| 2012年02月05日(日) |
へんげ、夢の教室、FLY!、幸運の壺、ヤング≒アダルト、トテチータ、スーパー・チューズデー、ももへの手紙、僕達急行 |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※ ※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※ ※方は左クリックドラッグで反転してください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『へんげ』 東京の映画美学校という映画学校を、2008年に修了した大畑 創監督による商業作品では第1作となる作品。 郊外の住宅地で暮す若い夫婦の夫が、突然身体を「く」の字 に折り曲げ、野獣のような咆哮を発する発作に襲われるよう になる。そして夫の勤務先でもあった大学病院でも原因が判 らない奇病に、病院は実験動物のように夫を扱い始める。 そして病院から逃亡してきた夫を妻は匿うことにするが、夫 はさらなる変貌を開始する。その行き着く先は… この種の変身ものは過去にもいろいろな作品が発表されてい るが、本作ではそこに夫婦愛などのテーマを織り込んで、少 し違った側面からも描こうとしているようだ。ただまあ、上 映時間54分の作品では充分に描けているわけではないが。 ただし本作ではもう一つ大きな捻りがあって、その手の方向 性が好きな人には結構頷ける作品になっていた。それは正に ファンをニヤリとさせるもの。ただしそれを本当に好む人が どれだけいるのかというところにはなるが、少なくとも僕は ニヤリとし満足できた。 出演は、劇団STRAYDOG所属の森田亜紀と、2006年4月紹介北 野武監督の『ドールズ』などに出演の相澤一成、他に舞台俳 優の信國輝彦らが脇を固めている。 また、2006年『日本沈没』などに参加した田口清隆が特技監 督を務めてなかなかのクライマックスを描いている。他にも 東京藝術大学大学院准教授の長嶌寛裄が音楽を担当している など、本作には多彩な顔ぶれが集まっているようだ。 映画は途中オカルトめかした方向を示すなどいろいろ捻った 趣向も取っており、全体として楽しむことができた。 なお3月10日からの公開では、監督による映画美学校での修 了作品『大拳銃』(上映時間31分)も併映される。この作品 もDVDで観させて貰ったが、経営の行き詰まった町工場の 工場主がやくざと関り、密造拳銃に手を出すという内容で、 ここではメカフェチ風の捻りが面白かった。
『ピナ・バウシュ/夢の教室』“Tanzträume” 2011年10月紹介『Pina』がアメリカアカデミー賞長編ド キュメンタリー部門の候補になっているドイツの舞踊家ピナ ・バウシュを描いた別のドキュメンタリー作品。 1940年生まれのピナ・バウシュは2009年に急逝し、先に紹介 したヴィム・ヴェンダース監督の作品は、舞踊家の死後に彼 女が振り付けたダンスを再現し、アーカイヴの映像と共に彼 女の業績を検証するものだった。 それに対して本作は、2008年、すなわち彼女の死の前年に自 らの代表作である「Kontakthof」を14〜17歳の素人の若者た ちに演じさせるという試みを記録したもので、そこには40人 もの若い男女が集められ、10カ月でダンスを完成させて行く 様子が描かれる。 元々「Kontakthof」というダンスは、男女の微妙な関係を描 くもので、それは成熟した男女には予めの理解があって創作 されて行くが、経験の少ない若者たちにそれをどのように演 じさせるのか、それが計画の目論見でもあったのだろう。 因にピナは、2000年には65歳以上の男女に演じさせることも 行ったそうで、正に全てを知り尽くした老人たちの後で、今 度は何も知らない若者たちに同じことを演じさせようという ものだ。 またそこには、黒人やロマ(ジプシー)や、いろいろな状況 を抱える若者たちがいて、彼らの思いもインタヴューで挿入 され、10カ月の間に成長を遂げて行く姿も描かれる。そして そこにピナ・バウシュ本人も加わって、若者たちを導きダン スを完成させて行く。 最初は男女が触れあうことにも恥じらい見せていた若者たち が、徐々に大胆に演じるようになって行く。そんな成長の様 子が丁寧なカメラワークで撮影されている。 監督は、ピナの本拠地であるヴッパタール在住のアン・リン セル。芸術と文化のジャーナリストであり評論家でもある監 督は、ピナが1973年に舞踊団に来たときからの親交で、過去 にも何度も密着取材をしたことがあり、その信頼関係がこの 作品を生み出している。 なお、ヴェンダース作品にも写し出されていたヴッパタール 名物のモノレールが随所に登場しているのも、僕には嬉しか ったものだ。
『FLY!〜平凡なキセキ〜』 大阪の朝日放送と吉本興業の共同製作で、昨年3月に開催さ れた第三回沖縄国際映画祭の長編プログラム・Peace部門に 出品された作品の一般公開が決定し、マスコミ向けの試写が 行われた。 物語の背景は下町の町工場。そこに働く主人公は、身体はで かいがあまり風采の上がらない男。彼はその町工場の経理で 働くシングルマザーの女性に憧れを持っているが、その胸の 内を話したことはない。 そんな主人公が数合わせで誘われた草野球の試合中。飛球を 追って入った草叢で何やら銀色に光る不思議な物体を発見す る。それは緑色の顔をした宇宙人の乗った宇宙船だった。し かも負傷している宇宙人を主人公は自宅に連れて行くが… 吉本興業の作品なので基本はお笑いだが、昨年10月紹介『宇 宙人ポール』ほどのマニアックではないものの、それなりに 壺を押さえた民間人による接近遭遇のお話が展開される。そ こに町工場の同僚や町の人々が絡んで騒動になるものだ。 そして宇宙人の存在が、主人公とシングルマザーの関係にも 微妙に絡んでくる。 主演は、現吉本新喜劇の座長を務める小藪千豊。共演は、相 武紗季、温水洋一、本仮屋ユイカ、笹野高史、池乃めだか、 関西のテレビで活躍のなるみ、西田敏行、大杉漣。他に吉本 の若手芸人がいろいろ出演している。 監督は、朝日放送「探偵!ナイトスクープ」などを担当する ディレクターの近藤真広による初長編作品。脚本は、2005年 『サマータイムマシン・ブルース』などのヨーロッパ企画の 上田誠と山脇唯が担当した。 映画の後半でアクションが絡み始めるとテンポも良くなって くるが、前半は多少映画としてはテンポが緩い感じがする。 ただそれぞれのシーンはそれなりの伏線になっているから切 り難かったとは思えるが、ここはもう少し整理した方が良か ったと思う。 特にこれらのシーンでは若手芸人たちの話芸に頼っている感 じもするが、それもちゃんとシナリオを用意して演出を施す べきだった。それはまあ、芸を見せたい芸人たちとの鬩ぎ合 いにはなりそうだが。 お話は悪くはなかったし、この感じでまた観たいものだ。
『幸運の壺 Good Fortune』 大阪の日本テレビと吉本興業の共同製作で、昨年3月に開催 された第三回沖縄国際映画祭の長編プログラム・Laugh部門 に出品された作品の一般公開が決定し、マスコミ向けの試写 が行われた。 主人公は売れない俳優。学生時代は監督主演の自主製作映画 で評価されたようだが、今は短い台詞も噛みまくって仕事も 少なくなっている。その原因には、彼の生活を支える一方で 過大な要求をし続ける鬼嫁の存在もあるようだ。 そして主人公は保険の掛った妻の事故死も夢見るが…、「自 宅でそんなことが起きたらまず夫が疑われる」と俳優仲間か らは釘を差されてしまう。こんな状況で帰宅した主人公にマ ンションの女管理人が「幸運の壺」を押しつけたその夜、何 と事故が発生する。 斯くして妻の死体を前にした主人公は、仲間の発言を思い出 しその死体を密かに始末しようと考えるが、そこにマンショ ンの管理人や主人公の妹とその同棲相手や、妻の父親まで現 れて主人公の行動は妨害され続け…。 目の前で事故死した遺体を何とか隠そうとするお話は、シチ ュエーションコメディの定番みたいなもので昔からいろいろ あり、これはその一編という感じのものだ。でまあ擽りは現 代風にアレンジされていて、それなりに面白く観ることはで きた。 特に「幸運の壺」の捻りはオカルトか何なのか、いろいろ想 像させてくれたから、それは当たりというところだろう。試 写の終わりでは、これはおかしいと文句を言っている人もい たようだが、吉本新喜劇にその文句はお門違いだ。 出演は、ほっしゃん。、麻生久美子、戸田恵子。他に佐津川 愛美、前田公輝、蛍原徹、福田転球、藤森慎吾、ヨネスケ。 さらに渡辺哲、麿赤兒。そして吉本の若手芸人らが脇を固め ている。 監督は、日本テレビ「踊る!さんま御殿!!」などの総合演出 を担当する小川通仁による初映画監督作品。脚本は「金田一 少年の事件簿」などの福間正浩。因に福間は小川が演出した テレビドラマでも組んでいるようだ。 まあ、日本では定番のシチュエーションコメディだが、本作 はニューヨークで開催されたフライヤーズクラブ・コメディ 映画祭というところにも出品されたようだ。
『ヤング≒アダルト』“Young Adult” 2007年『JUNO』の脚本でオスカー受賞のディアブロ・コ ーディと、監督賞の候補になったジェイスン・ライトマンが 再び組み、2004年8月紹介『モンスター』でオスカー受賞の シャーリズ・セロンを主演に迎えたヒューマンコメディ。 主人公は、執筆中のヤングアダルト小説のシリーズが評判に なっている30代の女流作家。都会に出てそれなりの地位は築 いたが、満たされているという感じではない。そんな彼女の 許に元カレの一家から子供の名付け式への招待状が届けられ る。 その元カレとは高校時代に周囲も認める仲だったが、何故か 2人は結婚しなかった。そして彼女は都会に出て行き、彼は 地元で平凡だが幸せな家庭を築いたのだ。しかし彼女には未 練が残っていた。 そんな彼女が何故式に招待されたのかは謎だったが、取り敢 えず彼と会えることに希望を繋いだ主人公は、故郷に戻って 来る。しかしそには彼女の過去が様々な形で残っていた。 故郷にいれば周囲と一緒に成長できたのかも知れない。しか し1人都会に出たために周囲から切り放されて大人になれな かった主人公。そんな女性が故郷に帰ってきたら、それはも う悪夢でしかなくなる。周囲にとっても、そして彼女にとっ ても… 僕自身、物書きの端くれとしては、常に感性を若く保つこと に心掛けている面はある。ただ対象が映画だと、同世代の監 督や俳優が一緒に成長してくれるから、それなりの自覚が得 られるが、作家それもYAの作家だとさらに感性を若く保つ 必要もありそうだ。 そんなこんなで、僕としてはかなりこの主人公を理解したつ もりだが、それでもやはりこんな奴が周囲にいたらそれは迷 惑だとは思える。それくらいにリアリティの感じられる作品 でもあった。 共演は、2007年6月紹介『レミーのおいしいレストラン』で レミーの声を担当したパットン・オズワルドと、20072010年 12月紹介『恋とニュースのつくり方』などのパトリック・ウ ィルスン。他に『トワイライト』シリーズにエズミ役で出て いるエリザベス・リーサーらが脇を固めている。 キャッチコピーには「あなたは、私を、笑えない。」とある が、正しくそういう感じの作品だった。
『トテチータ・チキチータ』 震災及び原発災害後の福島を舞台にしたかなりファンタシー の要素の強いドラマ作品。 主人公は連帯保証人になったことから借金取りに追われるよ うになり、ふとビルの屋上に上がったところを見知らぬ少女 から「あなたを待っている人がいる」と告げられる。そして 少女が指差していた福島にやってくる。 その少女も家庭の事情から福島に引っ越してくるが、彼女の 周囲ではちょっと不思議な現象が起きていた。やがて町の公 園で出会った少女は、主人公をお兄ちゃんと呼び、自分はお 母さん、もう1人の高校生をお父さんと呼んで3人の交流が 始まる。 一方、主人公は住宅地に1人で住む老女の家の土地を狙う不 動産屋で働いていたが…。戦争で家族を失った女性と、その 家族の身代わりになる人々。それはやがてある奇跡を生み出 して行く。 出演は、豊原功補、松原智恵子、新人の寿理菜、テレビドラ マ「鈴木先生」などの葉山奬之。他に、大鶴義丹、佐藤仁美 らが脇を固めている。また小学生などのエキストラはほとん どが地元の人たちだそうだ。 脚本と監督は、長年映画やテレビドラマの助監督を務め、ま た岡本喜八監督の下でシナリオを学んできたという古勝敦。 CM製作や教育映画製作等に関ってきた監督の本作が長編映 画デビュー作となっている。 なお、試写後に製作者とのQ&Aがあっていろいろ伺った。 それによると、元々シナリオは5年ほど前に書かれていたと のことだ。それを福島の現状を踏まえて改訂して昨年春に撮 影を開始した。しかし資金難で何度も頓挫し掛けたのだそう だ。 そのため撮影では、セットや小道具なども新たに制作するこ とは出来なかったが、例えば老女が住む家は地元の製作者の 知人の家で、仏壇などもそこにあったもの。特に震災の爪痕 が残る外回りの様子などが見事に取り入れられていた。 また、重要な小道具となるゼロ戦の模型はロケハンで行った 先の茶店の店頭に飾られていたもので、美術で製作したら数 10万円は掛るものが、偶然手に入って無償で使用することが できたとのこと。エキストラも含めて地元の支えで完成され た作品のようだ。
『スーパー・チューズデー〜正義を売った日〜』 “The Ides of March” 2004年の大統領選挙で、民主党のオハイオ州における予備選 挙キャンペーンのスタッフを務めたボー・ウィリモンが執筆 した戯曲に基づき、ジョージ・クルーニーが自らの出演と共 同脚本、監督、製作で描いた政治サスペンス。2005年12月紹 介『シリアナ』でオスカー助演賞受賞のクルーニーは本作で 脚色賞の候補にも名を連ねている。 物語の背景はアメリカ大統領選挙戦のオハイオ州予備選挙。 主人公は、その予備選で民主党候補の座を狙う州知事のキャ ンペーンスタッフ。そのキャンペーンにはベテランの参謀か らインターンまで多数が関っていた。 そして主人公の手腕は共和党の選挙スタッフからも注目され るほどのもの。そんな彼は、理想の政治家と心酔する州知事 のため全身全霊を捧げていたが…。ある夜をインターンの女 性と過ごした主人公は、彼女の携帯に架かってきた不審な電 話を受けてしまう。 こうして彼が思い描いてきた政治の世界ががらがらと崩れ始 める。演説で理想を語り続ける州知事の陰で、薄汚い駆け引 きや裏取り引きやが繰り広げられ、それらの全ては選挙に勝 つためと言われて行くが…。 主演は2011年11月紹介『ドライブ』などのライアン・ゴズリ ング。クルーニーは大統領候補を狙う州知事を演じ、他に、 フィリップ・シーモア・ホフマン、ポール・ジアマッティ、 マリサ・トメイ、エヴァン・レイチェル・ウッド、ジェフリ ー・ライトらが脇を固める。 脚本のクルーニー自身が「政治ドラマではない」と言ってい るように、物語は裏で巨大な政治陰謀が動いているようなも のではなく、むしろ人間ドラマ。それは所詮政治家も人間と いう考えのようにも観えるし、それがある意味政治批判のよ うにも観える作品だ。 ただ、それでなくても判りにくいアメリカ大統領選挙の、中 でも特異なオハイオ州予備選挙が背景では、政治に無関心な 日本の若者がどれだけ興味を持ってくれることか。実際試写 会で横に座った男女は、取材と言いながら「意味分んない」 と宣っていた。 まあ取材するなら「それくらい勉強して来い」とも言いたい が、何の取材かは知らず、これを切っ掛けに少しでも勉強し てくれたら、それもこの映画の価値とは言えそうだ。スター 俳優の監督出演で若い観客が動員されることを祈りたい。
『ももへの手紙』 2000年発表の監督作品『人狼 JIN-ROH』でファンタスポルト 最優秀アニメーション賞や毎日映画コンクールアニメーショ ン賞を受賞した沖浦啓之監督による第2作。 主人公は、母子家庭の娘。研究者だった父親が遭難で亡くな り、母親が幼い頃を過ごした瀬戸内の島に引っ越してくる。 さらにその後を追って雫のような怪しい物がやってくる。と ころがそのときにちょっとした接触で彼女は彼らの姿が観え るようになっていた。 そして引っ越し先の古い家の屋根裏で、彼女は祖父が収集し ていたという妖怪を描いた黄表紙本を発見し、その中から開 放されたという妖怪3人組と遭遇する。その妖怪たちはその 家に居着いていろいろ悪戯を始めるが… 父親を亡くした娘がその痛手から立ち直り、人として成長し て行く。まあなんと言うか、日本のアニメのかなりの部分が こんな話に占められているような気もするが、それはそれな りに需要のあるものなのだろう。 そこに妖怪が絡んでくるものだが、本作の妖怪は正に黄表紙 本から採られたとのことで、そこは和のテイストもしっかり の妖怪が描かれていた。しかもクライマックスでの活躍ぶり は、ジブリ作品などとは少し違っているかなあという感じは したものだ。 製作は、『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』や『イノセン ス』など押井守作品を手掛けるProduction I.G。因に沖浦監 督は上記作品のアニメーターを務めている。 声優は、主人公の少女に2011年『アイリス』などに出演の美 山加恋、その母親役に優香。また妖怪3人組を、西田敏行、 山寺宏一、それに『LOTR』のゴラム役の吹き替えなどの チョーが担当している。
『僕達急行・A列車で行こう』 2009年7月紹介『わたし出すわ』などを発表し、昨年12月に 急逝した森田芳光監督による遺作。小町と小玉という2人の 男性を主人公に、京浜急行から九州新幹線までの鉄道情報を 満載にした青春ドラマ。 小町は大手ディベロッパーに務める営業マン。趣味は鉄道だ が、そのスタイルはローカル列車で音楽を聞きながら車窓を 眺めているというもの。しかしガールフレンドからは理解さ れず、旅先で別れを告げられてしまう。 小玉は町工場の工場主の息子。メカには強く、モーターの音 だけで列車や製造会社を判別できるほど。しかし父親の工場 は銀行融資を断られ、技術はあるのに製造機械の老朽化で先 行きは明るくない。 そんな2人が旅先で出会い、お互いの趣味を尊重し夢を育ん で行く。そこに日向に北斗、天城、谷川、湯布院、筑後、大 空、さらにアクティ、ユーカリ、サンダーバードといった外 国人まで絡んで物語は展開される。 映画は最初から渓谷を走るローカル列車の車窓で、そこで語 られる鉄道情報など鉄道マニアに一直線という感じの作品だ が、さらに2人の名前には文字通り吹いてしまった。その後 も青春18切符やトレインヴューなど、正に「鉄」の映画と言 う感じの作品だ。 まあ僕も、今年は春と夏の青春18切符ではそれぞれ九州まで 行く予定だから、この映画に出てきた話題にはいろいろ関心 も湧いた。そんな興味満載の作品。日本中の鉄道マニアはこ の映画を残してくれた森田監督に感謝し、こぞって支援する べきだろう。 出演は、松山ケンイチ、瑛太。他に貫地谷しおり、伊東ゆか り、ピエール瀧、伊武雅刀、村川絵梨、星野知子、笹野高史 西岡徳馬、松阪慶子らが脇を固めている。 森田監督の作品では、1992年『未来の想い出』はもちろん、 1996年『(ハル)』にもSF的興味を引かれた。それからは あまりその種の作品はなかったが、『わたし出すわ』には、 思わず手を叩きたくなる展開が隠されていた。 もっと本格的なSFにも挑んで欲しかった監督の逝去が悔や まれると共に、ご冥福をお祈りしたい。
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