井口健二のOn the Production
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2013年09月05日(木) 蠢動、セイフ・ヘイブン、トミカ・プラレール映画まつり

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
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『蠢動』
1958年生まれ、高校生だった1970年代に8mmで複数本の時代
劇やアクション映画を自主映画として発表し、話題になって
いたという三上康雄が、1982年に16mmで自主制作した時代劇
を劇場用にリメイクした作品。
舞台は享保20年、山陰の因幡藩。大飢饉から3年が経ち、漸
く落ち着きを取り戻したように見える藩政に問題が生じる。
それは幕府から派遣されている剣術指南役に不審な動きが見
られるというもの。実は因幡藩では飢饉に備えた隠し倉や隠
し田があり、それを指南役が調べているらしい。そして指南
役が送ろうとした密書には、正にその実態が記されていた。
しかしその密書は奪取され、城代家老はそれを握りつぶすの
だが、折りしも幕府から使者が訪れるという連絡が入る。こ
こでその使者と指南役が会ったらすべてが露見する。この事
態に城代家老はある策略を巡らすが…

出演は、家老役に若林豪、指南役に目黒祐樹、幕府の使者役
に栗塚旭。さらに昨年8月紹介『のぼうの城』に出ていた平
岳大、2009年5月紹介『刺青/匂ひ月のごとく』などのさと
う珠緒、2006年5月紹介『タイヨウのうた』に出ていた脇崎
智史らが共演。
その他、13人の追っ手役にはオーディションで選ばれた若手
俳優たちが半年間の殺陣などの訓練を受けて出演しているそ
うだ。
三上監督は、大学生の時に1962年製作の『切腹』を観て時代
劇を撮りたいと思い、その結果製作されたのが1982年の作品
のようだ。従って本作でも、藩政を守るための執政や、武士
道に名を借りた下級武士への強要など、かなり社会派的な内
容が描かれている。
そして後半の大立ち回りに繋がる展開も設けられているが、
この剣戟シーンが雪原での野外ロケで、この撮影などはかな
り周到に準備されたと思われるものになっていた。

なお撮影には、殺陣に2010年8月紹介『桜田門外ノ変』など
の久世浩、照明には2010年6月紹介『最後の忠臣蔵』などの
宮西孝明、音響効果も『桜田門外ノ変』などの伊藤進一ら、
日本映画を支えるスタッフが結集しているようだ。
今の時代に、武士の世界を描く物語がどれほど通用するもの
なのかよく判らないが、人間関係の話などはそれなりと思わ
せるし、それに何より時代劇を復活させたいという監督たち
の気持ちはしっかりと感じ取れる作品だ。

『セイフ・ヘイブン』“Safe Haven”
2004年11月紹介『きみに読む物語』などのニコラス・スパー
クスの原作を、昨年11月紹介『砂漠でサーモン・フィッシン
グ』などのラッセ・ハルストレム監督が映画化した作品。な
お2人が組むのは2011年6月紹介『親愛なるきみへ』に続い
て2作目となる。
物語は、犯罪現場から逃走する女性の姿から始まる。彼女は
隣家の老婦人の助けも借りて、身を隠すように長距離バスに
乗車。そしてそのバスが途中で休憩したとある港町で、彼女
はバスを降りる。
その町は時間から忘れられたようにのどかな場所で、そこで
彼女はカフェで仕事を見つけ、古家を借りて暮らし始める。
そして雑貨屋を営むシングルファーザーの男性との付き合い
を深めて行く。
一方、彼女を追う警察はバス乗り場の映像から乗車した路線
を突き止めるが、ボストン発アトランタ行きバスの停留所は
あまりに数が多かった。そこで警察は、捕まれば死刑となる
第一級殺人の指名手配書を作成し、沿線に配布するが…

出演は、2010年11月紹介『バーレスク』や2012年のトム・ク
ルーズ主演作『ロック・オブ・エイジズ』ではヒロイン役を
演じたジュリアン・ハフと、2010年12月紹介『かぞくはじめ
ました』などのジョシュ・デュアメル。
他に、昨年6月紹介『アベンジャーズ』と2015年公開予定の
続編にも出演するコビー・スマルダーズ、テレビ『ER』の
第15シーズンにレギュラー出演したデヴィッド・ライオンズ
らが脇を固めている。
観終ったときの率直な感想は、これは1本やられたなという
ものだった。スパークスという作家は、過去に映画化された
作品を観る限りではうまい題材を扱って、話題性は振り撒く
が、物語そのものは古臭い感じで好きではなかった。
そして本作は、そのスパークスが初めてサスペンスに挑んだ
という触れ込みで、これはお手並み拝見という感じだった。
その感想が上記のものだ。特に結末は涙を煽ることもなく、
実にスマートに感動させられた。
しかもそれがご都合主義や辻褄合わせでなく、正に納得のエ
ンディングなのだ。これは今までのスパークスに対する態度
を改めなくてはとさえ思わされた。そしてハルストレム監督
が、それを実に巧みに映像で表現している。
またハルストレム監督は、過去の作品でも物語の展開にファ
ンタスティックな表現を巧みに取り入れてきたが、本作では
正にそれが壺に嵌った感じで、これはファンタシー映画のフ
ァンにもお勧めしたいものだ。


『トミカ・プラレール映画まつり』
タカラトミーが販売する1970年誕生の自動車玩具トミカと、
1959年誕生の鉄道玩具プラレールを題材にした映画作品。
東宝本社試写室での試写会は、一般上映の時と同じ条件とい
うことで客席の明りを点けたままで行われた。つまりこれは
作品を観に来る幼い子供に配慮したもので、まずはそういう
点を考慮して本作は鑑賞しなければいけない。
そこで作品の内容は、3つの物語とその間を繋ぐ3つのヴァ
ラエティコーナーで構成され、その全体的な作りはNHKの
「おかあさんといっしょ」のような幼児向け番組の構成とさ
れている。
そして物語の1本目は、人間の子どもがデパートの玩具売り
場などで見られる模型の「トミカ・プラレールタウン」を訪
れるという合成もの。他の2本は、トミカとプラレールその
ものが活躍する人形アニメーションになっている。
因に3作目に登場するトミカとプラレールは、本作の公開に
合わせて新発売されるもののようだ。
一方、ヴァラエティコーナーでは、トミカで発売されている
工事用車両の実物を紹介するコーナーや、プラレール隊と称
するグループが実際の住居の中にプラレールを敷き詰めて走
行させるコーナー、そして歌や体操などが披露される。
これは正に「おかあさんといっしょ」の構成だろう。

出演は、NHK・Eテレなどに出演の他、ジャニーズ嵐に楽
曲なども提供しているミュージシャンのチーミーと、キッズ
ステーション「ハローサンリオ」MCの梅田みさと。それに
子役の須田瑛斗。
またプレス資料に脚本・監督などの紹介はなかったが、原作
はタカラトミー、総合演出は岡本智朗という人が担当してい
るようだ。
僕自身はプラレール世代より年上の人間だが、息子には買い
与えていたし、一緒になって組み立てもしたから、それなり
に思い入れはある。そういう目で観ると、お子様向けならこ
んなものかと思う反面、もう少し何か出来る感じはした。
特にプラレール隊のコーナーでは、実際に自分で組み立てて
きた感じで言うと、もっと驚かせるような作品も見せて欲し
かったし、もう少し裏技みたいなものも紹介して欲しかった
ところだ。
でもまあ作品は今回が第1作とのことで、試行錯誤もあるの
だろうし、取り敢えず今後の展開は見守りたいものだ。それ
にしても現在のトミカとプラレールがこんなに進化している
とは、それは驚かされた。


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井口健二