| 2012年04月01日(日) |
相馬看花、モバイルハウス、オレンジと太陽、キリマンジャロ、ブラック・ブレッド、コラボ・モンスターズ、ブラックパワー、赫い髪 |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※ ※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※ ※方は左クリックドラッグで反転してください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『相馬看花−第一部 奪われた土地の記憶』 2009年6月紹介『花と兵隊』や、今年1月紹介『311』に も同行していた松林要樹監督が、改めて福島原発災害の被災 地区で取材した作品。 作品は、2011年3月11日午後2時48分の東京世田谷にある監 督の自宅3畳間から始まり、4月3日、支援物資を運ぶ友人 のトラックに同乗して被災地に向かった監督によって取材が 開始される。 そこで監督は地元南相馬市の市議会議員を務める女性と知り 合い、警戒地区に指定された自宅近所のパトロールに向かう 女性議員に同行する。そこは津波も到達せず一見平穏そうに 見えるが、住民の居ない家の玄関が開いていたり、窓ガラス が破られている家もある。 そんな被災地の現状が描かれ、やがてそれは恐らく女性議員 の政治基盤であったのであろう仲間と開いた地元産品の直販 所を再訪する姿や、仲間の中で唯一亡くなった女性を追悼す る姿などに繋がって行く。 そして原発立地への歴史に踏み込み、そこでは太平洋戦争以 前に軍の飛行場が在ったという話や、その土地を何時の間に か西武の堤が手に入れ、原発の誘致に繋げていったという背 景なども語られる。 さらに、当時は原発反対を唱えると共産主義者と見做される という風潮から、反対運動が封じ込まれていった経緯や、当 時それによって職を得たという人々などが取材され、彼らが 一様に無念さを滲ませる姿などが写し出される。 その一方で監督は、実際に被災者の一員となって避難所暮ら しを開始し、彼らと寝食を共にしながら取材を続けて行く。 そこは多少「良いのか?」という感じはしたが、それでこそ 語られた部分も在ったようにも思えたものだ。 なお映画では他に、女性議員が結婚式を挙げたという「相馬 野馬追」にも関わる相馬小高神社の惨状や、その前に咲き誇 る桜の姿。さらに東京で逮捕者も出た「反原発」デモの様子 や「記者クラブ」に所属していない監督への取材不許可の状 況なども描かれている。 僕は、1月の『311』の紹介の最後で「福島原発に関して は再度取材すべし」と書いておいたが、それはちゃんとやっ てくれていたようだ。そして本作はまだその第1部。松林監 督は『花と兵隊』の時も取材に2年半以上を費やしたようだ が、今回はさらに長丁場の取材が続きそうだ。
『モバイルハウスのつくりかた』 2008年2月紹介『船、山にのぼる』などの本田孝義監督が、 「建てない建築家」と呼ばれているらしい早稲田大学建築学 科卒業の建築家坂口恭平の姿を追ったドキュメンタリー。 坂口は2004年に路上生活者の住居を写した写真集が評判にな り、その後の2009年には自らも多摩川の河川敷での生活を体 験しているそうだ。そして今回のモバイルハウスは、2010年 11月に建設を開始した。 総製作費は26,000円。室内は2畳ほどで床下に4個の車輪を 付けて移動可能にし、駐車場などに法律上の問題なく置くこ とができる。ただし実際の路上走行は問題が在るらしく、完 成品の移動にはトラックを使用していた。 さらにソーラーパネルと自動車用蓄電池を装備し、シガーラ イターを繋いでそこに接続可能な機器が使用できる。その接 続可能な機器には、照明器具はもちろんPCや携帯電話の充 電も可能なようだ。 という多摩川河川敷でのモバイルハウスの建設というか製作 の様子から、それを吉祥寺の駐車場に運搬して設置する様子 などが描かれている。 ただし、この運搬を行ったのは2011年3月12日だそうで、そ の被災地の様子などは判り始めている時期のようだが、建築 家はこのモバイルハウスの製作で得た知識を被災地に持って 行こうとはしない。 それどころか彼は、福島原発の状況が伝わるとさっさと故郷 の熊本に引っ越してしまう。そして現在は‘ゼロセンター’ という団体を立上げて「新国家の樹立」を宣言し自ら初代内 閣総理大臣を名告っているそうだが… 実際の‘ゼロセンター’でも当初は福島被災者を受け入れた ものの、途中で投げ出したとか、本人の言い分はいろいろあ るだろうが、全体的に胡散くささが感じられる人物像が描か れていた。 本田監督は、2003年12月紹介『ニュータウン物語』でも思想 的な描写は避ける感じだったが、本作でもその面は巧みに避 けている。しかし全体的に雰囲気が伝わってくるのは、これ も手腕なのかとも思わせるものだった。
『オレンジと太陽』“Orange and Sunshine” 1618年に始まり、1970年まで続けられていたというイギリス とオーストラリアを繋ぐ隠された歴史を描いた実話に基づく ジム・ローチ監督作品。 映画の始まりは1986年、イギリスノッティンガムでソーシャ ルワーカーの職にあった主人公の許に1人の女性が現れる。 オーストラリアから来たというその女性は、子供の頃にイギ リスから移住したが、祖国での自分の身元が一切判らないと 訴える。 実はその前に主人公は、突然オーストラリアから存在すら忘 れていた弟の手紙が届いたという女性の話を聞いており、そ の2つを結び付けた主人公は調査を開始する。しかしそれは イギリス−オーストラリア両国政府も関ったおぞましい歴史 を紐解くことになる。 福祉の名の許に行われた児童移民。その歴史は17世紀に始ま り、最初はアメリカに向け、その後はニュージーランド。カ ナダ、ローデシア、そしてオーストラリアに向けて、13万人 もの子供が親にも知らされないまま送られていた。 しかもそれは、オーストラリア向けには「オレンジと太陽」 の国という甘言に彩られていたが、その実態は奴隷に等しい ものであり、特に宗教系の孤児院では過酷な労働を10数年間 続けさせた挙げ句に、その間の生活費などが負債として科せ られたという。 この事実を知った主人公は、最初は単独でオーストラリアに 暮らす元孤児たちの身元調査に乗り出し、やがてそれは社会 的な支援も得られるようになって行く。しかしその一方で特 に宗教関係者からの妨害や嫌がらせも激しくなって行く。 監督は、2010年12月紹介『エリックを探して』などのイギリ スの名匠ケン・ローチ監督の息子で、以前はドキュメンタリ ーを手掛けていた。そして本作も最初はドキュメンタリーで 描こうとしたが、中心となる人物の人柄に触れ、ドラマ化に 踏み切ったとのことだ。 そしてその映画化にはケン・ローチ監督のスタッフなども加 わり、さらには昨年のオスカーに輝く『英国王のスピーチ』 なども手掛けたオーストラリアの映画会社も加わって英豪合 作映画として完成されている。 主演は、昨年12月紹介『戦火の馬』などのエミリー・ワトス ン。他には共に『LOTR』に出演のオーストラリア人俳優 のデイヴィッド・ウェナム、ヒューゴ・ウィーヴィングらが 脇を固めている。 因に本作に描かれた事実に関しては、本作の撮影中の2009年 11月と2010年2月にオーストラリアとイギリス両国の首相に よる公式の謝罪が行われたそうだ。
『キリマンジャロの雪』“Les neiges du Kilimandjaro” ヴィクトル・ユゴーの長編詩「哀れな人々」に着想を得て、 1997年『マルセイユの恋』などのロベール・ゲディギャン監 督が、妻で『マルセイユ…』や2005年5月紹介『クレールの 刺繍』などの女優アリアンヌ・アスカリッドと共に老境の夫 婦の姿を描いた作品。 夫は長年労働組合の委員長として労働者の生活を守るために 働いてきた。しかし会社側から提示されたリストラ案を受け 入れ、その退職者をくじ引きで選ぶ方式で自らも退職者に選 ばれてしまう。 こうして失業者になった夫は孫と遊んだり、庭に作り掛けだ った東屋を完成させたりしていたが…。そんな夫妻の結婚記 念日を親戚や元の同僚たちが祝ってくれ、その席で「キリマ ンジャロへのガイド付きツアー」がプレゼントされる。 ところがその数日後、自宅で弟夫婦とトランプを楽しんでい たとき、突然2人組の強盗が押し入ってきて、ツアーの切符 と滞在費の現金、それにATMカードなどが強奪される。し かし在る偶然から、夫は犯人を発見するのだが… 映画ではフランス社会党の創設者ジャン・ジョレスの名が英 雄のように語られるが、現実の労働者の境遇はの英雄の名も 霞まされる程に厳しいものだ。そんな中でも夫が労組に関係 していた夫妻はそれなりの年金で小市民的な生活は維持され ている。 しかし夫妻を襲った事件は、さらに厳しい現実に夫妻を直面 させることになる。そしてその先に見えてくるものは… 共演は、『マルセイユの恋』や2005年1月紹介『ロング・エ ンゲージメント』などのジャン=ピエール・ダルッサン。 他に、『マルセイユの恋』のジェラール・メイラン、2003年 10月紹介『かげろう』などのグレゴワール・ルフランス=ラ ンゲ、2009年11月紹介『ユキとニナ』などのマリリン・カン トらが脇を固めている。 厳しい現実の描かれた作品だが、物語的にはかなり甘く感じ るところもあって、全てを容認できる作品ではなかった。た だしそれは原作詩のもたらしたものでもあり、これもまたド ラマということだろう。物語はそこに至るまで人間模様を描 いているものだ。
『ブラック・ブレッド』“Pa negre” スペイン内戦を背景にした多少ファンタスティックなムード も持つ作品。スペイン・ゴヤ賞で9部門を受賞し、カタルー ニャ・ガウディ賞では13部門に輝いた。また先のアメリカ・ アカデミー賞外国語映画部門の予備選考では、ペドロ・アル モドバル監督の『私が、生きる肌』(今年2月紹介)を差し 置きスペイン代表に選ばれている。 舞台は1940年代のスペイン・カタルーニャ。その森で事件が 発生する。それを目撃した少年は、「ピトルリウア」という ダイングメッセージを聞くが、それはその森に住むと言われ る魔物のことだった。 その少年の父親は左派に属し常に理想を語っていたが、その 父親に事件を殺人と判断した警察から嫌疑が掛けられること になる。そして父親は姿を消し、少年は安全のため祖母の家 に預けられることになるが… その少年の周囲には、少年の母親に色目を使う町長や、少年 を養子にしよう画策する金持ち夫妻など様々な大人たちがお り、その中で徐々に事件の全貌が明らかになって行く。しか しそれは少年にも厳しい現実を突きつけることになる。 映画の中では1944年のカレンダーが壁に貼られていて、その 時代であることが明らかになるが、描かれる雰囲気には中世 の感じもして、それがファンタスティックなムードも醸し出 している。 しかし物語自体は、スペイン内戦後の右派(勝ち組)と左派 (負け組)の確執を背景にしたもので、その辺は映画を観て いれば理解はできるが多少複雑な面も存在していた。そんな 中での無垢な少年の姿が描かれている。 脚本と監督は「スペインのデヴィッド・リンチ」とも称され るアウグスティ・ビジャロンガ。確かにダークなイメージの 絵作りなどにはリンチのようなムードが漂うが、背景として いる事象の重みというか、基盤になるものがリンチとは異な るものだ。 出演は、本作で見出されゴヤ賞新人男優賞なども受賞したフ ランセスク・クルメ。本作でゴヤ、ガウディ賞の他、サン・ セバスチャン国際映画祭の女優賞にも輝いたノラ・ナバス。 2007年4月紹介『パンズ・ラビリンス』などのルゼ・カザマ ジョ。 さらに、本作でゴヤ賞新人女優賞とガウディ賞助演女優賞に も輝いたマリナ・コマス、『パンズ・ラビリンス』や2010年 9月紹介『Ricky』などのセルジ・ロペスらが脇を固め ている。
『コラボ・モンスターズ!!』 日本唯一のトラッシュ・カルチャーマガジンという「TRASH- UP!!」の提供で製作された2005年『稲妻』の西山洋市監督、 2010年8月紹介『making of LOVE』の古澤健監督、1996年の 『女優霊』や『リング』シリーズの脚本家=高橋洋の監督に よる短編3作品。 西山監督の『kasanegafuti』は、三遊亭圓朝原作の怪談話を 現代を舞台に描いた作品。ただし監督自身は「髷を着けない 時代劇」と称しているようで、原作の雰囲気を残したドラマ が展開される。 と言っても、原作は口演すると8時間に及ぶという大作。本 作はその中の「豊志賀」の下りだけを描いているが、それで も30分程度にするには無理があった感じだ。特に因果応報の 経緯が唐突で、豊の変貌もこれだけでは納得できない。 有名な原作だから知っておけというのが監督のスタンスなの かも知れないが、そういう観客だけではないものだ。同じ題 材では中田秀夫監督の『怪談』(2007年5月紹介)もあり、 いまさらという感じもした。 出演は、前回紹介した『先生を流産させる会』の宮田亜紀。 何かに取り憑かれたような演技はこの人の得意技? 古澤監督の『love machine』は先の紹介作品にも通じる恋愛 関係を描いた作品。主人公は恋愛が本能という男性で、次々 に女性を乗り換える行状が描かれるが…。最後に多少捻りが あるのも先の紹介作品に通じていた。 コメディとしてのセンスも悪くないし、作品としては楽しめ た。ただ結末に関してはそれを先に示唆するシーンが無かっ たようで、もちろんそれはあからさまであってもいけないの だが、もう少し何かヒントは欲しかった感じだ。 出演は、2008年2月紹介『泪壺』などの小島可奈子。今回も 奔放な演技を存分に見せてくれる。因に古澤監督は、2011年 4月『アベック・パンチ』も紹介しているが、ちょっと泥臭 い感じの演出は監督の持ち味としていいのかな。 高橋監督の『旧支配者のキャロル』は、今回3作品の中では 一番見応えがあった感じだ。 物語の舞台は、今回の試写会も行われた東京渋谷の映画美学 校。そこで学んでいた生徒たちの卒業制作が始まり、1人の 女子生徒が監督に選ばれる。そして彼女は厳しい教師だった 女優に主演を依頼するが… 題名に在る通りの、旧支配者である教師への生徒だった監督 の挑戦が描かれる。そこでは若い才能を叩き潰そうとする教 師の態度や生徒間の確執なども描かれ、正に熾烈な闘争が繰 り広げられる。 3作品の中では1番長い47分の作品だが、その間が全く目を 離せない緊張感で綴られ、これは強烈な作品だった。それは 苛烈な映画制作の現場が描かれるが、そこに映画に対する愛 情が感じられるのも良いものだった。 出演は、2009年3月紹介『腐女子彼女。』などの松本若菜。 他に中原翔子、津田寛治らが脇を固めている。 なお3作品は3本立てで5月12日から、映画美学校に併設の オーディトリアム渋谷でレイトショウ公開される。
『ブラックパワー・ミックステープ』 “The Black Power Mixtape 1967-1975” 原題の通りの時代にスウェーデンのジャーナリストグループ によって撮影されたフィルムが約30年振りに発見され、その フィルムに基づいて制作されたドキュメンタリー。 1960年代の半ばには‘Black is beautiful’という言葉と、 1968年のメキシコオリンピックで突き上げられた黒手袋の拳 と共に世界を揺るがせた「ブラックパワー」が、やがて麻薬 によって衰退して行くまでの10年間が描かれる。 そこにはキング牧師やマルコムX、さらにアンジェラ・デイ ヴィスやストークリー・カーマイクルらも登場してその時代 が描かれて行く。因にキング牧師とマルコムXはアーカイヴ 映像だが、デイヴィスとカーマイクルに関しては独自のイン タヴューも含まれている。 それはその時代に学生から社会人になっていった僕自身を含 む団塊の世代の人にとっては、懐かしくもあり、いろいろな 記憶も蘇ってくる作品だった。 ただし本作に関しては当時これが撮影された経緯などが明確 でなく、当時番組として放送された物なのかどうか、特に残 されていたのが編集された作品か、素材だけだったのかなど も知りたかったところだ。 というのも今回公開される作品には、現代の主にミュージシ ャンによるコメンタリーが付けられていて、それが当時の状 況を正しく伝えていると思えない。大体ほとんどが1970年以 降の生まれで、当時を知るはずもない連中なのだ。 そんなコメンタリーが、当時の制作者の意図を歪めている可 能性も否定はできない。確かにブラックパワーを担うべき黒 人青年の多くがヴェトナム戦争に駆り出され、そこで麻薬漬 けにされてパワーが失われたというのは面白い論調だが… それと映画の最後に出てくるブラックモスリムの話などは、 もっと丁寧に描かれてもいいのでは無いかとも感じられた。 この部分こそはその後の検証も必要だったようにも思えるも のだ。 仮に当時番組として放送されたものが在るのならそのオリジ ナルも観てみたい。因に本作の日本公開版の上映時間は92分 だが、スウェーデンでは100分で公開されたようだ。
『恋人たちは濡れた』 『赫い髪の女』 前回に続いて日活創立100周年の記念企画として上映される 往年の日活ロマンポルノ32本の中から今回は神代辰巳監督作 品2本の試写が行われた。 前回の2本は多少捻った感じの作品だったが、今回は正にロ マンポルノと呼びたくなる男女の絡みが描かれた2本で、さ すが神代監督作品という感じがした。とは言え多少の時代臭 さは感じられたが、それはノスタルジーという感じのもので はなかった。 その前者は湊町の映画館を舞台にした1973年の作品で、その 町にふらりと訪れた男の素性を巡って男女が交錯して行く。 恐らくはかなり奔放になってきていた若者文化を背景に、も しかすると今より大らかな性が描かれている。 それは、最近観られる性描写が男女の行為と言うより、ただ の道具として扱われている感じを持つことが多いことから、 本作ではかえって純粋さが感じられるようにも思えたのかも 知れない。 出演は、中川梨絵、絵沢萠子、薊千露、大江徹、堀弘一。脚 本は神代と鴨田好史が書いている。 後者は1979年の作品で、中上健次が前年に発表した小説を原 作としている。物語は建設現場で働く男がふと現れた女性と 一緒に暮らすようになる。男は同僚に女をあてがったり、そ の同僚の男は別の女と駆け落ちしたり、周囲ではいろいろこ とが起きて行くが… 出演は、宮下順子、石橋蓮司、亜湖。他に、阿藤海らが共演 していた。 2作品は6年違いで制作されているが、前者と後者では男と 女の立場が逆になっている感じで、その辺は面白くも観られ た。脚色は、2003年11月9日付「東京国際映画祭(後半)」 で紹介した『ヴァイブレータ』などの荒井晴彦が担当してい る。 40年前には間違いなく新鮮だった作品も、さすがに色褪せた 感じは否めない。ただ内容的には今の時代にも通じるものと 思えるし、理解して観ることはできるのだが、如何せん背景 の風景などに時代臭があり過ぎなのだ。 ただしそれは、僕自身がその時代に生きていたせいなのかも 知れないもので、その辺が今の観客にどのように迎えられる のか、その点にも興味が湧いてきた。
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