井口健二のOn the Production
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2011年11月06日(日) ルルドの泉、人生はビギナーズ、インモータルズ、デビルズ・ダブル、UGLY、スイッチ、ウクレレ、ジョージ・ハリスン+Oscar/Animation

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
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『ルルドの泉で』“Lourdes”
フランス南部スペイン国境ピレネー山脈の麓にあるキリスト
教の聖地ルルドを舞台に、奇跡について描いた作品。脚本・
監督を手掛けたジェシカ・ハウスナーは、本作により2009年
ヴェネチア映画祭で4部門の受賞に輝いている。
年間500−800万人が訪れるという聖地ルルド。そこは1858年
に聖母マリアが出現した場所と言われ、またその聖母マリア
が教えたという泉には、不治の病をも直す奇跡の力があると
されている。
そんな聖地を訪れた巡礼団。その中に首から下が麻痺して、
食事や車椅子の乗り降りから就寝まで、全てに介助が必要な
主人公の姿があった。そして巡礼団はてきぱきとしたリーダ
ーが率いるボランティアの女性たちと、マルタ騎士団に迎え
られるが…
この主人公を中心に、周囲の巡礼団やボランティア、騎士団
の人々のドラマが展開されて行く。そしてルルドの泉の奇跡
が起きた時、周囲の人々に微妙な波紋が広がる。
物語の舞台はキリスト教の聖地で、それは宗教的な意味合い
のものもいろいろと描かれるが、映画自体は宗教臭いもので
はなく、奇跡が起きたときの人々の反応などが純粋に描かれ
ている。むしろ最近の若者の宗教離れみたいなものも描いて
いる感じだ。
しかし作品は、実に20年ぶりにルルドの泉での現地撮影が実
現しているもので、そのために監督らは1年を掛けて周到な
リサーチやインタヴューを行い、関係者に納得の行く準備を
行ったとのことだ。
従って作品では、ルルドの街や泉の周辺の壮麗な建物、また
奇跡を認定する医療機関の仕事ぶりなども丁寧に描かれ、一
面ではドキュメンタリーの様な作りにもなっている。僕自身
はルルドに関してそれなりの知識を持ってはいたが、その実
像が観られたのは面白かった。

主演は、本作でヨーロッパ映画祭主演女優賞を獲得したシル
ヴィー・テステュー。彼女は2007年7月紹介『エディット・
ピアフ愛の賛歌』でセザール賞助演女優賞も受賞している。
他に、2007年3月紹介『不完全なふたり』などのブリュノ・
トデスキーニ、2010年9月紹介『ロビン・フッド』などのレ
ア・セドゥらが共演。
宗教的な話は別にして、ルルドの町並や聖地の風景など、観
光映画としても楽しめる作品だった。

『人生はビギナーズ』“Beginners”
ユアン・マクレガーとクリストファー・プラマー。現在の映
画界を代表しているともいえる2人の俳優が、新たな人生を
始める勇気と、そのやり方を教えてくれる人間ドラマ。
主人公は38歳独身のアート・ディレクター。人見知りな性格
で人付き合いはあまりせず、友達は仕事だけという男性だ。
そんな男性の父親が突然ゲイをカミングアウトする。それは
44年連れ添った妻に先立たれた後のことだった。
実は、主人公が人見知りなのは彼の両親にも理由があった。
一見仲は良さそうだが実態の無い夫婦関係。それは子供の目
からも明かな、空虚な夫婦生活だったのだ。そんな両親を観
て育った主人公には他人を愛することができなかった。
しかしカミングアウトをしてからの父親の変身ぶりが彼を少
しずつ変えて行く。そして最後の時を迎えた父親が彼に語っ
た真実は…。それは彼に勇気を与え、ついに女性との関係も
築くことができるようになるが。

脚本と監督は、2006年6月紹介『サムサッカー』などのマイ
ク・ミルズ。実は監督の父親が、本作と同様に75歳でゲイを
カミングアウトしたのだそうで、本作は監督自身の物語でも
あるようだ。

共演は、2010年2月紹介『オーケストラ!』などのメラニー
・ロラン、1998年『ウェルカム・トゥ・サラエボ』などのゴ
ラン・ヴィシュニック、それに愛犬役のコスモは、本作が出
演3作目のタレント犬だそうだ。
人生はいつでもやり直しができる。それは年齢には関わりが
無く思い立ったときにそれをすれば良い。そんなメッセージ
が前面に押し出されてはいるが、本作ではさらにそれに触発
されて行く息子の姿も重要で、それこが真のメッセージのよ
うにも感じられた。そんな男たちの姿を、2人の名優が見事
に演じている。
ただ、映画を観ていて少し気になるところがあって、それは
今回物語を書き出して再確認できたが、やはり物語の展開に
はちょっと問題があるようだ。まあそれは映画の中では枝葉
末節と言えるところではあるが。


『インモータルズ−神々の闘い−』“Immortals”
2008年5月紹介『落下の王国』などのターセム・シン監督に
よるギリシャ神話を基にした3Dアクション作品。
太古の時代。神々はゼウスを中心としたオリンポスと、他の
タイタン族とに分かれ争っていた。その争いにはオリンポス
が勝利し、タイタン族はギリシャ・タルロス山の奥深くに幽
閉される。そしてオリンポスの神々は天空へと去った。
やがて時が経ち、地上には人間が溢れ、その中でもギリシャ
の民は神を崇めて暮らしていた。ところが隣国イラクリオン
の国王ハイペリオンは神々に恨みを抱き、神々を凌駕すべく
世界征服を企みギリシャに攻め寄せてくる。
その目的はタイタン族の解放。それにより神々をも倒そうと
考えたのだ。そして圧倒的なハイペリオン軍の前にギリシャ
の征服も目前となったとき…。1人の奴隷の息子に人類の未
来が託される。
物語にはゼウス、ポセイドン、アレス、アテナらが登場し、
ギリシャ神話を背景にしたオリジナルの物語が展開されてい
る。しかもそこにはCGI−VFXを駆使した神々の闘いが
繰り広げられるものだ。

出演はミッキー・ローク、フリーダ・ピント、スティーヴン
・ドーフ、ジョン・ハート、それに2013年公開予定の新作で
スーパーマンに抜擢されたヘンリー・カヴィル。また、今年
9月紹介『三銃士』などのルーク・エヴァンス、『トワイラ
イト・サーガ』に出演のケラン・ラッツ、7月紹介『トラン
スフォーマー』に出演のイザベル・ルーカスらが脇を固めて
いる。
ターセム・シン監督は2000年公開のデビュー作『ザ・セル』
で鮮烈な映像を見せてくれたが、今回はどちらかと言うと、
製作者のジャンニ・ヌナリマーク・キャントンが先に手掛け
た『300』の趣が強い感じだ。
しかし衣裳の石岡瑛子、プロダクション・デザインのトム・
フォデンら、『ザ・セル』からのスタッフも健在で、特に衣
裳はゴールドを基調にした豪華さで観客の目を楽しませてく
れていた。
また3D効果も随所に映像作家らしい仕掛けを施しており、
それらは心地よく楽しむことが出来た。

『デビルズ・ダブル』“The Devil's Double”
イラクの独裁者サダム・フセインの息子で、フセイン政権の
許、放蕩の限りを尽くしたと言われるウダイ。その影武者に
なった男の実話に基づく作品。この物語を、2008年1月紹介
『NEXT』などのリー・タマホリ監督が映画化した。
主人公はイラク陸軍の中尉。元々ウダイとは同級生で、その
頃から似ていると言われていたようだ。そしてフセイン一族
が王政を倒したときには、彼やその家族も大いに歓声を挙げ
たのだが…。
政権に着くや暴政を繰り返し始めたフセイン一族には、国内
からも暗殺者の攻撃が開始され、やがてその攻撃は息子ウダ
イの身辺にも及んでくる。そこで主人公のことを思い出した
ウダイは彼に影武者になることを命令する。
それは主人公にとっては、テヘランに住む家族を事実上の人
質に取られての逃れることの出来ないものだった。こうして
ウダイの側で暮らし始めた主人公の目の前で、ウダイの悪魔
のような所業が繰り広げられる。またそこにはウダイの愛人
の姿もあった。

このウダイと影武者の1人2役を、今年8月紹介『キャプテ
ン・アメリカ』などに出演のドミニク・クーパーが演じ、ウ
ダイの愛人役には、2002年9月紹介『8人の女たち』などの
リュディヴィーヌ・サニエが扮している。
他に、昨年2月紹介『グリーン・ゾーン』に出演のラード・
ラウィ、今年1月紹介『光のほうへ』に出演のダール・サリ
ム、2008年1月紹介『君のためなら千回でも』に出演のナセ
ル・メマジアらが脇を固める。
そしてクーパーは、もちろん風貌などは実物とは多少異なる
のだが、エキセントリックなウダイと陸軍兵士で沈着冷静な
影武者とを見事な対比で演じており、これにはオスカーの呼
び声も理解できるところだ。
なお映画の中にはサダム・フセインと影武者も登場するが、
こちらはそっくりさん。実は、先日観戦したサッカー試合の
エキビジションで、マラドーナのそっくりさんが出場し、そ
のチームの監督もマラドーナのそっくりさんという仕掛けに
大笑いしたもので、今回はそれを思い出しても笑えてしまっ
た。
ウダイの悪行がもっと酷かったのではないかという感じもあ
るが、クーパーの怪演ぶりも面白く観られる作品だ。


『UGLY』
1998年に侯考賢監督『フラワーズ・オブ・シャンハイ』など
を担当した音楽家半野喜弘のアイデアから、2005年『スリー
ピングフラワー』などの柿本ケンサクが監督、2002年6月紹
介『ピンポン』などの窪塚洋介主演によるパリを舞台にした
男女の物語。
窪塚扮する主人公は腹違いの兄を訪ねてパリのアパルトマン
にやってくる。しかし訪ねた部屋に義兄の姿はなく、ルーム
メイトの住人たちに義兄のことを尋ねても、なかなかその話
題に触れようとしない。
しかし成り行きでそのルームメイトたちと共に暮らすように
なった主人公は、ある日、街角で1人の日本人女性と巡り会
う。そして、彼女の存在に共通するものを感じた主人公は彼
女と愛し合うようになるが…
物語の始まりは何となく『第三の男』のような感じがして、
どんなミステリーが待ち受けているのか期待したが、物語は
何ということもない男女の話だった。しかも結末が唐突では
ないのだけれど、僕にはちょっと違和感が生じてしまった。
実は、物語の背景にはそれなりにミステリーになりそうな要
素もあったのだが、本作の作者たちにはそのような嗜好はな
かったようだ。
テーマ的には、2009年9月紹介『白夜』に似たところがあっ
て、そのときにも書いた海外滞在者の孤独のようなものが描
かれた作品なのだろう。それは原案の半野が長い海外生活の
中で感じてきたもののはずだ。
それが本作の表現では、後半でかなり過激なものになってし
まうのが、物語全体の弱さになってしまった感じもした。特
に、義兄が感じていたものが映画の中で追求されない点には
多少の物足りなさも感じたところだ。

共演は、2010年3月紹介『鉄男』などの桃生亜希子。因に彼
女は柿本監督の以前の作品にも出演していたようだ。他には
フランス人らしい俳優たちが出演しているが、プレス資料に
個別の紹介はなかった。
なお本作は、8月中旬にスタートした「THEATRE TOKYO」と
いうウェブサイトで公開された作品の完全版という触れ込み
で、12月10日〜22日の期間限定で東京渋谷シネクイントにて
劇場公開される。

『スイッチ』“Switch”
カナダ人の女性が、フランスでバカンスを楽しもうと考えた
ことから始まる恐怖を描いた作品。
主人公は、カナダのモントリオールに暮らす女性のイラスト
レーター。25歳で容姿も悪くはないが、仕事運にも男運にも
見放され、今日も作品を持ち込んだ出版社で担当者が不在の
上、バカンスでしばらく出社しないと言われてしまう。
そんな彼女は応対に出た女性に食事に誘われ、その女性から
switch.comというサイトを教えられる。それはバカンスの間
だけ住まいを交換するというサイトで、保険も完備し、安心
して異国のバカンスを楽しめるというものだ。
そして数年前に利用し男もゲットしたという女性の勧めで、
主人公はパリの住居を契約し、幼い頃に住んだこともある憧
れの地にやってくるが…。そこで彼女は飛んでもない事件に
巻き込まれてしまう。
猟奇的殺人に、写真を挿げ替えられたパスポートなどが周到
に準備された犯人の身替り。そのパリの住居の住人に仕掛け
られた罠から主人公は如何にして脱出できるのか。大使館も
当てにできない苦境が彼女を待ち構える。
物語では、主人公が犯人として尋問される内に判明してくる
真犯人像がかなりやばくて、その周到な準備の状況など納得
できるように作られている。そして物語はフランスとカナダ
を股に掛けた大スケールの展開となって行くが…
犯人の執拗さがかなり異常で、展開は謎が謎を呼んで行くも
のになる。その辺から多少の違和感も生じてくるのだが、そ
の犯人の動機が明らかにされると、それは辻褄の合うものに
はなっていた。
ただまあ、東京国際映画祭で紹介された作品にもこんな風な
結末のものがあって、それは意外性もあって面白いのだが、
最近このような展開が多い感じがするのはちょっと気になる
ところだ。

脚本は、2004年3月紹介『クリムゾン・リバー2』のオリジ
ナルの原作者で脚本も手掛けたジャン=クリストフ・グラン
ジェ。監督は、2004年『スパイ・バウンド』などのフレデリ
ック・シェンデルフェール。
出演は、ウディ・アレンの2011年作“Midnight in Paris”
に出演しているというカナダ出身のカリーヌ・ヴァナッス。
それに2010年11月紹介『エリックを探して』には本人役で出
演していた元サッカー選手のエリック・カントナ。因にカン
トナは、1997年現役を引退してからは俳優に転身したのだそ
うで、本作でもなかなかの演技を見せていた。

『マイティ・ウクレレ』“Mighty Uke”
ハワイアン演奏には欠かせない楽器ウクレレの起原と歴史、
それに現状を描いたドキュメンタリー。
作品は最初に、先月紹介『がんばっぺ フラガール』の音楽
も担当しているハワイ出身のウクレレ奏者ジェイク・シマブ
クロによる超絶とも言えるウクレレ演奏から始まり、19世紀
後半にポルトガル移民によって楽器が到来したという歴史な
どが紹介される。
そこでは、西欧文化との融合を計ろうとしたハワイ王家の働
きや様々な動きが、ウクレレをハワイ音楽の中心にまでして
いった経緯や、その楽器が一時は世界の音楽をリードしなが
らも、そこから凋落していった歴史なども描かれる。
さらにその楽器が、21世紀に入って数多くの愛好者によって
復活を遂げて行く様子や、世界各国での現状、特にカナダの
高校では音楽の授業に取り入れられて、その選抜メムバーが
ハワイで演奏する感動的な姿なども紹介されている。
ハワイの音楽に関しては、今年6月紹介『ワン・ヴォイス』
でその特別な意味合いなどが報告されたが、本作はちょうど
それと対になる作品とも言え、ハワイの外側から観たハワイ
音楽の姿が描かれている感じのものだ。
それはある種の拡散と浸透とも言えるものだが、その一方で
その原点への回帰が見事に描かれてもいる。それらが見事に
構成された作品でもあった。
作品の中でも言われているように、ある時期のウクレレは子
供の玩具のように扱われ、スタダップコメディアンの小道具
としても使われる。その歴史は日本でもカーボンコピーの様
に同じだったもので、その符合も面白く感じられた。

それにしても、4弦しかない小さな楽器がここまで多彩な演
奏を繰り広げる、その様子も見事に描かれた作品。その一方
で楽器の持つ親しみやすさも見事に紹介され、これは本当に
この楽器が好きな人たちによって描かれている、そんなこと
も納得の出来る作品だった。
なお、この後で観たジョージ・ハリスンのドキュメンタリー
でもウクレレが登場するシーンがあり、そこでの扱いも本作
の通りで、それも面白く感じられたものだ。


『ジョージ・ハリスン』
    “Gerge Harrisn: Living in the Material World”
ビートルズの一員として20世紀後半の音楽界を席巻し、ビー
トルズの解散後はインド文化の伝導者としても多大な功績を
残したギタリストの生涯を描いたドキュメンタリー。
元々は1980年にジョン・レノンが亡くなった後の1990年代に
“The Beatles Anthology”と題された映像ドキュメントが
企画されていた頃、ジョージは自らのドキュメンタリーを作
ることを考えていたのだそうだ。
ところが2001年にジョージが死去。これで計画は一度は潰え
たが、彼の妻のオリヴィアが夫の遺志を継いで2005年に企画
を再開。1978年の『ラスト・ワルツ』など音楽ドキュメンタ
リーの実績もあるマーティン・スコセッシを監督に招請して
本作が制作された。
その内容は、ビートルズの誕生から1968年にジョージの名曲
While My Guitar Gently Weepsが完成されるまでを描くパー
ト1(1時間35分)と、ビートルズの解散以後を検証するパ
ート2(1時間55分)とで構成され、数々の名曲と共に彼の
生涯が描かれている。
そこには、ポール・マッカートニー、リンゴ・スターは元よ
り、オノ・ヨーコ、映画監督のテリー・ギリアムからF1レ
ーサーのジャッキー・スチュアートまで、生前のジョージと
親交のあったあらゆる分野の人たちがインタヴューに答えて
いる。
因にギリアム監督は、1981年の『バンデッドQ』をジョージ
の資金援助で完成させているものだが、ジョージがそのため
に映画会社を設立するなど、その間の経緯には映画ファンと
しても興味深いものがあった。
また、ギタリストのエリック・クラプトンのインタヴューで
は、ジョージとの間でのかなりプライベートな部分にまで触
れており、それはさすが監督にスコセッシを招いた効果かと
も思わせたところだ。
そして作品では数々の名曲が誕生するまでの秘話や、その間
のビートルズのメムバーたちの確執なども、かなり赤裸々に
語られている。そこでは特にジョージの孤立感が手に取るよ
うに理解することができた。
しかし、そんな確執も乗り越えて音楽を追求したジョージの
人間としての素晴らしさを描くのが本作の主眼。それはもち
ろん未亡人が制作した作品だから当然ではあるが、それを考
慮してもジョージの素晴らしさが見事に表現されていた。

2部の合計で3時間30分はかなりの長尺だが、観ている間は
時間の経過も気にならなくなるほどの濃密な作品で、見終っ
て本当に堪能できたと言えるものだった。
        *         *
 アカデミー賞の長編アニメーション部門の予備候補が発表
されたので報告しておく。リストはアルファベット順で、
“The Adventures of Tin Tin”“Alois Nebel”
“Alvin and the Chipmunks: Chipwrecked”
“Arthur Christmas”“Cars 2”“A Cat in Paris”
“Chico & Rita”“Gnomeo & Juliet”“Happy Feet Two”
“Hoodwinked Too! Hood vs. Evil”“Kung Fu Panda 2”
“Mars Needs Moms”“Puss in Boots”“Rango”“Rio”
“The Smurfs”“Winnie the Pooh”“Wrinkles”の18本。
 多分この中から5本が最終候補となるものだが、下馬評は
“Tin Tin”“Rango”“Happy Feet”辺りが強そうだ。
 その一方で、今年は日本作品が見当たらないのが気になっ
た。去年から今年に掛けて日本アニメは何本か観ている気が
するが、アメリカ公開が決まっていないと言うことか。チェ
コ作品などが並んでいるところでは多少寂しい感じがした。


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井口健二