井口健二のOn the Production
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2013年01月30日(水) 汚れなき祈り、アンナ・カレーニナ、体温、愛アムール、暗闇から手をのばせ、カルテット!、ジャンゴ繋がれざる者、魔女と呼ばれた少女

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
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『汚れなき祈り』“Dupa dealuri”
2007年12月紹介『4ヶ月、3週と2日』のクリスティアン・
ムンジウ監督が、2005年6月にルーマニアの片田舎で起きた
事件を再現した作品。
物語は、列車の駅に友を迎えに来た修道女の姿から始まる。
彼女が出迎えたのはドイツに行っていた幼馴染の女性。2人
は共に孤児院で育ち、1人は地元の修道院に入信し、1人は
ドイツに職を求めたようだ。しかしドイツに行った女性は夢
やぶれたということなのだろう。そして2人は、小さな町の
郊外の丘に建つ修道院へとやって来る。
その修道院は1人の司祭によって運営されていたが、彼は教
会に属する司祭に与えられる俸給も返上するほどのストイッ
クな人物だった。そして教会には奇跡を起こす宗教画がある
というが、その佇まいも簡素で、そんな中で修道女たちは、
司祭が命じるままの質素な生活を続けていた。
そんな中に新たにやってきた女性は、なかなかな環境に馴染
むことができず、幼馴染の修道女に一緒にドイツに行こうと
訴えるのだが…。司祭は行っても良いと言うものの、それは
修行を無駄にすることだと諭され、修道女も教えの道を捨て
ることができない。
そしてドイツから帰ってきた女性に謎の発作が起き始める。
その発作は現代医学によっても原因が判らず、やがて司祭た
ちには発作を鎮めるために悪魔祓いの儀式を行うしか術がな
くなってくる。
背景の宗教は正教会ということだが、ローマ・カソリックと
はかなり違って、伝統的な儀式などの伝統に重きを置く宗派
のようだ。その実態は僕にはよく判らないが、見た感じはか
なりのカルトのようにも見えてしまう。もちろん歴史は違う
が、宗教というのは大体そんなものだ。
因に、実際の事件はトランシルヴァニアで起きたようだが、
映画ではブカレスト近郊の村に設定され、マニア的な期待に
はあまり明確なものは感じられなかった。でもまあこれは現
実に起きた事件である訳だし、そんな宗派が21世紀の今日に
なっても生き残っているということだ。

出演は、ともに本作で映画デビューのコスミナ・ストラタン
とクリスティナ・フルトゥル。因にストラタンはTVレポー
ターも務めるジャーナリスト。フルトゥルはナショナルシア
ターに所属する舞台女優だそうだ。
なお本作と同じ題材では先に舞台劇も発表されているようだ
が、本作の脚本はBBC所属のジャーナリストだったタティ
アナ・ニクレスク・ブランの調査に基づき、ムンジウ監督と
ブランが新たに書き下ろしたものだ。

『アンナ・カレーニナ』“Anna Karenina”
『戦争と平和』と並ぶ、レフ・トルストイ原作ロシア文学の
映画化。
舞台は1870年代のロシア。サンクトペテルブルグで政府高官
の貞淑な妻だったアンナは、兄夫婦の諍いを仲裁するために
モスクワへやって来る。しかしその旅の途中で出会った若き
貴族の将校ヴロンスキーが、彼女の運命を変えてしまう。
物語の始まりでは、アンナが遭遇する鉄道事故の様子も描か
れ、彼女の悲劇的な終末が暗示される。その一方で対称的な
運命を歩むキティとリョーヴィンの姿もきっちりと描かれて
いる作品だ。
同じ原作からは無声映画時代から数多くの映画化があるよう
だが、僕が憶えているのは1967年のモスフィルム版だ。その
前に『戦争と平和』の映画化も成功させているソ連の映画ス
タジオが、初の70mmで制作したのがその作品だった。
しかしまだ10代後半だった僕にとって、このタチアナ・サモ
イロア主演の作品は、正直に言って大スペクタクルの『戦争
と平和』ほどには感銘を受けなかったし、まあそんなものか
なあという程度の印象だった記憶しかない。

そんな物語が、今回はキーラ・ナイトレイ主演、2007年12月
紹介『つぐない』や2011年5月紹介『ハンナ』のジョー・ラ
イト監督でリメイクされた。共演はジュード・ロウ、アーロ
ン・テイラー=ジョンスン、それにエミリー・ワトスンら。
また脚本を、1998年『恋に落ちたシェイクスピア』や1985年
『未来世紀ブラジル』などのトム・ストッパードが担当して
いるのも注目だった。
それで本作は、そのストッパードの脚本が素晴らしいと言え
るのかもしれない見事な作劇になっていた。そこではまず物
語が舞台面という設定でスタートし、そこから野外や壮大な
セットに展開されたり、また劇場の客席がスケートリンクに
なってしまったりする。
それはトリッキーではあるが、その場面転換が巧みに物語を
集約し、本作では2時間10分の上映時間の中にトルストイが
描いた物語の全てが印象深く織り込まれていた。これは上記
のモスフィルム版が2時間45分を掛けても僕にはキティらの
物語の印象が残っていなかったのと対称的なものだ。

なお本作は米アカデミー賞で、撮影、衣装デザイン、作曲、
美術の4部門で候補になっているが、脚色賞のノミネートは
逃したようだ。

『体温』
2011年の「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」に出品
されて高い評価を受け、その後にテキサス・ファンタスティ
ック映画祭やUCLAの映画祭にも正式招待されたという作
品。
本作は、別に嫌いな作品という訳ではないが、上記のように
既に評価もされており、僕が紹介するまでもないと考えてい
た。しかし多少事情が変わったので改めて紹介しておくこと
にする。ただ本作に関しては、鑑賞時に疑問に感じる部分も
あったので、ここではその辺を中心に書くことにしたい。
プレス資料の中では「アンチ『空気人形』」などという文言
も見られて、対抗意識も持って作られた作品なのかもしれな
い。しかし基本的にファンタシーの王道の一つとも言える人
形に魂が宿る設定の2009年6月紹介の作品に対して、本作で
は人形は別段魂を持つようには描かれていない。
むしろ、その人形の持ち主である主人公の精神の方を主題に
描かれている作品と言えるだろう。そして物語では、最初は
女優の演じている人形が、ある状況で本当に人形になってし
まう辺りで、その心情の変化などが象徴的に描かれていると
言えるものだ。
しかしそうであったとして、さらにその状況が逆転した時点
で、人形の姿が再び女優の演技に戻らなかったことが僕には
疑問に感じられた。
つまりこの主人公の心が、生身の人間に巡りあったことで人
形から完全に離れ、再び戻らなかったのだとしたら、これは
それまで人形を愛し続けてきた主人公にしてはあまりに薄情
に感じられたものだ。
もちろん本作では、演出の関係で映画の後半の人形を女優に
演じさせるのが難しい状況はあるのだが、それは撮影の工夫
次第でどうにか出来たのではないか。しかしその工夫をあえ
てしない。このドライさが、現代の若者というようにも感じ
られ、多少暗澹とした気持ちにもなったものだ。

出演は、2012年1月紹介『マイウェイ』などに出演の石崎チ
ャベ太郎とAV女優の桜木凛。脚本と監督は、2010年「ゆう
ばり国際ファンタスティック映画祭」でも『終わらない青』
という作品が高評価だったという緒方貴臣。
プレス資料に掲載の「監督のコメント」によると、人間に対
する幻滅から、人形に擬似的な恋愛感情を継続させる若者を
描きたかったそうだが、それなら余計に最後の人形は女優に
演じさせて欲しかったものだ。


『愛、アムール』“Amour”
ミヒャエル・ハネケ監督が、2010年9月紹介『白いリボン』
に続いて、カンヌ国際映画祭で2作品連続のパルムドールに
輝いた作品。
登場するのは年老いた夫妻。妻は元ピアニストで現役は退い
ているが、教え子らからの信頼は厚いようだ。そんな夫妻は
パリの風格あるアパルトマンに2人で暮らしていた。
ところがある日の食事中、突然妻が硬直し何の反応も示さな
くなる。その状態は、程なくして何事もなかったかのように
元に戻るのだが、妻はその間の記憶を失っていた。
こうして病院で検査を受けた妻は、日常の生活に問題はなく
退院したものの、徐々に痴呆が進んでいることは明らかだっ
た。しかも二度と入院はしたくないという妻に、夫は自宅で
の介護を決意するが…

出演は、1927年生まれの85歳、本作で史上最高齢のオスカー
主演女優賞候補になっている1959年『二十四時間の情事』、
2010年4月紹介『華麗なるアリバイ』などのエマニュエル・
リヴァと、1930年生まれの81歳、1966年『男と女』や1969年
『Z』(カンヌ国際映画祭で主演男優賞受賞)などのジャン
=ルイ・トランティニャン。
他に、2002年9月紹介『8人の女たち』や、2006年6月紹介
『ママン』などのイザベル・ユペール、2012年ヴィクトワー
ル賞でクラシック音楽部門の年間最優秀ソリスト賞を受賞の
ピアニストで、本作にはオーディションに参加して選ばれた
というアレクサンドル・タローらが脇を固めている。
オリジナルは1997年に発表されて、2008年9月にハリウッド
リメイクを紹介した『ファニー・ゲーム』などでも知られる
ハネケ監督は、一般的に人間嫌いではないかと言われている
そうだ。リメイク作品や前作『白いリボン』ので彼が描いた
登場人物は確かにそんな印象を持つ。
しかし本作の老夫婦には、そんな単純な論評では割り切れな
い人間性も感じられる。ただし周囲の人間には、多少厳しい
表現もあって、やはり基本は人間嫌いなのかなとも思わせる
部分もあった。監督はこれがリアルな現実で、それを描いて
いるだけと主張しているようだが。
僕自身、両親が老老介護だった時期を観ていた頃もあって、
本作にはいささか身につまされる部分も多い作品だった。そ
れは将来の自分自身でもある訳で、そんな覚悟を促されてい
るような作品でもあった。


『暗闇から手をのばせ』
元は雑誌編集者で、その後に漫画原作コンテストで大賞を受
賞、漫画原作者や吉本のコント作家なども経て現在はNHK
エンタープライズに所属してテレビドキュメンタリーを制作
しているという戸田幸宏監督の第1回作品。
因に本作は、NHKのドキュメンタリー用に取材したが内容
を拒否されたため、フィクション化して自己資金による自主
映画として制作したものだそうだ。
描かれているのは、身障者専門のデリヘル嬢。作品の中でも
人口に対する障害者の割合などが示され、その人たちが家の
中で性処理もできないまま暮らしている現状が語られる。そ
して組織を運営している人物は元は福祉関係とされており、
この辺は取材で出てきた話なのかもしれない。そんな男の許
で働く新人デリヘル嬢を中心に物語は展開される。
そこには進行性の筋ジストロフィーで余命幾ばくもなく、自
分の身体は自分のものだと主張して全身にタトゥーを入れて
いる若者や、事故で身体の自由を失って厭世的になっている
少年、さらには先天性多発性関節拘縮症の男性など、様々な
客が現れる。その一方では、身障者を騙る招かれざる客も登
場する。

出演は、2010年7月紹介『TENBATSU』などに出演のグラビア
アイドルの小泉麻耶。他に津田寛治、森山晶之、モロ師岡、
それにお笑い芸人のホーキング青山らが脇を固めている。
に作品の一部は青山の著作も参考にしているようだ。
テーマはかなり過激だし、まあNHKでは拒否されても仕方
ないかなあという感じだ。しかし描かれている内容は真実と
思えるものだし、この現実は間違いなくあるのだろう。そん
な自分たちが目を逸らし勝ちな真実の姿を、この作品はある
意味小気味良く描いている。
それは敢えて興味本位と取られることも覚悟の上で、恐らく
今まで目を逸らしていたであろう人たちに対して、その現実
を真っ向から伝えようとしているものだ。
ただしそれは諸刃の剣でもあって、肝心の人たちが観ない可
能性はある。でもそんなことも含めてこれはこれで現実なの
だし、そんなことでも良いのではないか…。そんな風にも思
わせてくれる見事な作品でもあった。
逆に興味本位ででも観てくれれば、それでも本作の目的は果
たせたのではないかな、そんな風にも感じられた。


『カルテット!人生のオペラハウス』“Quartet”
2度のオスカー主演賞に輝くダスティン・ホフマンが、公式
には初の映画監督に挑戦した作品。
舞台は、イギリスにある音楽家専門の老人ホーム「ビーチャ
ム・ハウス」。そこは資産家が残した邸宅を利用して設立さ
れたものだが、運営費は残さなかったらしく、毎年開かれる
コンサートの収益が頼みの綱だ。そして今年はヴェルディ生
誕200周年を記念したコンサートを開く計画だった。
ところが予定された往年のスターソリストが出演を辞退し、
チケットの販売が激減する事態に陥る。それでも練習だけは
怠らない面々だったが。そんな時、施設の車が新入居者の出
迎えに行くことが判明、それは大スターが入居することの前
触れだった。
こうして新たな大スターを迎えて、施設の存続を賭けたコン
サートへの準備が始まるが…。そこには様々な人生の経緯が
隠されていた。果たしてコンサートは無事開幕されるのか?

出演は、昨年10月紹介『マリーゴールド・ホテルで会いまし
ょう』などのマギー・スミス、2008年1月紹介『ライラの冒
険・黄金の羅針盤』などのトム・コートネイ、2003年11月紹
介『ラストサムライ』などのビリー・コナリー、昨年12月紹
介『アルバート氏の人生』などのポーリーン・コリンズ。以
上は全員が大英帝国勲章の叙勲者だ。
他に、マイクル・ガンボン、シェリダン・スミス、コメディ
俳優のアンドリュー・サックスらが脇を固めている。
さらにホームの入居者として、ギネス・ジョーンズ、ナウラ
・ウィリス、ジョン・ローンズリーらのオペラ歌手。世界最
高齢トランペッターと言われるロニー・ヒューズ。また訪問
者役でラッパーのジュイマン・ハンターらが出演して、見事
な演奏や歌唱を披露している。
ホフマンはブロードウェイの舞台演出などは手掛けており、
1978年には自らの主演作でもクレジットなしで監督したこと
があるようだが、本作が公式には映画初監督作品。因に本作
では、脚本に惚れ込んで自らが憧れるイギリスを舞台にした
物語に挑戦したようだ。
それにしても、一緒に紹介した『愛、アモール』とは見事に
対をなした感じの作品で、方やリアルに描ききったシビアな
老後に対して、こちらは夢のような老後。もちろん現実には
厳しい部分もあるけれど、こんな夢も見たい気分にさせてく
れる作品だった。


『ジャンゴ繋がれざる者』“Django Unchained”
現代アクション映画の旗手とも言えるクエンティン・タラン
ティーノ監督が初めて西部劇に挑んだ作品。
物語の始まりは、鎖に繋がれて荒野を進んでゆく黒人奴隷の
行列。そこに歯科医と称する男が現れ、奴隷商人に金をちら
つかせながら欲しい奴隷がいると告げる。そして何やら話し
かけながら品定めをした男は、1人の黒人を選び出す。
その男は賞金稼ぎで、黒人が以前に暮らしていた農場の牧童
たちを探しているという。そこで賞金の掛けられた男たちの
顔を知る黒人が必要だったのだ。こうして賞金稼ぎと行動す
ることになった黒人青年には、別のある目的があった。
奴隷制度が生き残るアメリカ南部を舞台に、自由人となった
黒人青年が立ち向う、差別と暴力に歪んだ白人社会の実態が
暴かれて行く。
内容的にはかなり社会派的なドラマが展開されるが、それが
タランティーノ特有のアクションで彩られる。それはサム・
ペキンパーとも違うし、またコーエン兄弟とも違うものだ。
しかしどこか懐かしさも感じられる。そんな西部劇が描かれ
ていた。

出演は、ジェイミー・フォックス、クリストフ・ヴァルツ、
レオナルド・ディカプリオ、2004年4月紹介『白いカラス』
などのケリー・ワシントン、そしてサミュエル・L・ジャク
スン。
他に、ドン・ジョンスン、フランコ・ネロ、ラス・タムブリ
ン、ブルース・ダーン、マイクル・ボーエン、ロバート・キ
ャラダイン。さらにはスタントウーマンのゾイー・ベル、メ
イクアップアーチストのトム・サヴィーニらの名前も出演者
欄に登場し、錚々たる顔触れがタランティーノの新たな門出
に結集したようだ。
タランティーノは脚本も執筆して、それは米アカデミー賞の
候補にもなっているものだが、その展開は開幕の黒人奴隷の
行列に始まって、どこをとっても過去に観たようなシーンの
連続。
それは本人的にはオマージュののつもりだろうし、観客とし
ても微笑ましく思うようなものだが、折角のタランティーノ
ならもう1歩踏み込んでも欲しかった感じもしてしまうとこ
ろだった。
その辺にはこちらの期待過多なのかもしれないが、ちょっと
物足りなくも感じてしまったところだ。でもまあ、これが彼
にとっては西部劇は第1作なのだし、これから作られる作品
には大いに期待したいものだ。


『魔女と呼ばれた少女』“Rebelle”
カナダのフランス語圏ケベック州の製作で、今年の米アカデ
ミー賞外国語映画部門で候補になっている作品。
映画の舞台は、アフリカ中央部のコンゴ民主共和国。2003年
の合意による暫定政権の成立以後も、内戦状態が続いている
とされるこの国で、軍事勢力に翻弄されながらも生き抜いて
行く1人の少女の姿が描かれる。
その少女は、12歳の時に暮らしていた村が反政府軍の侵攻を
受け、拉致された少女は反政府軍の兵士として徴用される。
しかし幻覚作用のある樹液を飲むことで亡霊が見え、亡霊の
導きで勝利を招くようになる。
このためボスからも「魔女」と崇められるようになるが、亡
霊のお告げで死を予知した少女は、彼女に想いを寄せる少年
と2人で逃亡する。そして少年のプロポーズに対しては、父
親に教えられた「白いニワトリ」を要求するが…
亡霊の登場などには、かなりファンタスティックなイメージ
も描かれてはいるが、全体としては生と死が隣り合わせのア
フリカの大地に生きる少女の厳しい現実が描き尽くされてい
る作品だ。
その現実は、不況で将来に希望が見えないと言いながらも、
安寧な日本の少年少女たちには想像もつかないものだろう。
しかしこれが世界の現実であり、多くの子供たちがそんな環
境の中で生きていることは知っておいて欲しいものだ。

出演は、本作でベルリン国際映画祭の主演女優賞「銀熊賞」
を獲得したラシェル・ムワンザを始め、彼女と共にバンクー
バー批評家協会賞で助演男優賞を受賞したセルジュ・カニン
ダら、現地のオーディションで選ばれたコンゴの人々。
その脇を、アラン・バスティアン、ラルフ・プロスペール、
ミジンガ・グウィンザという3人のカナダ人の俳優たちが固
めている。脚本と監督は、ベトナム人を父親に持つキム・グ
エン。因に本作は監督4作目の作品だそうだ。
撮影は、2011年6月にオール現地ロケで行われ、まだ内戦状
態が続く現地では、武装した市民軍に守られての撮影だった
そうだ。また途中に登場するアルビノの村は、実はアンゴラ
で撮影されたものだそうだが、その現実もかなり厳しいもの
のようだ。
映画の内容では、2011年8月紹介『ゴモラ』に重なるところ
もあり、僕個人の感想としてはもう少しファンタシーに寄っ
てくれても良かったかなとも思ったが、現実を真っ向から捉
えるということではこの方が良いのだろうし、この現実をで
きるだけ多くの人に知ってもらいたいものだ。


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井口健二