| 2013年12月01日(日) |
ダ・ヴィンチ・デーモン、ミトン+こねこのミーシャ、御手洗薫の愛と死、小さいおうち、ノー・ヴォイス |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※ ※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※ ※方は左クリックドラッグで反転してください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『ダ・ヴィンチ・デーモン』“Da Vinci's Demons” 2005年5月紹介『バットマン・ビギンズ』以降の『ダークナ イト』3部作や、2005年2月紹介『ブレイド3』などの人気 シリーズを手掛けた脚本家デイヴィッド・S・ゴイヤーが描 く、若き日のレオナルド・ダ・ヴィンチの冒険物語。 イギリスBBCの製作で、本国では今年4月から放送され、 日本でも7月に放送されたテレビシリーズの第1シーズン・ 8話が12月6日にDVDリリースされることになり、最初の 2話の試写と8話までのサンプルDVDを鑑賞した。 ダ・ヴィンチは1452年、メディチ家が支配するフィレンツェ 共和国トスカーナ・ヴィンチの生まれ。父親はフィレンツェ の公証人だったが彼自身は非嫡出子とされ、5歳までは母親 の許で暮らした。 しかしその後は父親の家に引き取られ、14歳で当時の「フィ レンツェで最も優れた」工房を主宰するヴェロッキオの許に 弟子入り。その後の約10年間を過ごしたこの工房での時代が 物語の背景になっている。 そのフィレンツェは、物語ではバチカンが権力を握るローマ と敵対しており、そのローマとの外交や武力での衝突。そし てフィレンツェの内情を探るスパイの暗躍などが、主人公の 冒険を彩って行く。 一方、ダ・ヴィンチは幼少期の神秘体験として、寝ていた子 供用ベッドの手摺に舞い降りたハゲワシが、尾で彼の口元を 叩いた記憶と、謎めいた洞窟に入ろうとした記憶を書き残し ており、それらも物語の背景とされている。 そしてここは史実と異なるが、主人公は幼い頃に母親と生き 別れ、その母親の所在を突き止める目的が、彼を様々な冒険 に導いて行く。その中ではスペインのイザベラ女王やルーマ ニアの串刺し王ブラド・ツェペシュも登場する。 なおイサベル女王は1451年生まれ、串刺し公は1431年生まれ で、いずれもダ・ヴィンチと同時代の人たちだ。 さらにはダ・ヴィンチが発明したとされる凧に乗って上空を 飛ぶ様子や色々な絡繰、また機関砲、クラスター弾といった 兵器など、様々な事物が物語を彩る。それは正に大冒険活劇 という感じのシリーズになっているものだ。 ついでに言うと、何故か毎回のように映像に暈かしの掛けら れたベッドシーンも登場する作品だ。 出演は、2009年“Happy Ever Afters”という作品に主演が 記録されているトム・ライリーと、2011年8月紹介『キャプ テン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』に出てい たというローラ・ハドック。 さらに2008年1月紹介『ライラの冒険・黄金の羅針盤』に出 ていたというエリック・コーワン、2009年1月紹介『ロック ンローラ』に出ていたというブレイク・リットン等。つまり これからブレイクしそうな若手俳優たちが活躍している。 脚本と監督は、第1話、第2話はゴイヤーが自ら担当。その 第2話の脚本から今年9月紹介『ウォーキング・デッド』も 手掛けるスコット・M・ギムプルらが参加。また監督では、 第3話以降はテレビドラマ『ドクター・フー』なども手掛け るジェイミー・ペインらが担当している。 なお今回はシーズン1の8話を観させて貰ったが、実は物語 は終っていない。因にデータベースによると、2014年にシー ズン2の予定も発表されていた。 実際に第8話までの物語では、当時は未発見の南米大陸の存 在なども示唆されており、今後の展開では1492年にアメリカ 大陸に到達するコロンブスなども絡んでくるかもしれない。 壮大なスケールが予想される以後の物語にも期待したい。
『ミトン+こねこのミーシャ』 『チェブラーシカ』などの作品が日本でも人気の高いロシア のアニメーション作家ロマン・カチャーノフの作品4本が、 カチャーノフの没後20周年を期して劇場公開される。その内 の2本は日本初公開の作品だ。 『こねこのミーシャ』“Как котёнку построили дом” 1963年制作。日本初公開。ある日、野良猫のミーシャの暮ら していた居心地の良い家が取り壊される。そこに現れたトラ クターは新しい家が建つと説明するが、ミーシャや小鳥たち は心配そうだ。そして家の建設が始まる。 『迷子のブヌーチカ』“Потерялась внучка” 1966年制作。日本初公開。お祖父ちゃんがちょっと目を離し た隙にヌブーチカがいなくなる。心配なお祖父ちゃんは警察 に届けるが、警察は泥棒捜査の真っ最中。そしてヌブーチカ は街でいろいろな人に出会って大冒険中だった。 『ミトン』“Варежка” 1967年制作。主人公は仔犬を飼いたいが母親に許して貰えな い少女。そんな少女が雪の日に外で赤いミトンの手袋を仔犬 に見立てて遊んでいると、何とそのミトンが赤い仔犬になっ てしまう。 『レター』“Письмо” 1970年制作。海軍に勤務する夫からの手紙を待つ妻と息子。 しかしその手紙が何日も届かなくなる。不安で悲しみにくれ る母親を心配する息子は、ベランダを船に見立てて夜の街に 冒険の旅を始める。 日本でも先に公開されている後の2本は純粋にファンタシー として素晴らしい。それに比べると前の2本は、新しい住居 の建設だったり、警察の活躍などちょっとプロパガンダの匂 いがする。多分それはソ連時代の反映なのだろう。 とは言え1967年、70年もソ連体制下に変わりはないが、監督 の業績が認められて、それだけ創作の自由も与えられたとい うことなのかな。より自然にファンタシーが描かれているの も素晴らしいところだ。 また、今回公開される作品は4本とも人形アニメーションだ が、『迷子のブヌーチカ』では一部に線画のアニメーション が使われるなど斬新な試みも行われている。そのテクニック も面白い作品だった。 公開は、「ロシア文化フェスティバル2014」の一環とし て、東京では12月21日からヒューマントラストシネマ渋谷、 大阪は1月4日からテアトル梅田にてロードショウされる。 なお上映時間は4本合わせて51分と短いもので、入場料は均 一の1000円、大人が小学生以下の子供同伴の場合には、子供 は1人当り500円になるとのことだ。
『御手洗薫の愛と死』 テレビで評判になった『ナースのお仕事』シリーズなどを手 掛ける大賀文子プロデューサーと両沢和幸監督が、人気女流 小説家と新人小説家が足を踏み入れてしまった特殊な関係を 描いたオリジナル作品。 主人公は著名な小説家。常にベストセラーになる人気作家だ が、実は最近の自分仕事には満足感が得られていない。それ が高じたのかパーティの席で長年の秘書で運転手だった男性 を馘にしてしまったようだ。 そんな女流作家の許に1人の若者が訪ねてくる。実は作家は パーティの帰路に自ら運転していた車で事故を起こし、その 若者の母親を跳ねてしまったのだ。しかし飲酒運転だったこ ともあり、作家はその事故を隠すように頼んでいた。 ところがその若者は、自らも作家の端くれと称し、ある提案 を女流作家に申し出る。それは彼女の原稿を若者の名前で発 表しろというものだった。つまり彼女に若者のゴーストライ ターになれという…。 ゴーストライターという言葉には、最近では2011年7月に紹 介したロマン・ポランスキー監督の作品なども思い出すが、 そんな政治的な陰謀は絡まないものの、本作でも色々な人間 の葛藤やそこから見出される展望などが描かれる。 その人間ドラマはかなり巧みに描かれたもので、脚本も手掛 けた監督には長年テレビの人気シリーズを支えた実力が感じ られた。正直には、最近テレビ出身監督のいい加減な作品に 辟易していた自分には刮目の作品だった。 もっとも監督は、元々が日活撮影所で助監督の出身だそうだ から、この映画に対する真面目さはその所以なのだろう。さ らに映画でも、すでに国際映画祭の正式招待など実績を挙げ ている監督でもあった。 出演は、吉行和子とロックバンドSOPHIAの人気ヴォーカリス ト松岡充。他に小島聖、松重豊。さらに益岡徹、松下由樹ら が脇を固めている。 吉行は今年9月紹介『燦燦』も良かったが、周囲に参考が多 かったかもしれない本作の役柄も巧みに演じている。さらに 本作では、女流作家がゴーストライターになる心理も巧みに 表現しており、特に仕事に行き詰まった作家が、他人名義で 復活する心理は納得できる感じに描かれていた。 また最後に女流作家が新人作家を諭すシーンは、ある意味で 最近の日本文学の傾向に危惧を述べている感じでもあり、こ れは脚本も執筆した監督の日本文学及び日本映画に対する警 鐘のようにも感じられた。これは僕も同意見なので特に納得 したものだ。 公開は1月18日から、東京は有楽町スバル座ほかにてロード ショウされる。
『小さいおうち』 2010年、第143回直木賞の受賞作でベストセラーにもなった 中島京子原作の映画化。『男はつらいよ』シリーズなどを手 掛け、家族映画の名手とも言われる山田洋次監督が、初めて 家族の秘密を描いたと言われる作品。 物語は、1人の女性が大学ノートに書き残した自叙伝の形で 語られる。 昭和10年、当時は花嫁修業ともされた女中奉公で彼女は山形 から東京に出てくる。そして最初の1年は小説家の家に奉公 し、そこからの推薦で東京郊外の丘の上に建つ赤い屋根の家 にやって来る。 その家はまだ若い主人が建てたもので、家には若く美しい妻 と、小児麻痺に罹りリハビリのマッサージを続けている幼い 息子が暮らしていた。そんな彼女の日課の一つは、その子を 神田の治療院まで連れて行くことだった。 そんな暮らしの中で主人の妻からマナーや言葉遣いも学び、 一家の信頼も得るようになった彼女だったが、その一家に波 風が立ち始める。それは主人の会社の新年会で、部下の男性 が家を訪れたことから始まる。 丙種合格で徴兵を免れている男性は、美術学校出で戦意高揚 の周囲の男性たちと異なる優しい心の持ち主だった。そして 闘病を続ける息子も気遣ってくれる男性に女主人の心が揺ら いで行く。その姿を見ても何もできない女中だったが…。 出演は、松たか子、黒木華、片岡孝太郎、吉岡秀隆。さらに 妻夫木聡、倍賞千恵子。また、橋爪功、吉行和子、室井滋、 中嶋朋子、ラサール石井、林家正蔵、米倉斉加年らが脇を固 めている。 この原作本には何とも複雑な気分が付き纏う。バージニア・ リー・バートンの絵本『ちいさいおうち』は、1952年のディ ズニー短編アニメーション“The Little House”も含めて僕 は大好きな物語だし、その名作と同じ題名はいかがなものか と思ったものだ。 従って原作本は手に取ることもなかったが、今回映画化を観 ていると成程という感じになってきた。その絵本はあくまで も家の話で、絵自体が家の外観とその周囲の様子を描き続け ているものだが、中島京子の作品はその家の中で起こってい たことを描いている。 しかもこれは、視点は違いこそすれ、やはり「ちいさなおう ち」そのものの話であって、これが絵本の題名を借りてでも 原作者が描きたかったものだと納得できる物語だった。そし て映画では、昭和10年から戦争に向かう日本人の暮らしぶり が見事に再現されていた。 公開は1月25日から、全国一斉ロードショウされる。
『ノー・ヴォイス』 2012年12月紹介『ひまわりと子犬の7日間』と同じ飼い主に 捨てられたペットの状況を描いた作品。 主人公はそれなりの顔立ちだが、手に職もなく、彼女もいな い、はっきり言えばいい加減な男。そんな彼がある日、草む らに捨てられた仔犬を拾う。そして住まいのアパートに連れ 帰るが、隣人からペット禁止と言われてしまう。 彼はその仔犬を換金しようと考えていたが、思惑通りには行 かず、彼は仔犬を保健所の前に捨ててしまう。しかし不思議 な縁が再び彼を仔犬に引き合わせ、その縁で彼は捨てられた ペットの保護団体で働き始めるが… 昨年紹介の作品と同じで、仔犬が可愛ければそれだけで成立 してしまうような作品だが、その描いている現実はかなり厳 しいものだ。そんな厳しい物語を、本作では主人公の呆れた 行状などを緩衝材にして柔らかく描いている。 その描き方は甘すぎると考える向きもあろうと思うが、そこ で監督はドラマの物語の後にドキュメンタリーを付けること で問題点を浮き彫りにする。このドラマとドキュメンタリー の2本立ては、映画界初と称されているものだ。 出演は、2001年テレビ『ウルトラマンコスモス』や、2009年 7月紹介『TAJOMARU』にも出ていたという市瀬秀和、2006年 『呪怨〜パンデミック〜』や舞台『銀河英雄伝説』などに出 ている樋口夢祈。イケメン2人の共演という作品だ。 脚本と監督は、今までに手掛けた短編作品で世界の20以上の 映画祭で受賞を果たしているという古新舜。なお脚本は「ド ッグ・シェルター」などの著作のある児童文学者・今西乃子 の監修によっている。 また併映のドキュメンタリーのナレーションは、最近テレビ のペット番組などにコメンテーターとして活躍の浅田美代子 が担当している。 なお本作はすでに単館公開が終了しているものだが、その前 には試写が行われず、今回は年末からの再公開を控えて特別 上映会で観せて貰った。その際には監督とのQ&Aも行われ たが、ドラマの撮影は5日間で行われたとのこと。その割に は出演した仔犬の名演に感心したものだ。 また監督の発言では、「飼い主に捨てられたペットの問題は 犬だけでなく、実際に保健所で処分される数は、猫の方が犬 の3倍近くある」とのことで、次回は猫をテーマにした作品 を考えているそうだ。 猫の問題は、野良猫への餌やりなど描くべき内容は多岐に亙 るから、その次回作にも期待したいものだ 再公開は12月21日から、東京はオーディトリアム渋谷にて、 その後は全国順次ロードショウとなる。また各地の映画祭や 映画館以外での上映ツアーも計画されているようだ。
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