が進められていた。それは
良心回路を搭載し、人間のために働く機械だった。
ところが、博士の補佐のためにアメリカから招かれた科学者
は別の思想の持ち主だった。こうして別々に製作された2台
のプロトタイプには一長一短があり、博士の手になる男性型
のジローには良心回路の影響が顕著だった。
そんな中で博士が不慮の死を遂げる。さらにその博士の研究
ファイルが博士の遺児に託されていることが判り、そのファ
イルを巡って暗闘が始まる。そしてアンドロイドのジロー=
キカイダーには、遺児を守る任務が与えられていた。

出演は、2014年テレビ『軍師官兵衛』にも出演の入江甚儀、
2013年4月紹介『俺俺』などの佐津川愛美、2012年6月紹介
『闇金ウシジマくん』の続編で今年公開の作品に出演の高橋
メアリージュン。
他に、オリジナルでジローを演じた伴大介、長嶋一茂、本田
博太郎、鶴見辰吾、石橋蓮司らが脇を固めている。監督は、
2009年4月紹介『Blood』などの下山天が担当した。
テレビ放送は土曜日の夜で、1972年の当時は毎週土曜日には
渋谷でSFの集まりもあったから番組の視聴はしていない。
でも題名くらいは憶えていたかな。そんな程度の理解で作品
を鑑賞した。
その印象は、映画の前半に登場する高層ビル屋上にあるヘリ
ポートでのアクションなどは、屋上のヘリポートで周囲に手
摺りのない状況の恐怖感なども巧みに描かれ、登場する敵役
の巨大メカの造形なども面白く見られた。
またキカイダーのアクションも、スーツアクターによる殺陣
の動きなどは柔軟で、「本当は機械だよな」とは思いながら
も、アニメやCGIではないスムースな立ち回りの面白さを
感じることができた。
ただしそんな映像に対して物語の方は、もう少し何か捻りが
欲しかったかな。それは勿論、本作はリブートなのだから、
オリジナルの通りであって良いのだが、観ていて多少レトロ
気味と言うか…
オリジナルの放送は『ドリフ』の裏だったもので、その辺を
意識したギャグはレトロ感を逆手にとっていると理解できる
のだが。スマホなども登場する現代の背景の割には何かが足
りていない、そんな感じが残った。
とは言え、エンディングに登場のタイトルには『キカイダー
REBOOTS』とあったようにも見えたもので、さらに続編など
が出来るようなら、それに期待したくもなったものだ。

公開は5月24日から、全国一斉ロードショウとなる。


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井口健二