井口健二のOn the Production
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2012年02月12日(日) COTE2、ゴーストライター・ホテル、M・サッチャー、不良少年、セットアップ、アンダーワールド4、桜蘭高校、ポテチ、ピラミッド

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
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『センター・オブ・ジ・アース2/神秘の島』
“Journey 2: The Mysterious Island”
2008年8月紹介『センター・オブ・ジ・アース』の続編。前
作の最後でヒントのあったジュール・ヴェルヌの別の冒険に
向かって、前作にも登場のジョッシュ・ハッチャースンと、
本作ではドウェイン・ジョンスンが冒険を繰り広げる。
映画のコンセプトは、ヴェルヌが発表した数々の冒険小説は
実話に基づいている…というもの。従ってそれぞれの冒険の
世界は実在し、その驚異の世界を求めて冒険家たちは日々小
説に書かれたヒントと謎を解き明かそうとしている。
と言うことで、本作の主人公たちが向かうのは「神秘島」と
なるものだが、そこに今回はヴェルヌ以外の小説も関ってく
る辺りは、映画がこの先、他の作家の作品にも手を広げる伏
線でもあるのかな。
そしてヒントを基に謎を解き、今回も何とか島に辿り着くの
だが、ここからの展開が実に巧みにヴェルヌの原作を下敷き
にしており、それは原作を読んでから観に行くと映画を倍以
上楽しめる仕組みにもなっている。
さらに本作では、1961年のレイ・ハリーハウゼン版(邦題:
SF巨大生物の島)にもオマージュを捧げているのではない
かと思われるシーンまで登場した。それは昔だったら情報誌
に解説を書きたくなるくらいのものだ。

そんなファン泣かせの作品が、今回も3Dで展開される。
共演はマイクル・ケイン。他に2009年7月紹介『サブウェイ
123 激突』などの出演のルイス・ガスマン、2008年11月
紹介『ハイスクール・ミュージカル』に出演のヴァネッサ・
ハジェンズらが脇を固めている。
監督は、2010年8月紹介『キャッツ&ドッグス地球最大の肉
球大戦争』のブラッド・ペイトン。2作続けての3Dアクシ
ョン作品で壺も良く心得た演出ぶりだった。脚本は、1989年
“Little Nemo”などのリチャード・アウッテンによる原案
から、ブライアン&マーク・ガンという2人が担当。
なお、本作でも最後に次回の冒険の目的地が紹介されるが、
ヴェルヌの原作は…。さてそれをどうやって映画に料理する
かも楽しみなところだ。


『ゴーストライター・ホテル』
テレビ朝日と吉本興業の共同製作によるコメディ作品。前回
も同じような作品を紹介したが、本作には予め3月17日から
の一般公開が決定しているようだ。
物語の舞台は明治開業という老舗の「本店堂ホテル」。そこ
は明治時代から著名な作家たちが執筆のため籠もったホテル
として知られていた。そのため現在でも若手の作家たちが、
文豪たちに肖ろうと執筆に訪れていたが…。実はそこは、文
豪たちが執筆の苦しみ呻き声を上げていた、怨念の場所でも
あったのだ。
そして主人公は、作家志望だが未だに1作も完成させていな
い作家の卵。彼は評論で食いつないでいたが、ついに第1作
を執筆するべくそのホテルに宿泊する。しかし明治の文豪た
ちに肖ることはできず、宿泊費も嵩んで妻からも離婚を言い
渡され、愛用のPCも妻に取り上げられてしまう。
それでもホテルに未練のある主人公は、ホテルでアルバイト
の清掃員となり、やがてそのホテルに残る文豪たちの遺産に
巡り会う。しかもそれには執筆に苦しんだ文豪たちの亡霊が
取り憑いていた。
こうして明治の文豪たちのパロディというか、彼らを題材に
したコメディが展開される。登場するのは、夏目漱石、森鴎
外、宮沢賢治、太宰治、林芙美子、江戸川乱歩。と言っても
所詮は吉本だからそれほど深くもなく、気楽に笑っていられ
る作品だ。

出演は。昨年12月紹介『ワイルド7』などの阿部力、2008年
7月紹介『しゃかりき!』などの坂本真、昨年5月紹介『犬
飼さんちの犬』などの池田鉄洋。それに世界のナベアツ、ケ
ンドーコバヤシ、村上健志、かたつむり林、おかもとまり、
カンニング竹山が亡霊を演じ、さらに鈴木亜美、片桐仁、岡
田圭右、栗山千明らが脇を固めている。
監督は、「ミュージック・ステーション」などを手掛ける伊
東寛晃。笑いやオマージュに彩られた脚本は、アニメ「ワン
ピース」なども手掛けるますもとたくやが担当した。
演出には芸人たちの暴走も感じられるが、脚本をしっかり踏
まえた感じの部分もあり、全体としては面白く観ることがで
きる作品だった。特に、最初に登場するホテルの名称でまず
は掴まれてしまう感じの作品でもあった。


『マーガレット・サッチャー/鉄の女の涙』
“The Iron Lady”
1979年に西欧圏では初の女性宰相となり、以後11年間、ヨー
ロッパの国家指導者としては戦後最長の在任期間を誇った第
71代イギリス首相の半生をメリル・ストリープの主演で描い
た作品。ストリープは本作で17回目のオスカー候補にもなっ
ている。
2008年に元首相が認知症に罹っていることが公表され、その
事実を基にドラマは描かれている。そしてそこには、国家指
導者として制度改革の断行やフォークランドで勝利した栄光
と、ヨーロッパ連合への参加を拒んでその座を追われた挫折
などが描かれ、その一方で先立たれた夫や家族への想いなど
が綴られて行く。
それは、表面的には報道(特にフォークランドの経緯)など
でも知られていたものだが、本作ではその陰での首相の心の
内の苦しみなども描かれている。そして老境に至った彼女に
訪れる最後の想いとは…

監督は、2008年『マンマ・ミーア!』でもストリープとコラ
ボレートしたフィリダ・ロイドによる第2作。脚本は、昨年
のヴェネチア映画祭で話題の『SHAME-シェイム-』も手掛け
るアビ・モーガン。
共演は、『ハリー・ポッター』にも出演のジム・ブロードベ
ントの他には、主にイギリス出身の俳優たちが脇を固めてい
る。
なお本作はアカデミー賞メイクアップ部門の候補にも挙げら
れている。この候補に関しては、予備候補の段階で『J・エ
ドガー』の落選を報告したが、本作の見事なメイクを観ると
それも納得できた。
特にストリープが、30代から80代までを1人で演じ切ること
ができたのには、このメイクアップの貢献は大きそうだ。こ
れにはディカプリオの老けメイクも勝ち目はなかった。
因に、ストリープ専属のJ・ロイ・へランドと共にこのメイ
クアップを手掛けたマーク・クーリアーは、同じく候補作の
『ハリー・ポッターと死の秘宝Part 2』ではメイクアップ部
門のスーパーヴァイザーを務めており(候補者には名を連ね
ていない)、『アルバート・ノッブス』と併せてイギリス同
士となるこの対決は興味深い。

『不良少年/3,000人の総番』
総番はアタマと読むらしい。2011年10月紹介『明日泣く』な
どの斎藤工と、2005年5月紹介『屋根裏の散歩者』などの窪
塚俊介の共演で、1970年代の工業高校を舞台にしたツッパリ
映画。
主人公は2学年の総番。と言っても前の総番の横暴を見兼ね
てタイマンを張り、そいつを倒してその座に着いたもので、
ツッパリではあるがそれなりに人格はあるようだ。そして彼
女からは「もう喧嘩はしないで」と言われ続けている。しか
し総番である以上、避けられない喧嘩も待っている。
そんな主人公は機械科の生徒だったが、その学校では代々総
番は建築科の生徒というのが伝統だった。そのため3学年の
番長グループには危機感が募り、やがてそれは主人公を追い
落として建築科の前総番を返り咲かせる画策へと進む。そし
てそれは、2学年vs3学年の全面対決へとエスカレートして
いった。
タイトルだけ観て地域社会も巻き込んだかなりの大スケール
の話なのかと思っていたら、学校が1学年1000人、3学年で
3000人なのだそうで、1970年代の工業高校ってそんなに大規
模だったんだと改めて感心した。
という訳で本作は基本的に校内抗争の話になるもので、僕と
しては見境なく喧嘩を売って歩くようなチンピラ映画は認め
ないが、こういう作品はそれなりに筋も通っているし、まあ
陰湿な苛め映画よりは良いかなと思ってしまうところだ。

それに主演の斎藤はそれなりに身体も動くし、窪塚も演技力
はある。さらに須藤温子、堀田眞三、岩永洋昭、秋吉久美子
らの脇役陣も揃っていて、あまり違和感もなく観ることがで
きた。
原作・原案・脚本は元暴走族のリーダーという遠藤夏輝。監
督と共同脚本の宮野ケイジは暴走族がテーマのドキュメンタ
リーなども手掛けているそうで、それなりにリアルな作品に
は仕上がっていたようだ。赤電話など1970年代の再現もまず
破綻は観られなかった。
まあその手の映画ではあるけれど、特に違和感なく描けてい
たことは認められる作品だ。

『セットアップ』“Setup”
2011年5月紹介『ロシアン・ルーレット』などに出演のラッ
パー“50¢”=カーティス・ジャクスンの製作・主演による
クライム・アクション。
物語の中心は幼馴染みの男性3人組。その3人がダイヤモン
ドの運び屋から宝石を強奪することからドラマは開幕する。
ところが3人の内の1人が運び屋を射殺し、それを咎めたも
う1人と残る1人も銃撃して宝石を独り占めしてしまう。
そして銃撃された1人は死亡し、主人公のサニーは辛くも一
命を取り留めるのだが…何故犯人は仲間を裏切ったのか、そ
の手掛かりを求めて動き出したサニーに、地元ギャングの大
ボスなども絡んで血を血で洗う闘いが勃発する。
巻頭のクレジットでランダル・エメットの名前を見付けて、
これはかなりになるなという予感はした。彼は、2006年8月
紹介『16ブロック』などアクション映画専門の製作者で、
2008年5月紹介『ランボー最後の戦場』も彼の製作だ。
そんな製作者の作品だから、本作でも言うならば箍が外れた
ような尋常でないお話が展開される。それはご都合主義もお
構いなしで、正しくあれよあれよという感じ。でまあ、そこ
にあまり目くじら立てても仕方のないような作品になってい
る。

共演は、2008年2月紹介『アメリカを売った男』などのライ
アン・フィリップ。他には2006年2月紹介『沈黙の脱獄』な
どに出演の元プロレスラーのランディ・クートゥア、2007年
6月紹介『レッスン!』に出演のジェナ・ディーワン、そし
て『16ブロック』にも出ていたブルース・ウィリスらが脇
を固めている。
脚本と監督は、『マトリックス』の後半2作や2011年7月紹
介『ワイルド・スピードMEGA MAX』、それにウィリス主演の
『ダイ・ハード 4.0』などのスタントを手掛けてきたマイク
・ガンサー。本作は長編監督2作目だそうだが、やりたいこ
とをやっているという感じだ。
それにしても人がバタバタと死んで行く作品で、それは多少
呆気にもとられるが、そこはあまり目くじらは立てずにお気
楽に楽しみたいものだ。


『アンダーワールド覚醒』“Underworld: Awakening”
2003年11月、2006年3月、2009年2月にそれぞれ紹介したケ
イト・ベッキンセール主演『アンダーワールド』シリーズの
最新作。
前作では一旦過去に戻された物語が再び前に向かって動き出
す。それは前作の最後で少しだけ描かれたシーンからの発展
となるが、物語はそこから急展開が始まっていたものだ。そ
して本作では再び処刑人セリーンの活躍が3Dで描かれる。
物語は元々ヴァンパイアと狼人間ライカンの闘いを描くもの
だが、前作の闘いの後で彼らの存在は人類に知られ、人類は
彼らの粛正を開始していた。その中でセリーンは捕えられ、
とある研究所で冷凍保管されていたようだ。
ところがその冷凍処置が何者かによって解除され、セリーン
は甦る。しかしその間に12年の歳月が流れていた。こうして
甦ったセリーンは新たに人類も敵にした闘いに巻き込まれて
行くが、そこには新たな要素も加わっていた。

共演は、2007年4月紹介『リーピング』などのスティーヴン
・レイ、2009年1月紹介『7つの贈り物』などのマイクル・
イーリー、イギリス出身のテオ・ジェームズ、2005年3月紹
介『ラヴェンダーの咲く庭で』の監督でもあるチャールズ・
ダンス、それにオリビア・ハッせーの娘のインディア・アイ
ズリーらが脇を固めている。
監督は、2009年12月紹介『シェルター』などのモンス・モー
リンドとビョルン・スタインのコンビ。スウェーデン出身の
2人組のハリウッド進出第2作になるようだ。
脚本は、シリーズのキャラクター創造者であるレン・ワイズ
マンと、今回の原案を提供したジョン・フラヴィン、さらに
2008年12月紹介『チェンジリング』などのJ・マイクル・ス
トラジンスキー、2008年3月紹介『ブラックサイト』のアリ
スン・バーネットらが手掛けている。
撮影には、ディジタルカメラメーカーRED社の最新5Kの
解像力を持つ“エピック”が使用され、さらに毎秒120フレ
ームの実験機も初使用されているそうだ。その圧倒的な解像
度による3Dも存分に堪能できる作品になっている。

『桜蘭高校ホスト部』
2002年に少女マンガ雑誌「LaLa」で連載が始まった葉鳥ビス
コ原作コミックスの映画化。本作は2006年にTVアニメ化、
2011年に実写ドラマ化されており、本作はその実写ドラマ作
品のスタッフ・キャストにより制作されている。
物語の舞台は、超お金持ちの子女ばかりが通う桜蘭学園。そ
の中でもホスト部は須王財閥の社長の息子環が率いる超セレ
ブ集団だった。そして主人公のハルヒは、学園で唯一の庶民
の女子。ところがある事情で彼女は性別を隠してホスト部に
入部させられてしまう。
しかしそんなハルヒは、毎回馬鹿騒ぎを繰り返す部員たちに
うんざりしながらも、何となく馴染んでいる自分にも気づい
ていた。そして学園では学園祭の開催が近づき、学園祭では
次期部室の使用権を賭けた恒例のバトルが行われることにな
っていた。
一方、そんな学園にシンガポールから短期留学の女子学生が
やってくる。その留学生はホスト部の中に波風を立たせ、そ
れはバトルの勝利に欠かせない部員たちの結束にも影響を及
ぼし始めるが…

出演は今年1月紹介『POV』にも主演していた川口春奈、
JUNONボーイ出身で2011年4月紹介『Pradise Kiss』などの
山本裕典。他に、2009年3月紹介『腐女子彼女』などの大東
駿介、AKB48の篠田麻里子。さらに竜星涼、中村昌也、
千葉雄大、高木心平、高木万平らが脇を固めている。
監督の韓哲と、脚本の池田奈津子は共にテレビドラマを手掛
けており、本作で長編デビューとなっている。また脚本には
原作者の葉鳥も協力したようだ。
原作はギャグマンガなのかな、そこに描かれるハチャメチャ
なギャグ描写がCGI=VFXによってそのまま映像化され
ているという感じの作品。2005年5月紹介『逆境ナイン』辺
りから普通に使われているようになってきたCGI=VFX
だが、その使い方はますます巧みになっているようだ。
それはテレビシリーズでも使われたものかも知れないが、そ
れらが大画面で炸裂する。シリーズのファンならそれだけで
堪能できる作品だろう。


『ポテチ』
2008年12月紹介『重力ピエロ』などの井坂幸太郎の原作を、
2010年6月紹介『ちょんまげぷりん』などの中村義洋脚本・
監督で映画化した作品。
因に中村監督は2007年『アヒルと鴨のコインロッカー』と、
2008年『フィッシュストーリー』、2010年『ゴールデンスラ
ンバー』でも井坂作品の映画化を手掛けて、本作は4作目。
その作品は中短編集『フィッシュストーリー』所載の一編の
映画化となっている。
主人公は空き巣が稼業の男。そんな男が仕事中の部屋に架か
ってきた電話。そして留守番電話に吹き込まれるメッセージ
がドラマを作り出す。それはプロ野球選手の自宅に若い女性
の声で助けを求めてきたものだった。
映画の前半はかなり緩いテンポで、このままだったらどうし
ようと思い始めた辺りから、流れが加速し始める。そしてテ
ーマも2転3転して、最後は飛んでもないテンションに駆け
登って行く。その結末が実に見事だった。
上映時間は68分の作品で、その中に見事なストーリーが盛り
込まれている。前半のテンポもこれなら納得できるし、この
ような構成のしっかりした作品に久しぶりに出会えた感じも
した。

出演は、井坂×中村作品にすべて出演している濱田岳。昨年
6月紹介『極道めし』のヒロインを演じた木村文乃。他に、
大森南朋、石田えりらが脇を固めている。また監督の中村も
重要な役柄で出演している。
なお映画化は、『ゴールデンスランバー』以降、自作の映画
化をしばらく止めると語っていた井坂が、3・11の震災直後
に中村に何でもいいから何かやりたいと連絡を入れ、すでに
本作を構想していた監督が即座に決めたものだそうだ。
そして撮影はオール仙台ロケで行われ、8日間というタイト
なスケジュールで行われたその撮影には、『ゴールデン…』
にも協力した地元のヴォランティアが再結集して、クライマ
ックスシーンを盛り上げている。

『ピラミッド 5000年の嘘』
“La révélation des pyramides”
2005年に出版されたジャック・グリモーの著作に基づき、そ
の原作者と2001年に“Qui veut devenir une star?”という
SF映画の監督歴があるパトリス・プーヤールの制作による
ドキュメンタリー作品。
エジプトで5000年前に建設されたとされるピラミッドがメー
トル法に基づいて設計され、また円周率πや黄金数φに基づ
く数値が各所に使われている、というグリモーの主張を検証
し、さらにそこから導かれる驚愕の事実を描き出す。
実は昨年12月にも試写を観せて貰ったが、グリモーとプーヤ
ールの台本によるナレーションの情報量が多くて字幕ではそ
れが追い切れない感じがした。そこで今回は日本語吹き替え
ナレーションによる日本公開版を観せて貰ったのだが…。
作品は前半でピラミッドの検証を行っているが、この辺は何
というか飛んでも学説的な雰囲気で、事前に知っているとい
うか本作がフランスで公開された後でネットに流れた情報な
どで判っている部分も多く、字幕版でも理解できていた。
これに対して問題は、そこから導き出される「事実」の部分
なのだが…。これがオリジナルのテキストもそうなのか実に
判り難い。しかも肝心のところが妙にぼやかされていて、主
張が明確に伝わってこない。そこで以下は僕なりの解釈をし
てみる。
制作者たちの主張は危機が迫っているということで、それに
沿って考えると、重要と思われるのは、検証された地球を取
り巻く古代遺跡の示す点が現在の北磁極に一致し、移動する
磁極が一致するのには長い年月が掛かるという点だろう。
これによって地磁気の反転の近いことが予想され、その際に
地球規模の災厄が訪れるというものだ。そしてその危機の到
来をピラミッドを始めとする地球を取り巻く古代遺跡の配列
が示しているということだ。
ところが映画はその点を充分には主張せず、しかもその後に
数万年におよぶ星座の動きの話などが出てきて主張がぼやか
されてしまう。その上この部分では科学的に墓穴を掘ってい
る内容もあって、映画を胡散臭くもしてしまっている。
何故そのようなことをしているのかも判らないのだが、その
直前まではそれなりに興味も湧いていただけに、何とも勿体
無い感じもしてしまった。

なお、超ナレーションと称する日本語版のナレーションは、
トム・クルーズの吹き替えなどを手掛ける森川智之が担当し
ている。


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井口健二