井口健二のOn the Production
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2011年07月03日(日) エンディングノート、デビル、カンフー・パンダ2、朱花の月、ナッシュビル、グリーン・ランタン、ワイルド・スピード5+訃報

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
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『エンディングノート』
是枝裕和監督の下で2009年3月紹介『空気人形』の監督助手
などを務めた砂田麻美が、第1回監督作品として自らの父親
の最後を記録したドキュメンタリー。
その父親は、かつて丸の内に本社のある大手化学会社の営業
畑で取締役にまで上り詰めた。そんな父親は営業マンの常と
して、何事にも段取りを付けなければ気が済まない。その父
親が最後に行ったのは、自らの死への段取りだった。
その切っ掛けはガンの告知。40年勤め上げた会社を定年退職
し、子供たちも独立してこれからが夫婦の時間と思っていた
矢先にガンが発見され、ステージ4に進行していたガンはも
はや手術不可能、余命半年と宣告されてしまう。
しかしその事実を泰然自若と受けとめた父親は、身辺整理や
葬儀の際の連絡先などを自らのエンディングノートとして纏
め始める。そしてそんな父親の姿を娘である本作の監督が冷
静且つ愛情を込めて記録して行く。
僕自身が2年前に父親を送ったばかりで、本作の内容を知っ
たときには冷静に観ていられるかどうか心配になった。しか
し作品はユーモアにも富み、出来れば自分もこんな風に逝き
たいものだとも思わせてくれた。
それはまあ父親の最後を記録するなんて非情な…と思う人も
いるかも知れない。しかしこれは故人の性格があってのこと
もあるが、「こんな風に最後を迎えることもできるのだよ」
という営業マンの最後のプレゼンテーションだったようにも
思える。
そしてこういう父親のいたことがこの作品の全てを支えてい
るものでもあるが、それを娘である監督が丁寧に撮り上げて
いる。さらにそこにエンディングノートに書かれなかった過
去や現在の様々な映像を挿入した構成も、嫌みにならず巧み
に描かれていた。
また、その父親(故人)の心の声を代弁する形の監督による
女声のナレーションも映画全体の雰囲気を柔らかく、心地よ
く包み込んで、これも見事な演出だった。

監督・撮影・編集は砂田麻美、製作・プロデューサーは是枝
裕和。また音楽・主題歌を人気ミュージシャンのハナレグミ
が担当している。

『デビル』“Devil”
2006年9月紹介『レディ・イン・ザ・ウォーター』などのM
・ナイト・シャマラン監督が原案と製作を務めたサスペンス
・ホラー作品。
プロローグはかなり不安感を誘う映像に始まって、続くシー
ンでは高層ビルの前に停車中のトラックの上に何かが落下、
その衝撃でトラックが動き出す。さらにシーンは警察による
事件の捜査へと繋がって行く。
そして捜査官である主人公の閃きが彼を高層ビルへと導いて
行くが、そこでは1台のエレベーターが理由もなく停止し、
その中には5人の男女が閉じ込められていた。それは最初は
何の関わりもない事件のように思えたが…
という発端の展開だが、実はその後も主な事件が起きるのは
エレベーターの中。その事件と主人公との関わりも不明のま
まで、彼がある種の傍観者として物語が進んで行くのは面白
い構成の作品だった。そしてモニター映像などを通じて事件
の真相が明らかになって行く。
その真相とは、そして事件と主人公の関わりは…

映画では、最初に‘The Night Chronicles’というタイトル
が出て続いて‘1’と表示される。つまり本作は、M・ナイ
ト・シャマランが原案・製作を務めるシリーズの第1作とな
っているものだが、ネットのWikipediaによるとtrilogyが計
画されているようだ。
そのシリーズはシャマランが長年書き溜めたアイデアノート
に基づくとされているもので、彼は自分で映画化する目的で
書いていたのだが、その数が多くなり過ぎて1人で全部は無
理と判断。一部を脚本家や監督を選考して映画化を任せるこ
とにしたものだ。
そしてその第1弾に抜擢されたのが、脚本家は2009年6月紹
介『30デイズ・ナイト』などのブライアン・ネルスンと、
監督は2003年3月紹介『●REC』のアメリカ版リメイクを
手掛けたジョン・エリック・ドゥードル。期待の新鋭が起用
された感じだ。
出演は、2011年1月紹介『お家をさがそう』などのクリス・
メッシーナ、2008年5月紹介『アクロス・ザ・ユニバース』
に出演のローガン・マーシャル=グリーン、前回紹介『復讐
捜査線』などのボヤナ・ノヴァコヴィッチ。
さらに、2003年『ミスティック・リバー』などのジェニー・
オハラ、2005年『(500)日のサマー』などのジェフリー・エ
アンド、1996年『ザ・ロック』などのボキーム・ウッドバイ
ン、2008年『デス・レース』などのジェイコブ・バルガスら
が共演している。
上映時間は80分の作品だが、見せ場はたっぷりと設けられて
いる。この調子で第2弾、第3弾も早く観たいものだ。

『カンフー・パンダ2』“Kang Fu Panda 2”
2008年5月紹介『カンフー・パンダ』の続編。
前作で龍の戦士に選ばれ、村を守って活躍したパンダのポー
はその後も‘マスター・ファイブ’の仲間と共に鍛練に励ん
でいたが、シーフー老師の求める「内なる平和」がなかなか
会得できない。
そんな時、孔雀城の異変が伝えられる。それはかつてその城
の主だった両親に反抗して追放されていたシェン大老が舞い
戻り、カンフーを打ち破る新たな兵器で世界征服を企んでい
るというものだった。
そこでシーフー老師はポーと‘マスター・ファイブ’に出動
を命じるが、新たな兵器への対抗手段は見出せない。しかし
老師は「内なる平和」があれば大丈夫だというのだが…。一
方、ポーは敵の持つ印から何かを思い出そうとしていた。
カンフーの前に銃器が登場してその行く末に暗雲が漂い始め
る。それは現実の世界でも同じことだから、お話としては理
解しやすい展開だ。そこに今回は、ポーの出生の秘密などが
絡まってくる。
ただし、今回は出生の秘密が完全に明かされるまでは描いて
おらず、その辺は多分次回“Kang Fu Panda 3”でのお話に
なりそうだ。

声優は、アメリカ版では前作と同じくジャック・ブラック、
アンジェリーナ・ジョリー、ダスティン・ホフマン、ジャッ
キー・チェン、セス・ローゲン、ルーシー・リュー。それに
今回はゲイリー・オールドマン、ミシェル・ヨー、ジャン=
クロード・ヴァン・ダムら、錚々たる顔(声)ぶれが並んで
いる。
とは言うものの日本公開は主に吹き替えで行われ、そちらは
山口達也、笹野高史、木村佳乃、MEGUMIらの顔(声)ぶれに
なっていた。
監督は前作のストーリー部門のヘッドを務めたジェニファー
・ユー・ネルスンが担当し、脚本は前作に引き続いてジョナ
サン・エイベルとグン・バーガーが担当している。
かなり思わせぶりにポーの故郷の話が登場する割りには、本
作は真のその場所に至るまでの話にはなっておらず、その辺
は繋ぎの展開という感じもした。早く“Kang Fu Panda 3”
を観せて貰いたいものだ。


『朱花の月』
2010年8月紹介『玄牝』などの河瀬直美監督による新作。本
作は今年のカンヌ国際映画祭で、パルム・ドール受賞のテレ
ンス・マリック、2008年11月紹介『ロルナの祈り』などのダ
ルデンヌ兄弟らが集ったコンペティション部門に選出上映さ
れた。
主人公は、飛鳥地方の集落に最近引っ越してきた工芸作家の
男性。そこは人付き合いの上手くない彼がようやく見つけた
自分の居場所だった。そして彼は、かつて同級生だった女性
と再会する。その女性は染色家で、地元PR誌の編集者の男
性と同棲していたが…
題名の「朱花」は、映画では「はねづ」とルビが振ってあっ
たが一般的には「はねず」、漢字も「朱華」または「唐棣・
棠棣」などとされているものが多いようだ。そしてその意味
も、万葉集に出てくる言葉だが「庭梅か」とされている程度
で確定されていない。
ただし染色に於ける「朱華色」は、「くちなしの黄の下染め
をして、紅花で染めた黄みのある淡紅色」とのことで、また
この色に染められた布は灰汁で洗うと色落ちすることから、
「うつろう」「はかない」という意味にも使われるそうだ。
そんな血の色にも似た染色を目指す女性が、2人の男性の間
で恋の炎を燃やす。一方それは藤原宮の発掘現場を背景に、
「香具山は…」で始まる大和三山を歌った万葉集の古歌にも
準えた男女の物語を描いて行く。

出演は、元は撮影現場のケイタリングをしていたという「こ
いずみとうた」、元はモデルで河瀬監督の2004年『影』にも
主演している大島葉子、それに以前は助川ドリアンの名前で
パフォーマンスをしていた明川哲也。他に、麿赤兒、樹木希
林、西川のりおらが脇を固めている。
悠久の時と男女の恋の儚さ、そんなものの対比が映画祭の審
査員にはアピールし易いのかな。そこに戦争の影が落ちてい
れば、ある意味言うことのない作品かもしれない。しかし僕
には描かれる「死」の扱いが安易に感じられて納得が出来な
かった。
これは『玄牝』や、2009年9月紹介小林政広監督『白夜』の
時にも同じ感じを受けたものだが、さらに本作は2006年「仔
猫殺し」で話題になった坂東眞砂子の原作に基づくとのこと
で、その死生感は僕とは容れられないもののようだ。


『ナッシュビル』“Nashville”
2007年1月紹介『今宵、フィッツジェラルド劇場で』などを
残し2006年11月20日に亡くなったロバート・アルトマン監督
による1975年の作品。前々回紹介した『天国の日々』と共に
‘Ziggy Films 70's-Vol.2’として再公開される。
オリジナルの日本公開は1976年とのことで、その頃は僕も映
画の仕事を始めていたから、多分西銀座のリッカーミシンビ
ルにあったパラマウントの試写室で観たのかな。でも2時間
40分の上映時間と登場人物の多さに圧倒されて、物語はほと
んど覚えていなかった。
それにこの当時は、まだアンサンブル映画に慣れていなかっ
た面もあったもので、映画全体を観ることが出来ず、正直に
は途中で混乱して多少飽きてしまった記憶も残っている。そ
の印象は1980年『ポパイ』にも続いたものだ。
でも、元々アルトマンは1970年の『BIRD★SHT』や1971年の
『ギャンブラー』などが好きな監督の1人だったし、その監
督の作品に退屈したのが、ショックだったことも頭の片隅に
残っていた。
そんな作品との再会となったものだが、さすがに僕の方も観
る目が成長したようで、今回は充分に楽しめた。と言っても
これはしっかり覚えていた結末については、そこに至る経緯
はやはり釈然としないものがあって、それは当時も見誤った
訳ではなかったようだ。
そのお話は、大統領予備選が行われている年のナッシュビル
の数日間を描いたもの。街には大統領候補の選挙カーが公約
を流しながら巡回し、その中で候補者を支援するコンサート
の準備が進められている。
そしてコンサートに出演する大物歌手や、そのために帰って
くる人気歌手、さらにカントリー&ウェスタンのメッカ=ナ
ッシュビルで一旗挙げたい歌手などが寄り集まってくる。ま
たそこにはコンサートを取材するBBCの記者なども訪れて
いる。
そんな連中が個人的や政治的なそれぞれの思惑を胸に右往左
往して行く。そしてようやくコンサートの開催に漕ぎ着ける
のだが…

それを演じるのが、ネッド・ビーティ、カレン・ブラック、
キース・キャラダイン、ジェラルディン・チャップリン、シ
ェリー・デュバル、スコット・グレン、ジェフ・ゴールブラ
ム、リリー・トムリン、キーナン・ウィン。
他に歌手や舞台俳優も大挙出演し、さらにエリオット・グー
ルド、ジュリー・クリスティが本人役で出ているなど、若手
からベテランまで、正に当時のアメリカ映画界が代表されて
いる感じのものだ。
ノスタルジーで観ることもできるが、政治的な話などは今で
も通じるところも多く、現代でも面白く観ることの出来る作
品だった。

『グリーン・ランタン』“Green Lantern”
本ページでは2009年2月15日付第177回などで紹介したDC
コミックスの映画化。その製作までの経緯については2007年
11月1日付第146回でも紹介しているが、期待の映画化がよ
うやく完成したものだ。
物語は、軍需産業で働くテストパイロットが主人公。彼には
科学技術面をバックアップしてくれる親友や、パイロット仲
間で会社トップの令嬢でもある恋人もいて、まずは順風満帆
の人生だが、彼には最後の決断が出来ない弱さもあった。
そんな主人公が、テスト飛行中のやり過ぎでトラブルを起こ
した晩、彼は突然緑色に光る球体に拉致され、とある浜辺に
連れて行かれる。そこには瀕死の異星人がおり、その異星人
は彼が指輪に選ばれたとして、緑色の石の付いたその指輪と
緑のランタンを彼に託す。
そして主人公が指輪を填め、緑のランタンに翳してみると…
彼の身体は宇宙を飛び、とある星に導かれる。そこは宇宙の
平和を守るガーディアン=グリーン・ランタンたちの訓練の
場所だった。こうして主人公には、宇宙と地球の平和を守る
任務を与えられるが。
まあ『スーパーマン』『バットマン』と同様のDCスーパー
ヒーローの誕生で、ただ緑色のマスクとコスチュームは多少
ダサイ感じだが、そこは映画の中でも指摘されているから、
原作のあるものでは仕方がないだろう。
それに本作では、主人公の授かる超能力が映像的にもちょっ
と面白くて、これは映画的なスーパーヒーローとも言えそう
だ。

出演は、スーパーヒーロー役には2009年8月紹介『あなたは
私の婿になる』などのライアン・レイノルズ、その恋人役に
2005年9月紹介『旅するジーンズと16歳の夏』などのブレイ
ク・ライブリー、さらに2004年8月紹介『ニュースの天才』
などのピーター・サースガード。
他に2010年『ロビン・フッド』などのマーク・ストロング、
1999年『ミュージック・オブ・ハート』などのアンジェラ・
バセット、1994年『CODE46』などのティム・ロビンス。また
ジェフリー・ラッシュ、マイクル・クラーク・ダンカンらが
声優を務めている。
監督は、前回紹介『復讐捜査線』などのマーティン・キャン
ベルが担当した。

『ワイルド・スピード/メガ・マックス』“Fast Five”
2009年7月に前作を紹介したヴィン・ディーゼル、ポール・
ウォーカー主演によるカーアクション・シリーズ第5弾。
前作ではいろいろなことがあって、遂に××となってしまっ
た主人公ドミニクだったが、本作の巻頭でその状況はあっさ
りと解消される。しかしアメリカには居られなくなった彼ら
は海外に逃亡。正しく逃亡者となってブラジルのリオ・デ・
ジャネイロに現れる。
そしてスラム街ファヴェーラに身を隠したドミニクの妹ミオ
と元捜査官ブライアンは、生活費稼ぎに列車から高級乗用車
を強奪する計画に参加、そこにドミニクも現れる。ところが
計画は最後に裏切りに遭い、それでも1台を確保したドミニ
クらはその車に隠された秘密を発見する。
そしてその秘密を手に、リオの裏社会を牛耳る黒幕への挑戦
を開始するドミニクたちだったが、その黒幕はリオの警察も
ほとんど手中に収めていた。しかもリオには、FBIが派遣
した超剛腕の捜査官も到着、ドミニクらを追い始める。
こうしてドミニクたちと、リオの黒幕+警察、それにFBI
捜査官チームの三つ巴の闘争が始まる。果たしてドミニクら
は黒幕への挑戦に勝利することが出来るか…それは奇想天外
な作戦の始まりだった。
前作では第1作の主役4人が見事に勢揃いしたが、本作では
さらに第2作の登場メムバーや第1作の脇役、第3作以降の
メムバーも加わって、正しくシリーズのドリームチームが形
成される。
その顔ぶれは、第1作と第4作のジョーダナ・ブリュースタ
ー、第2作に登場のタイリース・ギブスン、クリス・ブリッ
ジス、第3作から参加のサン・カン、第4作からのガル・ギ
ャドット、ドン・オマール、テゴ・カルデロン、さらに第1
作以来のマット・シュルツ。
そして本作からは、新たにドウェイン・ジョンスンと、スペ
イン語圏では20本以上の出演作があるという女優のエルサ・
パタキーが新登場している。ここにミシェル・ロドリゲスの
名前がないのは残念だが、それは仕方のないところだ。

脚本と監督は、共に第3作以降を支えるクリス・モーガンと
ジャスティン・リン。因に監督のリンには、アーノルド・シ
ュワルツェネッガーの出演が期待される“Terminator 5”へ
の起用も発表されている。
なお本作は、先に公開された全米で大ヒットを記録してさら
に続編への期待が高まっているが、実は本作のエンディング
ロールの中では、その展開も少しだけ紹介されているので、
くれぐれも席を立たないように。
その次回作“Fast & Furious 6”の全米公開は、2013年5月
24日からとの発表が先日行われた。
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 訃報
 怪獣映画研究の第1人者であり、個人的には長く友人とし
て付き合わせて貰った竹内博君が亡くなった。2年ほど前か
ら入院して病気はその後も進行したのだろうが、一昨年12月
に会ったのが顔を見た最後だった。
 互いに故大伴昌司氏の弟子という立場だった彼と僕だった
が、実は大伴氏の生前は顔を会わせたことはなく、初対面は
氏の告別式の時だったと思う。突然少年が僕の前に現れて挨
拶をされたが、思えば彼はまだ10代半ばの頃で、その割りに
は礼儀正しく丁寧な挨拶だった記憶がある。
 ただし大伴氏からは生前に一度だけ、「井口君は怪獣に余
り興味が無いようだから、そちらの方面をやってくれる若い
人に手伝って貰うことにした」という話を聞かされたことが
あり、多分それが彼のことだったのだろう。
 そんな彼は大伴氏の伝もあって円谷プロに入り怪獣作品の
プランナーとしても活躍して行くことになるが、現実的には
大伴氏という後ろ楯もなしにそれを行った彼の努力も計り知
れないものだ。
 その頃には僕も何度か円谷プロの片隅に在った彼の住まい
を訪ねたりもし、さらに映写室での鑑賞会などの案内も受け
て、親交も深まっていった。そして彼が怪獣倶楽部を立上げ
たときには、先輩として参加させても貰った。その怪獣倶楽
部では、彼は若い人たちの纏め役としても良い仕事をしてく
れた。
 その後の彼は、『ゴジラ』→香山滋、『海底軍艦』→押川
春浪、そして海野十三など日本の古典SF研究の一角も担っ
て行くことになるが、それは目先の動きに左右されず、過去
しっかり見つめた素晴らしい仕事であった。そしてその間も
常に僕に対しては先輩として付き合ってくれたことも、彼な
らではの心遣いであったと思う。
 僕自身にとっては、彼を含めてこれで自分より若い仲間を
4人先に失ったことになる。彼らは何れも大きな業績を残し
逝った人たちだが、年上の僕からすれば皆、この世を去るの
が早すぎた人たちだ。今生きていればより大きな業績を残せ
たはずだし、さらに未来にも多くを成しえた人たちだ。
 そんな彼らが早く去ったことが悔しいし寂しい。それに何
より彼らともっと話していたかった。竹内君と、そして彼ら
の冥福を祈る。


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井口健二