井口健二のOn the Production
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2014年05月11日(日) トランセンデンス

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『トランセンデンス』“Transcendence”
2010年7月紹介『インセプション』や『ダークナイト』3部
作などの監督を務めたクリストファー・ノーランの製作総指
揮で、ジョニー・デップが主演する近未来サスペンス。
急速なコンピューター技術の発達を危惧して、先進的なAI
研究者へのテロが横行している時代が背景の物語。デップが
演じるのは同じく研究者の妻と共に政府の資金援助も受けた
開発に取り組む科学者。
ところが彼はテロの標的となり、撃ち込まれた銃弾によって
余命いくばくもない状況になってしまう。そこで彼の妻は研
究途上の技術を使って、彼の頭脳データをコンピューターに
アップロードしようとするが…。
今年4月紹介『her/世界でひとつの彼女』は、正しくAI
の話だったが、本作は人間の頭脳をコンピューターに移植す
るというもの。その存在は天才のひらめきとコンピューター
ネットワークを駆使して様々な奇跡を可能にする。
それは株式市場などの経済活動からナノテクノロジーなどの
科学技術まで、あらゆる分野を繫ぎ合わせて人類に多大なる
恩恵を与えるように見えるのだが。そこには大いなる危険も
潜んでいた。

共演は、2007年3月紹介『プレステージ』などのレベッカ・
ホール。『ダークナイト』シリーズにも出演のモーガン・フ
リーマンとキリアン・マーフィ。
さらに2006年5月紹介『ダ・ヴィンチ・コード』などのポー
ル・ベタニー、2013年8月紹介『ハウス・オブ・カード野望
の階段』などのケイト・マーラらが脇を固めている。
脚本は本作がデビュー作となるジャクスン・パグレン。因に
この脚本はハリウッドの「ブラックリスト」に載せられてい
たものだ。監督は長年ノーラン作品の撮影を担当し『インセ
プション』でオスカーを射止めたウォーリー・フィスター。
映像は間違いなく美しいし、映画の前半の展開などは息もつ
かせない感じで緊迫感もあり、それらは感心して観ていた。
しかし科学者の頭脳がコンピューターにアップロードされ、
ナノテクノロジーが登場する辺りから何となく題材が消化し
切れていない感じがし、特に結末は物足りなさが残った。
本作の本来のテーマは人間とコンピューターが神を目指して
戦うところにあると思うが、『2001年宇宙の旅』でのHAL
とボーマンの対決なども観てきた者としては、もう少しここ
には別の展開も期待したいところだった。
そこまでの展開が良かっただけに余計に残念にも感じられた
ものだ。

公開は6月28日より、全国一斉の拡大ロードショウとなる。


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井口健二