井口健二のOn the Production
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2013年02月28日(木) サバイビング・P、カレ・ブラン、探偵ヨンゴン、ノー・ワン・リヴズ、ジャーニー、タイガー、アニメミライ2013、オズはじまりの戦い

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
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『サバイビング・プログレス』“Surviving Progress”
いま世界が直面している問題を読み解くドキュメンタリー。
本作は、1997年に“A Scientific Romance”というウェルズ
の「タイム・マシン」を前提にした小説も発表しているイギ
リス生まれカナダ在住の作家ロナルド・ライトが、2004年に
発表し、邦訳も出ているノンフィクション「暴走する文明」
を基にしているとのことで、作品にはライト本人も登場して
持論を述べている。
その趣旨としては、人類は5万年前から生物学的には進化し
ておらず、その5万年前のままの人類が21世紀の地球を支配
していることへの危惧が語られているようだ。そこで本作で
は、アマゾンの乱開発など人類が世界中で繰り広げている悪
行が紹介される。それはもうアマゾンの惨状などは目を覆い
たくなる程のもので、訴えてくるものも大きい。
さらに作品では、人類の消費傾向に言及し、インドや中国の
国民がアメリカと同じ生活水準を求めたら地球は5個分あっ
ても資源が足りないという現実が紹介される。そこで人類の
進むべき道として、スティーヴン・ホーキンス博士の「人類
は宇宙に進出すべきだ」とか、ジョージ・ルーカスの「人類
の遺伝子を組み替える」などの意見が述べられる。
ただしこのホーキング博士やルーカスの意見は、本作の制作
者たちは極論と見倣しているようで、本作の結論としては、
遺伝子学者デヴィッド・スズキが述べる「従来型の経済学は
脳梗塞状態」という意見や、霊長類学者ジェーン・グッドー
ルの「地球上で最も知的な人類が、なぜ唯一の故郷を破壊す
るのか」といった意見が提示される。
本作で紹介されているもののほとんどは、それなりに興味を
持っている人には既知のものが大半だと思われるが、それら
を総合的に提示していることでは、そのようなことを知らな
いでいる人たちにもアピール出来ると思える作品だ。ただそ
れらが86分の上映時間の中に羅列的に提示されると、なかな
か明確なものが見えてこない。
とは言え観ている内に、経済優先の世界の体制が地球破壊の
元凶であることは今まで以上に切実に感じられたもので、こ
れはTPPには反対した方が良いのではないかとも思えてき
た。そんな不況だ不況だと言いながら、海外旅行や携帯電話
に大金を注ぎ込ませている連中に、しっかりと見てもらいた
い作品だった。


『カレ・ブラン』“Carré blanc”
試写状に「『THX1138』『時計じかけのオレンジ』の遺伝子
を受け継いだ近未来・暗黒譚。」と書かれた作品。
僕が観に行ったのは試写会の2回目だったが、試写の前に宣
伝の担当者と話していて「前回は観た人のほとんどが出てく
る時にどんよりとした表情だった」と聞かされ、一体それは
何なのかと思ってしまった。それで僕が観たときは普段SF
映画を見慣れている顔ぶれと一緒だったのだが、僕自身も含
めて皆そんなにどんよりすることはなかった。
登場する近未来は、街路に人の姿もまばらな、恐らく人口は
減少傾向にあると思われる世界。そこでは何をやっているの
か良く解らない企業らしきものが存在していて、主人公はそ
こで部署の責任者の立場にいるようだ。そこには厳しい競争
原理もあるようで、部下たちには目標の達成が求められ、失
敗した時には厳しい制裁が待っている。
そんな未来の街には暴力が蔓延っているが、その被害者の死
体はただ黒い袋に詰められて運び去られるだけ。しかもその
黒い袋の行き着く先は…。さらに街には常に放送が流されて
おり、そこでは子供の誕生が大々的に取り上げられる。その
一方で子供を隠して育てることには制裁が加えられることも
繰り返しアナウンスされている。
そんな典型的なデストピアの社会が、個々にはいろいろなエ
ピソードもあるが、全体的には淡々と描かれている。ただし
暴力表現はそれなりに激しくて、それが1回目の観客をどん
よりさせる原因だったかとも思えるが、引用された『時計じ
かけのオレンジ』を初めて観た時の衝撃に比べると、多少の
エスカレートはあっても衝撃は薄らぐものだ。
ただし、『時計じかけのオレンジ』が社会や体制に対する批
判と取れたのに対して、本作の批判の矛先は個人に向けられ
ているようで、そこには『時計じかけのオレンジ』の映画化
が公開された1971年当時と現代との、人間関係の変化などが
反映されている感じもした。その点では暗澹とした気分にも
なったものだ。

出演は、2007年3月紹介『ストーン・カウンシル』に出てい
たというサミ・ブアジラと、2009年10月17日付「東京国際映
画祭」で紹介の『エイト・タイムズ・アップ』(公開題名:
七転び八起き)で映画祭の最優秀女優賞を受賞したジュリー
・ガイエ。
脚本と監督はCM出身で本作が長編デビューとなるジャン=
バティスト・レオネッティ。因に監督は、本作を「SF映画
ではなく、ラヴ・ストーリー」と称しているようだ。

『探偵ヨンゴン/義手の銃を持つ男』“영건 인더 타임”
2011年10月紹介『エイリアン・ビキニの侵略』オ・ヨンドゥ
監督の新作。前作は多分にアマチュアの感覚だったが、本作
ではそれなりに商業映画の雰囲気になっている。それに監督
はかなりのSFファンのようだ。
物語の始まりは博物館の館内。そこで1人の考古学者が暴漢
に襲われる。そして物語の舞台はとある街中の探偵事務所に
移動。その事務所の看板には「どんな些細な仕事も最善を尽
くします」とあるが、仕事は少なく探偵は借金で首が回らな
いようだ。
そんな探偵事務所にフードで顔を隠した女性が現れる。その
女性は「ある男を殺して欲しい」と依頼するが、もちろん殺
人などは受けられるはずがない。しかし断られて出て行く姿
に何かを感じた探偵はその後を追いかけるが、その目の前で
女性は拉致され、しかもその死まで目撃してしまう。
そんな罪悪感から探偵は女性が依頼した案件の裏を探り始め
るのだが、調査によって辿りついた博物館で探偵は、死んだ
はずの女性本人に出会ってしまう。その裏には考古学者が発
見したあるものが介在しているというのだが…。そこには、
それを狙う悪の組織も暗躍していた。
テーマ的には、2012年10月紹介『LOOPER』に通ずるところが
あって、それがちょっと似たような展開になるところも面白
いものだ。もちろん製作時期などから考えてアイデアは全く
別個に生まれたものであることは明らかだが…。ハリウッド
映画より本作の方が正統派なのも気に入った。
因に製作者の欄に林海象監督の名前があるが、これはオ監督
が2011年の「ゆうばり」で来日した際に、林監督から「探偵
映画なら資金を出す」と言われたとのこと。そのため本作の
探偵が着るジャケットの胸には「5」と書かれており、彼は
2005年9月紹介『探偵事務所5』の一員なのだそうだ。

出演は、監督のデビュー作からの3作と他に2012年8月紹介
『高地戦』にも出ていたというホン・ヨングンと、3月紹介
『ミッドナイトFM』に出ていたというチェ・ソンヒョン。
他に監督の前作に出ていたハ・ウンジョン、ペ・ヨングンら
が脇を固めている。
韓国映画で探偵ものは珍しいのだそうで、そのせいか出だし
が多少もたもたしている感じがした。まあその感じは後半は
解消されるが、ただ題名にもなっている義手の話が作品の中
でほとんど語られず、その機能もあまり有効には使われてい
なかった。その辺で続編もあると思えたものだ。


『ノー・ワン・リヴズ』“No One Lives”
2002年3月紹介『Versus』や、2003年11月5日付「東京国際
映画祭」で紹介『スカイハイ劇場版』などの北村龍平監督に
よるハリウッド進出第2弾。
プロローグは、森の中を逃げる若い女性の姿。彼女は誘拐拉
致の被害者のようだ。続いて物語は凶悪な窃盗集団の犯行を
描き、その1人が酒場で目を付けたカップルに襲い掛かる。
しかしそれが飛んでもない結果を生むことになる。
と書くと大体話は読めてしまいそうだが、映画はその予想を
上回る強烈さで進行する。何しろ男が滅法強い。それは本来
は犯罪者である人物だが、その男が凶悪な強盗団に向かって
容赦なしの鉄槌を加えて行く。
ここで相手も凶悪な犯罪集団だから、殺されたって自業自得
ということで、観客は男の犯行を良心の呵責なく楽しめると
いう寸法の作品だ。しかもその犯行はあまり残酷でもないか
ら、ある種痛快にも観ていられる。

出演は、2012年9月紹介『推理作家ポー最後の5日間』など
のルーク・エヴァンスと、8月紹介『ヴァンパイア』などの
アデレイド・クレメンス。
他に、TVの『スター・トレック:エンタープライズ』など
のデレク・マジャル、2011年6月紹介『スーパー8』に出て
いたというボウ・ナップ、2009年『トランスフォーマー/リ
ベンジ』などのアメリカ・オリーヴァらが脇を固めている。
なお本作は、昨年12月紹介『サイレント・ハウス』、1月紹
介『ダーク・タイド』などと共に、「渋谷ミッドナイト・マ
ッドネス」の1本として公開されるもので、その中ではもう
1本『エリア52』“Crawlspace”という作品も試写が行わ
れた。
この作品は、突然危機状態が報告されたオーストラリア駐留
の米軍基地を舞台に、そこに突入した特殊部隊が思わぬ敵に
遭遇するというもの。その敵は邦題にも暗示されているもの
だが、映画はちょっと捻りが効かされていた。

出演は、TV『CSI:マイアミ』などのアンバー・クレイ
トンと、昨年5月紹介『アイアン・スカイ』に出ていたとい
うペータ・サージェント。
因にこの作品の原案・脚本・製作・監督・プロダクションデ
ザインを手掛けたジャスティン・ディックスは、『スター・
ウォーズ/エピソード1』から、昨年5月紹介『ラブド・ワ
ンズ』まで関わったという人で、監督は本作がデビュー作。

『ジャーニー/ドント・ストップ・ビリーヴィン』
“Don't Stop Believin': Everyman's Journey”
1973年に活動を開始したアメリカのロックバンドが、新たな
ヴォーカルを迎え入れるまでを描いたドキュメンタリー。
バンドには、元はスティーヴ・ペリーというカリスマと言わ
れたヴォーカリストがいて、絶大な人気を誇っていた。しか
し1998年にペリーが脱退。以後は2人のヴォーカルを迎える
がいずれも短期で脱退してバンドは停滞していた。
そしてバンドは1年間の活動停止を宣言。新たなヴォーカリ
スト探しが行われる。そこでは世界中にごまんとあるジャー
ニーのトリビュートバンドの検索に始まり、徐々に範囲を広
げながら探索が続けられる。
そして、インターネットのYoutubeに映像がアップされてい
た1人のヴォーカリストが発見される。彼の名前はアーネル
・ピネダ。何と彼はフィリピン・マニラに住むスラム街出身
のアジア人だった。
前回紹介の『シュガーマン』も奇跡のような歌手の姿が描か
れていたが、本作のピネダも負けず劣らずだろう。もっとも
Youtubeというとジャスティン・ビーバーもいるから、最早
奇跡とも呼べないのかな。
とは言うものの、長い歴史を持つアメリカの人気ロックバン
ドにアジア人が参加するのだから、その緊張感などは尋常で
はないはずで、映画はその辺も丁寧に伝えてくれている。た
だし本人はずっと試用期間と思っていたようだが。
それでも南米のチリで始まったコンサートは熱狂的に迎えら
れ、全米を回ってついにハリウッドボウルへと辿り着く。そ
こはファンも評論家も最も厳しい評価を下す場所なのだそう
だ。そこに待っていたのは…
これもまた感動的な展開へと映画は進んで行く。それは外部
から見れば当然のことのようにも見えるが、実際にそれを受
け入れるバンドのメムバーや、さらに彼らを取り囲むファン
の存在など、まさに奇跡とも言えるものだ。
なお映画のエンディングロールで、出演者の欄にFeaturing
として、先にニール・ショーン、ジョナサン・ケイン、ロス
・ヴァロリー、ディーン・カストロノヴォのメムバー4人が
1枚で出る。
そして字幕を変えて、Introducingとしてアーネル・ピネダ
の名前が登場する。そんな小細工も嬉しく感じられる作品だ
った。


『タイガー・伝説のスパイ』“एक था टाइगर”
「ボリウッド4」と題されて連続公開されるインド最新映画
の第1弾。2012年のインド映画でNo.1ヒットを記録し、歴代
でも2位に輝いているという作品。
物語の背景は印パ戦争。1999年ムシャラフ前パキスタン大統
領の就任によって表向きは協調路線が取られるようになった
印パ関係だが、インドの情報分析局RAWと、パキスタン軍
情報機関ISIの間では水面下の激しい戦いが続いていた。
そんな中で主人公はタイガーのニックネームを持つRAWの
伝説的諜報員。今回もイラクに単身赴き、ISIに寝返った
諜報員を鮮やかな手口で始末したタイガーには、休む暇もな
く次の任務が与えられる。
ところがその任務はアイルランドにいる大学教授の身辺調査
という地味なもの。実はインド出身のその教授にはミサイル
技術の流出の疑惑が持たれていたのだ。そこでタイガーは、
ジャーナリストに成り済まし教授に近付こうとする。
ところが人付き合いの悪い教授はなかなかタイガーの話に乗
ってこない。その勝手の違いに戸惑ったタイガーは、まずは
教授の住まいに出入りする若いインド系の女性に接近して、
教授との仲介を頼む作戦に出るが…
と、ここまでですでにイラク、アイルランドなどの国名が出
ているが、この後の展開でもトルコ、キューバとまさに世界
を股にかけたタイガーの活躍が描かれて行く。しかもそれは
印パ関係も微妙に絡んだものになる。

主演は、1999年の秀作『ミモラ心のままに』などのサマール
・カーンと、カーンとは一時浮名を流したこともあるという
カトリーナ・カイフ。インド本国では2人の共演ということ
でも話題になったそうだ。
脚本と監督は、ドキュメンタリーの出身でこれまでの作品は
社会派ドラマが中心だったというカビール・カーン。本作は
監督が今までと違う娯楽大作に挑戦したもので、その結果は
No.1ヒットに繋がったものだ。
007のようなド派手なアクションというものではないが、
格闘技のシーンなどはそれなりに撮られていたし、インド映
画特有の歌と踊りも特には違和感を感じなかった。その辺の
バランスも巧みということだったのだろう。


『アニメミライ2013』
文化庁が日本の若手アニメーターを育成する目的で、2010年
に開始した国策事業によって4本のアニメーション作品が制
作され、3月2日から一般公開される。その完成披露試写会
が行われた。
作品は、事前審査に各アニメーション制作会社から応募され
た企画の中から4作品が選定され、そこに国家予算が投入さ
れて制作されたというもの。そこには様々な条件も付けられ
ているが、試写会での挨拶などを聞くとアニメーターの育成
には効果があるようだ。
しかしその技術的な部分に関しては僕は評価できないので、
以下は各作品の紹介をさせてもらう。
『龍-RYO-』
2009年10月紹介『アフロサムライ』などのゴンゾの制作で、
幕末期の蝦夷を舞台にした作品。歴史ものなので事実関係は
いろいろあるが、物語では剣戟アクションなどが描かれてい
た。しかし僕には、それ以上のことはよく判らなかった。
『アルヴ・レズル』
有限会社ZEXCSの制作で、電脳リンクが完成された未来世界
を舞台にした作品。しかしリンクの不具合で大勢の意識が失
われる事態が生じる。そしてそこから復帰した人格は…。電
脳ものとしては練りもあって面白かったが、作品はシリーズ
の開幕編という感じもした。
『リトルウィッチアカデミア』
2011年に設立された株式会社トリガーによる初のオリジナル
作品。幼い頃に見た魔女に憧れて名門魔法学校に入学した少
女の話。しかし憧れた魔女は異端者だった…? この作品も
シリーズの開幕編かな。上記の作品よりさらにその感が強い
作品だった。
『デス・ビリヤード』
2009年7月紹介『サマー・ウォーズ』などのマッドハウスの
制作で、謎めいたプールバーに迷い込んだ男と老人が、運命
を賭けたビリヤードを戦う。これは本作だけで独立している
作品。いろいろなビリヤードのテクニックを含むいろいろな
アイデアも楽しめた。
4作品のお話はそれぞれ捻りもあって面白かったが、特に実
験的な手法が駆使されているという訳ではなく、これが日本
のアニメ文化という感じの作品だった。でもまあ目的がクリ
エーターの育成ではなく、アニメーターの育成なのだからこ
れはこれで良いのだろう。
挨拶の中で、制作を終えたアニメーターが成長していたとい
う発言があって、自分の好きなJリーグで言うと、年代別の
代表に選出されたという感じなのかな。そこでの経験などが
活かされて、日本のアニメ界全体が成長して行くということ
で納得した。
来年もできたら観たいものだ。

『オズ はじまりの戦い』“OZ The Great and Powerful”
アカデミー賞受賞の主題歌「虹の彼方に」でも有名な1939年
の名作『オズの魔法使』(映画の邦題は送り仮名がないそう
だ)の前日譚。その映画化をディズニーと、2002年5月紹介
『スパイダーマン』などのサム・ライミ監督が実現した。
物語は、カンザス州の巡業サーカス団にいた奇術師の男が、
ふとしたことでオズの国に到着。そこで伝説のオズの魔法使
いと間違われた男は、魔女たちの争いに巻き込まれるが…と
いもの。実はこのお話は、ライマン・フランク・ボームが著
したオリジナルのシリーズ14冊の中にはないものだ。
しかし今回の物語は、シリーズのあちこちに語られるオズの
魔法使いのエピソードから構築されており、その全てのお話
は原作のオズ・シリーズに融合するものになっている。その
展開は見事だった。因に映画の原作表記は、1939年版と同じ
“The Wonderful Wizard of Oz”だったようだ。

原案と脚本は、2000年ジェット・リーが主演した『ロミオ・
マスト・ダイ』の原作者ミッチェル・カップナーと、2011年
8月紹介『ラビット・ホール』でトニー賞とピュリツァー賞
を受賞した劇作家のデヴィッド・リンゼイ=アベアー。脚本
はボームの原作を周到に研究した成果と言える。
出演は、ライミ版『スパイダーマン』でハリー・オズボーン
役のジェームズ・フランコ、昨年11月紹介『テッド』などの
ミラ・クニス、昨年8月紹介『ボーン・レガシー』などのレ
イチェル・ワイズ、昨年1月紹介『マリリン・7日間の恋』
などのミシェル・ウィリアムス。
映画の始まりがモノクロ・スタンダード(ただし3D)の画
面なのは、1939年版へのオマージュとすぐに判るが、その前
のタイトルの出し方は何となく無声映画を思い出させる。そ
の辺は1910年にボーム自身が映画化した作品への思いも伺わ
せた。本作はそれほどの歴史に支えられた作品だ。
しかし日本では、原作の知名度も1939年の映画以外は高いと
思えないし、劇団四季『ウィキッド』は評価されているよう
だが、その評価が本作に繋げられるかどうか。映画は全世界
一斉公開で宣伝の時間が短いのが多少気掛かりだ。


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井口健二