| 2013年01月20日(日) |
恋する輪廻、逃走車、天使の分け前、ひかりのおと、ダーク・タイド、ブラインドマン+DVDマガジン記者会見、ナンバーテンブルース追記 |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※ ※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※ ※方は左クリックドラッグで反転してください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『恋する輪廻』“ओम शांति ओम” 昨年3月にも『ロボット』を紹介したインド特有のミュージ カル作品。 物語は、ボンベイの映画産業(ボリウッド)を舞台にした2 部構成もの。 その前半の時代は1970年代。1人の駆け出しの俳優が憧れの 大女優の目に留まろうと必死になり、ある活躍から女優と話 をできるようになる。ところがある夕暮れ、女優の後を付け た彼はとんでもない事件に巻き込まれてしまう。 それから30年、ボリウッドは新たな青春スターの誕生に沸い ていた。ところがある日、彼は不思議な体験から自分が非業 の死を遂げた脇役俳優の生まれ変わりであることに気づく。 それは30年前に中止された映画の製作に絡んでいた。 そこで彼は、中止後に行方不明となった大女優の謎を解くた め、その作品のリメイクを開始するのだが…。そんな30年の 時代を隔てた因縁の物語が、華やかな歌と踊りに彩られて展 開されて行く。 インド製のミュージカル映画では、1998年に『ムトゥ 踊る マハラジャ』が日本公開されて話題になったことがあるが、 その後は徐々に下火になっていた感じだ。大体1本の上映時 間が3時間近いと、興行も難しかったと考えられる。 そんな中で昨年の『ロボット』は、『ムトゥ』と同じ主演者 によるものだったが、試写の行われたのが短縮版だったのに 加えて、SFとミュージカルの融合は、正直に言って難しさ を感じさせたものだ。 それに対して本作では、まず物語の主題が恋愛ものであり、 そこにファンタスティックな味付けがされると、歌と踊りが 登場してもほとんど違和感はなかった。さらに本作は映画製 作のバックステージでもあるから、歌と踊りはあって当然と いう感じにもなっていた。 そんな訳で映画は気持ちよく楽しませてもらえたし、さらに ファンタスティックな展開には嬉しくもさせて貰えた。まあ この因縁話は目新しいものではないが、こんな風に華やかに 描かれると、それなりに面白く観られたものだ。 出演は、「キング・オブ・ボリウッド」とも称される人気ス ターのシャー・ルク・カーンと、本作が出演2作目のディー ・ピカー・パードゥコーン。因に本作は2007年の作品だが、 男優は1965年生まれ、女優は1986年生まれだそうだ。 監督は、舞踊監督として80本以上の作品歴があるという女流 のファラー・カーン。監督は2作目だが彼女の業績を慕って 映画の途中には数多くのゲスト出演者がいるようだ。また、 エンディングには彼女自身も含む映画のスタッフも画面に登 場している。 インド製のミュージカル作品では、一昨年の東京国際映画祭 で『ボリウッド〜究極のラブストーリー』という、その歴史 を綴ったドキュメンタリーが上映されたが、特有のスタイル の中にも常に進化は指向されているようで、今後もその歴史 は続いて行きそうだ。
『逃走車』“Vehicle 19” 『ワイルド・スピード』シリーズのポール・ウォーカーが、 主演と製作も兼ねるカーアクション作品。 物語の舞台は南アフリカ共和国のヨハネスブルグ。世界で最 も危険な都市とも言われるこの街で、1人の男の命を張った 逃走劇が開幕する。 主人公は、ヨハネスブルグの空港に着いたばかりの男。何か 事情があるらしく、携帯電話で妻に連絡を取りながら空港で レンタカーを借りて妻の許に向かおうとする。しかし指定さ れたナンバー19の車両の車種は彼の依頼と違うようだ。それ でも妻の許に急ぎたい男は、そのまま車を出発させるが… 実はその車にはある秘密が隠されており、それは男を瞬く間 に危険な事態へと引き込んで行く。そして自らの危機を脱す るため男は車を駆って行くことになるが、その先には思いも よらぬ陰謀が隠されていた。 共演は、ニューヨーク生れだが南アフリカで育ち、イギリス のテレビ“Wild at Heart”にレギュラー出演したこともあ るという女優・歌手のナイマ・マクリーン。この他の脇役も 南アフリカの俳優たちが固めているようだ。 脚本と監督は、コマーシャル出身で本作が長編監督2作目と いうムクンダ・マイクル・デュウィル。因に本作の脚本は、 2010年度の未製作の映画脚本コンテスト(ブラックリスト) において、エージェントたちの投票による第1位を獲得した 作品だそうだ。 また本作では、全編を車載カメラで撮影するというコンセプ トが採られ、しかもカメラはアナモフィックレンズを装着し たフィルムカメラ。その撮影条件はかなり厳しいが、それを こちらもコマーシャル出身のマイルス・グドールが見事に実 現している。 という作品ではあるが、僕の個人的な希望としてはもう少し 背景をはっきりさせて欲しかったかな。特に発端の車両がす り替えられた経緯は、単なる偶然というのはちょっといただ けない。 特に主人公に特別な事情があるという設定では、その経緯が 罠の可能性もあるし…。その辺が曖昧にされていると何とも 観ていて落ち着かなかった。まあ最近の観客はそんなことな ど頭が働かないのかもしれないし、日本映画の大半はそんな ものだが。 なおブラックリストに関しては、2月1日の製作ニュースで 少し紹介する予定だ。
『天使の分け前』“The Angels' Share” 昨年2月紹介『ルート・アイリッシュ』などのケン・ローチ 監督がスコッチ・ウィスキーを題材にして、現在のイギリス を寓意的に描いた作品。 舞台は、スコットランドのかつての工業都市グラスゴー。そ の街で暮らす若者ロビーは、暴力があふれる環境の中で荒ん だ生活を送っている。そんな彼は少年刑務所を10ヶ月前に出 所し、愛する恋人と生まれてくる子供のために暮らしを立て 直したいが、周囲の環境はそれを許そうとしない。 そして売られた喧嘩で相手を傷つけたロビーは、簡易裁判で 300時間の労働奉仕を命じられる。こうして同様の連中と共 に指導官の許で作業に着くが、ロビーの真面目な態度を認め た指導官は彼らを蒸留所の見学に連れ出す。そこでウィスキ ーの奥深さに目覚めたロビーにはある展望が開けるが…。 とここまではかなりシリアスな社会派ドラマが展開するが、 ここからが奇想天外というか、ケン・ローチ監督らしい見事 な人生逆転のドラマとなる。それは必ずしも良い子ばかりで はない主人公たちが繰り広げる大作戦といった感じのもの。 これには多少後ろめたくても喝采を上げてしまった。 題名は、長年寝かした樽の中で、蒸発などによって少しずつ 減って行くウィスキーの減分のこと。その「天使の分け前」 が主人公たちの幸運の糧となる。 出演は、本作の舞台グラスゴーで脚本家ポール・ラヴァティ がリサーチ中に見出したというポール・ブラニガン。本作で はスコットランドの映画賞で主演男優賞も受賞している。他 に2010年11月紹介『エリックを探して』などのジョン・ヘン ショー。2002年11月紹介『Sweet Sixteen』に出演のガリー ・メイトランドとウィリアム・ルアン。 さらにオーディションで選ばれたジャスミン・リギンズ。グ ラスゴー出身のシヴォーン・ライリー。昨年8月紹介『ウー マン・イン・ブラック亡霊の館』などのロジャー・アラム。 それにスコッチウィスキーの世界的権威とされるチャーリー ・マクリーンらが脇を固めている。 スコットランドには40年近く前にネス湖を見に行ったことが ある。その際グラスゴーは夜行列車で深夜の通過だったが、 早朝に見たエジンバラ城やハイランドの風景は今も変わって いなかったようだ。ついでに言えば、その時の記念に買った マグカップに書かれた‘Trew or False?’の謎が、本作では 真実と確認することができた。
『ひかりのおと』 一昨年の東京国際映画祭「日本映画ある視点」で上映され、 その後は撮影地の岡山県各所で巡回上映されていた作品が、 今度は全国公開されるということで試写が行われた。 作品は「地産地『生』」映画と自称されているもので、岡山 県の山深い土地に住む酪農家の周囲を取り巻く出来事が描か れる。 主人公は、一度は東京に出たものの故郷に舞い戻った青年。 彼には恋人がいるが、その女性は未亡人でさらにその子供は 亡き夫の「家」の唯一の跡取り。従ってその恋人が彼の許に 来るためには子供を置いてこなければならない。そんな状況 の中で、現在の日本農業の置かれた状況が語られる。 それはまあ判らないではない話なのだけれど、一方で日本の 農業(酪農)の困難さを言いながら、他方で跡取りと言われ ても、第三者の観客としてはそれを真剣に悩むところには行 かない。もちろんそれは農家にとっては重要な話なのだろう が…。 しかもその人間関係が判り難くて、実は映画の最初にテロッ プが1枚出るのだが、それと本作の物語との繋がりも映画の 終盤になってようやく得心したもので、それまでは映画の中 で何が起きているのかもさっぱり判らなかった。この辺は最 近の日本映画によくある傾向ではあるが。 で、得心したらもう映画は終わっていた訳で、これで感動で きるのは相当に頭の良い人たちなのだろう。確かに映画のエ ンディングは感動的な映像で締め括られるが、これで済むな ら、それまでの主人公の悩みは何だったのか、という感じに もなってしまう。 そこに希望はあるが、それは本作に描かれた物語の未来とは 別のもののような感じもする。結局本作の場合は、大上段に 振りかぶった日本農業の未来の問題と、物語としての男女関 係の話とがうまく折り合わさっていないもので、その辺では 中途半端にも感じられた。 脚本と監督は、実際に現地で農業を営んでいるという山崎樹 一郎。プロデューサーは2008年12月紹介『へばの』も手掛け た桑原広考。プロデューサーの前作もそうだが、日本各地に 隠された問題を今後も映画化してくれることを期待したい。 出演は、監督の前作にも出演の藤久善友。他に森衣里、真砂 豪。撮影地の岡山県や関西で活動する人たちを中心に起用さ れているようだ。
『ダーク・タイド』“Dark Tide” 2003年3月紹介『ブルークラッシュ』などのジョン・ストッ クウェル監督による海洋が舞台のアドヴェンチャー最新作。 因に1986年『トップガン』の出演者でもあるストックウェル には海洋もの以外の監督作もあるが、自らサーファーという 監督は海洋ものの評価が高いようだ。 舞台は、南アフリカ共和国ケープタウン沖の海洋。アシカの 繁殖地であるそこは、同時にアシカを餌とするサメの有数の 生息地でもあった。そんな海では観光客相手にサメを間近に 見せるツアーも盛んに行われていた。 その中で海洋生物学者のケイトは、シャークダイヴ中に同僚 のダイヴァーをサメに殺され、以来シャークダイヴの仕事か らは遠のいていた。しかし銀行から借りていた資金の返済の 期限が迫り、ボートを差し押さえられる事態になる。 そんな折、事故以来疎遠になっていた夫のジェフが高額な報 酬の得られる仕事を持ちかけてくる。それはスリルを求める 金持ちの男性が、通常使用されるケージを出て、サメと一緒 に泳ぎたいというものだった。 そしてケイトは、自ら失った自信を取り戻す目的も込めて、 夫と客を乗せたボートでシャークダイヴのツアーを開始する が…。そこには最凶の恐怖が待ち構えていた。 出演は、昨年12月紹介『クラウド・アトラス』にも出演のハ リー・ベリー。2003年8月紹介『S.W.A.T.』などのオリヴィ エ・マルティネス。2009年8月紹介『パイレーツ・ロック』 などのラルフ・ブラウン。 他に、1989年『白く渇いた季節』に出演のThoko Ntshinga、 2008年2月紹介『マンデラの名もなき看守』に出演のSizwe MsutuとMark Elderkin、新人のルーク・タイラーら、南アフ リカ共和国の俳優たちが脇を固めている。 ベリーはシュノーケルだけのダイヴィングでホホジロザメと 一緒に泳ぐシーンもあり、それは見事な映像になっている。 実際にサメは特別な状況にない限り人間を襲うことは少ない のだそうで、そんなサメの魅力にも溢れた作品だ。 それにしても今回は、先に紹介した『逃走車』も南アフリカ 共和国が舞台だし、昨年12月紹介『ジャッジ・ドレッド』も 撮影は同国で行われていた。元々がイギリス連邦の構成国で 英語が公用語の一つでもあるこの国は、ハリウッド映画の新 たな製作拠点の一つにもなりそうな勢いだ。
『ブラインドマン その調律は暗殺の調べ』“À l'aveugle” 『トランスポーター』や『96時間』などハリウッド的アク ション映画は発表しているリュック・ベッソン主宰ヨーロッ パ・コープが、フランス映画伝統のフィルムノアールに挑戦 した作品。 主人公は妻を事故で失った刑事。以来捜査に没頭する日々だ が、人生で何かを見失っている感が否めない。そんな彼の前 にパリの高級マンションの一室で若い女性がバラバラ死体で 発見された事件が回ってくる。そこには侵入された形跡もな く、目撃者もいなかった。 この事件に警察は被害者の元恋人を洗い始めるが、主人公は 数日前に被害者宅のピアノを調律した盲目の調律師に疑いの 目を向ける。そして第2の事件が起きる。それは富豪が爆殺 されたもので、2つの事件は手口も異なり、繋がりも見付か らなかったが… 単独でも捜査を続ける主人公は、やがて調律師の経歴がすり 替えられていた事実に辿り着く。しかしその頃から主人公の 捜査に圧力が掛かり始める。それは主人公に、自分もある種 の盲目であったことを気付かせる。 出演は、2005年12月紹介『美しき運命の傷痕』などのジャッ ク・ガンプランと、2011年1月紹介『神々と男たち』などの ランベール・ウィルスン。他に、2011年3月紹介『黄色い星 の子供たち』に出演のラファエル・アゴゲらが脇を固めてい る。 監督は、2008年10月紹介『アイズ』でハリウッドにも進出し ているザヴィエ・パリュ。脚本はベッソンと、2009年にヴィ ン・ディーゼル、ミシェル・ヨー、ランベール・ウィルスン らが出演した『バビロンA.D.』のエリック・ベナール。 ベッソンは以前の作品と同様に、製作と原案、共同脚本を手 掛けているが、フィルムノアールの割には背景などにも巨大 な陰謀が暴かれて行く作品だ。それにアクションも多少派手 な感じで、その辺が今回ベッソン的ノアールと称される部分 にもなっている。 まあそれは良し悪しだし、それはこの作品として楽しめるも のにはなっている。文句を付けたい人はいろいろいるとは思 うが。ただ、背景を大きくしてしまった分、この結末だけで いいの?という感じもして、その辺が多少気にはなった。映 画としてはこれでいいのだろうけど。 * * 今回は休日があったり、風邪で試写を逃したりしてページ が余ったので、最後に少し記者会見の模様などを紹介させて もらう。 まずは1月8日に創刊された「山田洋次DVDマガジン」 の記者会見が行われた。なおこの会見では、創刊号の『幸福 の黄色いハンカチ』のDVDが配布されたが、映画の紹介は 2010年2月に行っているのでここでは割愛する。 その会見には、山田監督と作品で日本アカデミー賞助演賞 を受賞した武田鉄矢が出席したが、その中で武田の「この作 品は、役者としての自分のスタートの白線だったが、今では ゴールの白線でもある。常にこの作品を思い出して自分の進 む道を考えている」という発言はうまいと思った。 また武田は、「各シーンごとに監督に言われた言葉を思い 出す」のだそうで、例示されたその言葉はかなり含蓄やユー モアもあり、出来たらその言葉をオーディオコメンタリーで 収録して欲しかったとも思ったところだ。 その一方で山田監督からは最後に、「世の中がきな臭くな っているが、映画ではもっと人間を大事にした作品を作って 行きたい」との発言があり、政治的な面はあまり感じさせな い監督が、さすがに今の政治情勢には危惧を抱いているよう で、政治不安の時代なのだと改めて感じさせられた。 なお「山田洋次DVDマガジン」は隔週火曜日(第2巻は 1月22日)の発刊で全25巻。1巻に2作収録のものも含め、 1963年『下町の太陽』や1964年『馬鹿が戦車でやって来る』 など全26作が収録されることになっている。 また各DVDには監督インタヴューなどの特典映像も収録 されるようだ。 * * もう1本、昨年11月に紹介した『ナンバーテン・ブルース ‐さらばサイゴン‐』を再び観る機会が有り、監督のお話も 再度伺えたので、そこで聞いた情報などを紹介しておく。 この作品の一般公開は未だに目処が立っていないようで、 さらに前回紹介の時には期待されていたゆうばり国際ファン タスティック映画祭での上映も難しくなっているようだ。し かしそれに替って1月23日から2月3日まで開催されるロッ テルダム国際映画祭での上映が決定している。 これは2003年に亡くなった深作欣二監督の作品が同映画祭 で上映された際に、その作品の脚本を書いたのが本作の長田 紀生監督だったという伝にもよるもの。そんな上映の輪も少 しずつ広がっているようだ。 映画の内容に関しては前回も紹介しているが、今回の上映 では作品に出演しているきくち英一氏も来場して、上映後の 歓談では思い出話を聞くことができた。 その話によると「映画後半に出てくるの銃撃戦では、最初 に実弾を壁に打ち込んでみたが良い効果が出ずに、結局パウ ダーを仕込んだ弾着を使った」とのこと。でもこのシーンが 撮影されたフエの建造物は、1993年世界遺産にも登録された 場所のはずで、何とも凄い撮影が行われていたものだ。 また前回にも紹介した女優タン・ランの消息に関しては、 サイゴン陥落後に何度かボートピープルとして脱出を試みた がその度失敗して連れ戻され、最後は人気女優として政府の プロパガンダ映画に出演させられ、その作品を持ってアメリ カにプロモーションで訪れた際に政治亡命をしたとのこと。 これもドラマになりそうな話だった。 なお作品に関しては、僕自身も自分の出来る範囲で各方面 に鑑賞を働きかけており、1月21日に行われる映画ペンクラ ブ例会での上映にも協力させてもらった。今後も一般公開に 向けて微力ながら協力させてもらうつもりだ。 以上、近況報告も兼ねて書かせてもらった。
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