井口健二のOn the Production
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2012年09月02日(日) スケッチ・オブ・ミヤーク、推理作家ポー、くろねこルーシー、火祭り、カハーニー、シャドー・チェイサー、みんなで一緒に、菖蒲、大奥2

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
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『スケッチ・オブ・ミヤーク』
ミュージシャンで、音楽プロデューサーでもある久保田麻琴
の原案・監修・出演により、沖縄県宮古島に伝承される古来
からの歌を記録したドキュメンタリー。
久保田は熊野古道を旅した時に伝承音楽に心を馳せ、同時に
宮古島の音楽について聞いたこともあって島を訪れる。そし
て島に伝承されてきた神を讃える歌に魅せられ、その記録を
始めることになる。
その歌は、以前は特別な神事の中だけで歌い継がれてきた。
そしてそれは、日本の圧政の許で誕生した当時の人々の魂の
叫びの意味も持つ。そんな歌が字幕付きで紹介される。
しかし島では歌を伝承する人も高齢となり、神事も途絶え、
その歌を伝承する機会も失われている。そんな中で、人伝て
に音楽を聞き出し、記録してゆく作業が続けられる。
そんな島と歌の関わりが、記録映像や古老たちの証言、そし
て感動的なコンサートの様子などと共に紹介される。
沖縄の人々と歌の繋がりでは、7月に沖縄本島が舞台の『歌
えマチグヮー』を紹介しているが、沖縄の人は本当に歌が好
きなようだ。
実は、個人的にも以前に勤めていた職場に沖縄出身の女性が
いて、彼女は宴会などで興が乗ると沖縄民謡を歌い踊ってく
れた。それはちょうど本作のクライマックスのような雰囲気
だった。そんなことも思い出させてくれた作品だ。

製作、監督、撮影、録音、編集は、大西功一。1991年と95年
にそれぞれ高田渡が出演する作品を発表しているが、本作は
16年ぶりの長編映画作品のようだ。
なお本作は、昨年のスイス・ロカルノ国際映画祭で「批評家
週間部門」に出品され、批評家週間賞と審査員スペシャルメ
ンションを受賞している。作品は歌と証言を綴っただけのも
のだが、その歌そのものに多大な価値のある作品だ。
作品には多数の宮古の歌手が登場するが、その殆どは80歳、
90歳の高齢で、その歌声が記録されただけでも貴重な作品。
中に1人だけ登場する少年には、しっかり頑張れと声を掛け
たくなる。そんな感じの作品でもあった。


『推理作家ポー最後の5日間』“The Raven”
1849年10月7日に謎の死を遂げた近世アメリカの詩人で作家
のエドガー・アラン・ポー。その謎に包まれた最後の5日間
を描いた作品。
物語の舞台は、アメリカ東海岸の港町ボルティモア。詩人で
作家のポーは、自身の作家としての出発点でもあるその街に
戻ってくる。しかしそこでポーは以前のトラブルを抱えてい
るようだ。そんなボルティモアの街で殺人事件が起きる。
被害者は母娘、現場は扉に内側から鍵が掛けられ、窓は釘で
打ち付けられた密室。その現場を見た刑事フィールズは、直
ちにそれがポーの推理小説「モルグ街の殺人」であることに
気付く、そしてポーが現場に呼ばれるが…。
そのポーは、実はボルティモアには文芸評論の掲載と相愛の
女性エミリーとの結婚の許可を求めてやってきていた。とこ
ろが編集者からは次の推理小説を要望され、婚約者の父親に
は結婚は許可しないと言われてしまう。
そんな時、第2の殺人事件が起き、さらに舞踏会から婚約者
が誘拐される。それらは全てポーの小説を模倣したものだっ
た。こうして「落とし穴と振り子」「仮面舞踏会に死がやっ
てくる」などのシーンが次々に再現される中、ポーの最後の
5日間の謎が解明されてゆく。

出演は、2011年6月紹介『シャンハイ』などのジョン・キュ
ーザック、2011年9月紹介『三銃士』などのルーク・エヴァ
ンス、今年5月紹介『MIB3』などのアリス・イヴ。他に
『POTC』のケヴィン・マクナリー、『デンジャラス・ラ
ン』のブレンダン・グリースンらが脇を固めている。
脚本は、2006年3月紹介『バイバイ、ママ』などのハンナ・
シェイクスピアと、元俳優のベン・リヴィングストン。監督
は2006年2月紹介『Vフォー・ヴェンデッタ』などのジェー
ムズ・マクティーグが担当した。
ポーの死の謎については、すでにいくつもの論考もあるよう
だが、本作の物語はその中でも最も大胆な作品と言えるだろ
う。何しろポーが自らの作品に基づく模倣犯と戦うのだ。そ
してポーの名作の数々がそこで再現されるのも、映画ならで
は醍醐味だ。
ただし、劇中ではポーが詩人らしくセリフで韻を踏んでいる
など洒落たシーンもあるが、それがほとんど字幕に反映され
ていないのは残念だった。他にも台詞には、ニヤリとするも
のが散りばめられていたようだ。


『くろねこルーシー』
昨年5月紹介『犬飼さんちの犬』に続くおっさんとペットの
交流を描いたシリーズの新作。このシリーズは基本的にtvk
などのUHF局ネットで放送されているテレビドラマからの
派生作品となっているが、今回はちょっと捻ってある。
物語の主人公は、子供の頃の教えで黒猫に恐怖心を持つ中年
男性。彼は人生の節目で嫌なことがある前に黒猫と出会って
いた。そんな彼は占い師を生業としていたが、風采の上がら
ない彼の前にはほとんど客も来ない。
そんな彼の家の前で2匹の黒猫が産み落とされる。それは彼
には迷惑至極だが、心優しい彼には見捨ててはおけないもの
だ。そして否応なく2匹と暮らすようになった主人公に転機
が訪れる。
物語の流れはシリーズどの作品もほぼ同じようなものだが、
そこに幼気な仔猫の姿が挿入されることでペット好きには堪
らない作品になっている。
因に以前のプレス資料で、制作者たちは「ペットを可愛く撮
ることはしない」とのコンセプトを掲げていたが、こればか
りはどうしようもない。本作もそんな感じだ。

主演は、2008年8月紹介『ハンサム★スーツ』などの塚地武
雅。意外と単独主演は始めてだそうだ。他に、安めぐみ、大
政絢、濱田マリ、生瀬勝久、佐戸井けん太、住田隆、つみき
みほ、それに山本耕史、京野ことみらが脇を固めている。
それに黒猫は、ジャックと、スモーク&モア、クマ&オハギ
の5匹によって演じられているが、この内のジャックは、大
河ドラマ「平清盛」にも出演のタレント猫だそうだ。

監督は『犬飼さんちの犬』などの亀井亨、企画と脚本も『犬
飼さんちの犬』などの永森裕二が担当している。
黒猫が前を横切ると悪いことが起きる、という迷信に関して
は、僕はテックス・アヴェリーの無茶苦茶なアニメーション
“Bad Luck Blackie”を思い出す世代だが、監督たちはどう
なのだろう。それで、魔女の遣い何ていう説明がつけられて
いるのだろうが、それだと『魔女の宅急便』のキキも思い出
してしまう訳で、なかなか難しいものだ。
でもまあ、そんな昔話もできるのはそれなりに楽しいもの。
今回はテレビシリーズとの関係も少し捻ってあったようで、
こんな感じでこれからも続けていって欲しいシリーズとは言
えそうだ。


『火祭り』“چهارشنبه ‌سوری”
9月14日〜23日に福岡で開催される「アジアフォーカス・福
岡国際映画祭」で上映される作品の1本。
今年6月紹介『これは映画ではない』でも描かれていたイス
ラム暦の大晦日(西暦では3月20日前後のようだ)に行われ
るイランの火祭りを背景にした物語。
主人公は結婚を控えた若い女性。彼女は結婚資金を得るため
に日雇いのハウスキーパーに応募し、とあるアパートにやっ
てくる。ところが行くべき部屋のインターホンが故障で、や
むなくお隣から電話を入れてもらう。
そして訪問したのは部屋の片付けが全く出来ていない夫妻の
部屋。その部屋で仕事を続けて行く内、彼女は徐々に夫婦の
問題に関って行くことになる。それは主人の浮気に原因があ
るようだった。
その日は大晦日、町では火祭の爆竹が鳴り響き、道路には焚
き火がそこかしこに燃え盛っている。そして人々は明日から
の正月休暇の旅行に思いを馳せているが…。主人公だけが知
る秘密が、彼女を思い悩ませる。
イスラム原理主義が幅を利かせ、主人公もチャドルをしなけ
れば街を歩けない。そんな風土の中で男尊女卑や女性の地位
向上など、いろいろな側面がシリアスやユーモアを巧みに織
り交ぜて描かれている。

今年2月紹介しアカデミー賞外国語映画賞に輝いた『別離』
のアスガー・ファルハディ監督による2006年作品。受賞作と
同様のイスラム国家の今が描かれている。しかも本作では、
物語の展開を1日に限定しているところも面白かった。


『カハーニー/物語』“कहानी”
9月14日〜23日に福岡で開催される「アジアフォーカス・福
岡国際映画祭」で上映される作品の1本。
プロローグはコルカタの地下鉄で起きた無差別テロ。そして
2年後。そのコルカタの空港に臨月を思わせるお腹を抱えた
女性が降り立つところから物語は開幕する。彼女は1ヶ月前
に現地に赴任し、音信の途絶えた夫を捜しに来ていた。
ところが夫が勤務していたはずの会社には在籍の痕跡すらな
く。警察に行っても全く手がかりは得られない。そこで彼女
は、夫が宿泊していたはずの下町のホテルに居を構え、彼女
に親切にしてくれる警官と共に捜査を開始する。
彼女の持つ唯一の手段は、夫と彼女を写した1枚のスナップ
写真。その写真からは夫がある事件の容疑者に似ていること
が判明する。しかしそこには巨大な陰謀が隠されていた。そ
して彼女の接触した人物が次々に殺され始める。
インド映画ではあるけれど歌も踊りもない作品。しかし2時
間3分の上映時間では、たっぷりとしたミステリーとサスペ
ンスが描かれる。しかも構成が緻密で、最後に全ての謎がぴ
たりと収まるのには、久々に醍醐味も感じられた。
因に原題はヒンディ語で「物語」そのものだそうで、正しく
そう言う感じの「お話」が展開されるものだ。

脚本と監督はスジョイ・ゴーシュ。2009年の“Aladin”とい
う作品ではインドのアカデミー賞で3賞を受賞したようで、
今年公開の本作でも受賞が期待できそうだ。
        *         *
 なお「アジアフォーカス・福岡国際映画祭」では、この他
にアジア作品17本と、ファルハディ監督作品は全作5本、さ
らにその他の作品が上映される。中には『時空の扉』という
中国製のタイムトラヴェル物もあるようで、これらの作品が
東京でも一般に見られることを期待したい。

『シャドー・チェイサー』“The Cold Light of Day”
ブルース・ウィリス、シガニー・ウィーヴァーの共演による
アクション・ミステリー。
主人公はアメリカ人の青年。彼は自ら経営する会社から休暇
を取り、大使館勤務の父親の関係でスペインで暮らす両親の
許を訪れる。そこには弟とその恋人も来ていた。そんな主人
公と父親の間には確執もあるようだ。
それでも5人揃って父の操縦するヨットで沖に出ていた時、
主人公のミスで弟の恋人が負傷してしまう。そこで主人公は
単身で薬を買いに海岸に泳ぎ渡るのだが、彼が海岸に戻った
とき、沖に停泊していたはずのヨットが消えていた。
そして、現れた父親は主人公に緊急事態を告げ、彼に協力を
求めるが…。それは彼を、国際テロ集団も絡む陰謀に巻き込
んで行くことになる。

主演は、2011年11月紹介『インモータルズ』などのヘンリー
・カヴィル。他に、スペイン・マドリード生まれで、2009年
ヨーロッパ映画でシューティング・スターの1人に選ばれた
ヴェロニカ・エチェギ。彼女は初の英語作品となる。そして
2011年7月紹介『この愛のために撃て』などのロシュディ・
ゼムらが脇を固めている。
監督は、2008年11月紹介『その男ヴァン・ダム』などのマブ
ル・エル・メクリ。脚本は、2009年11月紹介『監獄島』では
監督、脚本も務めていたスコット・ワイパーと、テレビシリ
ーズを数多く手掛けるジョン・ペトロ。製作は今年8月紹介
『デンジャラス・ラン』などのトレヴァー・メイシーとマー
ク・D・エヴァンスが担当している。
物語は、かなり荒唐無稽ではあるのだけれど、結構細かいと
ころにまで気が使われていて、それは丁寧に作られた作品だ
った。また結末は今のアメリカ映画にしては大胆で、どちら
かというとヨーロッパ映画の雰囲気になっている。
因に映画の国籍は、データベースではアメリカ=スペインの
合作となっているが、公開はヨーロッパが先行で、アメリカ
では9月7日から限定公開と告知されている。そうした方が
良いかなと思わせる面もある作品だ。
そして映画は、マドリードの太陽の門やラス・ベンタス闘牛
場、マイヨール広場、さらにバレンシア州の海岸や港町など
美しいスペインの風景も楽しめる作品にもなっている。


『みんなで一緒に暮らしたら』
“Et si on vivait tous ensemble?”
ジェーン・フォンダ、ジェラルディン・チャップリンの共演
で、老境を迎えた男女の姿を描いた作品。
登場するのはアルベールとジャンヌ、ジャンとアニーの2組
の夫婦と1人者のクロード。5人は40年来の友人同士で、そ
んな彼らがアニー夫妻の家に、クロードの75歳の誕生祝いに
集まっている。
そして彼らはワインなどで乾杯するのだが、一抹の不安は最
近クロードが心臓発作で倒れたことだ。そのクロードは無類
の女好きで、そんな行動を心配する息子は父親を老人ホーム
に入れることを画策している。
一方、ジャンヌは病院での検査結果から自分の余命が短いこ
とを知るが、最近痴呆気味の夫アルベールには、検査結果は
問題なかったと答えてしまう。またジャンは、長年続けてき
たNPOの活動を高齢を理由に断られたと憤っていた。
そしてクロードが若い女性とのデート中に倒れ、息子に老人
ホームに入れられてしまう。それを見舞った友人たちは、彼
を脱走させ、アニー夫妻の家で共同生活を始めることにする
が…。そこには思い掛け無い落とし穴も待っていた。

1972年『コールガール』と1978年『帰郷』で2度のオスカー
主演女優賞に輝くフォンダは、1972年『万事快調』以来のフ
ランス映画出演だそうだが、その前には当時夫だったロジェ
・ヴァディム監督の1968年作品『バーバレラ』にも主演して
いたものだ。
またチャップリンは、最近では2006年2月紹介『ブラッドレ
イン』や2010年2月紹介『ウルフマン』などにも出演してい
たが、2008年9月紹介『永遠の子供たち』ではスペイン俳優
組合賞を受賞したそうだ。
他には、2009年7月紹介『幸せはシャンソニア劇場から』な
どのピエール・リシャール、2003年10月紹介『ミッション・
クレオパトラ』などのクロード・リッシュ、2009年2月紹介
『ミーシャ/ホロコーストと白い狼』などのギイ・ドブス、
それに今年7月紹介『セブン・デイズ・イン・ハバナ』など
のダニエル・ブリュールらが共演している。
自分もそういう年代に差し掛かってきて、老いを迎えること
の難しさはだんだん身近にも迫ってきている。恐らく映画に
も、これからこういう作品は増えてくるのだろうが、映画で
それを学ばせて貰えるのも有難いことだ。


『菖蒲』“Tatarak”
ポーランドの名匠アンジェイ・ワイダ監督による2009年の作
品。「尼僧ヨアンナ」の原作者ヤロスワフ・イヴァシュキェ
ヴィッチの短編に基づく本作は、2011年ベルリン国際映画祭
での受賞も果たしている。
映画は3重の構造を持っている。その1つ目はプロローグに
もなっている女優クリスティナ・ヤングのモノローグ。2つ
目は短編小説「菖蒲」を映画化したドラマの部分。3つ目は
そのドラマの撮影風景。そして映画では、表裏となる人の生
と死を見つめた物語が描き尽くされる。
原作に基づくドラマは、ポーランドの小さな町での物語。主
人公はその町で開業する医師の妻。最近妻の体調が優れない
ことを心配した医師は自ら妻を診察し、その余命が短いこと
を知る。しかし医師はそのことを妻に告げられない。
そんな彼女は船着場のカフェで1人の青年に目を惹かれる。
その青年には恋人がいたが、次の日、主人公は青年に声を掛
け、恋人に対する彼の不満などを聞いてしまう。こうして青
年と付き合い始めた主人公は、彼の中に自分の失った生命の
輝きを見い出すが…
ドラマのクライマックスの撮影の時、女優はそのシーンに自
らの体験を重ね合わせて動揺し、現場を逃げ出してしまう。
ドラマにも主演したクリスティナ・ヤングは、夫でワイダの
長年の撮影監督でもあったエドヴァルト・クウォシンスキを
病で亡くしたばかりで、映画はそんな女優の心情も反映した
作品になっている。
そしてドラマには、原作には描かれていないワイダには永遠
のテーマである別の死の物語なども織り込んで、死とそこに
残されたものの姿を描き切っている。

主演のヤングは、ワイダ監督の『大理石の男』『鉄の男』な
どにも出演。青年役のパヴェウ・シャイダはニューヨークの
舞台にも立つポーランド系アメリカ人。主人公の夫役のヤン
・エングレルトは、ワイダ監督の『地下水道』や『カティン
の森』などにも出演している。
また本作の撮影監督は、今年1月紹介『おとなのけんか』や
2011年7月紹介『ゴーストライター』などロマン・ポランス
キ監督作品も手掛けるパヴェウ・エデルマンが担当した。
かなり凝った構成の作品だが、映画を観ているときは解り易
く。さすが名匠の作品という感じだった。


『大奥〜永遠〜』
2010年9月紹介『大奥』でスタートしたよしながふみ原作・
シリーズの第2作。前作は八代将軍吉宗の時代を描いたが、
今回は五代将軍綱吉の時代。ただし本作の公開前にテレビで
三代将軍家光の時代を描いた作品も放送されるようだ。
そして本作の物語は、男女逆転=女将軍に仕える大奥3000人
の男たちが織り成す。そこに今回登場するのは、京都の公家
出身の右衛門佐。彼は御台所・信平の指金で大奥に来るのだ
が、その時の大奥は綱吉の父である桂昌院と御台所の対立に
揺れていた。
というのも、綱吉と正室である御台所の間には子がなく、桂
昌院の側近の伝兵衛が世継ぎとなる松姫を設けていた。そこ
で右衛門佐には新たな世継ぎの必要も説かれていたが…。や
がて松姫が病死し、綱吉の乱心のによる悪政が開始される。
そしてその陰で、右衛門佐は虎視眈々と自らの地位を向上さ
せる機会を狙っていた。
綱吉は犬公方とも呼ばれる「生類憐みの令」などの悪政で有
名だが、その原因や本人の心情などが描かれる。それは勿論
男女逆転の設定なので史実とは異なったものになるが、本作
ではそこに見事なフィクションが展開されるものだ。
いやあ、それにしても男女逆転という発想だけでここまで物
語がドラマティックになるとは、このアイデアにますます脱
帽したくなる作品だった。

出演は、菅野美穂、堺雅人。他に尾野真千子、西田敏行、要
潤、宮藤官九郎、柄本佑らが脇を固めている。
監督は前作『大奥』も手掛けた金子文紀。監督はテレビ版の
『大奥〜誕生〜』も担当している。そして脚本は、昨年12月
紹介『ウタヒメ』などの神山由美子が担当。神山もテレビ版
を担当している。
なおテレビ版の出演は多部未華子。そして相手役には堺雅人
が続けて出演する。因に堺の役柄は原作にも瓜二つと書かれ
ているそうで、性格的には正反対とされる2役を堺は演じて
いるようだ。


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井口健二