井口健二のOn the Production
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2014年01月19日(日) アナと雪の女王、福島 六ケ所村 未来への伝言、マチェーテ・キルズ

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
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『アナと雪の女王』“Frozen”
ハンス・クリスチャン・アンデルセンの名作「雪の女王」か
ら想を得て創作された魔法に彩られたディズニー・アニメー
ションの最新作。本作はすでにゴールデン・グローヴの長編
アニメーション賞に輝いている。
物語の舞台は、北欧のフィヨルドに面した街に立つ城。そこ
には仲良しの姉妹が、両親と共に暮らしていた。しかしその
姉には魔法の力があり、ある日の出来事からその魔法を封じ
なければならなくなる。
そのため姉は部屋に幽閉されることになり、妹の記憶から姉
の魔法に関ることは消され、姉と一緒に遊ぶこともできなく
なった。しかも両親が旅先で亡くなり、城の城門は閉ざされ
たまま歳月が流れる。
ところが姉が成人の日を迎え、女王となるための戴冠式が挙
行されることになる。こうして城門が開かれ、街には隣国か
らの使者も来訪して活況を呈するが、姉は戴冠式の間に魔法
を封じていられるか不安だった。
とは言え、姉の魔法のことは記憶にない妹は楽しくその日を
迎えるが…。ある出来事から姉の不安が的中し、街は雪に閉
ざされてしまう。そして姉との楽しかった日々を思い出した
妹は、姉を取り戻すため苦境に立ち向かうことになる。

脚本は、2013年2月紹介『シュガー・ラッシュ』も担当した
ジェニファー・リー。監督は、2007年9月紹介『サーフズ・
アップ』のクリス・パックと、脚本家のリーがディズニー・
アニメーションでは初の女性監督となっている。
オリジナルの声優は、姉役を2008年1月紹介『魔法にかけら
れて』に出演のイディナ・メンデルと、妹役はテレビ『ヴェ
ロニカ・マーズ』でブレイクしたクリステン・ベル。いずれ
もブロードウェイ・ミュージカルの実績があり、その他の脇
役陣もブロードウェイの精鋭で固められている。
僕は字幕版の試写を観たのでこのオリジナル版の声優たちの
圧倒的な歌唱を楽しんだが、特に雪の女王になる運命を受け
入れた姉がその決意を歌いその居城を作って行くシーンは、
映像のスペクタクルと共に見事に描かれていた。
因に、僕はアンデルセン原作の「雪の女王」が大好きな作品
の一つだが、自分が何故その物語を知っているのか覚えてい
なかった。しかし今回資料を読んでいる内に、1957年ソ連版
のアニメーションを子供の頃に観ていたことを思い出した。
その観点で言うと本作の物語は、原作とは全く異なっている
ものだ。しかし実に巧みに原作の要素が織り込まれており、
その原作に寄せる思いも感じられる作品だった。しかもそこ
に見事な映像のスペクタクルも描かれている。
原作を知っている人も知らない人も、これは楽しめる作品だ
ろう。

公開は3月14日から、全国一斉2D/3Dロードショウとなる。
なお併映の短編は、初期のミッキーマウスを再現した『ミッ
キーのミニー救出大作戦』“Get a Horse!”。今回の試写は
2Dだったが、3Dが面白そうな作品だ。

『福島 六ケ所村 未来への伝言』
20年間、青森県六ケ所村を撮り続けている女性フォトジャー
ナリストの島田恵が初監督したドキュメンタリー作品。
六ケ所村を含むむつ小川原開発計画は1960年代の末に開始さ
れ、当初は石油化学コンビナートや製鉄所を主体とする臨海
工業地帯の整備を目的としていた。しかし、1973年の第1次
石油ショックなどの影響で計画は頓挫。当時財閥系の不動産
会社などが取得した土地の大半は売れ残ってしまう。
実は僕の父親が当時この事業に出資していた。ただし父親は
上記の計画頓挫により出資金の回収もなく手を引き、知人の
紹介で文句は言わなかったものの、多分詐欺に遭ったという
認識だったと思う。そんなことでこの地名は僕の記憶の中に
も刻まれていた。
その六ケ所村に核施設が作られるようになるのは、1984年に
電気事業連合会が核燃料サイクル施設などの建設を要請した
のが始まりで、当然漁業・農業関係者や反核団体などによる
反対運動が巻き起こるが、翌年には県や六ケ所村も受け入れ
を表明してしまう。そして1986年チェルノブイリ。
島田恵はそんな六ケ所村を、1990年から2002年まで現地に在
住しながら撮影。その写真集「六ケ所村」には2001年第7回
平和・協同ジャーナリスト基金賞の奨励賞が贈られている。
その島田が、今回は映像ドキュメンタリーとして本作の撮影
を開始したのは2011年2月のことだった。
ところが3月11日に震災が発生。一時は制作を中断するが、
同時に起きた福島原発事故を見て、原発問題の「入り口」と
「出口」を描くことを目的として制作を再開。しかしここで
は「原発=入り口」と「核廃棄物集積場=出口」が描かれる
が、その提起する問題は同じだものだ。
その作品の中で島田は、福島県大熊町にローンで建てた当時
新築1ヶ月の家を持ちながら避難勧告で自宅を追われ、幼い
子供と共に東京に暮らす一家や、郡山に在住だが幼い子供を
抱えて今回は長野県に保養に来ている一家、そして郡山市で
有機農業を実践してきた農家などを描く。
その間には放射能が子供に与える影響のデータなども挿入さ
れ、郡山で行われている子供に対する甲状腺検査の模様や、
その一方で、農家はせっかく生産した米が検査結果は問題な
いものの、精密検査で発見された微量の放射能が販路をほと
んど無くしてしまう現実が描かれる。
特には超音波診断機を首に押し当てられ、検査の理由を理解
できない子供が泣きじゃくって抵抗する姿に、これが現実に
日本で行われていることだと理解することにも抵抗を覚え、
その現実を目の当たりにしていることには言い知れない衝撃
を受けるものだ。
その他、青森県に関しては反対派漁民の網にかかったタラか
ら福島由来と思われる放射能が検出され、陸揚げを禁じられ
て無言で投棄する姿に、無念さと虚しさを明白に感じること
ができる。これが今の日本人に明確に突きつけられている問
題だと言える。

公開は2月15日から、東京はオーディトリウム渋谷にてロー
ドショウ。都知事選挙投票日後の公開であることが残念だ。

『マチェーテ・キルズ』“Machete Kills”
ロバート・ロドリゲス監督ダニー・トレホ主演による2010年
公開作『マチェーテ』の続編。
前作はクエンティン・タランティーノとロドリゲスが、往年
の場末の映画館の雰囲気を再現しようとして企画した2007年
7月紹介『グラインド・ハウス』に添えられたフェイク予告
編に基づいて製作された作品。その前作の日本公開の際は試
写を観せてもらえず、僕はやむなく劇場で観たものだ。
その前作でトレホが演じたのは凄腕のメキシコ連邦捜査官。
しかし正義感ゆえに犯罪組織と衝突し、妻子を殺されて職を
去る。それから3年、彼は違法移民の日雇い労務者となって
テキサスにいた。そんな彼のスキルに注目した男が暗殺を依
頼。しかしそこには違法移民に絡む陰謀が潜んでいた。
これに移民を弾圧する上院議員や移民狩りの自警団、入国管
理局の女捜査官、移民のために戦う女革命戦士らが絡んで、
向かうところ敵なし不死身のマチェーテが獅子奮迅の大活躍
を繰り広げるというものだった。そしてその結末には本作の
タイトルが記されていたのだ。
そんな前作の続編だが、まず巻頭に“Machete Kills Again
in Space”という予告編が上映される。これは『グラインド
・ハウス』からの流れのものだ。
そして本編ではマチェーテにアメリカ大統領から直々に依頼
が届く。それはメキシコにいるイカレたボスを抹殺せよとい
うもの。そこでマチェーテはメキシコに潜入するが、その男
は多重人格者で、しかも心臓には鼓動が止まるとワシントン
に向けたミサイルが発射される仕掛けが施されていた。
このためマチェーテはそのボスを生きたままアメリカに連れ
て行かねばならなくなる。ところが2人には組織からの懸賞
金が掛けられ、賞金稼ぎやヒットマン、さらには金に目の眩
んだ地元住民までもが牙を向いてくる。その下を突き進むマ
チェーテはついにボスを操る黒幕に辿り着くが…。
という展開の中で、前作同様あり得ない不死身ぶりを発揮す
るマチェーテの大活躍が描かれる。しかも予告編に描かれた
次回作への繋ぎもしっかりと描かれていて、本作の制作協力
の中には、2015年に民間企業では初の有人宇宙飛行を目指す
SpaceX社の名称も登場していた。

共演は、ジェシカ・アルバ、ミシェル・ロドリゲスが前作に
引き続いて登場の他、『スパイ・キッズ』のアレクサ・ヴェ
ガ、アントニオ・バンデラスが出演。
さらに2007年12月紹介『アメリカン・ギャングスター』など
のキューバ・グッディングJr.、2012年4月紹介『ラム・ダ
イアリー』などのアンバー・ハード、2011年4月紹介『エン
ジェル・ウォーズ』などのヴァネッサ・ハジェンズ。
またメル・ギブスン、本名のカルロス・エステベスで出演の
チャーリー・シーン、映画初出演のレディ・ガガらが脇を固
めている。
公開は3月1日から、新宿バルト9他での全国ロードショウ
となる。


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井口健二