井口健二のOn the Production
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2012年05月20日(日) LONE CHALLENGER、岸部町奇談、カイウラニ、グスコーブドリ、希望のシグナル、バルーンリレー、アイアン・スカイ、The Lady+DS記者会見

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
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『LONE CHALLENGER』
2008年開催の第10回インディーズムービー・フェスティバル
で、一般MOVIE部門のグランプリを受賞した林一嘉監督によ
る同年に企画された作品。作品は2010年には完成していたよ
うだが、3・11と類似する内容的な問題により公開が見送ら
れていた。
物語の背景は3・1と呼ばれる災害が発生して10年ほどが過
ぎた時代。その災害の情報はなぜか隠蔽され、人々の記憶か
らは消え去ろうとしていた。そんな時、若い女性の犯行と見
られる爆弾テロ事件が発生する。
それに対して軽薄なマスコミは事件をショウアップし、模倣
犯を演出して真犯人の女性をおびき出そうとするが…。その
一方で民間には犯行に理解を示す連中も現れ、そして地下で
は別の事件も進行していた。
映画の途中でマニアにはお馴染みの台詞が登場し、これはも
うあれしかないなと思っているとその通りだった。この辺は
マニアには嬉しいものだが、年配の評論家氏には唐突だった
ようで、監督に文句を言っている人もいたようだ。言っても
仕方ないが。
因に3・1の設定は3・11以前にすでにあったもののようだ
が、中での東日本大震災への言及は、元は阪神淡路だったも
のを台詞だけ吹き替えているそうだ。しかし3・1のメルト
ダウンを思わせる映像は当初からのもののようで、これには
感心した。

監督の林は、プロデューサー、脚本、撮影、編集、アクショ
ン指導、デザイン、造形、合成、エフェクトと出演も兼ねて
いる。共演は林由莉恵と、2009年6月紹介『吸血少女対少女
フランケン』などの乙黒エリ。なお林由莉恵はそこそこアク
ションもできるようだ。
お話はかなりのごった煮感覚でインディーズ映画の典型のよ
うな作品だが、それだけマニアックでもあり、その点では楽
しめた。また格闘技のシーンも楽しめるが、そこからの展開
は唐突と言えば唐突で、一般にはもう一言必要だったかな。
マニア的にはこれでOKだが。
ただ主人公の行動について監督は、秋葉原の通り魔事件にも
インスパイアされたと言っていたが、僕らの世代だと「大地
の牙」なども思い出される訳で、その辺には世代の違いも感
じられた。
それにしても3・11以前に、震災とメルトダウンを一つの物
語の中で描いているのは凄いことだ。

なお一般公開は6月2日から15日まで、東京下北沢南口にあ
るTOLLYWODという短編映画館(火曜定休日)で行われる。

『岸部町奇談〜探訪編〜』
上記の『LONE CHALLENGER』と共に公開される林一嘉監督の
最新作。
岸部町の高校に教育実習でやってきた美人先生を巡って、謎
が謎を呼ぶ怪奇な事件が発生する。その謎に挑むのは「怪奇
特別探偵」の2人。2人は謎を解明し、町に平和を取り戻す
ことはできるのか…
事件は3人の悪餓鬼が、ヴィデオカメラ片手に廃屋に肝試し
に行くところから始まる。しかしそのヴィデオカメラには、
肉眼では観えない飛んでもないものが写っていた。そこで、
「怪奇特別探偵」の登場となる。
しかし探偵たちの目にはさらに恐ろしいものが見えてくる。
そして2人の目が向けられたのは、教育実習で現れた美人先
生だった。誰もを魅き付ける不思議なオーラに包まれた彼女
の正体とは!?
物語は幾つかの時間軸を駆使したもので、その構成はかなり
凝ったものになっているが、物語の全体は解かり易く描かれ
ていた。しかもその物語はかなり切なさも漂う、良い感じの
ものが展開されていた。

出演は、2008年6月紹介『赤んぼ少女』などの水沢奈子と、
名古屋で活動しているモデルの横田亜美。なお本作で林監督
は、プロデューサー、脚本、撮影、照明監督、編集を兼ねて
いるが、出演は声だけのようだ。
作品は、元々は2010年に林監督が製作総指揮も務めて名古屋
市在住の監督たちによって制作されたオムニバス映画の一編
として林監督が手掛けた短編映画を基にしたもので、形とし
てはその続編になっている。
ただし、物語自体は独立したもので本編だけでも充分理解で
きたが…、本作を観ているとその「第1章」も観たくなって
くる。現在はオムニバスの関係でDVD化もされていないよ
うだが、何かの方法で観る機会を作って欲しいものだ。

さらに、本作の内容には続編も期待できるし、上記の『LONE
CHALLENGER』も含め、今後に期待の持てる監督を発見できた
感じがした。

『プリンセス・カイウラニ』“Princess Kaʻiulani”
アメリカ合衆国によるハワイ併合に関ったハワイ王朝最後の
プリンセスを巡る物語。
物語の発端は1889年、ホノルルのイオラニ宮殿に初めて電気
が引かれた夜。アメリカ人を中心とする反王制派が反乱を起
こし、混乱の中を脱出したカイウラニ王女は、スコットラン
ド人の父親と共にイギリスに渡る。
そのイギリスで、父親の友人のデイヴィーズ家に迎えられた
王女はやがて寄宿学校に入学するが、そこでは教師などから
の人種差別に直面することになる。そんな彼女を支えたのは
デイヴィーズ家の兄妹だった。そしていつしか王女はその兄
と愛し合うようになる。
その頃、ハワイでは王女の叔父である先王が死去し叔母がそ
の後を継いでいたが、その叔母は王女を王位継承者の第1位
に指名していた。そして外国の干渉に屈しない王朝に対して
合衆国は軍事行動を開始しようとしていた。
それに対して王女が採った行動は…
ハワイが合衆国によって暴力的に併合された事実は、1993年
にクリントン大統領が公式に謝罪するまで歴史に埋もれてい
たことのようだ。その際にカイウラニ王女は、イギリスを出
て各国を歴訪し援助を求めているが、その中には明治政府も
含まれる。
僕は、明治時代にハワイ王朝と日本の皇室の間で政略結婚の
話があったことは知っていたが、その背景がこのようであっ
たことは知らなかった。映画の中で日本との関係は描かれな
いが、王女が政略結婚も辞さないという発言は出ていたもの
だ。

出演は、2006年2月紹介『ニュー・ワールド』ではアメリカ
先住民の娘ポカホンタスを演じていたクリオンカ・キルヒャ
ー。南米インディオの血を引くが、ドイツ生まれでハワイで
育ったという女優に、演じた2つの役柄でのイギリスにおけ
る待遇の違いはどのように感じられただろうか。
他には2011年1月紹介『トゥルー・グリット』などのバリー
・ペッパー、2009年11月紹介『フォース・カインド』などの
ウィル・パットン。さらに2007年11月紹介『フローズン・タ
イム』などのショーン・エヴァンス、2005年3月紹介『ラヴ
ェンダーの咲く庭で』などのジミー・ユィールらが脇を固め
ている。
因に、原題の途中に入っている記号はハワイ語にある声門閉
鎖音で、Unicodeでは(&#×02bb;)となる。これは僕のPC
のWordは表示できなかったが、Excelでは書けたようだ。

『グスコーブドリの伝記』
1933年に37歳で亡くなった宮沢賢治がその死の前年に発表し
た短編童話のアニメーション映画化。その映画化に、監督・
脚本杉井ギサブロー、キャラクター原案ますむらひろしらの
1985年『銀河鉄道の夜』のスタッフが再結集した。
物語は、前半では山間の農作地を襲った冷害などによる飢饉
の様子が、口減らしや人身売買などの当時は実際に行われて
いたのであろう厳しい現実を思わせる展開も含めて、ややメ
ルヘンに描かれる。
また中盤では、てぐす工場やオリザ畑での出来事が描かれ、
主人公はイートハーブ市へと導かれる。さらに後半では、ク
ーポー博士との巡り合いや火山局での出来事が描かれ、主人
公の最後の決断へ続いて行く。
その物語は、主人公の行動に関してはほぼ原作の通りのもの
で、台詞なども原作に書かれたままのようだ。ただし、主人
公が観る風景などは原作に基づいてイマジネーション豊かに
描かれている。
そしてその映像は、原作にも描かれているクーポー博士の乗
物も含めてかなりファンタスティックな世界観のものになっ
ている。この辺には宮崎アニメを思わせる部分もあって、日
本のアニメファンが待望しているものだろう。
そんな世界観の中で、原作者の説く自己犠牲の精神が描かれ
て行く。それはもう原作者の描いた精神そのものだから、そ
れを変えることは許されないものだが…。ただ僕自身の個人
的には、それを容認することは難しかった。

声の出演は、主人公役に小栗旬。他に、忽那汐里、柄本明、
佐々木蔵之介、林家正蔵、林隆三、草刈民代らが脇を固めて
いる。
多少脚色された物語の監修には宮沢賢治研究者の天沢退二郎
が当り、総作画監督は『銀河鉄道の夜』も手掛けた江口摩吏
介、美術監督は『日本昔ばなし』などの阿部行夫、音楽はバ
ンドネオン奏者の小松亮太が担当。また主題歌には、小田和
正の「生まれ来る子供たちのために」がフィーチャーされて
いる。

『希望のシグナル』
秋田県で自殺防止活動に取り組む人々を追ったドキュメンタ
リー。因に秋田県は、2010年までの統計において15年連続の
日本で1番自殺率の高い県なのだそうだ。
その秋田県で自殺防止に取り組む人々の活動が描かれる。そ
こには、元は倒産した企業の経営者で倒産後には欝病になり
自殺も考えたという男性や、息子に自殺された母親などが登
場して、その人たちの自らの体験に基づいた活動が紹介され
ている。
その一方で精神障害者に対する差別などによる自殺問題にも
言及され、それらを包括して解決する道が検討されている。
そしてその活動の一環として公民館のような場所に開設され
たカフェの模様が紹介され、そこでの会話が自殺防止に役立
つと説明される。
ただし、それで本当に効果が上がっているのか否か、具体的
な数値などが示される訳ではない。しかしその活動が成果を
上げていることを祈りたくなる。そんな地道な活動の様子が
描かれている。
その活動が徐々に秋田県全域の連携ネットワークへと広がっ
て行く。それは行政やその他の機関をも巻き込んだものにも
なって行くが、そこでは宣言一つを採択するにも議論が必要
になるなど、創設者たちの思いと裏腹な現実も描かれる。
こうして秋田県全域での活動が進み始めた2011年3月11日。
震災による被害は秋田県では大きなものではなかったようだ
が、県はいち早く被災県からの避難者の受け入れを決め、そ
れを受けて被災者たちのケアも活動の中に組み入れられて行
くことになる。
そこでは予め整えられていた組織が力を発揮することになる
が、当然その間の本来の活動は制限されることになるはずの
ものだ。ただしその問題点は、敢えて本作では描かれていな
かった。

製作と監督は、1982年生まれ隣接岩手県在住の都鳥拓也・伸
也という双子の兄弟。すでに地元では社会問題を扱ったドキ
ュメンタリーの企画・製作を手掛け、ドキュメンタリーの上
映会なども催している兄弟が、今回は自らの手で監督と撮影
も務めている。
それから本作では、音声技術の確かさにも感心した。その整
音は日本映画大学の録音スタジオ管理も務める若林大介が担
当しているが、カフェでの騒音の中でのインタヴューなどで
も発言者の言葉が明瞭で、さすがプロの仕事と感じられた。
それにしても、このような活動を続けている人たちの姿には
本当に頭が下がる。それに比べたら自分のやっていることな
ど何の意味があるのかとも思ってしまうが、せめてこの作品
を通じてこの人たちの活動が世間に知られるように、紹介を
させて貰うものだ。

『バルーンリレー』
ユナイテッド・シネマ主催による若手育成プログラムD-MAP
で、2011年の第5回シネマプロットコンペティションに出品
された作品からの映画化。
主人公はバスケ部ではレギュラーポジションにいる女子中学
生のこずえ。そのこずえはある日、仲間と帰宅中に街路燈に
引っ掛かった赤い風船を発見する。そして通り掛かったサッ
カー部の男子に登って風船を取るように命じるのだが…
その男子は取ることを失敗した上にこずえの上に落下、彼女
は腕を負傷してレギュラーの座を逃してしまう。そんなこと
でもやもやしているこずえの目に、再び空を漂う赤い風船が
見つかる。そしてその後を追ったこずえは首尾良く風船を掴
まえることに成功。
しかしその風船に付けられていたSDカードを再生したこず
えは、思いも拠らない冒険に導かれることになる。
といってもVFX満載の大冒険というものではないが、日本
の女子中学生には等身大の、しかし決して尋常ではない冒険
が、次々現れる怪しい人物たちと共に、さらには決して真面
とは言えない発想の下で、繰り広げられて行くものだ。

出演は、「ネスレキットカット」のCMキャラクターで前回
紹介『スープ』にも出ていた刈谷友衣子、若手俳優集団D2
の大久保祥太郎。他に2011年10月紹介『ミツコ感覚』などの
古舘寛治、同年12月紹介『アフロ田中』などの美波。さらに
内田春菊、松金よね子らが脇を固めている。
脚本と監督は、2007年の函館港イルミナシオン映画祭のシナ
リオ公募でグランプリを受賞しているという藤村亨平。なお
本作は65分の作品だが、6月23日からの一般公開では同監督
による2011年の作品『逆転のシンデレラ』(25分)が併映さ
れるようだ。
最初の赤い風船が漂うシーンには、アルベール・ラモリス監
督の短編映画『赤い風船』を思い出した。そしてその後の展
開の中にも同作品に通じるものがあって、その点は監督にも
聞いてみたくなった。それはただの偶然にしても嬉しかった
ものだ。


『アイアン・スカイ』“Iron Sky”
フィンランド、ドイツ、オーストラリアの共同製作で、今年
2月のベルリン国際映画祭でプレミア上映された奇想天外な
SF映画。
時は2018年。大統領選挙を控えるアメリカ・ホワイトハウス
は、低落する人気の回復のため黒人飛行士を乗せた宇宙船を
46年ぶりに月に送り出す。しかし乗っていたのは訓練も受け
ていないただのモデルだった。
ところが月着陸も成功し、1人の飛行士が地平線の向こうを
覗いたとき、そこには巨大な鍵十字をあしらった軍事基地が
存在していた。そしてそこから現れたナチスの兵士に捕えら
れた黒人飛行士は、彼らが1945年に移住し今や地球再侵攻を
企んでいることを知る。
そこでナチスに洗脳された振りをして地球先遣隊に加わった
黒人飛行士は、何とか地球に舞い戻ることに成功するが…。
1950年にジョージ・パルが映画化した『月世界征服』の原作
とされるロバート・A・ハインラインの1947年作品『宇宙船
ガリレオ号』にも、ナチスによる月面基地の話があったと記
憶しているが、ナチスが月を目指していたというのは欧米で
は知られた話だ。
従って本作の設定は、欧米人にとってはそれほど奇想天外で
はないのかも知れない。しかしそこから後の展開は、それは
もうかなりの奇想天外と言えるものだ。しかもそこには名作
のパロディなども満載で、中では『博士の異常な愛情』が見
事に登場したのは嬉しかった。

出演者にあまり知られた俳優はいないようだが、中でナチス
将校役のゲッツ・オットーは2005年5月紹介『ヒトラー〜最
後の12日間〜』に出演、また黒人飛行士(モデル)を演じた
クリストファー・カービーは2010年9月紹介『デイブレイカ
ー』に出ていたようだ。
ヒロイン役はドイツのテレビを中心に活動しているユリア・
ディーツェ、さらに2010年12月5日付のニュースでも紹介し
た『ソウル・キッチン』のウド・キアーも出演していた。
原案は2004年のティプトリーJr.を受賞しているヨハンナ・
シニサロ。脚本は、1997年ハワード・スターン主演『プライ
ベート・パーツ』などのマイクル・カールスニコ。監督は、
2005年“Star Wreck: In the Pirkinning”が話題になった
ティモ・ヴォレンソラが担当している。
内容的にはかなりハチャメチャな作品だが、CGIを中心と
したVFXはそれなりの見所にもなっており、パロディも楽
しめるなどSF映画ファンにはお勧めの作品と言えそうだ。

『The Ladyひき裂かれた愛』“The Lady”
ビルマ民主化のシンボル=アンサウン・スー・チー女史の姿
を描いたリュック・ベソッン監督作品。監督は数年前に「も
う監督はしない」と宣言していたが、この作品は自ら監督を
熱望したそうだ。
始まりは1947年、ビルマの首都ラングーンの川縁に建つ邸宅
で、幼いスー・チーは両親と共に健やかに暮らしていた。と
ころがある日、父親であり「ビルマ独立の父」とも呼ばれる
アウンサウン将軍が暗殺されたとの報が飛び込んでくる。
そして物語は1988年、アジア研究者であるイギリス人の夫と
2人の息子と共にロンドンで暮らすスーチーの許に、母親の
看病のため帰国して欲しいという手紙が届けられる。こうし
てビルマに戻ったスーチーが見たのは、軍事政権の圧制に喘
ぐ民衆の姿だった。
そして学生や学者らによる反政府運動の高まりの中で、英雄
を父に持つスーチーは、何時しか運動のシンボルに祭り上げ
られて行くが、それは今までが学者の家の専業主婦だった女
性を過酷な運命に導いて行く。
試写状の邦題を見たときには、「ひき裂かれた愛」って何だ
ろうと考えてしまった。しかし映画には、実はプロローグが
あってVFXも使われたそのシーンで、ああその話なのかと
思い至った。
そして物語は、夫婦愛と2007年までのビルマの政治情勢を表
裏一体にして、巧みに見事に展開されて行く。

脚本は、BBCなどでドキュメンタリーを手掛けてきたレベ
ッカ・フレイン。その脚本の映画化を、マレーシア生まれで
2008年7月紹介『ハムナプトラ3』などのミシェル・ヨーが
自らの主演で企画してベッソンに提案したものだそうだ。
それにしてもヨーが演じるスーチーは、顔立ちなどもそっく
りで、妻であり母親であり、そして今も闘いを続けている歴
史的な人物が、それは見事に演じられていた。

共演は、2011年12月紹介『戦火の馬』などのデイヴィッド・
シューリス。2009年5月紹介『縞模様のパジャマの少年』な
ど脇役での印象の強い俳優だが、今回は図らずも歴史的な人
物になって行く妻を支える夫の姿を見事に演じていた。
映画の字幕では、ビルマの国名がダブルコーテーションで囲
まれていたが、背景となる国際情勢なども織り込まれて、今
も続いているビルマの情勢が解かり易く描かれた作品だ。
        *         *
 記者会見の報告を一つ。
 19日公開『ダーク・シャドウ』に関してティム・バートン
とジョニー・デップの会見が行われた。そこで質問はできな
かったが、興味の湧く発言があったので紹介しておく。
 まずは今回3Dにしなかった理由については、1970年代の
鮮やかな色彩とホラーのダークなイメージを描くのに、画面
の暗くなる3Dは適さないと判断したのだそうだ。
 それと映画の内容に関連して、未来に甦るとしたらどのよ
うな時代に行きたいかと訊かれ、バートンが冥王星に住める
時代と答えたのに対して、デップは「“The Jetsons”の時
代が良いな。家族の役をやってみたい」と発言。ハナ=バー
ベラのアニメーションで、実写映画化の企画は現在頓挫した
ままだが、デップが出演を希望すれば一気に実現…の可能性
も期待したいものだ。
 他にもいろいろあったが、それはまたの機会にしよう。


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井口健二