| 2012年06月10日(日) |
フランス映画祭2012、農家の嫁/ちょっとエッチな生活体験/セカンドバージンの女、王様とボク、シャーク・ナイト、ただ君だけ、工事中 |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※ ※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※ ※方は左クリックドラッグで反転してください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 「20thアニバーサリー/フランス映画祭2012」 6月21日〜24日に有楽町朝日ホールほかで開催される映画祭 の上映作品はすでに何本か紹介しているが、全部で12本もあ るので残りは纏めて紹介させて貰う。 『A HAPPY EVENT(仮)』“Un heureux événement” 2010年4月紹介『アデル』でヒロインを演じたルイーズ・ブ ルゴワンの主演による女性にとって一番ハッピーであるはず の出来事を描いた作品。 僕は約30年前、妻の出産に立ち会うために「お産の学校」に 通ったのが学歴の最後になるものだが、その経験を踏まえる と、出産という一大イヴェントが実に巧みに描かれた作品だ った。恐らく経験のある女性なら納得してみられる作品だろ う。 ただ、多少ネガティヴなのが男性の僕としては気になったと ころで、女性の目ではどうなのかその辺は僕には不明なとこ ろだ。 なお映画では、主人公が映画ファンで様々なDVDのタイト ルが登場してその蘊蓄が語られたり、またカップルがテレビ を観ているシーンでは『宇宙大作戦』の巻頭ナレーションが フランス語で聞けるのも、マニアとしては面白かった。 (2012年冬公開予定)
『プレイヤー』“Les infidèles” 今年2月紹介『アーティスト』でオスカーに輝いたジャン・ デュジャルダンが、自らの原案で主演、共同監督、製作、脚 本も務めた作品。 映画ではデュジャルダン扮するお調子者プレイボーイの、正 直に言って僕の目からはかなり退いてしまう放蕩生活が描か れる。ただそれが若い男性には憧れかも知れず、その辺はい い加減親父になってしまった僕には理解の外のものだった感 じだ。 なお作品は、デュジャルダンや共演者でもあるジル・ルルー シュを含む7人の監督によるオムニバスになっていて、それ が様々なシチュエーションでのどたばたを描き出す。そのど たばたが楽しめる観客には、これも良い作品だろう。 (6月23日から一般公開)
『スリープレス・ナイト』“Nuit blanche” 昨年トロント映画祭で絶賛され、ハリウッド・リメイクも決 定しているというアクション作品。 主人公は、同僚と組んでマフィアの麻薬を強奪した刑事。し かしそれがばれ息子が拉致される。その息子を取り戻すため 彼はマフィアのアジトの巨大ナイトクラブに乗り込むが…。 そこに彼の行動を怪しんだ別の刑事たちも乗り込んでくる。 こうして巨大クラブ内の限定された空間を舞台に、眠れぬ一 夜のノンストップ・アクションが展開される。フランス映画 らしいと感じさせる部分もある作品で、ハリウッドがそれを どう料理するかも楽しみだ。(2012年9月公開予定)
『ミステリーズ・オブ・リスボン』“Mystères de Lisbonne” 19世紀ポルトガルの人気作家カミロ・カステロ・ブランコの 原作を、昨年70歳で亡くなったラウル・ルイス監督が映画化 した上映時間267分の作品。本作にはルイ・デリュック賞作 品賞も授与された。 主人公は孤児院で暮らす少年。名前だけで苗字を持たない少 年は神父に両親のことを尋ねる。そこで神父は裕福な侯爵夫 人を少年に引き合わせるが…。嫉妬深い夫の侯爵は、妻に別 の男児がいると知るや無法者を雇い、子供とその父親の殺害 に向かわせる。 こうしてポルトガル、フランス、イタリア、ブラジルを舞台 にした壮大な冒険の物語が展開されて行くが… 元々は1時間6回のミニシリーズで製作された作品だが、そ れが物語のアブリッジなしに4時間半の作品として再編集さ れているようだ。余りにたっぷりとした作品だが、物語は堪 能できる。(今秋公開予定)
『愛について、ある土曜日の面会室』 “Qu'un seul tienne et les autres suivront” 毎週土曜日は刑務所の面会日。その面会室には様々な人が受 刑者に会いに訪れる。その中から3人の男女の物語が描かれ る。 その1人目は、女子サッカーのチームに所属する少女。彼女 は練習帰りに出会った若者と親しくなるが、その若者が刑務 所に入ってしまう。しかし未成年の彼女は面会を申請するこ とができず、やむなく町で出会った男性に助けを求めるが… 2人目は、アルジェリア人の女性。息子がフランスで殺害さ れ、その原因を探るためにフランスに入国する。しかし刑務 所にいる犯人に被害者の母親が面会する術はない。そこで彼 女が採った行動は… そして3人目は、最近は何をやっても上手く行かない青年。 彼は偶然出会った男性からある仕事を依頼され刑務所に向か う。それは彼に一攫千金の金をもたらすものだったが…。 これら3つの物語の交錯のさせ方も見事で、映画を堪能させ てくれた。 なお脚本と監督は1981年生まれのレア・フェネール。過去に は4本の短編を発表し、本作が長編デビュー作だが、本作で ルイ・デリュック賞新人監督賞を受賞している。 (2012年冬公開予定)
『私たちの宣戦布告』“La guerre est déclarée” 主演・監督のヴァレリー・ドンゼッリと共演のジェレミー・ エルカイム。実生活でも以前は夫婦だったという2人の実体 験に基づく作品。 愛し合って結婚した2人の間に誕生した子供。しかしその子 供の成長には何処かおかしいところがあった。そこで医師が 行った精密検査の結果は、ラブロイド腫瘍という難病。そし てその難病は外科手術も可能だが、その手術の成功率は10% と説明される。 子供の難病というのは親にとってこれほど辛いものはない。 そんな辛い状況を実際に当事者であった俳優たちが自ら演じ ている。これはある意味究極の作品と言えるのだ。そしてそ の状況は確かにそうなのだろうと思わせるものであり、リア ルだった。(今秋公開予定)
『アーネストとセレスティーヌ』“Ernest et Célestine” 2000年に他界したベルギーの絵本作家ガブリエル・ヴァンサ ン原作「くまのアーネストおじさん」シリーズからのアニメ ーション映画化。 くまのアーネストとこねずみのセレスティーヌ。2人の出会 いなどが、詩情とアクションもたっぷりに描かれている。 セレスティーヌは全寮制の歯科学校に暮らすお絵描きの好き な女の子。寮長は毎夜恐ろしい腹ぺこくまの話をするが、彼 女自身はくまと友達になれると信じている。そんな彼女はあ る日、義歯にするためのくまの歯を探しにくまの町に出かけ るが… 一方、アーネストはお腹が空いて堪らない。そこで町に出て お金や食べ物を恵んで貰おうとするが、なかなかうまく行か ない。そしてゴミ缶を漁っていたアーネストは、缶に閉じ込 められていたセレスティーヌを発見する。 しかしその出会いは、2人に飛んでもない冒険を招くことに なってしまう。 原作のシリーズは全20巻+番外編1冊に及ぶものだが、2人 の出会いについてはその最終巻と番外編だけで触れられてい るようだ。その原作を僕は手にしていないが、その出会いは セレスティーヌが乳児の時とされているようで、本作とは少 しニュアンスが違う。 従って本作の物語はオリジナルのものなのかも知れないが、 くまのアーネストの優しさとセレスティーヌの可愛らしさは 存分に味わえる作品になっていた。しかも作品には数々の実 験的なシーンも盛り込まれて、これは原作を知らない観客に も楽しめるものになっている。 監督は、2009年“Panique au village”でオースティン・フ ァンタスティック・フェストのアニメーション賞など数々の 受賞に輝くステファン・オビエとヴァンサン・パタール、そ れに2008年“La queue de la souris”でカートゥーン・フ ォーラム・ヨーロッパのグランプリを受賞したパンジャマン ・ルネールが参加している。 優しさで一杯のアーネストと、ちょっとおしゃまなセレステ ィーヌの絶妙の掛け合いが、暖かく観客を包み込んでくれる ような作品で、そこに冒険やアクションもあり、正に珠玉の アニメーションと呼べる作品だ。 なお本作は、フランス映画祭で特別上映されるもので、試写 の時点では一般公開は決まっていないが、試写会場には各社 の配給担当者が訪れ、日本での一般公開の可能性が出てきて いるようだ。
『農家の嫁−三十五歳、スカートの風』 『ちょっとエッチな生活体験−接吻5秒前』 『セカンドバージンの女−通り雨』 「Love and Eros CINEMA COLLECTION 2nd “summer”」と題 されたシリーズで公開される3作品。因にこのシリーズでは 2010年に6作品が公開されており、2012年は今後に秋、冬、 春と3本ずつ計12作品が予定されているそうだ。 1本目は、農家に嫁いだ女性が主人公。若い頃にはアイドル にも憧れていた彼女は、平凡な生活から脱却しようと「モー ニング娘。」の募集ポスターの貼られたダンス教室に通い始 める。そんな彼女に1次合格の通知が届き、一躍東京を目指 す冒険の旅が始まるが…。 監督は、今年2月紹介『寒冷前線コンダクター』などの金田 敬。主演は、2008年2月紹介『泪壺』などの嘉門洋子。他に 2012年『テルマエ・ロマエ』に出演の勝矢、2011年8月紹介 『タナトス』などの吉岡睦雄らが脇を固めている。 2本目は、一見男と見間違うようなボーイッシュな女の子が 主人公。上京してすぐにバックを盗まれ、無一文の彼女は公 園で遅刻した少年モデルと間違われる。そして強引に仕事を させられた彼女は才能を見せ、次の仕事も依頼されるが…。 それは彼女が少年として生きることだった。 監督は、1999年ピンク大賞ベストテンで第1位を獲得してい る田尻裕司。主演は元日テレフォトジェニックの浜田翔子。 他に2009年8月紹介『ちゃんと伝える』などの笠原秀幸。さ らに緒川凛、中村有志らが脇を固めている。 3本目は、弁護士の妻だったがレイプに遭い生活が一変して しまった女性と、常に優秀な兄と比較されてまともな生活を 送れない若者。そんな2人が出会い、新しい何かが始まろう とするが… 監督は、2010年7月紹介『花と蛇3』などの成田裕介。主演 はAV女優の丸純子。共演は2009年『ワカラナイ』などの小 林優斗。他に今年2月紹介『寒冷前線コンダクター』などの 宮川一朗太らが脇を固めている。 3作はポルノではないが女優はちゃんと脱いでいるし、演技 力も無い訳ではない。従ってそれなりに落ち着いてみること のできる作品だった。 その3本の中では2本目が女優も可愛くてよかったかな。 3本目も物語にちょっと捻りがあってそれなりに観られた。 それに比べると1本目はもう少し捻りが欲しかったかな。で もまあ何れもそれなりと言える作品で、残り9本にも期待し たいものだ。
『王様とボク』 1992年に刊行されたやまだないと原作コミックスの映画化。 大人になりたくない若者たちの切ない青春が描かれる。 物語は主人公の誕生パーティから始まる。そのパーティは主 人公の幼い時からの友人の家で開かれており、そこに恋人と 共に来ていた主人公は、モリオという名前を何度も叫んでい たようだ。 そしてシーンは、6歳の時から昏睡状態が続いていた少年が 12年ぶりに目を覚ましたというニュース報道に続いて行く。 その少年こそが主人公の叫んでいたモリオらしいのだ。そし てその少年のいる病院を恋人と共に訪ねた主人公は… 出演は、2009年『侍戦隊シンケンジャー』などの松坂桃梨、 2011年2月紹介『高校デビュー』2009年『仮面ライダーW』 などの菅田将暉、2011年10月紹介『指輪をはめたい』などの 二階堂ふみ。そして2008年2月紹介『カフェ代官山』などの 相葉裕樹。 他に、松田美由紀、舞台『銀河英雄伝説』などの中河内雅貴 らが脇を固めている。なお相葉は昨年改名したようだが、以 前のちょっとチャライ感じが消えて、少し陰のある役どころ をしっかり演じていた。 脚本と監督は、2011年6月紹介『極道めし』などの前田哲。 なお脚本には原作者のやまだないとも名前を連ねている。 主題は最初にも書いたように、大人になりたくない若者たち の精神状態を描くもので、そこに6歳のまま精神的な成長の 無い幼馴染みが出現して、その中での若者たちの葛藤が描か れて行く感じのものだ。 しかしそれが映画としてあまり巧みには描かれていない感じ がした。それは特に主人公と目覚めたモリオとの交流があま り深くは描かれていないこともあり、全体に中途半端な感じ になる。さらに将来への展望が得られないことも不満には感 じられた。 それは原作による部分も多いようで、原作者はそれで納得し ているのかも知れないが、何処か自己満足に終ってしまって いる感じもする。確かに未来に展望の無い現代では、この結 末も仕方ないのかも知れないが…。後は観客に委ねると言い たいのだろうか。
『シャーク・ナイト』“Shark Night 3D” 2006年5月紹介『ポセイドン』や2005年開始『ホステル』シ リーズなどの製作者クリス・ブリッグスと、2009年9月紹介 『ファイナル・デッドサーキット』などのデイヴィッド・R ・エリス監督が組んだホラー・サスペンス。 なお本作の試写は2Dで行われたが、上映のスクリーンには しっかりと上記の原題が表示されたものだ。 物語の舞台はアメリカ南部のとある湖。人里離れたその湖畔 に建つ別荘に主人公のサラと大学の仲間たちがやってくる。 その別荘はサラの一家のものだったが、彼女自身は3年間そ こを訪れていなかった。 しかし、目の前に広がる湖の景色は訪れた男女が恋を語り合 うには絶好の場所。こうして思い思いにヴァカンスを楽しみ 始めた仲間たちだったが…。突如、彼らを湖にはいるはずの 無いサメが襲い始める。 ということで、プロローグは『ジョーズ』を思い出させる情 景に始まって、その後は次々に襲い掛かるサメの恐怖が描か れる。しかもそれが、パニックではなくホラーとして描かれ ている作品だ。 主演は、2008年“Superhero Movie”のサラ・パクストン。 他にもウェス・クレイヴン製作の“The Last House on the Left”など、顔に似合わずジャンル映画が好きな女優のよう だ。 共演者には、2007年5月紹介『ゴースト・ハウス』などのダ スティン・ミリガン、2009年“The Butterfly Effect 3”に 主演のクリス・カーマックらが名を連ねている。またサメの 操演とVFXは1997年『アナコンダ』などのウォルト・コン ティが手掛けた。 携帯電話が圏外なのはともかく、固定電話や無線設備もない 別荘という設定は多少無理がある感じだが、それ以外の人間 模様などはそれなりに有りそうという感じだし、特に主人公 たちがいかに反撃するか…という辺りの興味もうまく作られ ていた。 それと今回は2Dでしか観られていないが、2009年作品でも 3Dを体験済みのエリス監督の演出はかなり物が飛び散って いる感じで、これは3Dでも楽しみたくなったものだ。
『ただ君だけ』“오직 그대만” 2005年1月紹介『スパイダー・フォレスト』などのソン・イ ルゴン監督が、2007年12月紹介『アドリブ・ナイト』のハン ・ヒョウンジと、2009年1月紹介『映画は映画だ』のソ・ジ ソブの共演で描いたラヴストーリー。 主人公は一時は将来を属望された元ボクサー。しかし彼は、 今では夢を捨てミネラルウォーター配達のアルバイトで暮ら している。そんな男が夜間の駐車場の管理人の仕事を始めた 日、管理室に1人の女性が現れる。 彼女は前の管理人の知り合いだったが、盲目で管理人が替っ たのも知らずに入り込んだのだ。こうしてその女性と言葉を 交わすようになった主人公は、彼女のためにまた夢を観るこ とを考えるが…。ある事実が彼を危険な道へと駆り立ててし まう。 チャールズ・チャップリンの1931年の名作『街の灯』をモテ ィーフにしたという切なくも暖かい物語が展開される。 監督の以前の作品の紹介文の中で、僕は「監督は生真面目な 人なのだろう」というようなことを書いていた。それがその 作品の時は多少物足りなくも感じられたものだが、本作では それが良い方に作用している感じがした。 そのため本作は間違いなしの純愛ラヴストーリーなのだが、 そこに一本筋が通っている、そんなリアリティに溢れる作品 に仕上げられていた。しかも『街の灯』を実に巧みに現代の ソウルを舞台に描いているものだ。 そして共演者の中で、主人公が闘う相手役には2006年ヘヴィ 級チャンピオンのウィ・スンペが登場し、またヒロインの同 僚役では実際に視覚障害を持つ俳優が出演してヒロインの演 技の手助けなどもしているそうだ。 他にカン・サンイル、パク・チョルミン、オ・クァンノク、 さらに韓国で「美しい中年」と呼ばれるチョ・ソンハが普段 とは違った役柄で共演している。 また撮影には、2009年8月紹介『母なる証明』などのホン・ クンピョ撮影監督とチェ・チョルス照明監督が参加。シーン ごとに見事な映像を作りあげている。 その他に今年1月紹介『超能力者』などのクァク・ジェヨン とファン・ヒョンギュンが特殊メイクを担当し、同じく『超 能力者』のチョン・ドアンが物語のキーとなるアクションの VFXを担当して、物語のリアリティを高めている。
『工事中』“En construcción” 2010年5月紹介『シルビアのいる街で』などのスペインの名 匠ホセ・ルイス・ゲリン監督の作品8本を揃えた映画祭が、 6月30日より渋谷のシアターイメージフォーラムで開催され ることになり、2001年製作の本作の試写が行われた。 作品は、バルセロナ郊外で進められる大規模再開発の様子を 数年に渡り記録したもので、その工事現場に隣接して暮らす 人々の生活や工事に携わる職人たちの仕事ぶり、さらに入居 してくる人たちの様子などが記録されている。 ゲリン監督のドキュメンタリー作品は、2009年10月20日付で 『イニスフリー』という作品を紹介しているが、本作もその 時と同じで何か監督の製作意図が掴み切れなかった。しかし 本作はゴヤ賞の最優秀ドキュメンタリー賞を受賞しており、 現地での評価は高いものだ。 それでの評価の理由を考えてみると、恐らくは工事の記録に 託けて人々の日常が描かれている点に注目ができそうで、そ の点では確かに巧みに作られている感じがした。ただし、以 前の紹介作と同じく老人の繰り言が続くのは多少退いてしま ったが。 その他、若い兵士と娼婦のシーンなどはヤラセを疑うが、こ こでは社会的な問題などを感じるべきなのだろう。しかし全 体的にその映像の意図などは僕には掴み切れなかった。もち ろん社会格差などが問題の根底に在ることは理解するが。 なお映画祭では、1983年の監督長編処女作『ベルタのモチー フ』、1997年『影の列車』、2007年『シルビアのいる街で』 の創作ノートともいえる同年『シルビアのいる街の写真』、 最新作の2010年『ゲスト』、2011年『メカス×ゲリン』も上 映される。 また映画祭に際してはゲリン監督が来日し、初日から3日間 は各作品の上映後に1回ずつ監督の解説トークも予定されて いるようだ。その後は4週間に渡って各週4本ずつ週替りで の上映が行われる。 因に、映画祭のチラシに掲載された蓮實重彦氏の文章による と、ゲリン監督の作品は「映画のあるかないかの核心へと見 るものを誘い込む」のだそうだ。確かにその通りでそれには 僕も納得するところだ。
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