井口健二のOn the Production
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2013年04月16日(火) 第191回(Transcendence,The Shining pq,Children of the Lamp,Morgaine,Atlantis: Revelation,True Skin,Shovel Ready,YUKIKAZE)

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※このページは、SF/ファンタシー系の作品を中心に、※
※僕が気になった映画の情報を掲載しています。    ※
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 まずは続報から、3月1日付第188回で紹介したジョニー
・デップ主演のSF作品“Transcendence”に、続々と大物
共演者の名前が発表されている。
 作品は、自分の脳を自から開発のスーパーコンピューター
にアップロードした科学者を主人公にしたもの。その科学者
がアンチテクノロジーのテロリストに暗殺され、コンピュー
ターに残された人格は…という展開になる。
 実はこの脚本は、2月1日付第186回で紹介したブラック
リストにも掲載されていたのだそうで、見直したら記事で紹
介した“The Equalizer”の少し下の辺りに題名が載ってい
た。脚本家は本作が第1作のジャック・ペイグレム。
 その脚本から、『ダーク・ナイト』や『インセプション』
などを手掛けてクリストファー・ノーランの右腕とされる撮
影監督ウォーリー・フィスターが監督デビューを飾る。因に
ノーランは、本作の製作総指揮を務めるようだ。
 そしてこの作品に、ヒロイン役として昨年1月紹介のリメ
イク版『ドラゴン・タトゥーの女』に主演したルーニー・マ
ーラの姉でセレブ女優のケイト・マーラ。また2010年11月紹
介『ザ・タウン』などのレベッカ・ホール、2011年7月紹介
『プリースト』などのポール・ベタニーらが共演する。
 さらにノーラン監督『ダークナイト』シリーズでも主人公
のサポート役を務めたモーガン・フリーマンが、本作でも同
様の役柄で登場することになるようだ。因にフリーマンは、
近日紹介するトム・クルーズ主演のSF作品“Oblivion”に
も同様の役柄で登場しているらしい。
 なお本作の製作状況はpre-productionだが、全米公開日は
2014年4月25日に決定しているようだ。
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 次はprequel(前日譚)の話題で、1980年にスタンリー・
クーブリック監督で映画化されたシティーヴン・キング原作
『シャイニング』“The Shining”の前日譚が、前作を製作
したワーナーで計画され、その脚本に昨年6月紹介『ウォー
キング・デッド』などを手掛けたグレン・マッザーラとの契
約が発表された。
 物語は、1977年に出版された原作小説のプロローグとして
“Before the Play”の題名でキング自身により執筆された
もので、物語の舞台となるOverlook Hotelと、主人公である
作家Jack Torranceの幼い頃の経緯が描かれている。しかし
このプロローグは、原作小説の出版時にはページ数の関係で
削除されてしまった。
 そのプロローグが1982年に雑誌Whispersに掲載され、さら
に1997年に原作小説がテレビのミニシリーズ化されたときに
も、抜粋版がTV Guide誌にも掲載されたとのこと。それが今
回映画化されるものだ。1980年の映画化にも一部が登場する
過去の惨劇の詳細が描かれる。
 因にキングは、原作をシェークスピアに模した5幕ものと
して構想し、出版社に渡した原稿には“After the Play”と
題されたエピローグもあったが、その部分は完全に失われて
しまったそうだ。ただしキングは、原作小説の続編となる長
編小説“Doctor Sleep”を今年9月に発表するとしており、
出版されたらその映画化も話題になりそうだ。
 なお脚本家のマッザーラは、2003年のゴールデングローブ
賞受賞作“The Shield”の脚本家・製作者としても知られて
おり、かなりの大物脚本家の起用となったようだ。またマッ
ザーラには、2008年7月紹介『ハンコック』“Hancock”の
続編に契約しているとの情報も報告されている。
        *         *
 『ハリー・ポッター』シリーズが完結し、ハリウッド各社
はその後釜を狙う企画にしのぎを削っているようだ。
 その1本としてパラマウントが進めるP・B・カー原作の
ファンタシー・シリーズ“Children of the Lamp”の映画化
に、2004年に“Alice's Misadventures in Wonderland”と
いう作品を発表している脚本家・監督ロバート・ルーガンと
の交渉が報告されている。
 物語は、「アラビアン・ナイト」にも登場するランプの魔
人の子孫を主人公にしたもので、彼らは通常は人間社会に紛
れて暮らしているが、時々人の願いを叶えなくてはならなく
なる…というもの。シリーズは2004年に第1巻が発表され、
2011年までに7巻が出版されているようだ。
 概要を見るとヤングアダルトと言うより、もっと若年層向
けの感じがするが、作品はテーマが家族や冒険など多岐にわ
たっているとのことで、その辺は『ハリー・ポッター』にも
通じるところがあるのかもしれない。
 因に本シリーズの映画化権は、元々は2007年に当時はパラ
マウント傘下だったドリームワークスが契約したものだが、
2009年にドリームワークスはディズニーに移籍してしまい、
その際に本シリーズの権利はパラマウントに残されていた。
その権利をパラマウントが行使することにしたものだ。
 なお脚本は、2011年12月紹介『戦火の馬』などのリー・ホ
ールが手掛けた初稿から、現在は2010年ジェイ・ローチ監督
の“Dinner for Schmucks”という作品を担当したマイクル
・ハンデルマンが執筆中となっており、この本が完成すれば
キャスティングなどに進むことになる。
 ただし今回監督に決まったロバート・ルーガンには、昨年
秋にワーナーとの間で、“The Genius Files”というこれも
2011年に第1巻が発表された子供向けアドヴェンチャー・シ
リーズの映画化の契約も結ばれており、今回のパラマウント
の計画はその後になりそうだ。
        *         *
 続いてもシリーズで、1981年の『ダウンビロウ・ステーシ
ョン』と1988年の『サイティーン』で2度のヒューゴー賞長
編部門に輝くアメリカの女流SF作家C・J・チェリイ原作
によるファンタシー4部作“The Morgaine Stories”の映画
化が、アアロン・マグナーニというプロデューサーが主宰す
Water Bearプロダクションで進められることになった。
 物語は、中世風の世界を背景にしたもので、謎のヒロイン
に協力を強いられることになったハミ出し者の勇者の冒険が
描かれる。実はそのヒロインはタイムトラヴェラーで、彼女
の使命は世界を救うことだというのだが…。ヒロインと勇者
が登場するファンタシーで、さらにタイムトラヴェルが絡む
というのは、かなり凝ったお話のようだ。
 因に第1巻の“Gate of Ivrel”は1976年にDAW Booksから
出版され、これはチェリーの第1作でもあった。その後は、
1978年“Well of Shiuan”、1979年に“Fires of Azeroth”
と続けられ、ここで一旦は“The Morgaine Stories”として
纏められたが、さらに1988年に第4作の“Exile's Gate”が
発表されたとのことだ。
 一方、映画化権を獲得した製作者のマグナーニは、2010年
にドイツで“Iron Doors”という3Dファンタシー作品を発
表している他、現在は2014年の公開を目指して昨年2月紹介
『スーパー・チューズデー』などのエヴァン・レイチェル・
ウッド主演によるコメディ作品がpre-productionとなってお
り、経歴などは判明しなかったが、SF/ファンタシー系の
作品の実績はあるようだ。
 なお映画化の脚本は“Iron Doors”も手掛けたピーター・
アーネスンが担当しているが、こちらも経歴は不明だった。
因に“Iron Doors”の監督はスティーヴン・マヌエルという
人が担当していたものだ。
 まあこの先どうなるかも不明の作品だが、原作者のC・J
・チェリーは上記の受賞作品の翻訳もあるので、映画化が実
現したら日本公開も期待したいものだ。
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 お次は新たなシリーズの開幕で、今年10月にイギリスのペ
ンギンブックスから出版予定のマーカス・ブレイク原作によ
る新作“Atlantis: Revelation”の映画化を、出版社と前回
第190回でも紹介した元ニューラインのプロデューサー=ア
イリーン・メイゼル主宰のAmber Entertainmentの共同で進
める計画が発表された。
 物語は出版前なので明らかではないが、アトランティスが
実在した世界を背景にしたもので、原作は3部作が計画され
ているとのことだ。因に原作者の情報も発表されていなかっ
たが、某イギリス人作家のペンネームとの情報もあった。
 そしてこの映画化には、2002年9月紹介『ゴスフォード・
パーク』で米アカデミー賞脚本賞を受賞したジュリアン・フ
ラワーズが製作総指揮として参加。まだ執筆は始まっていな
いものの映画化の脚本はフラワーズの指揮下で進められるこ
とになっている。
 この計画も、製作者と脚本の動向以外はほとんど未確定の
状況だが、原作ものであるということではそれなりの安心感
もあるもので、期待は持ちたいものだ。
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 ここからはそれぞれ単発の計画で、ワーナーで2本のSF
映画の計画が進んでいる。
 1本目は“True Skin”と題されているもので、内容は近
未来を背景にした作品。実は先にスティーヴン・ズロテスク
という監督による短編映画があって、ズロテスクには長編版
の監督も期待されている。因にズロテスクには、2003年放送
のThe Rolling Stonesの特番でグラフィックFXのアーティ
ストを務めた記録があるようだ。
 そして今回の長編版の計画では、さらにタッカー・パース
ンズという脚本家の起用が発表されている。因にパースンズ
は、2月1日付第186回で紹介したブラックリストに、14世
紀のスコットランドの鯨捕りを描いた“Whalemen”という作
品が掲載されていたそうだ。
 2本目は原作もので、NYタイムズ紙の文化面編集者とい
うアダム・スタンバーグによる“Shovel Ready”と題された
小説の映画化を、2011年12月紹介『恋人たちのパレード』な
どの製作者アーウィン・ストフの許で進めることが発表され
た。
 物語は反ユートピアもので、ゴミ収集人から暗殺者にリク
ルートされた主人公が、暗殺のターゲットである若い女性を
保護することになってしまうというもの。因にこの原作は、
昨年8月に出版社に売られているが、まだ出版されたという
情報はないようだ。
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 そして最後にビッグニュースが飛び込んできた。
 日本SF作家クラブの会員で、第11代会長でもあった神林
長平が1984年から発表している『戦闘妖精・雪風』シリーズ
の実写による映画化がワーナーで進められ、その主演にトム
・クルーズの名前が挙がっているとのことだ。
 原作は1999年と2009年にも続編が発表されているが、実は
1999年はちょうど僕が日本SF大賞の選考委員をしていた時
で、選考会議でかなり議論した記憶がある。
 それで結局受賞は逃すのだが、その理由は神林作品がすで
に1995年に受賞を果たしており、同じ作家に2度目の受賞は
前例がなかったことと、作品がシリーズの途中でまだ完結し
ていないことが主な理由だった。しかしその理由を凌駕する
ハイレヴェルの作品で、選考に苦慮したことを思い出す。
 その作品がハリウッドで映画化されることになったものだ
が、製作者は上記の“Shovel Ready”と同じくアーウィン・
ストフ。ただし脚本や監督などは全く未定となっている。
 因にクルーズの新作“Oblivion”は未来物のSFで、さら
にその後には神林とも関係の深い桜坂洋の原作による“All
You Need Is Kill”(原作の帯には神林が推薦文を書いてい
る)が来年3月に全米公開となっており、クルーズとSFの
関係はしばらく続くことになりそうだ。


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