井口健二のOn the Production
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2011年07月10日(日) ミケランジェロ…、ゴーストライター、マーガレットと…、エクソシズム、レイン…アサシン、プリースト、デビルクエスト、死の秘宝Pt2

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
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『ミケランジェロの暗号』“Mein bester Feind”
400年前にバチカンから盗まれたとされるミケランジェロの
絵画を巡って、ナチスの軍部とユダヤ人の画商が虚々実々の
駆け引きをする歴史フィクション。
映画は、ポーランドのパルチザンがドイツの軍用機を猟銃の
一斉射撃で撃墜するところから始まる。その機にはチス親衛
隊(SS)の将校と1人のユダヤ人が乗っていた。そしてユ
ダヤ人とSSの1人が命を取り留めるが…
時間は遡ってナチスが台頭し始めた頃のウィーン。その街に
画廊を開くユダヤ人の一家には、ミケランジェロの絵画を秘
匿しているとの噂があった。その一家の許に、元使用人の子
で家族同然だったがしばらく行方の知れなかったアーリア人
の男が現れる。
その再会を喜んだ画商の息子と男は酒を酌み交わし、酔った
勢いで息子はミケランジェロの絵画を所有していることと、
その隠し場所まで教えてしまう。そしてその数日後、恐れて
いたナチスドイツのオーストリア侵攻が始まる。
この事態に、ユダヤ人一家は資産のスイスへの移送と自分た
ちの脱出を計画するが。時すでに遅く、ナチスの将校が一家
の許に現れ、ミケランジェロの絵画の引き渡しを要求する。
しかし息子が開けた隠し場所に絵画はすでになかった。
ところがナチス・ヒトラーには、イタリア・ムッソリーニと
の連携を強化するために、どうしてもミケランジェロの絵画
を手に入れる必要があった。こうしてナチスとユダヤ人一家
の、一家にとっては命を懸けた駆け引きが始まる。
物語の前半は、かなりサスペンスフルに描かれる。ところが
後半は、ある状況の変化から時にユーモアも交えた筆致とな
り、それはエンターテインメントとして見事な出来映えの作
品だった。
最近、ユダヤ人とナチスの関係を描いた作品をいろいろ目に
している感じだが、その中でもエンターテインメントの色合
いの強い作品で、言ってみれば昔テレビで観ていた『0012捕
虜収容所』“Hogan's Heroes”のような感じかな。とやかく
言わずに理屈抜きで楽しみたい作品だ。

出演は、2010年11月紹介『ソウル・キッチン』などのモーリ
ッツ・ブライプトロイ、10月紹介『アイガー北壁』などのゲ
オルク・フリードリッヒ、舞台女優のウルズラ・シュトラウ
ス。それに11月紹介『ヒアアフター』にも出ていたマルト・
ケラーが共演している。
監督は、1991年の東京国際映画祭でヤングシネマ賞を受賞し
ているウォルフガング・ムルンベルガー。脚本は、1990年の
アメリカアカデミー賞脚本部門に『僕の愛したふたつの国/
ヨーロッパヨーロッパ』でノミネートされたポール・ヘンゲ
が担当した。

『ゴーストライター』“The Ghost Writer”
昨年のベルリン国際映画祭で最優秀監督賞に輝いたロマン・
ポランスキー監督の最新作。本作は東京国際映画祭で上映さ
れ、その際にも数行のコメントを書いたが、今回は日本公開
が決定して試写を再見したので、改めて紹介する。
主人公は著名人の「自叙伝」を代筆するゴーストライターを
生業とする男性作家。普段は無難な題材を扱っていた彼に、
前英国首相の自叙伝の仕事が舞い込む。それは前任者が不慮
の事故死を遂げたことから急遽起用されたものだった。
そして前首相が滞在するアメリカの孤島にやってきた主人公
は、前任者の執筆した原稿を渡され、その原稿を4週間で書
き直すことになるが。同時に前首相には、テロリストに対す
る非人道的行為から戦犯として訴追の動きも表面化する。
それに対して声明文の代筆も行った主人公は、徐々に前首相
の陣営に組み込まれて行く。その一方で前首相の経歴の中で
いくつかの謎に突き当たった主人公は、その謎を解明する内
に前首相の知られざる側面を暴いて行くことになる。
果たして前任者の死は、本当に事故死だったのか…? そし
て前首相に隠された真実の姿とは…

作品は、2001年に映画化された『暗号機エニグマへの挑戦』
などのロバート・ハリスの原作を映画化したものだが、その
脚色はポランスキーとハリス自身が手掛けており、いくつか
の改変と見事な映像化が行われている。
特に原作とは異なるエンディングの鮮烈さは映画ならではの
ものだ。

出演は、ユアン・マクレガー、ピアーズ・ブロスナン、キム
・キャトラル、オリヴィア・ウィリアムス。他に、ティモシ
ー・ハットン、ジェームズ・ベルーシ、ロバート・パフ、ト
ム・ウィルキンスン、イーライ・ウォラックらが共演してい
る。
物語はフィクションだが、内容的にはトニー・ブレア元イギ
リス首相を思わせる描写も多く、その辺はいろいろ興味の湧
く作品になっている。因に、元政治ジャーナリストの原作者
ハリスは、首相になる以前からの政治家ブレアを傍で観てい
たそうだ。
なおスタジオ撮影は、ドイツのバベルスバーグで行われたよ
うで、エンディングロールにロゴマークが在ったが、去年映
画祭で観たときには気づかなかったものだ。

『マーガレットと素敵な何か』“L'âge de raison”
フランスの元アイドル女優ソフィー・マルソー主演で2009年
に製作された現代ドラマ。
マルソーは1966年生まれだから、彼女も40歳を超えちゃった
んだ…というのは、デビュー当時を憶えている映画ファンの
単純な感慨だけれど、そのマルソーが良い感じの大人の女性
になっている作品。
主人公は40歳の誕生日を迎えた女性。原発プラントを海外に
売り込む会社のキャリアウーマンとしてバリバリ仕事をして
いる彼女の許を突然1人の老人が訪ねてくる。そして元公証
人だと名告った老人は「約束の品だ」と言って1つの小包を
彼女に手渡す。
その小包には彼女自身が7歳の時、未来の自分に宛てて綴っ
た手紙の束が入っていた。それは、父親が事業に失敗してど
ん底の生活となっていた当時の記憶でもあった。そんな境遇
から彼女は、たった1人で今の地位まで上り詰めたのだ。
だから彼女には、過去を思い出すことそれ自体が苦痛で忌ま
わしいことだったのだが…。7歳の彼女自身の、苦しい中で
も屈託なく振舞っている文面が徐々に彼女の心の中の何かを
変えて行く。
悪い人間が過去の自分を思い返すことによって改心する。そ
んなストーリーは、『クリスマス・キャロル』などいろいろ
あるが、本作の主人公は悪い人間ではない。それは原発プラ
ントということでは多少引っ掛かりはするが、主人公は独力
で成功を収めた成功者であり、本人的には後ろめたいことは
何もないだろう。
しかも手紙を書いたのはどん底の当時の自分。だからそんな
自分は顧みたくもないのだが、それでもがむしゃらに走って
きた自分の失ったもの、そんなものが彼女の心の内を変えて
行く。それは本当に素敵な何かのために。

共演は、2006年2月紹介『イーオン・フラックス』などのマ
ートン・ソーカス、2010年7月紹介『プチ・ニコラ』などの
ミシェル・デュショーソワ、2005年7月紹介『真夜中のピア
ニスト』などのジョナサン・ザッカイ。それに幼い頃の主人
公役を本作で映画デビューのジュリエット・シャペイが見事
に演じている。
脚本と監督は、韓国映画の『猟奇的な彼女』が2008年にハリ
ウッドでリメイクされたときに、それを手掛けたというヤン
・サミュエル。因に次回作は、“The Great Ghost Rescue”
という題名だそうだ。

『ラスト・エクソシズム』“The Last Exorcism”
プレス資料では、2009年12月紹介『パラノーマル・アクティ
ビティ』が引き合いに出されていたが、どちらかというと、
2008年3月紹介『●REC』の方が近いかな、悪魔祓いの実
態を取材していた番組のクルーが本物に出会ってしまうとい
うお話。
その取材の対象はルイジアナ州バトンルージュに在る教会の
神父。幼い頃から霊感が在るとされて父親の跡を継ぎ説教も
する彼は悪魔祓いの儀式も執り行うが、それは精神的に不安
を感じている人に安心を与えるためのもので、実効はないと
本人も認めている。
そして彼は、アメリカで悪魔祓いの最中に事故死する例が増
えていることを憂慮し、悪魔祓いの実態を暴く番組の製作に
同意。彼本人や家族へのインタヴューなどでそのインチキ性
を明かして行く。
そんな中で隣の教区に住む農夫の一家から娘の悪魔祓いの依
頼を受けた神父は、取材班と共にその家に向かい儀式を始め
る。そこでは十字架に施された白煙を出す仕掛けなど、いろ
いろなフェイクのテクニックが披露されて行く。
ところが神父が悪魔祓いを行っても異常現象は収まらず、や
がて娘の身体にも異常を察知した神父らは、その教区の司祭
にも協力を求めて、娘を医療の専門家に見せるように農夫一
家を説得するのだが…

出演は、2005年9月紹介『理想の恋人.com』に出ていたとい
うパトリック・ファビアン、舞台女優のアシュリー・ベル、
ゲームの声優などを務めるアイリス・バー、2009年12月紹介
『フィリップ、君を愛してる』などのルイス・ハーサム、そ
れに2011年『X-MEN』に出演のケイレブ・ジョーンズ。
監督は、ドイツ出身で2008年の長編デビュー作がAFIフェ
スティバル観客賞を受賞したというダニエル・スタム。脚本
は、監督歴もあるハック・ポトコとアンドリュー・ガーラン
ド。製作は、2002年『キャビン・フィーバー』などのイーラ
イ・ロスが担当している。
でもまあ何と言うか、最初にフェイクですとしておいて、後
で本物だとされるのも変な感じだし、映画は俳優が演じてい
るのだから…。作り方はこれで良かったのかな。エクソシズ
ムのインチキばらしなどは面白いと思ったが、何か本末転倒
のような感じがした。


『レイン・オブ・アサシン』“剣雨”
2008年8月紹介『レッド・クリフ』などのジョン・ウーの製
作、共同監督による武侠作品。
物語の背景は中国・明朝。約800年前にインドから渡来し、
武術の奥義を極めたとされる達磨大師の遺体(ミイラ)が、
暗殺組織<黒石>の襲撃によって奪われる。その遺体には、そ
れを所有する者が武術界の覇権を握るという言い伝えがあっ
た。
ところが襲撃の混乱の中、遺体を手にした組織の女剣士が姿
を消してしまう。その後、女剣士は施術によって姿を変え市
井に身を潜めて平穏な暮らしをしていたが…。<黒石>は組織
を挙げての探索の手を緩めなかった。そしてもう1人その後
を追うものがいた。
武侠作品とはいっても、物語の中心は国家の存亡と言うよう
なものではなく、達磨大師の遺体一つ。ただしその使い道に
はちょっと…。でもまあそんなストーリーよりも、本作の見
所は華麗に繰り広げられるチャンバラの面白さだろう。
何しろ女剣士の操る見事にしなう剣の捌き方は、なかなか面
白いものがあった。

出演は、今年5月紹介した『酔拳』などのミシェル・ヨー、
2003年9月紹介『MUSA』などのチョン・ウソン、今年の
3月紹介『孫文の義士団』などのワン・シュエチー、2010年
11月2日付「東京国際映画祭」で紹介『ホット・サマー・デ
イズ』などのバービー・スー。
また2008年1月紹介『軍鶏』などのショーン・ユー、2010年
11月紹介『MAD探偵』などのケリー・リン。さらにウー監
督の実娘のアンジェルス・ウーが本作で映画デビューを飾っ
ている。
脚本と監督は、2008年8月紹介の台湾映画『シルク』で台湾
映画の年間興収第1位を記録したことのあるスー・チャオピ
ン。『シルク』ではホラーの中にSF要素を持ち込んでいた
が、本作でも武侠の中にちょっと怪しげな話を持ち込んでお
り、その感覚は微妙だ。
なお衣装を、1985年『乱』でオスカー受賞のワダ・エミが担
当している。
それにしても、達磨大師は石の上での座禅修業によって脚を
失ったという説話を聞いたことがあったが、本作によると脚
を失ったのには別の理由があったようで、その辺はニヤリと
させられた。


『プリースト』“Preist”
2010年4月に『レギオン』という作品を紹介しているポール
・ベタニー主演、スコット・スチュアート監督のコンビによ
る宗教を背景にしたファンタスティックな作品の第2弾。
原作は、ロサンゼルスを本拠に日本を中心とするアジアのコ
ミックスなどを翻訳出版していたTokyoPopでも発刊された韓
国コミックス。なお韓国の漫画家Hyung Min Wooにる原作は
全16巻もあるそうで、今回の映画化はその一部からのインス
ピレーションとされている。
物語の舞台は現代とは様変わりした未来。何世紀にも渡るヴ
ァンパイアとの戦いの末に、人類は究極の人間兵器<プリー
スト>によってヴァンパイアの封じ込めに成功したが、その
後も人類は荒野に点在する要塞都市に閉じ込もって暮らして
いた。
その要塞都市を支配しているのは修道会。彼らはヴァンパイ
アは駆逐したと公言しながらも人々には都市を出ることを禁
じていた。そして戦いに貢献した<プリースト>たちには用済
みとばかりに、何の恩恵も与えていなかった。
そんなある日、1人の<プリースト>の許に荒野に住む兄一家
がヴァンパイアに襲われ、姪が拉致されたとの連絡が届く。
そこで<プリースト>は、その報告を修道会に持って行き、救
援を求めるが、ヴァンパイアは居ないとされた上に都市を出
ることを禁じられてしまう。
しかし<プリースト>はその禁を破り、報告をもたらした若者
と共にヴァンパイアの跡を追い始めるが…。修道会は都市を
出た<プリースト>に追手を差し向け、一方、現れたのは日光
も恐れない人間ヴァンパイアの一群。彼らの次の計画は要塞
都市の襲撃だった。

共演は、昨年公開された『パンドラム』などのカム・ジガン
デー、2008年2月紹介『燃えよ!ピンポン』などのマギー・
Q、2009年の『スター・トレック』でマッコイ役を演じたカ
ール・アーバン、2010年1月紹介『しあわせの隠れ場所』な
どのリリー・コリンズ、それにクリストファー・プラマー。
バイクのシーンなどには『AKIRA』の影響も顕著だったが、
CGIのVFXが可能にした異様な背景の中でのアクション
は見事。2007年3月紹介『300』以降、こういう映画が監
督の思い通りに描かれるようになってきたものだ。
なお本作はコンヴァージョン3Dの作品だが、3D感は期待
以上に良くできていた。

『デビルクエスト』“Season of the Witch”
サイトでは2005年9月15日付第95回で製作情報を紹介してい
る作品。14世紀のヨーロッパを舞台にした魔女狩りに纏わる
物語が、2000年『60セカンズ』のドミニク・セナ監督、ニコ
ラス・ケイジ主演のコンビで映画化された。
物語の主人公は十字軍に参加して幾多の戦闘で目覚ましい働
きを示してきた2人の騎士。ところが終りの見えない戦闘に
明け暮れる中でその意義に疑問を感じ始めた2人は、ついに
十字軍の騎士団を脱走する。
そして放浪の旅を続ける中でとある町に辿り着いた2人は、
その町にぺストが蔓延して住人の4分の1がすでに死亡した
ことを知る。そんな中で馬を調達しようとしていた2人は、
脱走者であることが露見し、領主の前に引き出される。
その領主もまたぺストに侵されており、領主は、捕えた女が
ぺストを広めたとして、2人にその女が魔女かどうか調べる
ため修道院へ護送することを依頼する。その依頼に最初は躊
躇した2人だったが、魔女とされる女の境遇を見た2人は承
諾する。
こうして2人ともう1人の領主に忠実な騎士、若い神父、道
案内の商人と称する詐欺師、さらに旅の途中で加わった侍者
によって、一見健気だが時に怪力を発揮する謎の女を護送す
る旅が始められるが…。そこには苦悩の森などの難所が待ち
構えていた。
ケイジの主演でこの内容なので、最初はコミックスヒーロー
ものかと思ったが、映画はまともに中世ヨーロッパを再現す
る作品だった。その背景には、CGIによるVFXなども使
用されているが、多くは実在の修道院などで撮影されている
ようだ。その映像を観るのも楽しめる作品になっている。

共演は、2008年9月紹介『ヘルボーイ』などのロン・パール
マン、今年1月紹介『アメイジング・グレイス』に出ていた
スティーヴン・キャンベル・ムーア、主にテレビで活躍の新
進女優クレア・フォイ、そしてクリストファー・リーらが脇
を固めている。
なお本作は、2005年に“Threshold”というSFシリーズを
手掛けているブラギ・F・シャットのオリジナル脚本による
ものだが、脚本家は現在はブラム・ストーカーの原作を映画
化する“The Last Voyage of Demeter”の脚色に取り組んで
いるそうだ。

『ハリー・ポッターと死の秘宝 Part2』
   “Harry Potter and the Deathly Hallows: Part 2”
2001年11月紹介『ハリー・ポッターと賢者の石』でスタート
し、10年間で8本の作品を生んだ映画シリーズがついに完結
した。で、それを観終えた現在の感想は、まあ作る方も観る
方も良く頑張った…という感じかな。
原作本も映画化も全作がベストセラー、大ヒット作だから、
シリーズは続いて当然ではあったが、特に映画化は、そのク
オリティを最後まで保ったのは立派なことだ。それに出演者
のほとんどが、止む終えない事情は別として最後まで一貫さ
れたのも立派と言える。
その最後の1本は、原作本の最終巻の後半。実は昨年末に公
開されたPart 1で物語のほとんどは終りにされていて、後半
は正にシリーズのクライマックスとなるホグワーツ魔法学校
を巡る攻防戦と、ハリーとヴォルデモートの一騎討ちが描か
れる。
それはもはや物語の展開と言うよりは単に雌雄を決するため
の戦い。このため、映画ではその他のものはほとんど描かれ
ていないが、そこにいくつかの重要な謎解きが配されている
のは、これも見事な構成と言えるものだ。
実は僕が原作本を読んだのは4年前になるから、細かい点は
良く憶えていなかったし、原作を読んでいた人の中にも挫折
した人は多いと聞くが、本作の映画化はそういう人にも判り
易く、全体の流れさえ判っていれば充分に楽しめるように作
られている。謎解きも、多分本作だけで充分に理解できるだ
ろう。
そして映画では、魔法戦争の様子を実に見事に映像化してい
ているもので、その映像を観るだけでも堪能できるし、その
結末にはカタルシスも感じられた。

脚本は、第5作の『不死鳥の騎士団』以外の全てを担当した
スティーヴ・クローヴス、監督は、その第5作以降の全てを
担当したデイヴィッド・イェーツ。
出演者は、ほとんどが前作と同じだが、唯一新登場のダンブ
ルドアの弟アバーフォース役には、2月紹介『ザ・ライト』
に出ていたキアラン・ハインズが扮している。彼は、ディズ
ニーが来年公開する“John Carter”と、ニコラス・ケイジ
主演で来年公開予定の“Ghost Rider”の続編にも出演して
いるそうだ。
なお上映時間は2時間10分で、シリーズ最短だった『不死鳥
の騎士団』の2時間18分よりさらに短いが、本来の物語は、
Part 1で語り終えているから、戦いに特化したということで
はこの辺が適当なのだろう。
また本作では、2Dからの3D化が行われているものだが、
上映時間は3Dで観るのには適当な長さとも言える。さらに
3D化に違和感は余り感じなかったから、半年待った甲斐は
あったとも言えそうだ。
(本作は公開期日が迫っているため、順番を入れ替えて掲載
しました)


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井口健二