| 2013年11月24日(日) |
バイロケーション、祖谷物語−おくのひと−、インシディアス第2章、幕末奇譚SHINSEN5−弐−風雲伊賀越え、魔女っこ姉妹のヨヨとネネ |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※ ※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※ ※方は左クリックドラッグで反転してください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『バイロケーション』 2010年、第17回日本ホラー小説大賞・長編賞を受賞した法条 遥原作小説の映画化。 一部の人間に分身<バイロケーション>が出現し、その分身 はある時点の人間の記憶や服装、持ち物などもそっくり複製 している。このため使用した紙幣はナンバーも同じで、後か ら使用した人間がニセ札を使ったと疑われる。 そんな状況を背景に、バイロケーションの出現した主人公が その対策を考える組織に勧誘され、そこで様々な状況に遭遇 して行く。そしてその組織では、バイロケーションは本人よ り凶暴で、本人を殺しに来ると教えられるが…。 出演は、2011年3月紹介『大木家のたのしい旅行』などの水 川あさみ、ジャニーズKis-My-Ft2の千賀健永(映画初出演)、 ジャニーズJr.で今年2月紹介『桜、ふたたびの加奈子』な どの高田翔。 他に今年8月紹介『許されざる者』などの滝藤賢一、2010年 『SPACE BATTLESHIP ヤマト』などの浅利陽介、酒井若菜、 豊原功補らが脇を固めている。 脚本と監督は、2006年9月紹介『ハヴァ、ナイスデー』の中 の一篇『夕凪』や2009年5月紹介『呪怨・黒い少女』などの 安里麻里。実力派の女流監督はトリッキーな作品をそつなく こなしている感じだった。 作品を観ていて今年8月に紹介した『アルカナ』との類似点 が気になった。因に『アルカナ』は2000年に発表された漫画 が原作で、2010年の受賞作より10年近く先行しているものだ が、実によく似た題材が描かれたものだ。 それでまあ、ある程度の比較はしてしまうが、映画化は先の 作品がアクションやスプラッターも加味していたのに対し、 本作では人間ドラマが中心に置かれて、それなりに異なる作 品にはなっている。 とは言え、状況を把握している警察の存在など、類似性は否 めないもので、その点は明確にしておきたいものだ。それに 結末自体は異なるが、そこに至る過程などもかなり似通った 展開になっていた。 映画ファンなら両方観てからとやかく議論するのが本来とい う2作品だろう。同様のことは今年6月紹介『アップサイド ダウン/重力の恋人』と8月紹介『サカサマのパテマ』でも 言えたが、こういう作品が1年に2組もあったのも珍しいこ とだ。 公開は1月18日全国一斉ロードショウとなるが、実は本作は 『バイロケーション』表と称されているもので、その後に別 ヴァージョンの『バイロケーション』裏の公開が2月1日に 予定されている。 その裏ヴァージョンの試写の案内はまだ来ていないが、試写 を観られたら、また比較などもしてみたいものだ。
『祖谷物語−おくのひと−』 今年の東京国際映画祭の《アジアの未来部門》でスペシャル ・メンションを贈られた作品。映画祭中はスケジュールが合 わず観られなかったが、改めて試写会で鑑賞した。 物語の舞台は、四国徳島県の祖谷。僕は四国には親戚もいて 以前は何度も行っていたものだが、関東に住む人間だと南国 だと思っているこの地に、こんなにも雪深い秘境があるとは 考えてもいなかった。 そんな雪深い山道から転落した乗用車。その事故から奇跡的 に救出された赤ん坊が物語の主人公となる。その赤ん坊は、 救出した猟師の老人によって育てられ、老人と2人暮らしの 少女は山間の住居から高校に通うまでになっている。 そしてガスも水道もない住居では、桶で川の水を運び、薪を くべた囲炉裏で料理を作るのが彼女の日課のようだ。そんな 家の近所には、都会に行った子供たちを懐かしむように等身 大の人形を作り飾っている老婆も住んでいた。 そんな少女の生活に闖入者が現れる。その男は山を彷徨って いたところを地元の若者に救出されるが、再び山に入って老 人と少女の住む家に辿り着く。そこで一宿一飯の恩を受けた 男は山間での農業を目指そうとするが… その一方で、少女の同級生や村の若者たちは都会への憧れを 口にし、やがて1人ずつ村を離れて行く。そして村には環境 保護グループが反対したトンネルが開通し、そのトンネルを 通って都会の風が流れ込んでくる。 映画は、日本三奇橋の一つとされるかずら橋も劇中に何度か 登場し、神秘的な秘境の生活が描かれる。そしてその自然が 破壊されて行く状況が見事に描写され、特に物語の終盤に入 る直前ではその現実が鮮烈に描き出される。 ところがこの物語は、そこから突然ファンタシーになってし まう。実は映画祭のプログラムブックではSFマークが付け られていた作品で、紹介写真などでは半信半疑だったが、映 画を観てさらに唖然とした。 僕自身SF関係者として、この展開をどう取るべきかは悩む ところだが、監督は鮮烈過ぎる場面がそれだけでは理解され ないと考えたのか、あるいはあまりに哀しい現実がこれでは 遣る瀬無いと思ったのかもしれない。 実はこの作品は35mmフィルムで撮影され、上映もフィルム で行われるとチェンジマークで上映時間が判断できる。その 計算だと、2時間49分の上映時間の内、ファンタシーになる 前までが2時間だったようだ。 つまり最後の49分が付け足しのように感じられるものだが、 これには例えば1924年の『最後の人』にハリウッドの意向で ハッピーエンドが付け足され、その付け足しによってさらに 悲劇性が明確にされた。そんな風にも取れたものだ。 出演は、2010年12月紹介『KG カラテガール』などの武田 梨奈。武田の出演作は紹介作以降も何本か観ているが、空手 をしない彼女を見るのは初めてかもしれない。他に舞踊家の 田中泯、2012年9月紹介『BUNGO「見つめられる淑女たち」 /人妻』などの大西信満。 さらに2011年7月紹介『朱花の月』の監督河瀬直美、2008年 9月紹介『むずかしい恋』やテレビ『あまちゃん』で若き日 の黒川正宗を演じていた森岡龍。また地元の人たちも多数出 演しているようだ。 監督は、東京工芸大学で映画製作を学び、フィルムに拘った 映画作りで本作が2作目の蔦哲一郎。因に監督は、徳島池田 高校野球部を日本一に導いた蔦文也監督の孫だそうだ。 公開は来年2月15日から、東京は新宿K's cinemaにて予定さ れている。
『インシディアス第2章』“Insidious: Chapter 2” 2011年6月紹介作品の続編。前作を手掛けたジェームズ・ワ ン監督、リー・ワネル脚本のコンビが、今回も巧みな作品を 作り上げている。 物語には前作の一家が再び登場し、その後も続いていた脅威 との対決が描かれる。その伏線は前作にも巧みに設けられて いたもので、その辺は前作を観ているといちいち納得ができ るようになっている。 でも多分、本作だけでも説明はちゃんとされていたと思うか ら、本作だけ観ても物語の経過などは理解できるのかな? その辺は前作を観ている僕には判断できないが、僕もちゃん とは覚えていない中で、成程と納得できたものだ。 そのお話は、前作では自ら霊の世界に飛び込んで息子を救い 出すヒーローだった父親が、今回は自身が悪霊に取り憑かれ てしまうという展開。それが事件の全容を明らかにする道に も繋がっているものだ。 そしてその全容を、前作にも登場した研究者たちが解明して 行くことになるが…。そこにもいろいろ仕掛けがあって、そ れらも楽しめる作品になっていた。さらにもちろんショック シーンも鮮烈に展開される。 出演は、全て前作の出演者の再登場で、パトリック・ウィル スン、ローズ・バーン、タイ・シンプキンス、アンドリュー ・アスターと、祖母役のバーバラ・ハーシーが悪霊に取り憑 かれた一家を演じる。 また、研究者役のリン・シェイ、リー・ワネル、アンガス・ サムプスンも全て再登場する。その中に今年9月に紹介した ジェームズ・ワン監督の『死霊館』にも出演のスティーヴ・ コールターが新たに加わっている。 製作は『パタノーマル・アクティビティ』も手掛けるジェイ スン・ブラム。さらに撮影のジョン・レオネッティ、編集の カーク・M・モッリ、衣装のクリスティン・M・バーク、音 楽のジョセフ・ビシャラらも前作に引き続いての担当だ。 それにしても痒いところに手が届くような作品で、前作に描 かれたいろいろな謎が実に丁寧に解き明かされる。ファンに はこの上ない贈り物という感じの作品で、これは前作を気に 入った人は絶対に観なければいけないだろう。 そしてもちろん本作はホラーなのだが、物語には時間要素が 加わったり、さらに一部の映像は研究者たちの記録というこ とでPOVになったりと、色々な要素がヴァラエティ豊かに 展開される。 その辺の上手さは、ワン/ワネルのコンビの真骨頂という感 じもする作品だ。そして本作では、前作からの家族の問題が 全て解決されたように見えるが…、というのも上手い作品に 感じられた。 公開は1月10日より、全国一斉のロードショウとなる。
『幕末奇譚SHINSEN5−弐−風雲伊賀越え』 今年1月紹介『幕末奇譚SHINSEN5〜剣豪降臨〜』に続いて 新撰組が陰陽師と戦うという奇想時代劇の続編。 土方歳三、沖田総司、齋藤一、藤堂平助、原田左之助の新撰 組5人には、実は陰陽師・幸徳井道角である局長近藤勇の指 示の許、国家の安寧を妨げる陰陽師・土御門源春の陰謀に立 ち向かう使命があった。 こうして前作で彼らは、源春が幕末に甦らせた柳生十兵衛と 戦ったのだが…。今回の源春が甦らせたのは真田幸村。その 徳川を宿敵と狙う幸村に、時空を超えて徳川家康を襲わせ、 徳川の世を根底から覆そうという陰謀だ。 その陰謀に新撰組の5人も時空を超えて徳川家康の支援に向 かう。折しも家康は本能寺の変の後、服部半蔵と共に密かに 伊賀を越え三河に向おうとしていた。その伊賀の山中で家康 を襲う真田十勇士に新撰組5人が挑む。 出演は前作と同じ、土方役の馬場徹、沖田役の神永佳祐、齋 藤役の馬場良馬、藤堂役の八神蓮、それに本作では原田役が 広瀬佳祐に代って、2009年『侍戦隊シンケンジャー』のシン ケンゴールド・梅盛源太役の相馬圭祐になった。 他に、土御門源春役は前作に続いて佐々木喜英、新登場の真 田幸村役は2011年8月紹介『メサイア』などの井上正大が演 じている。また近藤勇役は、前作に続いて板倉チヒロという 俳優が演じているはずだが、前作と共に本人のプロフィール にも記載がなかったようだ。 脚本は、前作に続いてまつだ壱岱。監督は、金子修介や辻仁 成、秋元康などの作品で助監督を務め、2005年『インディア ン・サマー』という作品で長編監督デビューをした佐藤太。 監督は1968年生まれだそうだ。 前作の時はイヴェント試写を鑑賞して、周囲の有料観客の熱 意みたいなものも感じたが…。今回はマスコミ試写、周囲の 反応はあまり芳しくないものだった。でもこの作品は前作の 試写に集まっていたファンたちに支えられているもの。その 熱意とマスコミ試写との落差は面白くも感じられた。 とは言うものの、お話はもう少し捻ってくれてもいいと思え るし、演出もこれでいいのかと思ってしまうところは多々あ る。その辺は業界に長い監督なら当然判っているはずだが、 敢えてこうしているのは、上記のファン層の所以かな。それ が見所という作品なのだろう。 因に、真田幸村は1615年没というのが定説で、対して本能寺 の変は1582年。本人が生きている世界に甦りを送り込むのは 問題のような気もするところではある。 公開は12月21日から東京は渋谷イメージフォーラムにてレイ トショウ。なお、その前の10月30日にはメイキングを収めた DVDも発売されており、それらを含めて興行が成り立って いる作品のようだ。
『魔女っこ姉妹のヨヨとネネ』 「物語環境開発」所属の漫画家ひらりん原作による『のろい 屋しまい』シリーズからのアニメーション映画化。 主人公のヨヨとネネは魔法が日常使われている世界の住人。 その世界でのろい屋を営む2人の暮らす森に突然変異の大樹 が育ち始め、その幹には2人が今までに見たこともない大き な建物が絡み付いていた。 そこでその建物の調査を始めたヨヨは人影に遭遇、その後を 追ったヨヨは閉じ込められた箱の中で不思議な光を浴びて見 知らぬ異世界に来てしまう。そこは巨大な建物が立ち並び、 魔法など誰も知らない世界だった。 しかもその世界では、魔法としか思えない異常な事態が進行 していた。それは携帯ゲームでレアカードを引き当てた人が 願いを叶えてもらえる代わりに、謎の化物に変身させられて しまっていたのだ。 そこでヨヨは、これは自分の仕事とばかりにその事態の謎を 解き明かそうとするのだが、そこにはその世界と魔法世界の 存亡に関わる重大な秘密が隠されていた。 声優は諸星すみれ、加隈亜衣、沢城みゆき、櫻井孝宏、佐々 木りおらベテランが揃っているようだ。アニメーション製作 は、2007年から公開された『空の境界』シリーズを手掛けた ufotable、その第5章『矛盾螺旋』を担当した平尾孝之が本 作を監督している。 ただしスタッフ欄に脚本家の名前がなく、それが何故なのか は不明。単純には原作の通りの映画化で原作がそのまま脚本 だったとも考えられるが、それにしてはお話はかなり粗い。 例えば後半で猫が突然巨大化して空を飛び、主人公らを助け るという展開はあまりに唐突だ。 これではご都合主義というそしりは免れないだろう。『とな りのトトロ』のネコバスの連想かもしれないが、こうなる前 にそれなりの伏線は描かれているべきだろうと考える。 これが原作には伏線があったのだとしたら、その伏線を削除 した脚本は問題にされるべきものだ。この他にもこの映画化 には何とも唐突な展開が多く、その話の飛び方は原作の読者 ではない者には理解が難しかった。 もっとも本作の基本設定であるらしい、どう見ても幼い方が 姉という不思議な主人公姉妹の関係も映画では全く説明され ていなかったから、これは原作の読者のみを対象とした作品 ということなのだろうか。 その原作は、ウェブの書評などでは「世界観が完璧」などと 評価されているようだが、読者ではない者が映画を観た感想 で言うと、世界観はあまり明確ではなかったように感じられ た。もう少し観客に優しい映画にして欲しかったものだ。 公開は12月28日から、東京は新宿バルト9他、大阪は梅田ブ ルク7他など、全国でロードショウされる。また海外での公 開もアジアを中心に各国で行われるようだ。
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